愛着障害の人の恋愛:「恋人がそっけない」という悩み
普段は親しく、いつも尽くしてくれた恋人が突然そっけなくなると、嫌われているのではないかと悩みを抱く人もいます。恋愛関係で恋人とうまく心の距離を保てないと悩むとき、その背景には愛着障害が潜んでいる可能性があります。
本記事では、愛着障害をもつ恋人とのトラブル例、愛着障害をもつ恋人との付き合い方について解説します。
目次
1.人間関係と愛着
愛着とは両親などの養育者との情緒的な絆であり、親子や家族関係をはじめ、友人、恋人といった親密な人間関係を形成・維持していくために重要な役割を果たします。幼少期に適切な愛着形成が行われていないと、大人になってからの人間関係を極端に避けたり、過度に依存してしまったり不安定な人間関係に苦しむことが多いと言えます。
成人後でも愛着の問題と向き合うことは可能ですが、この問題に気づかないまま恋人関係に苦労し続ける人も少なくありません。
いつも良い子を演じてしまったり、他者を信用できず見捨てられ不安を感じたりして恋人を振り回してしまう場合、性格や環境等の要因だけでなく不安定な愛着形成の問題があるかもしれません。さらには愛着障害といわれるようなものにもなってしまうこともあります。
愛着障害については以下のページをご覧ください。
2.恋人関係に潜む愛着障害のトラブル
付き合いが長く親密な関係である恋人から理由もなく突然そっけなくされると、誰もが不安を感じやすいでしょう。心当たりがないにも関わらず恋人との関係がうまくいかない背景には、愛着障害が潜んでいる可能性があります。
以下に、愛着障害を抱える恋人関係で生じやすいトラブル例を3つ挙げるため、現在恋人との関係に困っている方は参考にしてみてください。
(1)極端な対人関係
幼少期に両親などと安定した愛着を形成できず、不安定な愛着スタイルを抱えている人は極端に恋人を避けてしまったり、反対に過度に近づきすぎてしまったり極端な対人関係をとりやすくなってしまいます。
愛着障害の人は他者に対して好意や不満、嫉妬等多くの感情を向けて葛藤してしまいます。そのため、愛する恋人が甘えようと近づいてきても感情を整理しきれずに断ってしまい、恋人に不安や誤解を与えてしまいやすいでしょう。愛着障害の人も、恋人に近づきたいけれど一定の距離感も欲しいと葛藤しやすいと言えます。
また、愛着障害の人は「自分が愛されているか」という感覚に敏感であり、見捨てられ不安も強い傾向があります。自分への愛情を確認するため恋人に無理なお願いをする等「試し行動」で恋人を困らせるトラブルも特徴的です。本人は、試し行動が人を困らせる行為だと分かっていても愛着の不安定さから止められず、恋人が応え続けてしまうと共依存的な関係に発展してしまうケースもあります。
(2)情緒的共有の困難さ
愛着障害の人は感情のコントロールが苦手であり、過度に感情を抑制したり、カッとなったりしやすい特徴があります。恋人のことを信頼できずに相手の反応を窺いすぎて何も意見しない人や、自分に自信が持てずに高圧的な態度をとることで恋人を繋ぎとめようとする人もいます。
「嫌われたらどうしよう」と恋人関係にヒビが生じることを恐れて情緒的な共有ができない問題も考えられます。気持ちや本音を言い合えない関係性が続くと恋人を不安がらせてしまうだけでなく、愛着障害を抱える人は恋人がいるのに孤独感やで空虚な感覚を抱きやすいでしょう。
恋人に甘えることができず、不機嫌な八つ当たり等で恋人をコントロールしようとしてしまうケースもあります。
(3)他の異性と関係をもつ
愛着障害の人の試し行動の1つとして、恋人以外の異性と関係をもってしまう問題もありえます。
愛着形成が不十分な場合、自分が大切にされた感覚が乏しく、自分を大切にできない傾向があります。そのため、自分を求めてくれる他の異性に流されたり、現在の恋人の愛情を試そうと浮気に走ったり、中には衝動的に性的な関係をもってしまうケースもあるでしょう。
他者とつながることを恐れてしまい、恋人と愛着が形成されることを避けてしまう背景が考えられます。
3.愛着障害をもつ恋人との付き合い方
愛着障害をもつ彼氏や彼女との関係は、愛情を確かめる試し行動が多いため交際に苦労しやすい可能性があります。過度な要求に応え続け、親代わりをして尽くしても、愛着障害の恋人との関係は改善しないでしょう。
そこで、愛着障害をもつ恋人との付き合い方を紹介します。
(1)ネガティブさを受け止める
愛着障害の人は恋人と深くつながりたい気持ちをもちながら、一方で親密になることを避けてしまう不安定さがあります。恋人に対して不安や不満、嫉妬、愛情等多くの感情を向けながらそれらを抑制して、表面上はニコニコする関係を保ちやすいです。
愛着障害の恋人と向き合うには、ネガティブな感情を共有し受け止める関わりが大切になります。愛着障害の人は情緒的な共有が困難な特徴もありますが、恋人関係での不安や心配、悩み等には寄り添い共感する付き合いが安心感につながると言えるでしょう。他者のネガティブな感情を受け止めることはエネルギーのいる作業でもあるため、無理のない範囲で向き合ってみましょう。
(2)互いに関係性について話し合う
愛着障害の人は自分のこと、恋人とのこれからのことなど、自己決定することが苦手であり、他者依存的な特徴があります。試し行動を受け入れてばかりでは自分が傷つけられてしまったり、心が疲れてしまったりするため、愛着障害の恋人の自立を促すことも重要です。
愛着障害の恋人がしがみつくような依存的な関係を維持していては、お互いに不安な関係性が続いてしまいます。恋人への好意を伝えると共に、カッとなって怒る、無茶なわがままを言う、急にそっけなくなる等の行動をされることは困ることも話し合い、どんな関係が望ましいかを確認し合ってみましょう。
恋人同士で関係性に向き合うことで「試さなくても大切にしてもらえるんだ」という感覚をもてるようになると安心感が生まれるようになります。愛着障害の恋人を自立させるために突き放すのではなく、恋人と一緒に安心できる関係性を模索する過程が必要でしょう。そして、互いに関係性を築いていくことが恋人との愛情の育みにもつながるのでしょう。
4.愛着障害のトピックについて
愛着障害についてのいくつかのトピックです。さらに詳細に知りたい方は以下をご覧ください。
5.愛着障害の恋人のことについて相談する
愛着障害の人が恋人関係において起こりえることと、その対処法について書きました。愛着障害の人の言動に振り回されてしまうこともあるかもしれませんが、それだけ気持ちが不安定で、不安になっているからだと理解できると良いかもしれません。
しかし、なかなか向き合うことが難しい場合も多いので、そういう時には臨床心理士や公認心理師といった専門家に相談すると良いでしょう。
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