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公開:2019-11-08 更新:2019-11-10

HSP/HSC(The Highly Sensitive Person/Child)(敏感すぎる人)のカウンセリング

目次

  1. HSP/HSCとは
  2. HSP/HSCの特性
    1. 処理の深さ(Depth of processing)
    2. 刺激の受けやすさ(Overstimulated)
    3. 情緒的な反応と高い共感性(Emotional reactivity and high Empathy)
    4. 些細な刺激に対する感受性(Sensitivity to Subtle stimuli)
  3. HSP/HSCのチェックリスト
  4. 他の障害と混同されるHSP/HSC
    1. 発達障害(自閉スペクトラム)
    2. 発達障害(ADHD)
    3. PTSD
    4. 不安障害
    5. 愛着障害
    6. パーソナリティ障害
  5. HSP/HSCの克服
    1. HSP/HSCが日常の中で自身で行えること
      1. 活動と慣れ
      2. HSP/HSCの睡眠
      3. 安全基地を持つ
      4. 距離をたもつ
    2. HSP/HSCの周囲の人が行えること
      1. HSP/HSCの特性を知る
      2. HSP/HSCの良いところを褒める
      3. HSP/HSCをそっと見守る
      4. HSP/HSCとの穏やかなコミュニケーション
  6. HSP/HSCのカウンセリング
    1. HSP/HSCの傷つきに対するカウンセリング
    2. HSP/HSCの対人関係に対するカウンセリング
    3. HSP/HSCの人生の棚卸し
    4. HSP/HSCから脱却
    5. HSP/HSCの転移
    6. HSP/HSCの精神医学的治療と連携
  7. HSP/HSCの課題と問題
    1. HSP/HSCの概念の科学的な妥当性の低さ
    2. HSP/HSCの誤診
    3. HSP/HSCがアイデンティティになってしまう
  8. 終わりに

1.HSP/HSCとは

 HSP/HSCとはThe Highly Sensitive Person/Childの略で、日本語では過敏すぎる人、敏感すぎる人、繊細な人、動揺しやすい人、感受性の高い人、などと訳すことができます。元々はアメリカのユング派心理療法家のエレイン・N・アーロン(Elaine N.Aron)が言いだしたある特定の一群の人たちについての研究から出てきました。

 HSP/HSCは、ちょっとした物音や出来事などに強く反応してしまい、それによって苦痛や問題が生じてしまう人たちを指します。ただし、これは精神医学的な診断ではなく、障害でも、疾患でも、疾病でもありません。ある特性を表した心理学的な概念と言えます。

 HSP/HSCの成り立ちですが、アーロン自身が些細なことに過敏に反応してしまう特性を持っており、そうしたことに長年苦しんできていたようです。その後、心理療法家になったアーロンが様々なクライエントと出会う中で、同様の特性を持つ人と多く会い、その中でHSP/HSCが概念化されていきました。

2.HSP/HSCの特性

 HSP/HSCには大きく分けて4つの特性があると言われています。そのそれぞれの頭文字をとって「DOES」とアーロンは表現しています。こうした4つの特性はもちろん健常者にもありますが、特にHSP/HSCはこれらが強いと言えます。そして、こうしたことによって非常に苦痛を感じ、時には生きることの困難さを抱えてしまいます。

(1)処理の深さ(Depth of processing)

 HSP/HSCは感覚的な刺激を強く、深く受け取り、処理する傾向があります。そのため、長い時間考えたり、物事を深く掘り下げて考えたり、生真面目に受け取ったりします。

(2)刺激の受けやすさ(Overstimulated)

 人は無意味な刺激や過剰な刺激があると心や意識のフィルターを通過させず、あまり感じないようにします。そして、重要な事柄のみキャッチし、把握します。しかし、HSP/HSCはこうしたフィルターが弱いため、全ての刺激が心の中に入り込んできてしまいます。そのため、一度にたくさんの情報を処理しなければならないので、そのことで疲れてしまったりすることもあります。

(3)情緒的な反応と高い共感性(Emotional reactivity and high Empathy)

