【チェックリスト付き】感覚過敏と発達障害について
発達障害のある人の特性の一つに、日常当たり前に受ける刺激(音、臭い、味、温度、視覚など)の感じ方の違いが挙げられています。その感覚が過度に過敏であったり、反対に過度に鈍感であったりします。
ここではその感覚過敏と発達障害の関連性を中心に説明したいと思います。
さらに、感覚過敏についてのチェックリストがこのページの下の「感覚面のチェックリスト」にありますので、ご興味ある方は一度チェックしてみてください。
目次
発達障害とは
発達障害とは別のページでも説明していますが、生まれつき思考や行動、感情、知能などに偏りがある障害です。
発達障害の症状には、落ち着きがなく動き回ったり、人とのコミュニケーションがスムーズにいかなかったり、特定のことに強いこだわりを示したり、衝動的に行動してしまったりすることなどがあります。
発達障害をより詳しく知りたい方は以下のページでもまとめていますので、そちらを参考にしてください。
刺激の感じ方について
私たちは日常過ごしている中で様々な刺激を受けています。テレビなどの機械音、照明の明かり、部屋の匂い、温度など、これらは無意識に刺激として受け入れていると思いますが、これらの刺激を意識しても特に何とも感じないのではないでしょうか。時期によっては「雨の音が少しうるさいな」や「少し寒いな」と思うぐらいだと思います。
しかし、発達障害のある人はこの刺激の感じ方が定型発達の人とはだいぶ異なり、LED電球が「まぶしすぎる」と感じたり、人が多いところでは「ざわざわうるさい」と感じることがあります。また、他には「シャワーが痛い」と言う人もいます。その方曰く、桶などですくった水は体に面として当たるのに対して、シャワーの水は体に点として当たるので、痛いと感じるそうです。このように「痛い」や「まぶしい」などと比較的敏感に感じる傾向があります。
一方でコタツの中に足を入れていて火傷をするといった発達障害の方もいます。定型発達の人であれば、コタツの中が熱いと感じれば、足を出したり、コタツの温度を下げたりしますが、発達障害のある人の中には温度や痛みに鈍く、けがをしても中々気づかないといった方もいます。先ほどは感覚が敏感だったのに対して、感覚が鈍い方もいます。
これらは感覚過敏や感覚鈍麻と言われることがあり、感覚過敏と感覚鈍麻のどちらかを持ち合わせている人もいれば、過敏さや鈍感さの両方ある方もいるため、日常生活に支障をきたしやすいです。
感覚の種類
そもそも感覚については、皆さんご存じの「五感」があります。「五感」とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことで、これらは比較的自分でも意識しやすい感覚です。一方でほとんど意識せずに使っている感覚もあります。それは「平衡感覚(前庭感覚)」と「固有感覚(身体感覚)」と呼ばれるものです。
「平衡感覚(前庭感覚)」とは体がバランスをとる時に働く感覚で、姿勢のコントロールに関わっているといわれています。耳のなかにある三半規管や耳石器と呼ばれるところが刺激を感じる部位となって、重力やスピードを感知し、体のバランスを調節します。
「固有感覚(身体感覚)」とは関節をどれくらい曲げているか、筋肉がどれくらい張っているかを感じる感覚といわれています。これは筋肉の内部にあるところが刺激を感じ、自分の体の位置や動きを調節します。
なぜ、平衡感覚と固有感覚を挙げたのかは後程説明しますが、発達障害のある人の一見不思議な行動は平衡感覚や固有感覚の感じ方でつまずきが見られていることが多いようです。
感覚過敏とは
一般的には、感覚がとても敏感であり、生活を送るうえで大きな不便があることを「感覚過敏」と言います。感覚過敏は、周囲の音や匂い、味覚、触覚など外部からの刺激が過剰に感じられる結果、激しい苦痛を伴って不快な状態に陥ることを意味します。
通常では、刺激というのは、聴覚や視覚、あるいは触覚や味覚、そして嗅覚などあらゆる感覚領域に対して起こり得るものであり、その症状や重症度は個々によって多種多様です。
