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転移性恋愛のメカニズムを知って理解する:心理学と精神分析の視点から解説

転移性恋愛に関して、「転移」「逆転移」など互いに相手への理解を深める上で有用なカウンセリングが、恋愛に発展するケースが時にあります。カウンセリングの観点から本来線引きが必要ですが、クライエント側から発せられた恋愛感情をどのような対処をおこなうか、精神分析やカウンセリングの方向性に重要なテーマです。

1.転移性恋愛とは?

転移性恋愛とは、「患者が転移の結果として治療者に好意から恋愛感情を抱くこと」と定義されています。カウンセラーがクライエントに様々な感情をいだいてしまう「逆転移」とともに、しばしばカウンセリングの妨げになることが多いです。

転移性恋愛は精神分析の権威S,フロイトが1915年頃より提唱しておりますが、現代社会においても臨床心理の世界では、少なからず存在し無視できないテーマとなっています。

精神分析についての概要は以下のページをご覧ください。

(1)転移性恋愛って何?基本的な概念を理解しよう

クライエントが、過去に他者との関係性の中で体験し感じた欲求や感情、葛藤を別の形でカウンセラー相手に向けてくることを転移と言います。転移には陽性転移と陰性転移があり、単に転移といえば、愛着欲求や依存欲求の陽性転移を意味することが多いです。

他方、陰性転移とは敵意や攻撃性をむける現象のことを意味します。転移は無意識的なもので、カウンセラーとしてはクライエントの転移を引き出すことは、精神分析において重要になることは確かですが、それが転移性恋愛という形に発展するとカウンセリングの妨げのなることがほとんどです

(2)転移性恋愛の特徴と心理メカニズムを探る

転移には、精神分析において、カウンセリング初期に悩み事の背後にある不安や葛藤の根底が集約されていることからそれらをひきだすことはカウンセリング上意義が高いことです。しかし時にクライエントが語り、カウンセラーが傾聴することで転移性恋愛に発展することがあります。

心理のメカニズムの説明として、「境界の曖昧化」な状態が無意識に存在することが挙げられます。例えばクライエント自身の過去の自分と現在の自分の境界、自分と他者の境界、意識と無意識の境界が曖昧になることが挙げられます。

精神医学ではしばしば「現実検討能力の欠如」と表現されます。

(3)転移性恋愛の危険性とその影響について知ろう

転移性恋愛の危険性は、カウンセリングや心理療法で楽になることを目的に来談したクライエントに対して、認められない不安や満たされないことの葛藤の方に導いてしまうことで不健全な形で精神状態をより悪化させてしまうことがあります。

好意をいだくといった陽性転移から、満たされないことで憎悪など陰性転移に転換し泥沼化する危険は表裏一体で常にその危険性をはらんでいます。陽性転移と陰性転移は別のものではなく、それらは交互にいれかわることがあることも危険性を高めてしまいます。

(4)転移性恋愛に陥りやすい人の特徴とは?

多くの場合、クライエントにとって無意識の思考習性や行動パターンであります。過去のトラウマから、自己肯定感が低く、人や物に依存願望や期待を抱き、理想化と過小評価の両極端の考えで揺れ動き対人関係が上手に築けず見捨てられる体験を潜在的に避けたい人が、転移性恋愛に陥りやすい傾向にあります。

境界性パーソナリティ障害の人は特に転移性恋愛におちいりやすいですが、本人が自覚していないケースも少なくなく本来はカウンセラーが注意すべきです。

2.転移性恋愛は陰性転移

転移性恋愛は一般的には陽性転移の内の一つとして理解されています。臨床心理士などの心理職でもそう理解しているかもしれません。

しかし、カウンセリングや心理療法の本来の目的や目標が、治る、解決する、成長する、発展する、進展する等であるなら、転移性恋愛はそうした目的や目標に進むことを蔑ろにし、恋愛することや性的満足を得ることを目的にしてしまっているということになります。つまり、これは倒錯が起こっていると理解できます。そのため、転移性恋愛は陽性転移ではなく、陰性転移として理解する方が妥当なのです

恋愛感情は陽性の感情であるから、一見すると陽性転移に見えますが、実はそうではないのです。臨床場面でもクライエントさんからカウンセラーに転移性恋愛を向けられると、だいたいがカウンセリングや心理療法が停滞してしまい、事態は混迷を極めることが多いのですが、このことからも決して陽性転移などではないことは明らかです。

このような転移性恋愛が起こるとカウンセラーも冷静さを失ってしまい、転移性恋愛に巻き込まれてしまい、カウンセリングが泥沼になってしまいます。このような時に、カウンセラーとクライエントの性的接触などの倫理的問題が起こってしまいます。転移性恋愛が起こることはカウンセリングの行き詰まりであり、膠着でもあります。

3.転移性恋愛の克服方法と対応法とは?カウンセラーからのアドバイス!

こうした転移性恋愛にどのように対処し、どのように対応すれば良いのかについて解説します。

(1)転移性恋愛を予防するために心がけるべきこととは?