 感情や情緒が揺さぶられやすく、強く反応してしまいます。人の考えや気持ちを察知し、同情や共感を強くしてしまい、相手に入り込んでしまいやすくなります。そのため、人との関係に巻き込まれたり、巻き込んだりしてしまい、そのことで人間関係のトラブルに発展してしまうこともあります。反面では、芸術や文化に強く惹かれ、感動することができたりします。また人の傷つきを理解しやすいため、人に対して優しく接したりすることもあります。

(4)些細な刺激に対する感受性(Sensitivity to Subtle stimuli)

 刺激をキャッチする五感の感度が非常に強く、通常であれば知覚できないような感覚をもキャッチしてしまいます。そして、キャッチした感覚を長い時間にわたって保持してしまいます。そのため、大きな音や騒がしいところでは非常に苦痛を感じたり、疲れてしまったりします。人から言われた些細な事柄にひどく傷つき、それを引きづり、後々にわたるまで覚えていたりします。

3.HSP/HSCのチェックリスト

 以下はアーロンが作成したHSP/HSCに関する23項目のチェックリストです。

  1. 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ。
  2. 他人の気分に左右される。
  3. 痛みにとても敏感である。
  4. 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる。
  5. カフェインに敏感に反応する。
  6. 明るい光や、強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などにに圧倒されやすい。
  7. 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい。
  8. 騒音に悩まされやすい。
  9. 美術や音楽に深く心動かされる。
  10. とても良心的である。
  11. すぐにびっくりする(仰天する)。
  12. 短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう。
  13. 人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)。
  14. 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ。
  15. ミスをしたり物を忘れたりしないよういつも気をつけている。
  16. 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている。
  17. あまりにもたくさんのことが自分の周りで起こっていると、不快になり神経が高ぶる。
  18. 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる。
  19. 生活に変化があると混乱する。
  20. デリケートな香りや味、音、音楽などを好む。
  21. 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している。
  22. 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる。
  23. 子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた。

(参考)ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ(講談社 2000年)外部リンク

 これらの項目のうち12個以上に「はい」と答えるとHSP/HSCである可能性が高いとアーロンは言っています。しかし、このチェックリストの作成方法や作成過程は厳密な手続きにのっとっておらず、科学的な妥当性と信頼性には欠けるところもあるようです。ですので、このチェックリストの結果は絶対ではありませんし、鵜呑みにする必要もありません。一つの参考程度に考えておく方がよいでしょう。

4.他の障害と混同されるHSP/HSC

 HSP/HSCは一つの特性ですが、それと混同しやすい障害や疾患がいくつかあります。それらについてここでは説明します。これらの他にもあるかもしれませんが、このあたりが代表例となります。こうした障害とHSP/HSCの見極めはとても重要です。

(1)発達障害(自閉スペクトラム)

 自閉スペクトラムは発達障害の一つに分類されています。コミュニケーションの障害、社会性の障害、想像力の障害の3つの症状や特性があります。自閉スペクトラムにはその他に感覚過敏の問題があり、些細な刺激を処理することができずパニックになったりします。また、強いこだわりがあるので、それらが深く物事を考えているように見えることもあります。そうしたところがHSP/HSCと非常に似通っているところです。

(2)発達障害(ADHD)

 ADHDは注意欠陥多動性障害のことであり、これも発達障害の中の一つです。ADHDには注意の問題、衝動性の問題、多動性の問題の3つがあります。注意がそれてしまいがちで、ちょっとした刺激に翻弄されてしまうことが多くあります。そして、何の考えもなしにパッと行動に移してしまいがちです。こうしたところがHSP/HSCと混同されやすいところです。

(3)PTSD

 PTSDとは心的外傷後ストレス障害のことです。トラウマに遭遇したことによって、その後、侵入体験(フラッシュバック)、回避、麻痺、否定的思考、過覚醒といった症状を呈します。トラウマにまつわるような出来事や認知に触れたとき、それを刺激としてパニックになったり、フラッシュバックを起こしたりすることがあります。また、覚醒水準が高く、常に神経を尖らせ、ピリピリし、些細な刺激に過度な反応を示してしまうことがあります。このようなことはHSP/HSCと似ているところでしょう。

(4)不安障害

 不安障害は精神疾患のうちの一つで、主に過度な不安とそれによる問題行動を呈するという特徴があります。不安のため覚醒度が高く、そのため些細な事柄にも過敏に反応してしまいがちです。過敏さや敏感さというところで非常に似ているといえるでしょう。

