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宗教二世(二世信者)の苦しみとは

安倍晋三元首相を銃撃し、殺害した山上徹也は宗教二世であり、そのことの問題が取り沙汰されています。殺人を犯すことの理由にはなりえませんが、それとは別として、宗教二世の問題は非常に大きいものと思われます。

この記事ではその宗教二世の問題と、彼ら彼女らの悩みと苦しみについて書きます。

1.宗教二世とは

骸骨と泣いている女性

宗教二世(二世信者、信仰二世)とは、親が特定の宗教を信奉しており、その宗教儀式や宗教活動の影響によって、子どもの養育、発育、発達、成長に著しい障害が発生することを言います

私の臨床経験から言うと、宗教二世の問題を主訴にして来談された方はそれほど多くはなかったです。しかし、一方で、様々な主訴の背景に宗教二世の問題があり、それが現在の問題に影を落としていることはそれなりにありました。

各宗教や各家庭によって相当異なるかとは思いますが、中には心理的虐待、ネグレクト、マルトリートメントのような惨事になっていた方はそれなりにいるようです。特に幼少期には教義の関係からか不適切な養育あったりするとアタッチメントの問題は発生していそうです。さらに思春期以降は主体性や自立性が課題になりますが、家族や宗教の問題により、適切にそれが成長・発達できないこともあります

こうしたことに疑念を抱き、反発したり、反抗したりできる人は健康な自我を持ち合わせているともいえるかもしれません。

2.宗教二世とその親とのディスコミュニケーション

ふさぎこむ母親と寝転ぶ子ども

しかし、時として、宗教の問題は親と子の健全なコミュニケーションを破壊します

例えば、子が親に対してパーソナルな語りかけをしたとしても、親が宗教の代弁をするような一般論しか言えなかった時、子はディスコミュケーションを感じ、手応えのない会話であると体験するでしょう。子の健全な異議申し立てに対して親がパーソナルな対応をしないと、子は失望してしまいます。それが後々の対人関係に影を落とすことは容易に想像します。

また、宗教の儀式や活動を優先する親は時として子を二の次にしてしまいます。それが行き過ぎるとネグレクトでしょう

それだけではなく、親が子に宗教の儀式や活動を幼少期から強要することで子の健全な遊びが阻害されます。通常よくあるような他の児童との楽しい遊び時間を持つことができない場合もあります。

さらには親に強要される儀式や活動に疑念を抱きながら、それを口にすることができず、ただただ従うことしかできないと、子は主体性を持つことができなくなってしまいます。

3.宗教二世の孤独と孤立

スマホを使う母親と泣く子ども

こうした宗教二世の悩みと苦しみは、宗教に関わりをあまり持たない一般の方には理解できないかもしれません。それゆえに、宗教二世は自身の家族や宗教についてあまり誰にも話しません。そのことで宗教二世は孤独と孤立に陥ってしまいます。核心を語らないままの表面的な人間関係は人への不信に至らせるでしょう。もしかしたら、このような思いは死ぬまで誰とも共有されないままになることもあります。

彼ら彼女らは家族と宗教について心的な葛藤を抱えて生きていかざるをえませんが、このように、時として幼少期からのアタッチメントの問題から様々な生活上の困難や精神的な病いに悩まされてしまうことがあるようです。このことが宗教二世を主訴にしてはいなくても、背景にそれらが多大な影響を及ぼしている、ということになりますし、そのため、精神科を受診したり、我々のような臨床心理士に相談されたりします。

家族や宗教の問題についてどのように取り組むのかは各人によりますが、多くの場合には家族や宗教と距離を取り、割り切り、自分の人生を生きる方向に行くことが多いように思います

4.疑念を持たない宗教二世の病理

走る男女

宗教二世の問題で我々に相談する人が多いのか少ないのかは分かりませんが、家族や宗教に疑念を持たず、親の宗教アイデンティティを疑念なく取り入れて、親と同様に宗教に同一化して生きていく人もいるでしょう。宗教によって違うでしょうが、宗教内のコミュニティに抱えられている人もいます。

むしろ、親や宗教に疑念を持たず、非主体的で、非自立的に生きて、葛藤を排除するような生き方になってしまった方が楽かもしれません。それが幸せで幸福かどうかは分かりませんが

それが幸せかどうかは価値観の問題なので、価値判断を下すことはできませんが、その生き方が主体的で自立的かというと疑問にも思います。

フロイトは宗教を防衛や病理として理解しました。その理解が正しいかどうかは分かりませんが、一部では妥当な側面もあるでしょう。

フロイトの宗教についての精神分析については以下のページをご覧ください。

5.宗教二世の問題について相談する

老婆

このように宗教二世の苦悩と苦痛は非常に強いものです。もちろんだからといって破壊的な行為をすることを理由にはなりえません。しかし、この宗教二世の問題の受け皿についてもう少し何かあればとは願います

(株)心理オフィスKはカウンセリングという支援で、宗教二世をサポートすることができます。宗教二世の問題やそれから関連する様々な困りごとや精神的な悩みや苦しみについて相談したい、カウンセリングを受けたいという方は下の申し込みフォームからご連絡ください。