カウンセラーからみたHSPについて
HSPとは感覚が非常に過敏で、敏感で、繊細な気質をもつ人をさします。一般の方を中心にこの概念が広まっていますが、臨床心理士や公認心理師などの専門的な心理職はHSPをどのように見ているでしょうか。
ここではHSPの転移、医療との連携、HSP概念の科学的妥当性の点について書いてみたいと思います。
1.HSPの転移
そもそものHSPについての詳細は以下のページをご覧ください。
転移とはクライエントからカウンセラーに対して向けられる、感情、思考、態度、行動、空想、悩みなどを指します。HSPは繊細さや敏感さといった気質をもつゆえに、ちょっとした刺激で感情・思考・行動が強く出てきます。そして、それが目の前にいるカウンセラーに向けられることは当然といえば当然です。
そして転移が強くなると、それが刺激となり、最初のカウンセリングの目的を忘れてしまい、カウンセラーに対する思いばかりが強く出てしまいます。時には恋愛的な感情を向けることもあります。反対に、敵意を向けることもあります。そうしてカウンセリングの中でカウンセラーとクライエントとの関係がゴチャゴチャしてしまいます。
転移はどんな人間関係にでも起こるので、転移が起こっていること自体は問題ではありません。カウンセリング関係だからこそ転移は強くなります。そして、HSPだからこそ、さらに転移は強くなります。この強さが問題になってきます。
精神分析では転移の分析を通してカウンセリングを行います。なぜなら転移の中には各個人の重要な事柄が含まれるからです。重要な事柄とは、幼少期における養育者との関係やそこでの傷つきです。さらには、対人関係の原型も転移には含まれます。
ですので、転移に気付き、転移を通して自分自身を知っていきます。そして、幼少期からの関係や傷つき、原型、悩みなどを修正していきます。
2.HSPの精神医学的治療と連携
HSPと混同される精神障害は多数あります。発達障害、不安障害、愛着障害、パーソナリティ障害などです。
そのため、HSPではなく、特定の精神障害であったり、精神症状があったりする場合には、医療機関で治療を受ける必要があります。
多くは薬物療法になります。薬物療法によって症状をやわらげ、コントロールし、生活の質を向上させることができます。精神的に落ち着くことによって、じっくりと自分に向き合うようなカウンセリングを受けることができるようになります。
そのため、医療機関を紹介したり、連携したりすることもカウンセリングでは行うことがあります。
3.HSPの概念の科学的な妥当性の低さ
HSPの概念は主には創始者のアーロン自身の体験から導き出されました。そして、HSPの概念を作る過程でいくつかの研究を行いました。しかし、アーロンの研究を調べてみると、その研究手法が極めて杜撰であることが分かります。
例えば、HSPかどうかを分ける診断テストの作成では、HSPと自称する人を募り、HSP自称者と一般人との間で結果の比較をして、診断テストの項目を作成していました。当然、HSPを自称する人がHSPであるという保証はありません。
他には、HSPを自称する人に電話インタビューをして、HSPの特徴が多く見られたと結論付けています。これも当然、HSPの自称なので、本当にHSPかどうかは分からないし、自称だからこそ、HSPに合うような回答をしているだけかもしれません。
アーロン自身もこうした研究手法の杜撰さについて認めており、科学的に厳密ではないところもある、と記載しています。
HSP概念が科学的に厳密ではなく、妥当性がないため、医学や心理学のアカデミックな世界では研究テーマとして取り上げられることはあまりありません。もちろん、HSPが診断基準に含まれることもありません。
また、HSPの特徴をよく見ると、ほとんどが誰でもが当てはまるような特徴があります。どんな人でも1つや2つは当てはまります。そのため、誰でも彼でもHSPであるかもしれないと思ったり、HSPとは関係のない問題や困難をHSPの問題であるかのように間違って受け取られてしまうことが起こっています。
4.HSPについてのトピック
HSPについてのいくつかのトピックです。HSPについてさらに詳細に知りたい方は以下をご覧ください。
5.スーパービジョンの申し込み
HSPは新しい概念であるため、課題も多く、また難しい問題をもっています。そのため、カウンセリングもうまくいかなかったり、行き詰ってしまったりします。
そうした時には経験のあるカウンセラーに指導や助言をしてもらうことも必要でしょう。
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