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エディプスコンプレックスとは?臨床心理士がわかりやすく解き明かす

皆さんは『エディプスコンプレックス』という言葉を聞いたことがありますか?「僕大きくなったらお母さんと結婚するんだ」、「私大きくなったらお父さんと結婚するの」というセリフをドラマなどで聞いたことはありませんか?

ほほえましいやり取りかもしれませんが、それがエディプスコンプレックスにつながっています。

1.エディプスコンプレックスとは何か?

エディプスコンプレックスとは、オーストリアの心理学者・精神科医であるジークムント・フロイトが提唱した概念で、男子が異性の親である母親に強い好意感情を抱き、母親を自分のものにしたいという感情から、同性の親である父親に敵意や対抗心を抱くという子どもの時に見られる無意識の心理状態のことを言います。

名前の由来となったものは古代ギリシャ神話の「エディプス王」という話です。この話は、エディプス王という人物が自分の父であるライオスを殺害して、自分の母であるイオカステと結ばれるという内容になっております。このエディプスコンプレックスは主に3歳~6歳の時期に見られる心理状態だと言われております。

元々の精神分析の理論については以下のページをご参照ください。

2.女子のエディプスコンプレックスについて

エディプスコンプレックスでは男子の話をしてきましたが、女子にもエディプスコンプレックスと似た心理状態が生じます。名前を「エレクトラコンプレックス」と言い、スイスの心理学者・精神科医であるカール・グスタフ・ユングが提唱しました。

エレクトラコンプレックは女子が異性の親である父親へ強い好意感情を抱き、父親を自分のものにしたいという感情から、同性の親である母親に強い敵意や対抗心を抱くという子どもの時に見られる無意識の心理状態のことを言います。

名前の由来はギリシャ神話の「エレクトラ女王」からです。この話は、エレクトラ女王が父親であるアガメムノンを母親であるクリュタイムネストラが愛人ともに殺害をしたことを恨み、弟と一緒に自分の母親を殺害するという話になっております。

3.エディプスコンプレックスが発生する原因について

喧嘩をする両親

エディプスコンプレックスコンプレックス原因について考えるときに心理過程を見ていくことが必要です。フロイトはエディプスコンプレックスの心理過程として、以下のような流れを提唱しております。

  1. 母親への強い好意
  2. 父親への敵意・対抗心
  3. 父親からの去勢不安
  4. 母親を断念(父親への敵意・対抗心の抑圧)
  5. 父親との同一化

簡単に説明すると、始めは母親を独占しようと、父親へ対抗心を抱くが、父親から男性器を奪われるのではないかという不安から、母親を独占しようとすることはあきらめ、父親とも正しい関係性を構築することが出来るようになるという過程を歩むということです。

一方、エレクトラコンプレックスが生じる原因として、去勢不安ではなく、男性器を持つ父親への憧れと、男性器を持たない母親への批判的感情が原因となり、自分も男性器を持たない身体に生まれて来たことへの劣等感が生じることが挙げられております。その後、男性器がないことへの理解が進み、男性器を持たない母親の存在と自分の存在を認めることが出来るようになり、適切な心理発達が出来るようになると言われております。

一般には子どもの時期に以上の心理発達は遂げると言われていますが、解決することが出来なかった場合、様々な問題が生じる可能性があります。

4.エディプスコンプレックスの症状

窓の外を見ている白い女性

子どもの時にエディプスコンプレックスを解消することが出来なかった場合以下のような症状が現れる可能性があります。

(1)エディプスコンプレックスが引き起こす心理的な問題について

a)自己評価の低下

エディプスコンプレックスが適切に消化されなかった場合、同性の親との関係不安を感じ、「自分は必要とされているのか」といった疑問が生じることによって、劣等感を抱く可能性が大いにあります。

b)性的不安

異性の親への強い敵対心から、友人関係など別の異性に対しても同様に、敵対心や嫌悪感を持つ可能性が高く、適切な関係性を築くことが難しくなったり、必要以上に異性を排除しようとする心理状態になります。

c)愛着障害

愛着障害とは、幼少期に父親や母親等養育者と適切な愛着形成がうまくいかなかったことで、将来的に社会関係を結ぶことの難しさや、自己肯定感の低下が見られる症状のことです。エディプスコンプレックの解消が出来ないと両親と適切な心理関係が結ぶことが難しい為、愛着障害が生じる可能性が高くなります。

(2)エディプスコンプレックスが引き起こす親子関係の問題について

エディプスコンプレックスを子どもの時期に解消できないと、将来的な家族関係にも影響が出てきます。

a)家族関係の複雑化

同性の親への敵対心が続くことにより、同性親の極度な排除が起こり、逆に異性親に強く執着する現象が起こります。そういった場合、親と子という関係性のバランスだけでなく、夫婦関係のバランスも崩れてしまい、調和がとれた家族関係を結ぶことが難しくなります

b)結婚相手の束縛

エディプスコンプレックスを解消できなかった方が、家庭を築いた場合、自分の結婚相手が子供や自分の親にとられてしまう不安から結婚相手の束縛などに繋がる危険性もあります。

