赤ちゃん・子どもが発達障害かも?兆候や関わり方について
乳幼児期から「発達が気になる子ども」が増えていることを見聞きするようになりました。「発達が気になる子ども」=「発達障害」ではありませんが、乳幼児期から発達の気になるお子さんにはその子に合わせた関わりが必要です。
ここでは、乳幼児期のお子さんの気になる発達について、それは発達障害の兆候なのかどうか、そして発達を促すために必要な関わりについて書きます。
目次
1.「発達が気になる子ども」とはどんな子か
乳幼児期で「発達が気になる子ども」の代表的なものは「視線が合わない」「指さしが出ていない」「人への要求がない」「言葉の遅れがある」「理解がゆっくり」ではないでしょうか。
各自治体で行われている1歳半健診や3歳健診でも視線の合わなさや指さし、言葉の遅れについてはよく確認されています。これは早期に発達障害の疑いのある子どもを発見し、早期にその子どもや家族に適した支援をしていくためです。
発達障害ついては以下のページでもまとめていますので、そちらも参考にしてください。
発達障害は乳幼児期の早い時期から子どもや家族にフォローすることが大切と言われています。しかし、発達障害の診断は子どもの成長の個人差も大きく3歳までは診断がしにくいと言われています。
3歳頃までは就園していないお子さんも多く、上記した子どもの気になる要素が経験不足によるものもではないかと思われるためです。
また、お子さんの発達で気になる部分があっても、その気になる要素によって、子ども自身または周囲の複数の人が困っていない場合は発達障害の診断基準には該当しないのです。乳幼児期の子どもの場合、関わりがあるのは家庭と就園先がほとんどですが、家庭では困っておらず、就園先だけが困っている場合は、そのお子さんの過ごしている園の生活環境を変えることで困り感は減るかもしれません。
環境を少し変えただけで、改善されるのであれば、発達障害とは言えないことがほとんどです。そのため、乳幼児期のお子さんの発達障害はただのレッテル張りにならないよう気を付けなければならず、慎重に診断をしなければならないのです。
「発達が気になる子ども」は健診の場だけではわかりにくいこともあり、保育園や幼稚園などの集団生活の中で気づくこともあります。理解のゆっくりさは他の子と比較することでわかることです。保護者は家庭でのお子さんの様子しかわからないので、理解面や行動面で気になることは少ないです。そのため、先生方は発達で気になることがあっても保護者との信頼関係を崩さないようにと保護者に伝えないでいることが多いと思います。
また、先生方からすると「自分の力量が足りないから、あの子は落ち着かないのかもしれない」と思うこともあると思われますが、自分を責めたりする必要はありません。これは保護者も同様です。健診の場で「視線が合わないね」「言葉の遅れがあります」と言われたからといって「自分の育て方が悪かったのかな」と思う必要はありません。きちんと1歳半、3歳まで育ててきたことを自分自身で褒めましょう。
特に「発達が気になる子ども」の子育てと言うのは非常に大変です。一般的な子育て理論が通用しないことが多いとも言われているからです。
2.発達障害の兆候と関わり方
それでは乳幼児期の子どもの気になる様子について、発達障害の兆候なのかどうか、そしてその関わり方について書いていきます。
(1)視線が合わない子、指さしや人への要求が出ていない子
a.視線が合わない子、指さしや人への要求が出ていない子の兆候
まず、比較的低年齢で気づかれやすいのが「視線が合わない」「指さしや要求行動が出ていない」です。このような子どもに会うとよく使うのが「相手意識が乏しい」という言葉です。
これは、その子どもが周りの人に対する関心や人としての興味がなく、そもそも人として見ていないといったことを指しています。これは実際に「視線が合わない子ども」と遊んでみるとわかるもので、周囲の人に興味がなく、一人で遊んでいたり、まるで周りに人がいないかのように振舞います。
相手意識の乏しさは大体1歳ぐらいになるとわかってきます。ボール遊びで子どもに転がしても、こちらの様子を見ておらず、転がし返すことがなかったり、お子さんが持っているものを「ちょうだい」と言っても、渡してくれなかったりと普段の遊びで確認できます。