カウンセラー側で行うことと、クライエント側で気を付けることに分けて解説します。

a)カウンセラー側

クライエントの話を傾聴し寄り添うことで転移を生み出すことはカウンセリングの成功とも言えます。しかし、どちらか一方が恋愛感情をもってしまうと、目の前の問題解決に不利だという意識をプロとしてもつべきでしょう。

転移と転移性恋愛は異なります。転移は生理的な感情や愛情欲求、転移性恋愛は乗り越えてはいけない一線をこえているという心がけをもつべきです

転移が転移性恋愛に発展すると、カウンセリングが失敗に終わるケースが多いという認識をもち、ひいてはカウンセラーの信用レベルが低下してしまうことを念頭におくべきでしょう。

転移性恋愛の、クライエント側の転移を逆転移という形でうけいれる責任は、カウンセラーの責任であるという自覚をもつべきです。クライエントと町で食事をするなどのカウンセリング外での接触をつつしむことやカウンセリングに専念できない服装や言動をクライエントが行なってくるケースにおいては改善をお願いするようにしましょう。

b)クライエント側

転移性恋愛は基本的に満たされないことが多く、目の前の問題解決に不利に働くことをカウンセリング前に認識しておくことが必要になります

カウンセラーとの相談だけで解決する考え方ではなく、事前に問題解決への回答を複数もっておいて、それらを再確認し、カウンセラーに選択してもらうくらいの心がけが必要です。「境界の明瞭化」はその一つで常に意識して日々の生活を送る習慣を身につけることが望ましいです。

(2)転移性恋愛に陥ってしまった場合の対応法とは?

転移性恋愛は一般的にカウンセリングの妨げになることが多く、「逆転移」が伴い満たされた場合にも一過性のことが多く、トラブルになるケースが圧倒的に多いです。クライエント側の精神状態がわるいことが多く藁をもすがりたいケースや、もともとのクライエントの性格に依存傾向があることも少なくありません。クライエント側の修正不可能な思い込みであるケースが最も多く、カウンセラーの変更が問題解決に必要なケースが一般的に多いとされています

クライエントは、もともと悩みがあって来談されるケースが多く、転移性恋愛によって、「継続した安定した幸福が得られるケース」においては、頻度としてごく稀ではありますが進めていく選択がないわけではありません。その場合も双方の立場が対等でないので、その魔法がとけたときトラブルに発展するケースも多くいつでも撤退できるメンタリティが本来必要です

身近な例として学校の先生と生徒が恋愛におちいり、結婚することがあり継続し安定した幸福を手にすることがあります。しかし、カウンセリングにおけるそれとは全く別のものと理解していただきたいです。

カウンセラー側として、ベテランのカウンセラーに相談したり、助言を求めたりすることが事態を打開するきっかけになります。一人で抱え込んでしまうことで、視野が狭くなってしまいます。相談や助言だけでなく、スーパービジョンを受けたり、教育分析をうけたりして、自身やケースについて振り返る作業も有用です

クライエント側としても、やはり一人で抱え込むのではなく、誰かに相談できると良いでしょう。主治医に相談することも良いでしょうし、セカンドオピニオンで別のカウンセラーに相談しても良いでしょう

4.転移性恋愛に関するQ&A

転移性恋愛についてQ&A方式で解説します。

(1)転移性恋愛と一般的な恋愛の違いは何ですか?

転移性恋愛も一般的な恋愛も一般的に異性に好意を寄せるという感情は共通しています。

しかし、違いとしてはカウンセリング中におこる転移性恋愛は、しばしば対等でない人間関係や投影や依存の要素を含むことが多いようです。そして、一過性で片想いから以上に発展しにくく仮に成立しても破綻しやすいという特徴もあります

世間の評価においても本邦にかぎらずタブー視されており継続した安定した幸福が手に入る確率は極めて低いのが特徴です。

(2)転移性恋愛の対処法として、自分でできることはありますか?

転移性恋愛の対処法として、カウンセラー側は安心・信頼・尊敬されるようなプロや職業人としての意識を改めて強く持つことです。

クライエント側は心許せる友人を数人でよいので見つけておくことや思考や感情の面でも広く多角的視点を健常な状態から意識して持つ工夫を準備しておくべきです。

(3)転移性恋愛に陥っている場合、どのような専門家に相談すればよいですか?

転移性恋愛に陥った場合、自分の性格や思考に理解のある友人に相談するか、カウンセラーを変更することが大切です。陽性転移と陰性転移を繰り返し、精神状態が安定せずうつ・不安や自傷行為などに発展するケースにおいては、精神科や心療内科の受診が必要になります。

カウンセラーもクライエントも転移性恋愛が強く動いているようであれば、誰か第三者に相談することが大事です

5.まとめ

医師と患者

転移性恋愛に関して、カウンセリングでは恋愛のみならず金銭の授受やビジネスや家族的な付き合いも含み、多重関係になることはカウンセリングの妨げになることが知られています

些細なことから始まる境界侵犯の目は可能な限り、傷口の浅いうちにつみとるべく対処が必要です。生理的な感情のゆきすぎはしばしばカウンセリングの妨げに繋がることを念頭におき、引き返しが困難になる前の適切な行動や思考の修正が大切になります。

カウンセリングの中で転移性恋愛に陥ってしまい困っているようであれば、別の第三者として当オフィスのカウンセリングをご活用ください。希望者は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

また、カウンセラーの側が転移性恋愛に巻き込まれてしまい、カウンセリングがうまくいかないようであれば、スーパービジョンや教育分析を利用すると良いでしょう。希望者は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。