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感情がなくなり、麻痺してしまう病気とは

感情が死んでいく

感情がなくなり、麻痺してしまう病気にはどのようなものがあるのでしょうか。この記事では、解離現象と心的外傷後ストレス障害(PTSD)を中心に取り上げて解説します。

感情がなくなり、麻痺してしまう状態が病的なものである場合は、専門的治療や支援を早めに検討しましょう。カウンセリングによる支援も活用できます。

1.感情がなくなり、麻痺する原因

感情がなくなり、麻痺するのはなぜ?

あったはずの感情がなくなり、麻痺したように感じられる状態はなぜ起こるのでしょうか。ここでは覚醒水準の低下のあらわれと解離現象のあらわれの2つの見方を紹介します。いずれも、トラウマが関連するといわれる現象です。

(1)覚醒水準の低下のあらわれ

感情が麻痺したような状態は、覚醒水準の低下のあらわれかもしれません。

覚醒水準は外界にある刺激に対する感度や反応性の高さのことをいいます。人は通常、ほど良い覚醒水準を保って環境とかかわりますが、心身が脅かされる状況では覚醒水準をぐっと高め、注意力を研ぎ澄ませて危機に対抗します。

それでも対処しきれないほど危機が圧倒的なときは、覚醒水準を下げて対処することがあります。嵐が過ぎるのを待つように、感度や注意力を鈍らせ、反応性も下げて危機をやりすごすのです。

この覚醒水準を低下させる働きにより、感情が麻痺したように体験することがあります。

(2)解離現象のあらわれ

感情が麻痺したような状態は、「解離」と呼ばれる現象のあらわれかもしれません。

人は通常、「自分」という一貫したまとまりやつながりのある意識世界を持っています。意識や記憶、同一性、情動、身体感覚・知覚、運動は統合されており、過去、現在、未来は連続性をもちます。

しかし、心身の安全が脅かされるほど過酷な状況に置かれた場合、「自分」が壊れるのを防ぐためにその体験を「自分」から切り離すことがあります。体験を「自分」から切り離す現象は「解離」と呼ばれ、解離により感情が麻痺したような状態となることがあります。

(3)トラウマの影響

覚醒水準の低下も解離現象も、背景にトラウマが存在する可能性があります。

覚醒水準を著しく変化させることや体験を「自分」から切り離すことは、いずれも圧倒的な危機状況で身を守るための特別な働きです。この働きが危機を脱してからも生じる場合、災害や事故、長く反復された虐待などから負ったトラウマの存在が考えられます

感情が麻痺したような状態は、心の傷によるものかもしれません。

2.解離とは

解離現象について

ここでは解離現象についてもう少しくわしく触れます。解離のさまざまなあらわれ方とそれぞれに関連する病気を紹介し、健康な解離と病的な解離についても説明します。

(1)解離のあらわれ方と関連する病気

解離の表れ方は、心身の安全が脅かされる体験のうちのどの部分をどのように切り離すかによってさまざまです。「自分」から解離されるものと解離の表れ方の例、それぞれに関連する主な病気は以下の通りです。

解離されるもの表れ方(例)関連する主な病気
感覚・知覚特定の感覚・知覚のみが鈍くなる、触覚や痛みを感じない、目が見えない、声が聞こえない、などPTSD
情動体験からリアルな感覚が抜ける(離人とも呼ぶ)、自分が動いている実感がない、他人事のように感じる、自分が自分でないと感じるPTSD
現実感体験からリアルな感覚が抜ける(離人とも呼ぶ)、自分が動いている実感がない、他人事のように感じる、自分が自分でないと感じる離人感・現実感消失症、PTSD
意識意識全体が飛んで真っ白になる、刺激への反応が消え、ボーッとして意識障害のようになるPTSD
記憶受け入れがたい体験の記憶がない、いわゆる「記憶喪失」、特定の記憶が抜けたり、過去全ての記憶が抜けたりするPTSD、解離性健忘
運動歩けない、声が出ない、立てない、などの運動機能の麻痺変換症/転換性障害
行動理由なく家からいなくなり放浪し、その間の記憶がない解離性遁走
人格ひとりの中に複数の人格が共存し、交代であらわれる、いわゆる「多重人格」解離性同一症/解離生同一性障害、PTSD