感覚過敏における症状の現れ方は人によって様々に異なり、ひとつの感覚のみに過敏性が認められる場合もあれば、複数の感覚に渡り見られるケースもあります。
以下に具体例を列挙していきます。
(1)視覚過敏
太陽光のまぶしさや蛍光灯のちらつき、パソコンの画面や紙の白さなどが異常に眩しく感じられる状態です。本の文字が歪んだりして見えることがあり、読むのが困難になる傾向があります。
他にも明るい屋外をとてもまぶしく感じる、あるいは視覚情報が一斉に飛び込んでくることでパニックになることもあります。
(2)聴覚過敏
特定の音がものすごく苦手であり、一般的なレベルに感じられる程度の音が異常に大きく感じられる状態です。
例えば、蛍光灯や冷蔵庫の音、時計の秒針などの小さな音が気になって我慢できずに、耳の奥が痛くなり、頭痛やめまいを併発することもあります。
(3)触覚過敏
例えば、セーターや他の衣服などを着用した際にチクチクした触感が耐えられないほど不快に感じる状態を指します。
通常では、特定の肌触りの服は絶対に着れない、あるいは他人に触られることや握手すること自体が苦手である場合が多いです。
(4)嗅覚過敏
例えば、洗剤や化粧品など特定の匂いが苦痛で吐き気や頭痛を起こす状態です。
周囲の匂いに敏感すぎて、公共交通機関などに長時間居ることができずに日常生活に支障をきたす傾向もあります。
(5)味覚過敏
味や温度、あるいは舌触りなどを口の中で敏感に感じ過ぎて、食べられないものが出てくる状態です。
特定の触感に対して、砂を噛むような感覚を経験する、あるいはゴムを噛んでるように自覚されることがあります。
(6)その他
これら以外にも、温度感覚が過敏で温度差が極端に苦手な場合、または平衡感覚が過敏で乗り物酔いをしやすいケース、そして気圧の変化に敏感で体調に大きく影響するなど多彩な症状を呈します。
感覚過敏が実際にどの程度かは個人によって異なりますし、これらの感覚過敏症状がいかに影響を与えるかは周囲の環境要因によって変わることもあります。
感覚過敏の原因
感覚過敏の原因については、ストレスからの発症や脳機能に関連する場合があります。感覚過敏には、主に3つの原因が挙げられます。
(1)身体機能の異常や疾患
まず考えられるのは、耳や目などの受容器や感覚器に関連した身体機能の異常や疾患がある場合です。聴覚であれば、突発性難聴やメニエール病などに伴って、聴覚過敏が生じる場合があります。
また、てんかんや脳卒中など、脳神経系に障害が起こることで感覚過敏が誘発されることも考えられます。
(2)ホルモンバランス
2つ目には、「不安やストレス」が原因となり、ホルモンバランスが乱れて感覚過敏を起こす場合も見受けられます。
ストレスが原因の場合には、若い世代や学生時には異常がなかったのに、大人になって社会に出て働き始めてから感覚過敏になったという人が多い傾向があります。
(3)発達障害
3つ目として、先天性の発達障害に付随して、感覚過敏の症状が現れる場合があります。発達障害に見られる脳の機能の偏りが、感覚機能に作用することが時に存在するのです。実際に、発達障害の診断基準の中では、自閉スペクトラム症における一つの症状として、感覚刺激に対する過敏さ(鈍感さのケースもあり)が挙げられています。
特に、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症では、社会的なコミュニケーションの障害とともに聴覚や触覚など様々な感覚モダリティに過敏性があると言われております。また、自閉症スペクトラム障害では聴覚過敏を併せ持つ人が少なくなく、そうした刺激に対してのパニック症状が社会的な不適応につながることが経験的に知られています。
自閉スペクトラム症についての詳細は以下のページをご覧ください。
感覚面のチェックリスト
