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家族にイライラしてしまう病気とは

家族とは、長い時間を共に過ごす人間関係の1つであり、人間関係である以上様々な感情やストレスを感じることになります。

今回は、家族にイライラすることで家族関係がうまくいかない原因、家族へイライラする人に考えられる病気、対処法について解説します。

イライラするということ

手を突き出す女性

はじめに、「イライラする」、「怒る」という感情はネガティブなイメージを連想させやすいですが、必ずしも抑えるべき感情とは言い切れません。なぜなら、イライラや怒りは、べき思考や自我の防衛から現れる二次感情と考えられています

また、対人関係での些細なストレスから理不尽な出来事まで、人は日常生活でストレスに晒され続けているため、時にはイライラすることも仕方がないことです。

イライラしすぎてしまうことで家族とうまくいかなかったり、仕事や家事で力を発揮できなくなってしまったり、生活に支障が出ることで問題視されやすい感情と言えます

よくある相談の例(モデルケース)

10歳代後半 女性

Aさんは、物心ついた頃から両親に対して違和感を覚えることがありました。幼少期は母親が過干渉気味で、学校や友人関係、趣味にまで細かく口を出されることが多く、Aさん自身の意見があまり尊重されませんでした。一方、父親は仕事が多忙で家にいる時間が少なく、家庭内ではあまり会話がありませんでしたが、たまに家にいる時は厳しく叱責することが多く、Aさんは「家の中に自分の居場所がない」と感じることが増えていきました。

中学生になってからは、思春期特有の自立心が芽生える一方で、母親の干渉は弱まらず、「〇〇したら?」「△△しなさい」と言われることが多く、反発する気持ちが強くなりました。父親に関しても、口数は少ないものの、成績や生活態度に対して急に厳しく言われることがあり、Aさんは理不尽さや苛立ちを感じるようになりました。次第にAさんは家族と距離を置くようになり、自室にこもる時間が増えましたが、その一方で孤独感や不安感も募るようになりました。

高校に進学すると、人間関係のストレスや進路への不安も重なり、家に帰ると両親の些細な言動にも強いイライラを感じるようになりました。「どうしてそんな言い方をするのか」「私のことを全然わかってくれない」という思いが強まり、ついきつい言葉を返してしまうことも増えていきました。その後、Aさんは体調を崩すことも多くなり、学校を休みがちになった時期もありました。

Aさん自身も「このままではいけない」と感じ、母親の勧めで心療内科を受診しました。医師からは「ストレスによる自律神経の乱れ」と診断され、しばらくは睡眠導入剤や安定剤を処方されることになりましたが、根本的な問題解決には至りませんでした。そこで、医師の勧めもあり、カウンセリングを受けることになりました。

カウンセリングでは、まずAさんの生育歴や家族との関係についてじっくりと話を聞くことから始まりました。Aさんは「親の期待に応えなくては」「でも本当は自由に生きたい」といった相反する気持ちを抱えていることに気付きました。カウンセラーは、Aさんの気持ちに寄り添いながら、イライラの背景にある「自分らしくいたい」という思いと「家族に認められたい」という思いが葛藤していることを一緒に整理していきました。

数ヶ月のカウンセリングを経て、Aさんは「親に言いたいことは言ってもよい」「自分の感情を否定しなくてもよい」と思えるようになり、少しずつ両親との距離の取り方やコミュニケーションのコツを学んでいきました。その結果、以前ほど両親に対して強いイライラを感じなくなり、自分の気持ちを整理して伝えることができるようになったことで、家庭内の雰囲気も徐々に和らいでいきました。

家族にイライラしてしまう原因

怒っている女性

イライラは時に仕方のない感情であり、友人や職場、突然の出来事等の日常生活全般で感じうる感情ですが、その対象が家族になる場合もあります。家族にイライラしてしまう原因として、例えば以下のような要因が挙げられます。