(5)愛着障害

 愛着障害とは、幼少期の愛着に問題があり、愛情形成がうまくできない問題を抱えています。他者の関心や考え、感情に敏感で、常にそれを気にしてしまい、見捨てられないように、攻撃されないように細心の注意を払ってしまいがちです。他者の言動に左右され、過敏に反応してしまいます。

(6)パーソナリティ障害

 パーソナリティ障害にもいくつかの分類があり、境界性、自己愛性、演技性などあります。いずれもパーソナリティやそれに伴う行動や対人関係の歪みにより、問題が発生します。パーソナリティ障害にも過敏性があり、特に他者との関係の中で非常に敏感になり、猜疑的になり、それによって感情がかき乱されます。そして、時には他者を巻き込んでしまうこともあります。こうしたところにHSP/HSCとの重複が見られます。

5.HSP/HSCの克服

(1)HSP/HSCが日常の中で自身で行えること

 HSP/HSCにはそれなりの困りごとや苦痛がありますが、では、そうしたことをどのように抱えながら、どのように生活をしていけば良いのでしょうか。正しいやり方や正解が必ずしもあるわけではないし、HSP/HSCといえ個別性が相当にあるので、これさえすれば全てうまくいくといった万能な方法はありません。それでも、中でもいくつかヒントになるようなことはあるので、自分自身に合う方法を試行錯誤で見つけていくと良いでしょう。

a.活動と慣れ

 まず、敏感さがあるからといって、刺激をさけ、安全にだけを気を付けて生活をすると、さらに刺激に弱くなっていきます。なので、反対に動き、活動し、趣味を見つけ、外に出ていくことが必要となってきます。慣れではありませんが、刺激に徐々にさらすことによって順応していくでしょう。ただ、これは鍛えればよいといった単純なことではありません。ただ苦痛を受けるだけでは無意味です。大事なのは、その活動に何らかの意味や面白さといったことを見出せていることが必要です。

b.HSP/HSCの睡眠

 過敏性のため、ちょっとした物音で起きてしまい、熟睡できないことがあるかもしれません。そして、寝れないことの不安からますます寝れないことが続くこともあります。そうした時、寝ることができないのであれば無理に寝ようとして覚醒度を高めず、ただ眼を閉じてじっとしているだけでも良いでしょう。それだけで周りからの刺激を減らすことができ、睡眠に近い意識状態にしていくことができます。そうしたことで日常の疲労を取ることも可能です。

 それでも不眠が強い時には不眠のカウンセリングで書いているようなことを実践したり、時には専門医に相談し、医学的な治療をしていくことを検討しても良いでしょう。

c.安全基地を持つ

 繰り返しますが、HSP/HSCは多大な刺激にさらされて、そのことによる苦痛と疲労は相当大きいでしょう。だからこそ、自分だけの安全基地を持つようにしましょう。疲れたとき、苦しいとき、傷ついたときには、安全基地に逃げ込み、自分を癒し、大事にし、エネルギーを蓄えましょう。これは引きこもりとは違います。引きこもりは長期にわたるものであり、それによって社会的な機会を相当損失してしまいます。安全基地は一時的で、部分的なものです。回復すれば、また安全基地から出て、頑張っていくのです。

d.距離をたもつ

 HSP/HSCは人の言動や感情に振り回されてしまうことが多いようです。そのために疲弊してしまうこともあるでしょう。人に対して冷たくするということではありませんが、他者は他者、自身は自身と境界をしっかりともち、区分けしていくことを意識しても良いでしょう。そして、他者に対してできることとできないことを見極め、できることはし、できないことはしないと割り切れると良いかもしれません。自己中心ではありませんが、自分の人生の方を大切にできると良いでしょう。

