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愛着障害とは:原因、特徴、克服、治療、カウンセリングなどを解説

失われた愛情をめぐって

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ここでは愛着障害に関する理論、原因、特徴、克服方法、治療方法、カウンセリングなどについて解説しています。愛着障害とは、養育者との間で適切な愛情や接触、コミュニケーションなどが充分ではなかったり、反対に過度であったりすることで、対人関係や恋愛関係、職業生活などに支障をきたすことをさします。

1.はじめに

以前に体験した、少し印象的なことを書こうと思います。

あるレストランで昼食をとっていたのですが、隣の席に小さい子どもを連れた家族連れが食事をしていました。別に聞き耳を立てていたわけではないのですが、話し声が聞こえてきました。内容はなんでもないことですが、独特のイントネーションと言葉使いからその家族の出身地はすぐに分かりました。そして、当然といえば当然なのですが、その家族の両親と同じイントネーションで子どももしゃべっていました。

全くなんの変哲もない日常の風景だったかと思います。

子どもは親を代表とした養育者の元で育ちます。その養育者から色々なものを得て、学び、取り入れて成長します。言葉はその代表的なものでしょう。子どもは幼少期であればあるほど、意識しませんが、養育者からの影響は大きいでしょう。

ここではこうした養育者との関係、つまり愛着とそれが阻害された結果としての愛着障害について書いていきます。

2.愛着障害とは

(1)愛着の意味

愛着とは英語ではアタッチメントと言います。日本語表記の愛着だと愛や愛情といった情緒的なものが強調されるニュアンスがします。一方で、英語表記のアタッチメントでは、取り付ける、ひっつく、接触するといったニュアンスが強く、愛や愛情といった部分は比較的メインではありません。

いずれにせよ、愛着(アタッチメント)は主には養育者との愛情生活や皮膚感覚での接触の体験をさします。このことが一定程度以上に経験することが健康な発達と成長には欠かせないことです。

(2)愛着についての歴史

元々は親のいない乳児を育てる乳児院において、乳児の死亡率の高さが社会問題となっていました。衛生面や設備面などを向上させることで、多少なりとも死亡率は改善しましたが、十分ではありませんでした。また、死亡せずに成長したとしても、発達が遅れていたり、情緒的に不安定だったりすることが往々にありました。

こうした問題について研究を重ねることで、物理的な衛生や設備ではなく、世話をする人がどれだけ乳児と接触したのかが、その後の死亡率や発達が遅れる問題に関係していることがわかってきました。

こうしたことが20世紀の初期から中期にかけて取り組まれたことでした。この課題を研究する中で愛着ということが人間としての発達に非常に重要であることが分かってきました。そして、それと同時に、愛着が欠けることがどれほど人間の成長に有害であるかも分かってきました。

愛着対象がいないことが非常に寂しい思いをすることは想像に難くないでしょう。

(3)愛着についての理論

a.ジョン・ボウルビィ

ジョン・ボウルビィの写真

図1 ジョン・ボウルビィの写真

児童精神科でもあり、精神分析家でもあったボウルビィは愛着の問題を研究テーマとして取り上げ、精力的に解明していきました。そうした中で愛着理論が徐々に出来上がっていきました。

愛着理論は人と人との接触や親密さと、それに基づく愛着行動について体系的にまとめた理論です。幼児は6ヶ月から2歳にかけて、継続的に接した養育者と活発なコミュニケーションをかわし、その養育者に対して愛着や愛情を示します。その後は、その愛着の対象である養育者を安全基地にし、少し離れては戻り、戻ってはさらに離れたところにいく、という探索行動を活発に行うようになります。

これが幼児の世界を広げることになります。また、養育者以外の人物との接触も徐々に増えていき、そうした人物との間でも愛着行動が形成されていきます。

(参考文献:Bowlby. ‘Note on Dr Lois Murphy’s paper, “Some aspects of the first relationship”.’ Int. J. Psycho-Anal., 45, 44-6. 1964.)