また、2歳を過ぎても「バイバイ」に対して反応がなかったりすると、自閉スペクトラム症などの発達障害を疑うことがあります。子どもからの要求がなかったりすると、大人も対応しなくてよいので、手がかかりません。そのため、手がからないことが良いことなのではなく、どうして手がかからないのかを振り返ってみることが大切です。
反対に相手意識が乏しい子の中には、周囲の物に興味を強く惹かれ、落ち着きなく走り回る子もいます。この場合でもまずは、周囲の物ではなく、人に興味を持ってもらえるようにすることが大切と思われます。
b.視線が合わない子、指さしや人への要求が出ていない子への関わり
このような「視線が合わない」など「相手意識」の乏しい子どもに対する関わりとしては、まず「相手意識」を育むことが大切で、人とのふれあい遊びがよいと言われています。
例えば、「たかいたかい」や「抱っこしてグルグル回る」などの身体接触を伴う遊びです。子どもに「一緒に遊んで楽しい」「この人はぼくを(わたしを)楽しませてくれる人」と思ってもらうことが非常に重要です。
そして、「指さしや要求行動が出ていない子ども」も「相手意識」を育むことが大切で、人とのふれあい遊びの中で好きな遊びには「たかいたかい」や「グルグル」など名前やポーズをつけ、遊ぶ前に「たかいたかいやる?」と確認しましょう。
人への要求が出にくいお子さんはまだ、言葉が出ていないお子さんも多く、ポーズがあることで要求が引き出しやすくなります。相手意識が育っていくことで、そのうち相手のしていることの真似が出てきます。真似が出てくることで、徐々にできることも増えていくものです。
(2)言葉の遅れがある子
a.言葉の遅れがある子の兆候
次に比較的低年齢で気づかれやすいのが「言葉の遅れ」です。ただ、言葉の遅れがある子どもの中でも、絵本などを用いて「犬(ワンワン)どれ?」「車(ブッブ)どれ?」と尋ねた時にきちんと応じることができれば、そのうち言葉が出るようになる子がほとんどです。
しかし、この質問をしても答えられない子どもはまだ、わかる言葉自体が少ないため、自分で言葉を使う力が育っておらず、言葉の遅れに影響している可能性があります。
言葉の遅れがあるお子さんの中でも、先ほど示した、「相手意識の乏しい子」の場合はそもそも「相手に話したい」、「思いを伝えたい」という気持ちが育っていないため、言葉が遅れている場合があります。また、3歳過ぎても「りんごどれ?」「笑っている顔どれ?」「着る物どれ?」「おめめどこだ?」などの質問がわからない場合はわかる言葉が少なく、知的な遅れを疑うことがあります。
b.言葉の遅れがある子への関わり
一般的な子育てのお話で「たくさん話しかけてあげるとそのうち言葉も増えるよ」と言うのは間違いではありません。しかし、その子どもが興味・関心を向けたものに言葉がけをしてあげることが大切です。やみくもに話しかけても、子どもからすると、それはただの雑音です。
子どもが「あっ」と興味を示したものに、「○○だね」と言葉をかけてあげることで「あれは〇〇と言うのか」と対象物の理解につながり、理解できた言葉はいずれ話し言葉につながります。
また、初めから「猫だね」「鉛筆だね」など成人語で言葉がけするよりも「ニャンニャンだね」「カキカキだね」と幼児語で言葉をかけた方が子どもにもわかりやすく、真似しやすいです。丁寧に言葉がけをして、わかる言葉を増やしていくことが言葉の遅れのある子どもには大切です。
(3)理解がゆっくりな子
a.理解がゆっくりな子の兆候
「理解がゆっくりな子ども」は集団生活の中で気づかれることが多いです。また、「理解がゆっくりな子ども」と一言で言っても、知的な遅れによるものなのか、聴覚記憶容量の乏しさによるものか、はたまた言語指示の文脈を理解することが苦手なのかによっても、対応が少し異なってきます。
知的な遅れがあるかなと思われる特徴としては、上記した「言葉の遅れがある子への関わり」の項目でも述べましたが、わかる言葉が少ないことが挙げられます。また、2歳、3歳を過ぎても食事や着替え、排泄など身辺自立が中々身につきにくかったり、玩具などを用意しても遊び方がわからない子どもは知的な遅れのある発達障害の兆候を持っているかもしれません。
b.理解がゆっくりな子への関わり
