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発達障害者の家族支援

発達障害の不安と支援

発達障害の子どもを育てる時には、通常の場合と比較して、その家族を中心とした人々は、費やす時間や精神力、体力、経済的負担が非常に高くなるといわれています。

誰しも親であれば、普段から子育てに関する心配が付きまとい、子育ての難しさで家庭生活に悩んでしまうこともあるでしょう。また、ともすれば自分の子どもが発達障害かもしれないと感じたり、発達障害の家族として周囲に迷惑をかけないかなどの不安を感じることもあるのではないでしょうか。

今回は発達障害者とその家族が日々抱える不安や支援策について説明します。

1.そもそも発達障害とは何なのか

一人の女の子

まず発達障害とは根本的にどういう状態なのか?から話を始めたいと思います。

発達障害と呼ばれる方々は、生まれつき先天的に脳機能の一部に多少の障害があることで多彩な症状が現れます。そのために日々の生活において、なにかしらうまくいかずに自分やその周囲が困ることを起こしやすい状態を意味します

従来より広汎性発達障害の範疇で捉えられてきた自閉スペクトラム症やチック症、注意欠陥多動性障害、学習障害、吃音を含む発達障害は、個人差をもった各人の脳の機能に基づいて、それらの特性を各々区分けされることによって様々に分類されたものの総称を指します。

世の中には、発達障害者を子どもや兄弟にもち、家族支援を必要としている家族も多くいらっしゃるかと想像します。また、もともと家族支援という言葉を知っているが上手く活用できない、あるいは家族支援を受けることを前向きに検討しており、その情報収集を今まさにしている方も少なからずおられるかと存じます。

そして、実際に家族支援というシステムを通じて、どんな悩みを持っている人がどんな解決を現実的にしてもらっているのかを分かりやすく明示していきます

2.発達障害であればどんな症状があるのか

3人の女性

前述の通り、発達障害には自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害、学習障害、チック症、吃音などが含まれます

例えば、自閉スペクトラム症では他人とのコミュニケーションの場面で、言葉や視線、顔の表情、ジェスチャーなどを用いて相互的にやりとりをすることが苦手です。また、自分の気持ちを上手く伝えたり、相手の気持ちをスムーズに読み取ったりすることも苦手とされています。

また注意欠陥多動性障害では、通常の発育年齢に比べて、格段に落ち着きがなく、そわそわして待つことが出来ず、注意が散漫になりやすく、作業工程に単純なミスが多い、といった特徴があります。

そして、学習障害とは全般的な知的好奇心や知育の発達そのものには特に大きな問題が無いにもかかわらず、シンプルな読み書きや簡単な計算をするなど特定の学習内容のみに限って困難が認められる状態を指します。

チック症とは思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声を繰り返す状態がしばしば認められます。ただ、幼少期の子どもでは一時的に現れることは少なからずあります。

吃音とは、言葉が詰まったり、どもったり、出にくかったりするという特徴があります。

このように、発達障害のある方においては特定の行動パターンを呈したり、周りの環境へのこだわりが強く、急遽予定を変更したり先の見通しの立たない出来事に対する不安が強い人もいます。また、その他にも四角四面の頑固さ、気の弱さ、落ち着きのなさ、衝動性、集団行動の取りにくさ、会話のかみ合いにくさなど多種多様な特徴を有します

ところが一方で、発達障害として示される個々の症状は時に普段の生活を豊かにする可能性を秘めています。発達障害の方の純粋さや感受性の高さ、興味関心事における積極性の高さ、驚くほどの記憶力などは特筆すべきものがあるといえるでしょう。

3.発達障害者と家族支援について

4人家族

親として子どもが誕生したことを心底から歓びつつ、仮に自分の子どもや家族が発達障害と診断された時に多くの方は少なからず不安やショックを受けるかと思います。

そのために発達障害のある子どもを育てている家族に対しては、周囲でサポートできるマンパワーの確保、発達障害に関する知識と事故回避スキルの伝達、そしてメンタル面での支え、などを中心として複数の観点から小まめに評価して実際に支援することが必要となります。