b.ハーロウ

有名なハーロウのアカゲザルの実験というものがあります。胸当たりに哺乳瓶だけをつけたワイヤーの人形と、哺乳瓶はない毛布でできた人形を置き、子ザルがどちらに愛着を示すのか、という実験です。結果は空腹の時だけワイヤーの人形の哺乳瓶からミルクを飲みますが、それ以外の時間は哺乳瓶のない毛布の人形に抱きついて過ごしていました。

このことからすると、単に栄養や食物を与えてくれるから愛着を示すのではなく、肌と肌の触れあいや接触が心を落ち着かせることが分かります。これも一つの愛着について考える一つの実験であると思います。

ハーロウのアカゲザルの実験

図2 ハーロウのアカゲザルの実験の様子

(参考文献:Harlow, H.F. 1979. The human model: Primate perspectives. V.H. Winston & Sons, Washington D.C.)

(4)母性剥奪

もし何らかの事情で子どもが養育者との健全でほどほどの関係を持てなかった時、子どもはどうなるでしょう。何らかの事情で適切な養育を受けれない子どももいます。虐待などはその典型かもしれませんし、過去であれば戦争や紛争により、過酷な状況で生きねばならないこともあったでしょう。

イギリスの小児科医であり、かつ精神分析家であったウィニコットはそのようなことを愛情剥奪の観点から論じました。愛情剥奪の子どもは様々な困難を抱えます。もちろん、それでも健康に成長していく子どももいるでしょうが。

スピッツは子どもが長期にわたって施設で生活をすることによって心や身体の発達に遅れや障害が生じることをホスピタリズムと言いました。これは養育者との接触やコミュニケーションが不足することから起こるとされていました。そして、後に、養育者との接触やコミュニケーションが不足することだけではなく、同一人物との長期にわたる接触が大事であるということが分かってきました。

つまり、養育者がコロコロと変わり、一貫したアタッチメントが得られないことが子どもの心身の発達に問題が生じるのです。こうしたことも母性剥奪と言えるでしょう。

ルネ・スピッツ

図3 ルネ・スピッツ

(参考文献:Spitz, R.A. (1957). No and yes : on the genesis of human communication. New York : International Universities Press.)

(5)内的作業モデル

乳幼児は母親にまとわりついたり、離れた時に泣いたりするといった行動レベルで愛着を示します。行動レベルの愛着が次第に変化し、対人認知の質を形成します。それと同時に、自分自身の自己認知・内的表彰としても形成されます。この愛着にまつわる他者認知と自己認知は、他者の自分への行動を予測したり、人との関係を事象と関連付けて理解し、他者への一般的な態度を形成する基盤となります。

これをボウルビィは内的作業モデルと言いました。こうした内的作業モデルが愛着を通して形成していくことで、人間関係を維持し、ほど良い対人関係を楽しみ、社会の中で生活していける能力となります。

3.愛着障害と愛着スタイル

愛着には4つのパターンもしくはスタイルがあることが分かっています。そのスタイルを測定するのがストレンジ・シチュエーション法とAAI(成人用アタッチメント面接 Adult Attachment Interview)です。

(1)ストレンジ・シチュエーション法

a.ストレンジ・シチュエーション法の手順

ストレンジ・シチュエーション法(SSP)とはエインズワースが開発した、乳幼児の愛着を測定する実験的な方法です。以下のような一定の手続きを経て、乳幼児がどのような反応を示すのかによって愛着のスタイルを測定します。

  1. 母親と乳幼児が部屋に入室する
  2. 部屋で3分、遊ぶ
  3. 見知らぬ人が入室し、3分それぞれの椅子に座る
  4. 母親が退室し、乳幼児は見知らぬ人と一緒に3分いる
  5. 見知らぬ人は退室し、交代で母親が入室し、3分遊ぶ
  6. 母親が退室し、乳幼児は1人で3分過ごす
  7. 見知らぬ人が入室し、3分過ごす
  8. 見知らぬ人が退室し、交代で母親が入室すし、3分遊ぶ