知的な遅れによる場合は、もともと理解している語彙の数が少ない場合が多く、言語指示だけでなく、絵カードや写真など見てわかるものを活用することが大切です。また、実際にやるべきことを目の前で見せてあげたり、一緒に手をかけてやってあげるといった丁寧な関わり方が必要です。
聴覚記憶容量が乏しい場合も絵カードなど見てわかるものがあると指示を見て、視覚記憶に留めることができます。しかし、いつも絵カードなどの道具を持っていけるわけでもないため、単純に指示を短く伝えるという方法も手立ての一つです。
その子どもが2語文程度なら聞き留められるのか、3語文程度までなら聞き覚えられるのかなどを簡単にテストすることで、どのくらい指示を短くしたらよいのかと言う指標になるので、確認してみるとよいと思います。
(4)文脈の理解が難しい子
a.文脈の理解が難しい子の兆候
言語指示の文脈を理解することが苦手な子の場合は、指示したこととは少しずれた行動をしたり、相手の気持ちが汲みにくく、失礼な言動を悪気もなくすることがあり、これも自閉スペクトラム症やADHDといった発達障害の子の特徴と言われています。
例えば、園で玩具で遊んでいる場面で先生から「みんなご飯の時間だよ準備して」と指示されれば、定型発達と言われる子どもの多くはそれまで遊んでいた玩具を片づけて、椅子を並べたり、持ってきたお弁当を机に持ってくることができると思います。
しかし、指示の文脈を汲むことができないと「みんな」という言葉の中に自分が含まれているかどうかわからず、そのまま遊び続けたりします。あるいは、「準備して」だけにとらわれて、玩具を片づけず、一人だけお弁当を持ってきて座っているということもあります。
「文脈の理解が難しい子ども」と一言でいっても、お子さん一人一人によって状態像も違います。しかし、相手の気持ちを汲むということが難しいお子さんは発達障害の兆候を持っているかもしれませんので、気を付けてみていきましょう。
b.文脈の理解が難しい子への関わり
このように文脈を汲めない子どもの場合は「みんなご飯の時間だよ、玩具を片づけてからご飯の準備をします。○○さんも玩具を片づけてからご飯です」などより具体的に伝えてあげることが大切です。
「文脈の理解が難しい子ども」には様々なタイプがありますので、その子どもに合わせた関わりが必要です。しかし、「文脈の理解が難しい子ども」の中には、就学してからも学習がゆっくりであったりして、勉強が苦手になる子どもも少なくありません。
遊びが主体であった保育園・幼稚園での生活から、就学すると勉強が主体の生活に変わるため、成績などによって自己評価を形成することも増えていきます。結果として、自信を喪失したり、自己評価が低下するなどの問題も生じる可能性がありますので、就学前からその子がどのような伝え方をすると理解しやすいのかと見つけておくことが重要です。
3.家族への関わり
発達が気になるお子さんを持つ親御さんは「自分の育て方が悪かったのかな」とどうしても自分自身を責めてしまいがちです。しかし、発達が気になるお子さんは元々生まれ持って育てにくさを持っていたりします。
ですので、親御さんは自分のせいにはせず、積極的に周りを頼りましょう。専門的な資格のある人だけでなく、同じような特徴のあるお子さんを持つ親御さんとお話しすることもよいでしょう。
また、親御さん自身が疲れ切ってしまっては、お子さんも気持ちよく過ごすことは難しいです。親御さん自身、気持ちにゆとりを持って子育てできるとお子さんも安心ですね。また、じっくりお話ができるカウンセリングを活用してみるのもお勧めします。
4.発達が気になる子の相談をする
乳幼児期の「発達が気になる子どもの関わり」をいくつかの特徴から解説しました。
発達が気になる子どもに対しては、なるべく早い時期から支援し、その子どもに合わせた関わり方をしていくことが大切です。早い時期から支援したからといって、発達が他の子に追いついたり、一気に成長するというわけではありません。
しかし、その子どもが困らないようなサポート体制を作ることができ、家族の負担も軽減でき、結果として子どもの健やかな成長が期待できるようになるでしょう。
このような発達が気になる子の相談の窓口は教育センターや市役所の窓口、医療機関などいくつかあります。
当オフィスである(株)心理オフィスKでもこのような相談を受け付けています。相談を希望する方は以下の申し込みフォームからお問い合せしていただければと思います。