  • 家族から虐待や差別的な態度等の不快な体験を受けた
  • 家族が不安定であり、面倒を見ることが多かった
  • 家族が過干渉すぎる
  • (子どもの場合)思春期による反抗期
  • 言いたいことを言い出せない等の本人の性質  など

他の要素も考えられますが、いずれも家族と本人による相互的なコミュニケーションが不十分であることが関係しているでしょう。

上述した要因の一例では、慢性的にイライラすると考えられます。

Aさんの場合、家族、特に両親に対してイライラを感じる原因は、幼少期からの母親の過干渉や父親の厳しさ・不在感が大きく影響していました。母親から自分の意見を尊重されずに細かく指示されることで、Aさんは「自分の気持ちや考えが無視されている」と感じていました。一方、父親とは会話が少なく、突然厳しく叱られることもあり、安心して過ごせる家庭環境とは言い難い状況が続いていました。こうした家庭環境の中で、思春期以降は自立心の高まりとともに親の言動に反発する気持ちが強まり、イライラとして表れるようになりました。

家族へのイライラとアダルトチルドレン

ふさぎこむ母親と寝転ぶ子ども

アダルトチルドレンとは、機能不全家族や不十分な養育環境のもとで育ったことで成人後にも心に傷を負い、自信の低下や情緒不安定、対人関係トラブル等で生きづらさを感じる人を指します。幼少期から家族関係がうまくいかなかった背景より、家族へイライラしてしまう要因の一例としてアダルトチルドレンも考えられます。

本来は家族から受けるはずの十分な教育や愛情、コミュニケーション等が不足することで、子どもは人への基本的信頼や安心感を得られず、親の顔色を窺ったり自己表現が極端になったりします。家族を怒らせないように、家族から愛されるために感情を抑制しては爆発させるため、原因である親等の家族にイライラしやすい傾向があります。

家族へ行き過ぎたイライラがある場合は、幼少期の家族関係を振り返ってみることも大切です

アダルトチルドレンの詳細は以下をご覧ください。

Aさんの場合、家族に対するイライラには「アダルトチルドレン(AC)」的な側面も見られました。親の期待に応えようと無意識に頑張り続けてきた反面、「本当は自分らしく生きたい」「親の顔色をうかがうのはもう疲れた」という思いの間で葛藤を抱えていました。カウンセリングを通して、Aさんは「親の価値観をそのまま受け入れなくてもよい」「自分の気持ちを大事にしてよい」と少しずつ考えられるようになり、自分の感情を認めることができるようになりました。このような過程は、アダルトチルドレンに特徴的な心理的課題のひとつです。

家族にイライラする関連病気

電話で怒る男性

他に、家族にイライラしすぎる要因として、いくつか精神疾患を紹介します。

家族にイライラする=精神疾患という訳ではありませんが、家族へのイライラが強く家族関係が悪い場合や、自分らしく振る舞えない場合は以下の病気の可能性もあるでしょう。

Aさんの場合、家族への強いイライラが続いたことで、体調不良や睡眠障害、不安感、軽いうつ状態など、心身の不調が現れました。心療内科では「ストレスによる自律神経の乱れ」と診断され、医学的な治療が開始されましたが、根底にあったのは家族関係からくるストレスや葛藤でした。家族へのイライラが長期化することで、うつ病や不安障害、適応障害などの心の病気を引き起こすこともあるため、早期に心理的なケアを受けることはとても重要です。

(1)パーソナリティ障害

パーソナリティ障害は、属する社会や文化から逸脱した思考や認知、情緒、対人関係の在り方等が見られ、日常生活に支障を及ぼす人格障害の総称です。

養育者との関係で基本的信頼をうまく築けない背景から対人トラブルを抱えやすく、家族に対するこき下ろしや試し行動が見られやすいです

パーソナリティ障害についての詳細は以下をご覧ください。

(2)うつ病

うつ病は、気分の落ち込みや意欲・関心の低下等をはじめとした気分障害です。うつ病の原因は様々ですが、家族関係がうまくいかないストレス性や、内気等の本人の性質による神経症性のものもあります。