この8つの流れの中で乳幼児がどのような反応を示すのかを観察・記録します。

以下の動画は実際の様子です。英語ですので分かりにくいかもしれませんが、雰囲気は分かるかと思います。

The Strange Situation – Mary Ainsworth

(引用文献:Ainsworth, Blehar, Waters, & Wall. Patterns of attachment: A psychological study of the strange situation. Hillsdale, NJ:Erlbaum,1978.)

b.ストレンジ・シチュエーション法からの愛着スタイル

ストレンジ・シチュエーション法で記録された結果は先ほどの自己の内的作業モデルと他者の内的業モデルと、それぞれが肯定的・否定的という2つの軸から理解していきます。

愛着のスタイル

図4 内的作業モデルを軸にした愛着スタイル

(a)安定型

母親が退室すると不安や混乱を示しますが、戻ってくると身体接触を求め、安定します。

(b)回避型

母親が退室しても不安や混乱を示さず、見知らぬ人が入ってきても無反応です。母親が戻ってきても愛着を示しません。

(c)葛藤型

母親の退室に強い葛藤を示し、また母親が戻ってきた時には怒りを母親にぶつけます。

(d)無秩序型

静かにしていたと思ったら、急に暴れ出したりするなど、無秩序で、一定の反応を示しません。

(参考文献:Main & Solomon. Discovery of an insecure-disorganized/disoriented attachment pattern: Procedures, findings and implications for the classification of behavior. In T. B. Brazelton,& M. Yogman,Affective development in infancy.Norwood,NJ:Ablex. 1986.)

c.愛着スタイルの割合と文化差

表1 愛着スタイルの割合と文化差

安定回避葛藤
日本68.33%0.00%31.67%
スウェーデン74.51%21.57%3.92%
イスラエル56.63%8.43%33.73%
イギリス75.00%22.22%2.78%
ドイツ32.65%48.9%12.24%
オランダ5.85%34.15%0.00%
アメリカ66.04%21.70%12.26%

これを見ると、日本では安定型が圧倒的に多く、その次に葛藤型となっています。回避型は0%という結果のようでした。

(引用文献:Thompson. Early sociopersonality depelopment. In W.Damon & N.Eisenberg, Handbook of child psychology, 5th ed., Vol.3. Social, emotional, and personality development. NJ:John Wieley & Sons, Inc, 1998.)

(2)成人用アタッチメント面接(AAI)

ストレンジ・シチュエーション法は主に乳幼児のために開発された愛着スタイルの測定方法で、成人は対象外でした。そこで、マインらは成人の愛着スタイルを測定するために成人用アタッチメント面接(AAI)を開発しました。