(2)HSP/HSCの周囲の人が行えること

 家族や恋人、友人がHSP/HSCの場合のことについて書いていきます。周囲の人間としてHSP/HSCに対してできることは多くあります。HSP/HSCを甘やかせるということではなく、適切な対応をすることでお互いに成長していきます。それらの方法のいくつかを挙げていきます。

a.HSP/HSCの特性を知る

 まず、何はともあれ、HSP/HSCの特性や特徴を知るということが一番大事でしょう。HSP/HSCとはどういう特性があり、どういう行動傾向があり、どういうことに弱みがあり、どういうことに強みがあるのか、といったことを理解することで見えてくることが多くあります。また、HSP/HSCならではの特徴だけではなく、個別性も関わってきますので、その人の個別的な性格や特徴も含めて理解できると良いでしょう。理解され、受け入れられるという体験はHSP/HSCだけではなく、どんな人でも多かれ少なかれ、心地よい体験となります。

b.HSP/HSCの良いところを褒める

 HSP/HSCは弱みもあれば、強みもあります。弱みだけを見てしまうと、改善させようとか頑張らせようとかいう意識になりがちで、それはどこか存在そのものを否定することにつながってしまいます。HSP/HSCの弱みや苦痛を見ないようにするという意味ではありませんが、敢えて強みに目を向け、頑張っているところや良いところを見つけ、積極的にそれを称賛し、評価し、伸ばしていくようにすると良いでしょう。それは自信にもつながり、さらに積極的な行動になっていくことでしょう。

c.HSP/HSCをそっと見守る

 HSP/HSCは刺激によって通常よりも疲労しがちです。そうした疲れてしまっているときには関わることを避け、そっとしておいてあげましょう。HSP/HSCは一時的にひきこもることにより、疲労を癒し、回復しようとしているのです。そっとしておくことは、ほったらかしにするということではありません。注意や関心は向けつつ、今どうしているのかは観察しながら、適切な時に声をかけるということをすることも見守る内に入ります。

d.HSP/HSCとの穏やかなコミュニケーション

 HSP/HSCと会話をしたり、コミュニケーションをしたりするときには、ゆっくりとしたスピードで、やわらかい口調で、端的に物事を伝えると良いでしょう。そして、HSP/HSCは他者の感情や気持ちに敏感で、時には被害的に受け取ってしまうこともあります。ですので、ある程度自己開示をし、こう思っているよ、とか、こんな風に感じているよ、とか、怒っているわけではないよ、といった思いや考えをHSP/HSCに率直に伝えると良いでしょう。感情的になってきつい言葉をぶつけたり、言っていることと行っていることがバラバラだったり、一度にたくさんのことを言ったりすると、HSP/HSCは混乱してしまいます。

6.HSP/HSCのカウンセリング

 HSP/HSCに対するカウンセリングで特徴的なことを挙げながら、HSP/HSCへのカウンセリングの進め方を書いていきます。

(1)HSP/HSCの傷つきに対するカウンセリング

 HSP/HSCは過敏性があるため、通常であれば傷つかないようなことでも傷ついてしまうことがあります。そして、それは時にはトラウマとなってしまうこともありますし、PTSDを発症することもあります。傷ついた出来事を些細なことと切り捨てるのではなく、大きな出来事であったと共有し、その苦痛に共感していくことは基本的な事柄として大切になってきます。

 その上で、トラウマやPTSDの治療に準じた方法を適用していくこともあります。EMDRを使い、トラウマそのものを処理していくことも有効ですし、TF-CBT(トラウマに焦点を当てた認知行動療法)を用いて、認知と行動を変容し、対処能力を向上させることもできるでしょう。

(2)HSP/HSCの対人関係に対するカウンセリング

 HSP/HSCは過敏さゆえに対人関係においてトラブルが生じることがあります。特に家族などの近親者との間でもいざこざになることも多いようです。それはHSP/HSCが他者の言動や感情に巻き込まれ、振り回されてしまいがちであることから当然起こりうることです。対人関係にもスキルが必要になってきます。SST(社会技能訓練)のようにスキルを学び、それを実生活に活かしていくことも可能でしょう。また、対人関係療法によって、人との関係を見直し、修正していくことで、問題そのものを解決していくこともできます。

(3)HSP/HSCの人生の棚卸し

 HSP/HSCによって、生きることや生活することに絶望し、自身の人生を否定してしまうようになっている場合もあります。それはこれまでの人生を振り返れば、分からなくもないかもしれません。しかし、過去の人生をすべて否定してしまうと、生きる希望もなくなってしまうでしょう。またHSP/HSCの言葉を否定するわけではありませんが、これまでの人生が本当に悪いものばかりだったのかどうかは分かりません。悪かったものを選択的に取り上げてしまっている可能性もないわけではありません。

