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トラウマが人生に与える影響とは

トラウマというのは、「個人の対処能力をはるかに超えた圧倒されるような出来事(外傷体験)による心理的かつ感情的苦痛を伴う状態」と定義付けされています。例えば、自然災害による甚大被害、児童虐待、学校でのいじめ、重大な交通事故、激しい暴力行為などを実際に経験した被害者の方が負う心の傷は、とても深く、簡単にすぐ治るものではありません。

特に、発達期である幼少期や若年期に意図せず体験したトラウマは、当該者のその後の長い人生に多大なる影響を及ぼしかねません。

今回は「トラウマが人生に与える影響」を中心に説明していきます。

1.トラウマが人生に与える影響とは

悩んでいる女性

トラウマを生じる実体験が、健常な大人にとっては些細なことであっても、心身機能が未熟とされる幼い子どもにとっては現実的に大きな深い傷となって生涯を通して残ることがあります。

特に、子ども時代に体験したトラウマは、その後の長い人生において辛く悲しい感情につながる恐れがあります。

その結果として生じた複雑なトラウマは、日々の生活や仕事、恋愛など多岐に渡ってあらゆる方面に長く影響を残します。なおかつ意図せずにトラウマを経験した年齢が通常よりも若く発達段階の早期であればあるほど、人生に与える影響は広く深いものになります。

トラウマを体験した子どもの中には、原因となる体験が自らにとって日常的過ぎてそれらを特別視していなかったり、辛い嫌な記憶そのものが防御反応的に抜け落ちていたりすることもあります。

思春期以降、大人になって自分の生きづらさを自覚するようになり、それが幼少期に負ったトラウマだからであると気付くことも少なくありません。こういった意味でも幼少期に受けた傷は、長期の潜伏期間を経て、後々に出現することもあるのです。

また、両親や周りの大人の子どもに対する普段の接し方そのものが、その子の人生に大きく影響を与えることがわかってきております。

不安定な親子関係の影響などがある場合には人生の重大な課題に直面する局面を迎えるごとに幼少期に負ったトラウマが走馬灯のように出現しがちです。

2.心的外傷後成長(PTG)とは

電話を掛ける男性

自らがトラウマを認識することで、不安な症状が現れたり、息苦しさを感じることは大変心苦しいことです。しかし、そうしたことで人生におけるあらゆる場面で自分の生きづらさがトラウマの影響によるものだと気付く契機にもなります。

トラウマには、ネガティブな側面だけではありません。過去の危機的な出来事や困難な経験に対して精神的な向き合いの結果として生ずるポジティブな心理的変容の体験があります。これは「心的外傷後成長(PTG)」というものです。

このコンセプトは他者との親密性が増す、新たな興味や活動に取り組む、人生に対する深い感謝を示すなど様々な領域に関する明るいメンタル面での変容をもたらすと考えられています。

トラウマから回復するには、まずは「自分自身が真剣に努力する」という意欲的な態度が欠かせないことは議論を持ちません。しかし、そのような過程においては、いずれどこかでトラウマ体験と向き合う必要が出てきます。

そうした際に、周囲の身近な人に支えられたり、専門職の方々の手厚いサポートを借りながら、少しずつでも改善への第一歩を思い切って踏み出していただきたいと願っております。

心的外傷後成長の詳細については以下をご覧ください。

3.トラウマについてのカウンセリングを受ける

トラウマから自然に回復したり、自ら努力と工夫をして回復したりすることはあります。しかし、そうしたことがなかなか難しいこともあります。その時には臨床心理士などの専門家に相談したり、カウンセリングを受けたりすると良いでしょう。

当オフィスでの相談やカウンセリングを利用したい方は以下のページからお申し込みください。

4.トラウマについてのトピック

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。

  • 池埜聡:臨床ソーシャルワークにおける代理性心的外傷ストレス-心的外傷 (トラウマ) 治療と援助者への心理・精神的影響に関する理論的考察-, 関西学院大学社会学部紀要 (86), pp129-144, 2000.
  • 池埜聡:生存者罪悪感(survivor guilt)の概念的枠組みとソーシャルワーク実践の課題-ソ ーシャルワークにおけるトラウマ・アプローチに関する一考察-, 社会福祉学 42(2), pp54-66, 2002.
  • 亀岡智美:精神科医療におけるトラウマインフォームドケア, 精神神経学雑誌 122, pp160-166, 2020.
  • 新牧恭太ら:トラウマ性ストレスによる心身障害を乗り越え,心的外傷後成長を得た 50 代女性の症例, 日本健康心理学会大会発表論文集32, 2019.