それでは、感覚面のアセスメントの際に見るポイントを紹介したいと思います。敏感な感覚や鈍い感覚というのは誰しもが持っているものです。以下のエピソードに当てはまったからといって発達障害というわけではありません。
まずは簡単に以下のエピソードを読んで、「ある」か「ない」かにチェックをしてみてください。
いかがでしたでしょうか。
- 合計得点が0点以上のプラスになっていれば感覚的に過敏なところがあるかもしれません。
- 合計得点が0点以下のマイナスになっていた方は感覚的に鈍感なところがあるかもしれません。
- 合計得点が0点前後であれば、感覚を感じる部位によって敏感さと鈍感さの両方を持ち合わせているかもしれません。
どなたでも上記のどれかのエピソードに当てはまると思いますが、発達障害のある人はその頻度や度合いが違い、日常生活を送るのにも不都合さを感じているようです。
今回感覚面のチェックリストをしてもらいましたが、発達障害のある人(特に幼児期・学齢期)の中にはじっとしているのが苦手という人が多いと思います。その背景には、実は前庭感覚や固有感覚の鈍さがあるのです。
平衡感覚や固有感覚の刺激を常に体に感じていないと気持ちが悪いので、自分で刺激を入れるために、高いところからジャンプをしたり、走り回ったりしているのです。本人は決してわざと注意されるためにしているのではなく、刺激を体に入れているだけなのです。
友達に「痛い」と言われてもその触り方をやめないのは、固有感覚が鈍くて、力のコントロールの仕方が自分ではわからないのです。
感覚過敏への対応
感覚面のチェックリストやアセスメントを通して、敏感な感覚や鈍い感覚の整理がある程度できたと思います。それでは整理できたことからどのような対応ができるのかについて説明します。
(1)感覚の過敏さがある場合
基本的にはその刺激にそもそもさらさないといったことが必要です。「苦手な刺激でも何度も繰り返し感じさせていれば、その内慣れるだろう」は大きな間違いです。本当に小さい刺激から感じさせることで、慣れるということはあるかもしれませんが、非常に時間がかかりますし、限界がすぐに来ます。
例えば、隣の家や部屋からとても大きな音が夜通し鳴っていて、注意しに行ったら、その住人から「別にうるさくないでしょ、その内慣れるから我慢してよ」と言われて納得できるでしょうか。発達障害のある人は日常的にそのように言われているのです。
そもそもその刺激がなければ、問題なく過ごせることだってあるので、苦手な刺激にはさらさないというのが基本的な対応です。ただ、苦手な刺激にさらさない方法はその感覚を感じる部位や人によっても異なるので、一人一人に合わせて考えていく必要があります。学齢期・青年期の感覚過敏があるお子さんで、制服の素材が苦手で、不登校になるという例もあります。お子さんに合わせて柔軟に対応することが必要になっていきます。
(2)感覚の鈍感さがある場合
先ほどとは反対にその刺激を感じさせてあげることが必要です。ただ、それは周りの迷惑にならないような場所や時間を考慮する必要があります。
平衡感覚の鈍さがある方はどうしても体を動かしてしまいますが、動かしても良い時間や機会を作ってあげると少し落ち着きます。よくあるのは授業中にプリントを配ってもらうなどがありますし、大人の場合は自分で席を立つということもできます。
固有感覚の鈍感さがある人には、力加減を教えてあげる必要があります。例えば、マッサージをする人に「そこは軽く押すだけでも心地がよいです」「強く押してください」と言うように、「あなたの力加減は強い・弱い」というのを教えることが必要です。
(3)発達障害の感覚過敏への対応
発達障害の当事者には、身体感覚に過剰性をもつ感覚過敏という問題を抱えている方が多いと言われていますが、感覚過敏の支援を行うために必要なデータは現在ほとんど見当たりません。ここでは、注意欠陥多動性障害を含む発達障害をもつ患者さんによく見受けられる感覚過敏の一例とその対処方法をいくつか紹介していきます。
注意欠陥多動性障害については以下に詳しく説明しています。