(3)エディプスコンプレックスが引き起こす恋愛の問題について

エディプスコンプレックスの解決が適切に行われない場合、恋愛についても問題が生じることがあります。

a)性犯罪

エディプスコンプレックスが適切に消化されなかった場合は、父親的な人や母親的な人を自然と求めることになります。そういった場合、未成年であるにも関わらず年上の異性と過度な関係を結ぶ可能性が高くなり、性犯罪に巻き込まれる危険性が高くなります。

b)強い依存

異性親を独占したいという想いが恋愛においても影響が出る可能性が高く、好きになった相手のことを極度に理想化し強い依存が生じます。

5.エディプスコンプレックスに対する批判

怒る男性と怒られる女性

以上のようにエディプスコンプレックスについて説明をしてきましたが、この理論について批判もあります。

(1)父親が強いということを前提としていること

エディプスコンプレックスの中では、男性器が理想化されて述べられており、男性器がない女性が劣っているもののように書かれており、母親より父親の方が有意であるというような理論が話されています。

この視点から、「母権主義社会では成り立たないのではないか」といったようにすべての文化に当てはまるわけではないという批判が挙がっています。

(2)幼児期の性欲を前提としていること

フロイトは、幼児期における子供に対しても性欲があることを述べており、エディプスコンプレックスの生じる根本は、性欲だという説明をしています。この説明には、当時「子供は無垢なものである」と考えられていた為、批判を受けることになりました。

フロイトは、幼児期の性欲は、成人期における性欲とは異なっているものであると説明をしていましたが、エディプスコンプレックスの原因を性欲とすることについて疑問の声が今も上がっています。

(3)理論がフロイト自身の経験に偏っているということ

フロイトは多くの人には近親相姦願望があり、エディプスコンプレックスはこの近親相姦願望から端を発するといったことを主張していました。しかし、実はフロイト自身、父親への恐怖心があり母親との近親相姦願望があるということが分かっています。

この考えからのフロイトはエディプスコンプレックスを論じた可能性があり、自分の考えや経験に偏っているという批判も挙がっています。

6.エディプスコンプレックスを克服する方法・解消する方法

男性と診察をする医師

エディプスコンプレックスの理論上では男子は「自分の父親に勝てないことを認め精神的に自立していく」ことで解消される。女性では「男性器がないことを受け入れる」「自分にもいつか男性器が生えるということを信じ男性的な性格を身に着ける」「男性器を自分の子供に置き換え、代替的な男性器を手に入れる」ことで解消されると述べられていますが、具体的な方法を以下に説明します。

(1)自己覚知をする

自己覚知とは自分自身のことを知るということです。自分自身のことを見つめ直し、自分らしさを見つけることで、自己アイデンティティを形成することが出来、誤った人間観を抱くことの予防になると言えます。

(2)性役割の理解

前提として、父親の役割と母親の役割は異なっているということを理解しないといけません。今はジェンダー問題など性役割が多様になっている為、この問題を考えることは難しいかもしれませんが、エディプスコンプレックスを解消する為には、性役割を考えることが大切です。

(3)自己と他者の境界線を明確にする

エディプスコンプレックスは成人期における恋愛にも影響が出ることを述べました。そういった方は好きな相手のことを理想化するあまり、自分の考えを相手の考えだと誤解する場合があります。どこまでが自分の考えで、どこからが相手の考えなのか、といったように、自分と他人の境界線を明確にすることも大切です。

(4)誰かに話をする

エディプスコンプレックに悩む人は、考えが偏ってしまっている可能性があります。家族や友人・知人等に話を聞いてもらうことで、自分の考えが整理されて、適切なアドバイスももらえる可能性があります。

(5)専門家に相談する

自分で考えてみたり、家族や友人・知人に相談してみても、エディプスコンプレックスが解決しない場合、専門家に相談することもひとつの手と言えます。自治体にも相談窓口がありますし、臨床心理士などのカウンセリングを受けることも効果的な手段です。今ならオンラインカウンセリングなどもあり、手軽にカウンセリングを受けることも出来ます。

7.まとめ

会話する女性たち

エディプスコンプレックスはフロイトが提唱した理論であり、子どものときに見られる心の働きで、うまく解決出来ないと、将来人間関係や心理症状に出てくる可能性があります。批判も多い理論ですので、懐疑的な方も少なくはないかと思いますが、ひとつの知識として理解していただけたらと思います。悩んでしまったら、相談をすることもひとつの手段です。

当オフィスではカウンセリングを行っていますので、ご希望の方は以下からお申し込みください。

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