上に挙げたように、感覚・知覚・情動の麻痺をはじめ、さまざまな解離のあり方と特に関連する疾患は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。

(2)健康な解離と病的な解離

解離現象そのものは誰もが備えるありふれたもので、すべてが病的ではありません。

たとえば、我を忘れて没頭する、授業中に別のことを考えていてうわの空になる、といった健康的な体験もありますし、思春期の自我のめざめとともに一過性の離人感が体験されることもあります。

しかし、深刻なトラウマなどの脅威にさらされると、病的な解離症状に発展する可能性があります。もともとは圧倒的な脅威から心身を守るための解離が平穏な日常でも繰り返し呼び起こされる場合、不適応的な反応となってしまうのです

3.感情がなくなり、麻痺してしまう病気とは

感情がなくなり、麻痺してしまう病気とは?

ここでは感情が麻痺したような状態が生じる主な疾患として、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と離人感・現実感消失症/離人感・現実感消失障害の2つを取り上げ、それぞれについて説明します。

(1)心的外傷後ストレス障害(PTSD)

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、強いトラウマとなる出来事にさらされた後、特有の心身の症状が現れる疾患です。

代表的な症状は侵入症状(再体験・フラッシュバック)、回避症状、過覚醒症状、認知と気分の陰性の変化の4つですが、離人感・現実感消失といった解離症状を伴う場合もあります。また、覚醒水準の低下がみられる場合もあります。

感情が麻痺したような状態としては、幸福や満足、愛情を感じられなくなったり(認知と気分の陰性の変化)、自分の感情を自分のものではないように感じたり(離人感)します。さらに、注意力の鈍さやぼんやりして活気がない(覚醒水準の低下)といった様子が見られる場合もあります。

(2)離人感・現実感消失症(離人感・現実感消失障害)

離人感・現実感消失症は、離人感と現実感消失のいずれか、または両方を持続的、反復的に体験する疾患です。

たとえば、まわりの世界は知的にとらえられるのに感情が伴わない、何を見ても感動できない、実感がわかない、自分の感情や行動に現実感がなく、嬉しい・悲しいといった感情が感じられない、動いているのは自分ではなくロボットのよう、などと体験されます。

こうした症状はうつ病や統合失調症などに伴うこともありますが、離人感や現実感消失が単一の症状として現れ、現実検討力も保たれているのが離人感・現実感消失症の特徴です

現実認識が失われないために体験への違和感があり、そのためにかえって強い不安を伴うといわれます。

4.感情の麻痺についての治療

感情がなくなり、麻痺してしまったら

感情がなくなり、麻痺してしまったら、どうすれば良いのでしょうか。ここでは専門的治療につながる目安と、回復に向けた治療や支援についてお伝えします。

(1)専門的治療につながる目安

感情が麻痺したような状態には健康的なものもありますが、病的な場合は自然治癒は難しく、専門的な治療が必要です。

感情が麻痺したような状態が一時的な体験であったり、苦痛や日常生活への支障がなかったりする場合は、治療の必要はないかもしれません。

ですが、症状が長くくり返されており、大きな苦痛や日常生活への支障が出ている場合は専門的な治療を検討しましょう。

(2)回復に向けた治療や支援

感情が麻痺したような状態に想定される病気の回復に向けては、以下のような治療や支援が行われます。

治療・支援支援の詳細(例)
安全な環境づくり解離を起こす刺激やストレス状況を探し、苦痛な刺激を取り除くなど調整する
薬物療法抗うつ薬、抗不安薬などを必要に応じて投与
心理療法精神分析、認知療法、行動療法など

カウンセリングなどの心理支援では、自分に起きていることの理解、過去の体験にまつわる感情の表現やマネジメントなどを通じて、本人が感情を含めた自己コントロール感を取り戻せる状態を目指します。

5.解離やトラウマについて相談する

感情がなくなり、麻痺してしまう病気について、解離現象とPTSDを中心に説明しました。

感情が麻痺したような状態には、健康的なものもトラウマの影響による病的なものも考えられ、病的な場合は早めの治療や支援が望まれます。回復への支援として、カウンセリングもご検討ください。

当オフィスでもこうしたことのカウンセリングを行っております。希望者は以下のボタンからカウンセリングのお申し込みをしてください。

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6.参考文献

【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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