発達障害と学校教育
発達障害のある子どもに対する学校教育の中での気を付けるべき点や工夫する点などについて書いています。発達障害は難しい障害ではありますが、対応や手立てを工夫することで落ち着いて生活を送ることができるようになります。
今回の記事では、発達障害と学校教育として、正しい障害への理解と支援方法について解説していきます。
1.学校教育の中の発達障害
発達障害のあるこどもは一人一人異なる様々な障害特性を持っています。学校生活に順応できるケースもありますが、家庭や学校や地域においてトラブルを引き起こし適切な介入が必要になるケースもあります。このことは、周囲への怒りや不安、無力感などのストレスにつながることも少なくありません。
しかし、そのようなトラブルの多くは、こどもの障害特性そのものに起因するというよりも、障害特性への周囲の無理解、理不尽な対応によって二次障害的に生じることが多いことが知られています。発達障害は、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)・自閉スペクトラム症(ASD)に分類されます。
いずれも、原因は解明されていないものの、中枢神経系に何らかの機能障害やアンバランスの関連が示唆されています。平成24年度に文部科学省が実施した全国調査において「小・中学校年齢の児童生徒の6.5%程度に発達障害の可能性がある」とされ、学校教育においてその指導・支援のあり方が重要視されています。
そもそもの発達障害については以下のページをご参照ください。
2.学習障害への学校教育
学習障害の基本的な事柄は以下のページをご覧ください。
学習障害は、「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態」と定義されています。特に読み書きに困難を示す子どもが多く、音声言語による会話は何不自由なく行える一方で、文字を読んだり書いたりすることに困難なことが多いようです。
具体的に「よく読み間違いをする」「拾い読みしかできない」「文字は読めるが、文の意味が読み取れない」「改行・段落を間違う」「助詞により文章を区切れない」などが特徴です。
学校教育の場面で、口頭で説明されたことには理解があっても、同じ内容を「あとで説明書を読んで」と渡しただけではまったく理解できないということが起こり得ます。そのため、時間をかけて丁寧に口頭で説明することが大切です。近年では、学校教育の現場でICT機器を使用して文書を読み上げソフトで音声化して理解できるような支援も進んでいます。
3.注意欠陥多動性障害と学校教育
注意欠陥多動性障害の基本的な事柄は以下のページをご覧ください。
注意欠陥多動性障害において、学校教育の現場では主に「多動性」「衝動性の高さ」「不注意」の3つの障害が問題となります。発達に伴ってコントロールが効くような場面も多くなりますが、変化しない面もあります。「不注意」にはうっかりミスが許されない場面においては、くり返しの説明や丁寧な指導を行い、その上で実際に体験してもらいます。そうして、ミスしそうなポイントを共有・確認しておくことなどが必要です。
また、視覚的や聴覚的な「短期記憶」が弱いことも多いので、メモやリマインダーを利用し、聞いたことを目で見て確認できるような工夫が必要でしょう。
音や光や触覚など介して、様々な刺激に過剰に反応してしまう特性もあるので、刺激の少ない落ち着いた環境設定で過ごすことが大切です。
4.自閉スペクトラム症と学校教育
自閉スペクトラム症の基本的な事柄は以下のページをご覧ください。
自閉スペクトラム症では学校教育の現場で、「社会性の発達の質的な障害(対人関係の障害)」と「コミュニケーションの発達の質的な障害」と「想像力の障害」が問題となることが多いです。
「社会性の発達の質的な障害(対人関係の障害)」は、非言語的なコミュニケーションの困難で、「空気が読めない」などを指しており、暗黙のルールを理解したり、顔色から相手の気持ちを察したりすることが難しいようです。
「コミュニケーションの発達の質的な障害」は、言語を介したコミュニケーションの障害で、会話のための言語に支障がないようでいて冗談や皮肉、比喩表現が通じなかったりします。
「想像力の障害」は想像力を働かせることの困難で、目の前にないものを話題にしたり、他者の立場に身を置き換えて考えたり共感したりすることが難しいのです。
自閉スペクトラム症においてはこれら三つ組みの障害が存在しており、他者とのコミュニケーションという点では最も困難が大きいです。明確な線引きがない曖昧な状態に置かれるとパニックになったり不安を訴えたりすることが多いようです。
曖昧な言葉も理解が困難であるため、説明方法に留意が必要です。
先の予測を立てにくい場面や予定の変更などに柔軟に対応することが困難なため、待ち時間や会話の終わりが読めない場面では不安や不満が高まりやすいです。
その他の特徴としてワーキングメモリの弱さも伴う場合があり、一度に伝える情報量を少なく、シンプルにかつ具体的にする必要もあります。
5.発達障害の対応
学校教育に必要とされる発達障害への支援や理解について、疾患別に解説しました。親・教師などがその障害特性を理解し、子どもへのサポーターとしての連携が大切とされています。学習面および対人関係面での障害の主要因は、認知処理過程の偏りが原因であることが多く、当事者である子どもの生きづらさに理解を示し、寄り添うことが大切です。無理のない範囲でできることを増やし、自信をつけるようなサポートが大事です。
こうした発達障害について相談したり、カウンセリングを受けたいという希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡を頂ければと思います。
また、発達障害の障害特性・知的能力について調べるための心理検査があります。心理検査をご希望の方は以下からお申し込みください。