 そのため、これまでの過去の人生を振り返り、あらたに見直し、別の側面がなかったのかを探求していく作業が必要になってくることもあります。HSP/HSCの問題だったのか、それとも関係なく個人の問題だったのかを区分けすることも有効でしょう。これは悪かった部分を否定するわけではありません。良い面も悪い面も両方取り上げ、自身の人生をあらたに捉えなおしていく作業となります。これは決して楽なことでも、簡単なことでも、楽しいことでもありません。時には苦しい局面を通過せねばならないかもしれませんが、取り組むだけの意義と意味はあると思います。こうしたことは精神分析的心理療法を通して取り組むことになるでしょう。

(4)HSP/HSCから脱却

 人によってはHSP/HSCであったと診断されることで安心するようです。なぜなら、これまでの苦痛や困難が説明され、理由がわかり、自分の責任ではないと免罪されたように感じるからでしょう。その効用は部分的には必要になるかもしれません。しかし、HSP/HSCという診断に安住し、全ての問題をHSP/HSCの責任にし、努力と行動を放棄してしまう方も中にはいます。そうなるとHSP/HSCという診断が成長の阻害してしまいます。

 HSP/HSCである私といった限定的で否定的なアイデンティティではなく、それらとは関係なく、私は私であるという健康なアイデンティティを形成していくことが大事になっていきます。HSP/HSCから離れ、その人らしい生き方をその人の個性の中で達成していく支援がカウンセリングでは求められます。

(5)HSP/HSCの転移

 転移というのは精神分析における専門用語です。これはクライエントからカウンセラーに対して向けられる、感情、思考、態度、行動、空想などを指します。HSP/HSCは過敏さゆえに感情や思考や行動が強く出てくることもあります。そして、それが目の前にいるカウンセラーに向けられることは当然といえば当然です。そして転移が強くなると、当初のカウンセリングの目的を忘れてしまい、カウンセラーに対する思いばかりが強く出てしまいます。時には恋愛的な感情を向けることもあれば、敵意を向けることもあります。そうしてカウンセリングの中でカウンセラーとクライエントとの関係がゴチャゴチャしてしまうこともあります。

 転移はどんな人間関係にでも起こるので、転移が起こっていること自体は問題ではありません。カウンセリング関係だからこそ転移は強くなりますし、HSP/HSCだからこそ、さらに転移は強くなります。この強さが問題になってきます。

 精神分析では転移の分析を通して治療を行います。なぜなら転移の中には各個人の重要な事柄が含みこまれているからです。重要な事柄とは、幼少期における養育者との関係やそこでの傷つきです。さらには、対人関係のテンプレートも転移には含まれます。ですので、転移に気付き、転移を通して自分自身を知ることで、そうした幼少期からの関係や傷つき、テンプレートを修正していく道が開けるのです。こうした転移の分析をカウンセラーと一緒に取り組むことで、非常に意義のあるカウンセリングとなっていきます。

(6)HSP/HSCの精神医学的治療と連携

 他の障害と混同されるHSP/HSCがあると上記に書きました。そのため、HSP/HSCの治療としてではなく、その混同された障害や疾患の治療を医療機関で受ける必要が出てくることもあります。また、障害ではなかったとしても、強い不安や抑うつ、不眠、衝動性などが出てきているのであれば、まずは精神医学的な治療を受ける必要があるかもしれません。多くは薬物療法になるでしょうが、それによって症状を緩和し、コントロールし、生活の質を向上させることができます。そして、そうした治療で精神的に落ち着くことによって、じっくりと自分に向き合うようなカウンセリングを受けることができるようになります。

 そのため、医療機関を紹介したり、連携したりすることもカウンセリングでは行うことがあります。

7.HSP/HSCの課題と問題

 最後にHSP/HSCの課題や問題点をいくつか挙げたいと思います。

(1)HSP/HSCの概念の科学的な妥当性の低さ

 HSP/HSCの概念は主には創始者のアーロン自身の体験から導き出されたものです。そして、HSP/HSCの概念を作る過程でいくつかの研究を行ったと書籍ではされています。しかし、アーロンの研究を調べてみると、その研究手法が極めて杜撰であることが分かります。