家族の顔色を窺って感情を抑制することでさらにストレスが蓄積され、コントロールし難いイライラが家族へ向けられることもあります

うつ病についての詳細は以下をご覧ください。

(3)適応障害

適応障害は、環境から過度なストレスを受けることで抑うつ気分や不安、身体症状等が生じることで、環境や出来事への不適応が見られる精神疾患です。

適応障害は学校や職場だけでなく家庭でも起こりうるものであり、家族とのコミュニケーション不足や過多、虐待といったストレス要因から問題行動を起こしたり、家族への暴言・暴力等のイライラをぶつける可能性があります

適応障害については以下をご覧ください。

(4)発達障害

発達障害は、先天的に認知や行動、知能等に偏りが見られる障害の総称であり、子どもの頃から感情のコントロールが苦手な特徴があります。

周囲と同じように行動できず能力の偏りに苦しんだり、言いたいことが伝わらないことに悩んだりすることも多く、身近な家族へイライラしてしまう場合があります

発達障害についての詳細は以下をご覧ください。

(5)依存症

依存症とは、アルコールや薬物、ギャンブル、ゲーム等の特定の物事に対して日常生活に支障が出るほどに利用してしまう状態を指します。依存症の人は、これまでに受けた強すぎるストレス体験の抑圧に限界がきてしまい、苦しさから解放されたいがために陥ることが多いです。

依存症の場合、精神は不安定で怒りやすい傾向があり、依存症を止めようとする家族に対し暴力的になりやすいと言えます

依存症全般についての詳細は以下をご覧ください。

家族にイライラしたときの対処法

笑っている二人の女性

家族に強くイライラしてしまったとき、まずはイライラを今以上に悪化させないことが重要になります。

怒りのような興奮状態やネガティブ思考は、一度スイッチが入るとヒートアップしやすいです。家族に対してイライラするのであれば、別室に行って家族と物理的な距離を置いてみたり、イライラする状況や出来事を具体的に振り返ってみましょう

1人で冷静になれない場合は、第三者への相談も有効です。アダルトチルドレンや精神疾患の可能性がある場合はカウンセリングを利用して、これまでの振り返りや家族との今後の付き合い方について話し合うこともできます。

強いイライラを強引に抑制するだけではいずれ抱えきれなくなるかもしれません。場合によっては自傷や暴力等でイライラを表出してしまい、本人がより苦しむ行動につながりかねません。

これまで感じてきたイライラを押し殺すのではなく、好きなことをして楽しんだり、仕事や勉強、スポーツといった別の活動に打ち込んでみたりして、気持ちを昇華させていきましょう。言葉や行動にしてイライラを少しずつ表出していくことが、対処の第一歩になるでしょう

Aさんの場合、数ヶ月のカウンセリングの中で、「イライラを感じたら一度その場を離れる」「自分の気持ちを紙に書き出して整理する」といった方法を学びました。また、気持ちが落ち着いたタイミングで、親に自分の考えを伝えることも有効でした。自分だけのリラックスタイムを持つことや、信頼できる人に悩みを話すことも、気持ちの整理に役立ちました。こうした対処法を実践することで、Aさんは家族との関わり方が少しずつ楽になっていきました。

家族のことについてカウンセリングを受ける

カウンセリングをする男女

家族にイライラしてしまうことについて、いくつかの原因や要因、対処法について解説しました。イライラすることはありふれた感情です。しかし、それが行き過ぎてしまうと様々なトラブルになってしまいます

自分なりの対処法でうまくいかない時には臨床心理士や公認心理師などの専門家に相談すると良いでしょう。

(株)心理オフィスKではこうしたことについての相談を受け付け、またカウンセリングを実施しています。希望される方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。