まず、発達障害の特徴を知っておかないと、本人の努力不足だと間違えて障害を捉えたり、親を中心とした家族の関わり方の問題だといった大きな誤解にさらされてしまいます。また、それだけではなく日々の生活の中における有効な対策や工夫に発展していかず、結果的に発達障害者やその家族が傷つけられてしまいます

重要なことは、親や家族が発達障害から目を背けずに向き合って、さらに未来に希望を持てるように発達障害者が生活しやすい社会環境を作ってあげることです。

近年では発達障害に対する心理社会的治療として、例えば障害児へのソーシャルスキル訓練であったり、教育現場での保健指導などの体制が徐々に確立しつつあったり、ペアレントトレーニングや親の会などに代表される親御さんに対する支援システムが整えられたりしてきました。

昨今では、万が一病気や障害があっても住み慣れた地域で最期まで社会的に暮らすことを目標として考えられるようになってきています。ある地域では発達障害者が困った時の解決策を建設的に検討する多職種連携チームを結成することで発達障害者やその家族を包括的に支援する体制を整備したところもあります。

家族が安心して地域を頼れることで、発達障害を抱えた子どもと家族を取り巻く問題を防いだり解決する決め手になります、また、発達障害自体を深く知ることで、その発達障害者や家族が自らを支えながら周囲からの自然な応援も受けることができるようになると考えます

4.厚労省の発達障害者支援施策

ビジネスマン

(1)概要

厚生労働省が各都道府県や市町村など自治体に公表している発達障害児者および家族等支援事業を利用すると、発達障害児者の家族同士の支援を推進させることが出来ます。

この中では、同じような発達障害に関連する悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するきめ細やかなサポート等の支援を充実させ、家族のみならずに本人の生活の質の向上を図ることが期待できます

具体的には以下の事業プログラムが身近な場所で支援が受けられるように対象自治体を中心に展開されています。

(2)ペアレントメンター養成等事業

ペアレントメンターに必要な研修を実施することなどが挙げられます。

(3)家族のスキル向上支援事業

家族、特に保護者に対するペアレントプログラム、ペアレントトレーニングを実施することを指します。

(4)ピアサポート推進事業

同じような発達障害に関する悩みを持つ本人同士や発達障害児を持つ保護者同士が集まる場所を提供するなどの活動です。

(5)発達障害者等青年期支援事業

コーディネーター等の役割を担う職員を配置する、または関係機関との連絡・調整を行います。

(6)その他の本人・家族支援事業

発達障害児者の社会適応力を向上させるためのソーシャルスキルトレーニングを実施します。

5.発達障害者と家族によく認められる悩みの例

悩んでいる男性

そしてここからは、こうした家族支援事業を通じて、発達障害者と家族によく認められる不安事項やお悩み内容をどう解決されるのか簡単に例示していきます。

(1)親の不安と負担

例えば、我が子が発達障害と診断されてから少し落ち込んでしまう部分がある場合です。

我が子が学校や社会でスムーズな生活を送れずに様々な問題を抱え込んでしまい、親が疲弊してストレスを感じてしまうケースがあります。

親がうつ病など心身共に疲れると、家庭が崩壊するなどの事例もあります。

発達障害のある子どもを健やかに育てるためには、親が心身ともに健康な状態でいることが重要です。

家族支援事業を活用することによって、発達障害の子どもを持つ家族同士が集う場において情報共有やコミュニケーションを図り、発達障害への理解を深めると同時に人の悩みを知ることで不安や疑問の解消にも繋がることでしょう

