中高年の引きこもり「8050問題」について考える
8050問題とは、80歳代の親と50歳代の子供が共同生活することによって生じる経済的、身体的、精神的な問題のことです。50歳代の子どもが経済的や精神的理由で引きこもりになり、親の年金に依存していることがあります。そうした状況の中で、親の老化により健康障害が進行することで経済的や精神的に逼迫し、社会的孤立や時に家庭内暴力が進行する可能性もある非常に根深い社会問題です。
ここではこの中高年の引きこもりや8050問題について書いています。
目次
「8050問題」とは
8050問題とは、80歳代の親が50歳代の子供の経済的支援や生活の面倒をみているものの、この先親のさらなる高齢化や介護負担とともに共倒れとなることが懸念されている社会問題を指します。
引きこもりの原因は、精神疾患・離職・経済的貧困など将来の生活に見通しがたたないことが多いです。引きこもりは家庭内の閉鎖社会での出来事であるがゆえ、第三者による介入が遅れ事件に発展するまで顕在化しないこともしばしばです。
解決の糸口として、厚生労働省の推進するひきこもり地域支援センターやNPO法人などの引きこもりに対する支援活動にカウンセリングを受けるなど第三者による協力や介入が状況改善に有用です。趣味やカウンセリングで引きこもり側の精神的負担を軽くすることは大切なものの実際には難しいケースの方が多いのが実情です。
また一般的な引きこもりについての詳細は以下のページをご覧ください。
現在の引きこもり人口
2019年3月に内閣府が発表した調査報告から、全国の市町村に40~64歳までの全4235万人のうち、推定61.3万人(約1.45%)が引きこもりと推測されています。 従って、100人あたりに1-2人程度は、引きこもりが存在することになります。
尚、2016年の15~39歳に対する動揺の調査では、約1.57%が引きこもりでした。
8050問題の原因
8050問題の原因は、「50歳代側」の経済問題です。息子や娘が、高齢の親の年金に依存しないと生きていけない経済的状況なのです。近年の不況などもあいまって、貧困による社会的孤立は進行し、長期化した結果、引きこもりになります。
幼少期の学校や職場などでの人間関係のつまづき・家庭環境・発達障害・知的障害によりストレスを感じやすい気質になっているとの関連の報告もあります。寿命の延長・経済的不況による就労の制限・生涯未婚率上昇・ストレス社会などはこの問題の深刻化に拍車をかける一因になります。
8050問題が引き起こす深刻な未来像と対策
8050問題の抱える未来像として、親世代と子どもとの生活の中で、子ども側の親への屈折や歪んだ感情や、自己への内包した怒りやフラストレーションが残酷な事件を引き起こすケースも散見されます。高齢者虐待・親族間での殺人に繋がり顕在化するケースもあとを立ちません。
経済的に自立していない引きこもりの息子が両親の介護を担うことは不可能で、ヘルパーやケアーマネージャーとの連携が大切です。また8050問題の引きこもり家庭への、悪質な詐欺・勧誘被害の報告もあり、深刻化する前に身近な親族や第三者機関へのサポート依頼なども大切でしょう。
中高年の引きこもりや8050問題からの脱出
(1)脱出にむけた支援
就労ありきの姿勢でのサポートは、逆効果になるケースも少なくありません。特に引きこもりの背景に幼少期のトラウマや発達障害などがある場合、カウンセリングで生きづらさを感じ始めた時期などを話し合うことが心理的負担の軽減の糸口になります。また、趣味や特技を就労につなげてあげる提案なども、経済的不安解消に向けて有用でしょう。
(2)社会保障制度の利用
80歳代側の身体的な状況をサポートするために介護保険を導入し、50歳代側を経済的な支援策として生活保護等を取り入れる両面からの制度利用が必要です。8050問題を抱える家族は、家族だけでは公的なサポートを申請することが難しく、時にはNPO法人や地域のサービスセンターにも相談することを身近な人が提案してあげることも大切です。
早期発見や早期介入が脱出への近道です。
8050問題についてのよくある質問
8050問題は、40代後半から50代の親が、20代後半から30代の子どもと共に生活し、その子どもが引きこもり状態になっている現象を指します。これには親が老後の生活や健康に不安を抱え、社会的な孤立や精神的な健康問題が深刻化するという問題が含まれます。この問題が長期化すると、親の介護問題や経済的な困難が生じることがあり、家族全体に多大な影響を与える可能性が高いです。
8050問題の主な原因は、家族の生活環境や子ども自身の心理的な要因、社会的な問題などが複合的に影響し合っていることです。具体的には、経済的な困難や就職の難しさ、過度の親の保護や過干渉、精神的な健康問題(うつ病や不安症など)、社会的な孤立感やコミュニケーション能力の低下が関係しています。さらに、引きこもりの状態が長引くことで、家族全体の精神的な疲弊やストレスも増加し、問題が深刻化することがしばしば見受けられます。