まずは、視覚過敏の方ができる対処法として、ブルーライトカットの眼鏡やサングラスを携帯する、または屋外に出る際にはつばの広い帽子をかぶる、あるいは室内照明やPC画面の明るさを暗めに設定するなどが挙げられます。
特に、視覚過敏の方では、晴れた日などに屋内から屋外に出る場合には視覚的刺激が刺すような痛みとして感じられるかと思いますので、それらを防ぐためにも外出前には眼鏡やサングラスを掛けるように意識しましょう。。
聴覚過敏をもつ発達障害を抱えている人ができる対処法としては、イヤーマフやノイズキャンセリング付きのイヤホンを使う、または話に集中したいときは静かな室内を選ぶ、あるいは仕事場のデスクをうるさくない場所にしてもらうなどが考えられます。
触覚過敏の方々が日常的に対策できる方法としては、服の素材を見て化学繊維の服などを避けるようにする、または身体に触れる必要があるときには事前に一声掛けてもらう、あるいは常に手袋を持ち歩くなどが推奨されます。
触覚過敏の方の中には、化学繊維などにアレルギーを持つことが一端を担っている場合もありますので、服を選ぶときにはしっかりと素材を見るように心掛けましょう。
次に、嗅覚過敏の発達障害を患う方ができる対処法としては、マスクを携帯する、またはアロマオイルなど自分が落ちつける香りを持ち歩くなどが考えられます。
特にマスクは人混みの中へ行くときなどに携帯するように意識して、もし不快な匂いを嗅いでしまった時には自分が気に入っているアロマオイルなどを少量噴霧したハンカチを手に取って気分を落ちつけましょうね。
味覚過敏の場合には、例えば苦手な食べ物は無理して食べない、またはできるだけ薄味のものを注文する、あるいは水やガムなどの口直しできるものを携帯するなどの対処策が講じられることが多いです。
味覚過敏の方は、少しでも自分が苦手だと思うものがあったら、無理に食べずに控えておいた方が良いでしょう。
感覚過敏についてのよくある質問
感覚過敏とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの感覚が過度に敏感になり、通常は気にならない刺激に対して強い不快感や困難を感じる状態を指します。たとえば、明るい光や大きな音、人混みの匂いなどが過度に感じられることがあります。感覚過敏は個人差が大きく、ある人は特定の感覚だけに過敏である一方、他の人は全体的に感覚に敏感になることもあります。感覚過敏は、発達障害の一部として現れることもありますが、必ずしも発達障害が原因というわけではありません。感覚過敏は、日常生活の中で様々な困難を引き起こし、本人が自分のペースで生活することを難しくすることがあります。特に、外部の刺激に敏感に反応しやすいため、ストレスや不安を感じる場面が増え、自己表現がうまくいかないこともあります。感覚過敏は早期に認識され、対応策を講じることが重要です。
感覚過敏は、発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)と関連が深いとされています。自閉スペクトラム症(ASD)を持つ人々は、感覚処理に特異な反応を示すことが多く、感覚過敏はその一部として現れることがあります。例えば、特定の音や光、匂いに過度に反応したり、逆に感覚が鈍くなることもあります。また、ADHDを持つ人々も、集中力を欠いたり、外部の刺激に過敏に反応したりすることが多く、感覚過敏の症状を持つことがあります。感覚過敏があると、注意が散漫になりやすく、感情のコントロールが難しくなることがあるため、生活全般に支障をきたすことがあります。このような状態を改善するためには、発達障害の特性を理解し、環境や対応方法を調整することが求められます。感覚過敏を理解し、適切な支援を行うことが、発達障害のある人々がより良い生活を送るために重要です。