(2)相談場所がない

次に、病院以外に頼れる場所や相談できる場所がない場合です。

定型発達の子どもより、発達障害の子どもは物事を理解するまでに時間を要する場合が往々にしてあります。

献身的に我が子の面倒を見る家族も少なくありませんが、相談先を見つけなければ、問題を抱え込んでしまい、親が疲弊して多大なるストレスを感じてしまいます。

家族支援事業によって家族からの相談は、全国に設置されている支援センターや教育センターで受けつけてくれています

個々のケースに合わせて、適切なアドバイスや実行しやすい方法を教えてくれますので、不安に感じることがあれば抱え込まずに相談しましょうね。

(3)きょうだい児の心のケア

また、きょうだい児の心のケアも重要な観点です。

発達障害の子どもは、定型発達の子どもと同じように過ごすことが困難な場合があり、接し方や関わり方などで悩むケースも多いものです。

特に、兄弟姉妹がいる家庭では、発達障害について理解できない低年齢の場合には発達障害の子どもにばかり関わっている親の姿を見て、嫉妬心などを感じてしまうこともあるでしょう。

そうした時に家族支援事業の中でもペアレントレーニングがお勧めです。

この訓練プログラムは、親が発達障害のある子どもの行動を理解し、対応方法を習得するために行います。

そうすることで、色々な子どもの行動パターンを受け入れて、出来たことをきちんとほめてあげることによって子どもの達成感につながります。

同時に、発達障害児の兄弟姉妹との親子の絆をより深めてさらに良好な親子関係を築くことが出来ると期待されます

(4)特性に応じた対応

仮に発達障害があったとしても、発達障害者や家族・周囲のサポーターたちが個々の障害の特性に応じて学校及び職場での過ごし方を工夫して考慮することで、本来個性として持っている力を活用しやすくなります。そうしたことで日常生活での困難性を軽減させたりすることが出来るのです。

発達障害を「正しく」知ること、それが本人と家族の不安を払拭させる応援の第一歩です。

そして、発達障害の子どもがいる場合、家族が育児や将来への不安を感じることがあります。また、子どもへ献身的になりすぎ、親が疲弊してしまうことも珍しくありません。しかし、発達障害の子どもが健やかに成長するためには、家族がゆとりを持って過ごすことが大切です

発達障害の子どもを持つ家庭では、家族支援を受けることができます。希望される際には、自治体の障害福祉窓口や支援センターなどに相談しましょう。

6.発達障害について相談する

自閉症、注意欠陥多動性障害、チック症、学習障害、吃音などの発達障害についてさらに詳しく知りたい人は以下のページをご参照ください。

発達障害のカウンセリング・相談
発達障害は、自閉症、注意欠陥多動性障害、学習障害、知的障害などの広範な遺伝的負因による障害です。発達障害は心と身体の成長や発達がうまく作動しなかったり、アンバランスになったりします。発達障害の原因、特徴、症状、治療、支援について解説します。

また、ご家族やきょうだい児の発達障害のことについて相談したい、カウンセリングを受けたいという方は以下のページからお問い合わせください。

カウンセリング申し込みフォーム

さらに、発達障害の特性を詳しく把握するために心理検査を受けることもできます。心理検査をご希望の方は以下からお申し込みください。

心理検査申し込みフォーム

7.文献

  • 一般社団法人日本発達障害ネットワークHP.
  • 芳賀彰子ら:注意欠陥/多動性障害, 広汎性発達障害児をもつ母親の不安・うつに関する心身医学的検討. 心身医学 46(1), pp75-86, 2006
  • 鈴木浩太ら:発達障害児をもつ母親の心理的苦痛と家族レジリエンス. 日本心理学会第82回大会口頭発表
  • 吉川徹:発達障害のある子どもの家族への支援. 小児の精神と神経 60(2), pp127-136, 2020
  • 森戸雅子ら:自閉スペクトラム症児の感覚特性に着目した家族支援. 川崎医療福祉学会誌 27(1), 13-25, 2017
【監修者情報】

  • 甲斐沼 孟 先生
  • 資格:医師、日本病院総合診療医学会認定医、厚生労働省認定緩和ケア研修会修了医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、他多数
  • 経歴:平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より大阪市内救急病院にて勤務、令和3年現在同院救急科医長。