8050問題の兆候としては、子どもが長期間自室にこもって外出を避け、家族との交流が減少することが挙げられます。また、生活リズムの乱れや就寝・起床時間が不規則になる、食事を家族と一緒に取らなくなる、テレビやインターネットに依存し過ごす時間が増えるなど、社会的な孤立が進むサインが見られます。これらの兆候に早期に気づくことが、問題解決への第一歩となります。親が関心を持ち、関わりを持つことが重要ですが、無理に強制しないことも大切です。
8050問題に対処するための方法は、専門的なサポートを早期に受けることが重要です。カウンセリングや心理療法を通じて、子どもの心のケアを行うことが効果的です。また、家族内でのコミュニケーション改善も大切で、非難や責め合いを避け、理解と共感の姿勢で接することが求められます。生活リズムを整えるために、規則正しい生活を心掛け、外出や社会活動を少しずつ促進することも有効です。地域の福祉機関や行政が提供する支援プログラムを活用することも重要です。
家族のサポートは、理解と共感を示すことが基本です。非難や強制を避け、子どもの気持ちに寄り添う姿勢が大切です。また、家族全体でコミュニケーションの改善を図り、一緒に過ごす時間を増やすことも効果的です。必要に応じて、専門家からのアドバイスを受けることや、支援機関との連携を進めることも考慮すべきです。家族自身もストレスを感じることがあるため、サポートを受けることが大切です。
8050問題に関しては、地域の保健所や福祉事務所、精神保健福祉センターなどが相談窓口として利用できます。また、引きこもり支援を行っている民間団体やNPO法人も多く、専門的な支援を提供しています。インターネットで「引きこもり 支援窓口」を検索すれば、各地の情報を得ることができます。自治体によっては、訪問支援や地域のカウンセリングサービスが利用できる場合もありますので、まずは地域の福祉機関に問い合わせることをおすすめします。
8050問題の予防策としては、子どもの自立を支援することが基本です。家庭内での過保護や過干渉を避け、子どもの自主性を尊重し、社会的なスキルを身につける機会を提供することが大切です。また、家族全員がコミュニケーションを取ることや、一緒に外出するなどの社会的な活動を積極的に行うことが効果的です。子どもの気持ちを理解し、無理なく社会とのつながりを持たせることで、引きこもり予防に繋がります。
8050問題が長期化すると、親の健康に悪影響を及ぼすことがあります。親自身が高齢化し、子どもの介護や生活支援が必要になった際、精神的および身体的に非常に負担がかかるため、健康問題が深刻化する可能性があります。また、子ども側も引きこもりが続くことで、社会的なスキルが低下し、仕事に就くことが難しくなる場合があります。結果として、社会的な孤立が進み、さらに心理的な問題が生じることがあります。
最新の研究によると、引きこもりの年齢層が高齢化し、親の介護問題も絡むケースが増えていることが示されています。具体的には、引きこもりの当事者が40代や50代に差し掛かるケースが増え、親の高齢化に伴い、支援がますます必要になっています。また、引きこもりの期間が長期化することで、精神的な健康問題や生活困窮、就職難などが深刻化する傾向も見られています。
政府や自治体は、引きこもりの支援に対してさまざまな取り組みを行っています。例えば、専門的な訪問支援やカウンセリングサービス、就労支援プログラム、地域の福祉機関との連携などが挙げられます。さらに、引きこもり当事者が社会復帰を目指せるようなプログラムも提供されています。地域によっては、親向けのサポートや介護支援が提供されている場合もあり、支援のネットワークが広がっています。
中高年の引きこもりや8050問題についての相談やカウンセリング
8050問題は、第三者による早期発見・早期支援の介入が大切です。現代の日本のストレス社会の生きづらさは、一旦レールからそれてしまうと戻りにくいことです。自己防衛のために引きこもる可能性は誰にでもあり特別なことではありません。
8050問題は、このまま社会保障やサポートが不完全なまま進行すると「9060問題」に発展していくでしょう。その多くのケースで、閉鎖された家庭という小さな社会で当事者間のみでは解決できないことの方が多く、自分にあったサービスを第三者に協力を求める勇気が大切です。
こうしたことを食い止めるために、専門家に相談し、カウンセリングを受けることはとても大事です。当オフィスでも中高年の引きこもりや8050問題についての相談やカウンセリングをしています。ご希望の方は以下のページからお問い合せください。