感覚過敏には、視覚過敏、聴覚過敏、嗅覚過敏、味覚過敏、触覚過敏の5つの主な種類があります。それぞれの感覚が過敏になることで、特定の環境や状況で不快感や困難が生じることがあります。視覚過敏は、強い光や明るい色、ちらつきに敏感に反応することを指します。これにより、照明が強すぎる場所で目を痛めたり、屋外での日差しに耐えられなかったりします。聴覚過敏は、大きな音や特定の周波数の音に過剰に反応し、耳をふさぐなどの行動が見られることがあります。嗅覚過敏は、匂いに過敏に反応し、強い臭いに対して吐き気や不快感を感じることがあります。味覚過敏は、特定の食べ物や味に対して過度に敏感になる状態で、食事を取ることが困難になることがあります。触覚過敏は、衣服のタグや特定の物に触れることに過敏に反応し、かゆみや痛みを感じることがあります。これらの感覚過敏は、日常生活において多くの困難を引き起こし、適切な支援や環境調整が必要となることが多いです。
感覚過敏の症状は、過度な不快感や痛み、集中力の低下、回避行動などが含まれます。感覚過敏のある人々は、特定の感覚に過度に反応するため、日常的に強いストレスを感じることがあります。例えば、明るい光が眩しく感じられる、近くで大きな音が鳴ると耳をふさぐ、特定の物に触れると不快感を感じるなどがあります。また、感覚過敏は、注意力が散漫になったり、思考がまとまらなくなったりする原因となり、仕事や学業に影響を与えることがあります。感覚過敏を持つ人々は、周囲の刺激が多すぎると疲れやすく、場合によっては、外出を避けるなどの回避行動を取ることがあります。これらの症状が長期間続くと、精神的な健康にも影響を与える可能性があるため、早期の認識と対応が求められます。
感覚過敏の原因は、神経系の過敏性や発達障害に関連する脳の処理機能の違いなどが考えられます。具体的な原因は個人差があり、完全には解明されていませんが、感覚過敏は脳が外部の刺激を過度に反応することによって引き起こされることが多いとされています。例えば、自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)のような発達障害を持つ人々の脳では、感覚情報を処理する方法に差異があるため、過剰に感覚に反応することが多くなります。また、過去のトラウマやストレスなども感覚過敏を引き起こす要因となることがあります。神経系の過敏性や遺伝的な要因も影響する場合があり、感覚過敏が他の症状や障害と関連していることがあるため、総合的なアプローチでの評価と対応が必要です。
感覚過敏の診断は、専門の医師や心理士による面接や観察、質問票などを通じて行われます。診断においては、感覚過敏の具体的な症状を確認し、他の障害や状態と関連があるかを評価することが重要です。感覚過敏の症状が発達障害に関連している場合、発達障害の評価を行うこともあります。診断のプロセスでは、クライエントの生活状況や環境における感覚過敏の影響を考慮し、どの感覚に過敏であるか、どの程度の影響があるかを明確にすることが求められます。専門家による診断と評価は、感覚過敏の理解を深め、適切な支援策を講じるための第一歩となります。
感覚過敏の治療法としては、環境調整、感覚統合療法、認知行動療法、薬物療法などが考えられます。環境調整では、刺激が過度に強い状況を避けるために、明るさや音量、温度などを調整することが有効です。また、感覚統合療法は、感覚情報の処理を改善するための療法で、視覚、聴覚、触覚などの感覚を適切に統合できるよう訓練することが目指されます。認知行動療法では、感覚過敏に対する反応を改善するために、認識の仕方や行動の調整を行います。薬物療法は、感覚過敏による不安やストレスを軽減するために、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。これらの治療法は、クライエントの状態に合わせて組み合わせて行うことが推奨されます。