 例えば、HSP/HSCかどうかを分けるチェックリストの作成では、HSP/HSCと自称する人を募り、HSP/HSC自称者と一般人との間で結果の比較をして、チェックリストの項目を作成していました。当然、HSP/HSCを自称する人がHSP/HSCであるという保証はありません。他には、HSP/HSCを自称する人に電話インタビューをして、HSP/HSCの特性が多く見られたと結論付けています。これも当然、HSP/HSCの自称なので、本当にHSP/HSCかどうかは分からないし、自称だからこそ、HSP/HSCに合うような回答をしているだけかもしれません。

 アーロン自身もこうした研究手法の杜撰さについて認めているところがあり、科学的に厳密ではないところもある、と記載しています。

 HSP/HSC概念が科学的に厳密ではなく、妥当性がないため、医学や心理学のアカデミックな世界では研究テーマとして取り上げられることはあまりありませんでした。もちろん、HSP/HSCが診断基準に含まれることもありません。だからこそかもしれませんが、アカデミックな世界よりも、一般の方々の自己啓発本的な位置付けの中で広まっていったという経緯があります。また、HSP/HSCの特性をよく見ると、ほとんどが誰でもが当てはまるような項目があり、どんな人でも1つや2つはHSP/HSCの特性に当てはまったりもします。そのため、誰でも彼でもHSP/HSCであるかもしれないと思ったり、HSP/HSCとは関係のない問題や困難をHSP/HSCの問題であるかのように誤認してしまったりということが起こっているようです。

(2)HSP/HSCの誤診

 他の障害と混同されるHSP/HSCでも書きましたが、HSP/HSCは色々な障害や疾患と似通っているところがあります。そのため、何らかの障害や疾患であるにもかかわらず、部分的な特性がHSP/HSCと似ているからといって、HSP/HSCであると思いこみ、支援や治療が遅れてしまうことは極めて損失が大きいといえるでしょう。HSP/HSCとしてしまうことで、適切な治療が受けられず、障害が慢性化してしまい、治るものも治らなくなったり、治りづらくなったりしてしまいます。

 しかも、こうした誤診はHSP/HSCの「専門家」を自称する人ほど陥ってしまうことが多いようです。HSP/HSCを専門としているという偏った自負が病気の症状をHSP/HSCの特性としてしか見れなくなってしまうからかもしれません。また、HSP/HSCを専門とするということは他の疾患や障害について不勉強であるということを意味することもできるでしょう。こうしたところからHSP/HSCを専門にしている人よりも、満遍なくいろんな疾患や障害を扱っている人の方が誤診は少ないかもしれません。

(3)HSP/HSCがアイデンティティになってしまう

 「6.HSP/HSCのカウンセリングの(4)HSP/HSCから脱却」でも書きましたが、HSP/HSCであるかどうかは別として、様々な問題や困難をHSP/HSCであると捉え、自分自身はHSP/HSCなんだと確信してしまう人もいます。一時的にはHSP/HSCという理解を用いて、気持ちが和らぐこともないわけではないでしょう。しかし、HSP/HSCイコール自分自身であるとし、HSP/HSCがアイデンティティにまでなってしまうと話はおかしなことになってしまいます。HSP/HSCが自己理解や対処方法の道具ではなく、自分自身を小さく規定してしまう道具になってしまいます。そうなるとHSP/HSCの中に安住してしまい、成長や努力から大きく遠ざかってしまいます。問題が起こるとなんでもかんでもHSP/HSCのせいにし、自身が努力や成長をしないことの言い訳としてHSP/HSCを使ってしまいます。

 HSP/HSCには厳密な診断基準がなく、定義も曖昧だけにHSP/HSCであると言ってしまえば、HSP/HSCとなってしまいます。HSP/HSCという診断や概念にあまりとらわれない方が良いでしょう。

8.終わりに

 HSP/HSCについての定義やチェックリスト、特性、カウンセリング、問題点などについてまとめました。HSP/HSCに限らずどんな概念や診断でも同様ですが、そればかりに囚われるのではなく、一つの参考程度に考えておく方が無難でしょう。

 HSP/HSCのカウンセリングをご希望の場合には、こちらの予約申し込みからご連絡ください。また、臨床心理士や公認心理師などのカウンセラー・専門家の方でHSP/HSCのカウンセリングのスーパービジョンを受けたい方も予約申し込みからご連絡ください。


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