感覚過敏を持つ子どもへの接し方は、理解と柔軟な対応が重要です。まず、感覚過敏を持つ子どもがどのような刺激に過敏であるのかを理解し、その情報を基に日常生活を調整することが必要です。例えば、音や光が強すぎる環境では、静かな場所や落ち着いた照明の中で過ごせるように配慮します。子どもにとっては、過敏な刺激に遭遇すると不安や恐怖を感じることがあるため、落ち着いた態度で接し、感情をサポートすることが大切です。また、感覚過敏を持つ子どもには、一貫性のあるルールや予測可能な環境を提供することが有効です。感覚過敏に対応するための方法は個別であり、子どもの特性を理解し、柔軟に対応していくことが大切です。
感覚過敏を持つ大人には、職場での環境調整と配慮が必要です。例えば、静かな作業環境を提供する、強い音や光を避けるための工夫をする、場合によってはヘッドフォンやアイマスクを使用できるようにするなどが考えられます。また、感覚過敏を持つ人には、仕事の進行にあたって予測可能なスケジュールを提供し、適切なタイミングで休憩を取れるように配慮することも重要です。職場での理解と協力が、感覚過敏を持つ人が快適に働ける環境を作り、仕事のパフォーマンス向上にもつながります。適切な配慮を行うことで、職場内でのストレスを軽減し、生産性を高めることができます。
感覚過敏を持つ人への社会的な配慮は、周囲の環境を調整し、感覚的な負担を減らすことが大切です。例えば、公共の場での過剰な音や光、においを避けるよう配慮することが必要です。また、周囲の人々は感覚過敏を持つ人が不安やストレスを感じている場合、そのサポートを行い、無理のないように接することが求められます。社会全体で感覚過敏の理解を深め、適切な対応を行うことで、感覚過敏を持つ人々がより良い生活を送ることができます。配慮が行き届いた環境で過ごすことが、感覚過敏を持つ人の生活の質を向上させるために不可欠です。
発達障害についてのトピック
感覚過敏と発達障害について相談する
感覚過敏の具体的な症状からその種類別の対処法までを解説してきましたが、あなたの生活に役立てられそうな情報は一つでも見つかりましたか。
発達障害のある人が日常どんな感じ方をしているのかは中々理解しづらいことだと思います。それでも、不思議な行動の背景には刺激の感じ方の違いが要因としてあるのだと思います。感覚過敏を疑われている方は、まずは症状に合った精神科を含む診療科で医師の診断を仰ぎましょう。その上で、あなた自身ができる対策を講じていきましょう。
一方で、感覚過敏を完全に自力で無くすことはなかなか困難ですので、できるだけ周りの人を頼ってサポートしてもらうことが重要です。特に仕事の環境では、同僚や上司、あるいは産業医を当てにするなど、多方面からの協力を仰ぎ多角的なアプローチで苦難を乗り越えていきましょう。
この記事が、感覚過敏で悩む方にとって少しでも参考になれば幸いです。当オフィスでも発達障害の相談やカウンセリングをしています。ご希望の方は以下の申し込みフォームからお問い合せください。
文献
この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。
- 自閉っ子、こういう風にできてます!(花風社)
- 続 自閉っ子、こういう風にできてます!―自立のための身体づくり(花風社)
- 自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法(東京書籍)
- 感覚統合Q&A 改訂第2版―子どもの理解と援助のために(協同医書出版社)
- 学校・家庭で楽しくできる 発達の気になる子の感覚統合あそび(ナツメ社)
- 子どもの発達と感覚統合(協同医書出版社)
- 近藤 武夫, 福本 理恵, 中邑 賢龍:アスペルガー症候群における聴覚性感覚過敏の神経基盤. 日本心理学会大会発表論文集. 日本心理学会第71回大会.セッションID: 3AM076
- 田沢 奈緒, 綾屋 紗月, 熊谷 晋一郎, 森田 昌彦, 田中 文英:発達障害者の感覚過敏要因収集のためのスマートフォンアプリケーションの開発. 人工知能学会全国大会論文集. 第28回 (2014).セッションID: 2E1-2