a.成人用アタッチメント面接(AAI)の手順

成人用アタッチメント面接(AAI)では1時間程度の半構造化面接で実施する方法です。その中で以下の15項目の質問に口頭で回答してもらい、それを分析します。

  1. まず、あなたの子供時代の家族構成、どこにお住まいになっていたか等からお話していただけますか?
  2. あなたの小さい頃の御両親との関係をできるだけ小さいころにさかのぼってお話していただきたいのです。
  3. 子ども時代の(母/父)との関係を描写するような言葉を5つ教えてくだい。
  4. 私が、それらを書きとめ、その後どうしてその言葉を選んだのかについてエピソードなどをお尋ねします。
  5. ご両親のどちらにより親近感を持っていましたか。また、それはどうしてですか。
  6. あなたが感情的に混乱した時、あなたはどのようにしましたか。また、どうなりましたか。特に思い出すエピソードはありますか。けがをしたときは。病気のときは。
  7. 両親と最初に離れたときのことを覚えていますか。
  8. 子ども時代、両親から拒絶されたと感じたことはありますか。そのとき、あなたはどのようにしましたか。両親は、子どもを拒絶したと自覚していたと思いますか。
  9. 両親に、恐らくしつけのためか或いは半分冗談で、脅されたことなどありましたか。
  10. 御自分の御両親との全般的な経験が今の御自分にどのような影響を与えたと思われますか。子供時代の経験がご自分の成長の過程において何らかの否定的な影響を及ぼしたと思われた事などありますか。
  11. 子ども時代、両親がそのようにふるまったのはどうしてだと思いますか。
  12. 子供の頃に、親のように慕っていた他の大人の方はいましたか。
  13. 子供の頃に、御自分の親か他の家族の一員、例えば兄弟とか他の近しくしていた親戚がお亡くなりになった経験はありましたか。
  14. 子供時代の頃と比べて、御両親との関係にいろいろと変化があったと思いますか。
  15. 現在のあなたと両親との関係はどのようなものですか。

(注)この15項目以外にも回答者の反応に応じて、追加の確認項目などがあります。

(引用文献:上野永子(2010)Adult Attachment Interview の臨床への適用とその展望. 関西学院大学人文論究 59巻4号 pp164-180.

b.成人用アタッチメント面接(AAI)における愛着スタイルの分類

成人用アタッチメント面接(AAI)の結果から導き出される愛着スタイルの分類は図2のようになります。

成人用アタッチメント面接(AAI)における愛着スタイルの分類

図5 AAIによる愛着スタイルの分類

ストレンジ・シチュエーション法と成人用アタッチメント面接を比較すると、安定型は同じで、葛藤型はとらわれ型、回避型は軽視型、無秩序型は未解決型に相当します(表2)。

表2 SSPとAAIの分類の違い

ストレンジ・シチュエーション法成人用アタッチメント面接
安定型安定型
葛藤型とらわれ型
回避型軽視型
無秩序型未解決型

(3)愛着スタイルからみる病理

両手法から導き出される結果の内、無秩序型と未解決型に分類される人は多種多様な問題を引き起こします。これが即、愛着障害になるのかは議論がありますが、かなり近い関係にあると思います。

4.愛着障害のタイプ

いわゆる愛着障害には2つのタイプ、もしくは診断があります。以下ではその2つについて説明します。

(1)反応性愛着障害

不安や苦痛を感じた時、通常であれば保護者や頼れる人に愛着を示し、保護を求め、接触しようと試みます。しかし、反応性愛着障害では、そうした努力はしないばかりか、その苦痛を表現することもあまりしません。接触を試みることはせず、感情や情動の表現は非常に少なく、時には全く無反応であることもあります。

こうした状態は自閉症スペクトラム障害の一つの症状と酷似しています。ですので、これまでの養育環境や養育者との関係、発達の経過などを考慮して、鑑別していく必要があります。

(2)脱抑制性対人交流障害

脱抑制性対人交流障害は反応性愛着障害と全く反対に、過剰に人に接触し、べたべたし、馴れ馴れしく接します。それも全く見知らぬ人や普段は会わない人に対してもこのような行動をとります。

無差別に愛着行動を示し、他者の注意を引くために、大袈裟な行動や振る舞いをします。しかし、一方で他者と協調的に、協同的に行動することができず、コミュニケーションや対人交流はむしろチグハグです。そして、時には暴力的で、衝動的な行動を突発的にしてしまうこともあります。

こうした状態は注意欠陥多動性障害と似ているところもあるので、これについても鑑別は必要です。

(3)大人の愛着障害

反応性愛着障害と脱抑制性対人交流障害は両方とも5歳以前の幼児にしか診断はされません。5歳以降の幼児、もしくはそれ以降の大人に対してはこの2つの診断はつけることはできません。しかし、この2つの愛着障害に気付かれないまま大人になり、愛着障害的な問題や課題を抱えている人は多くいることでしょう。

大人の愛着障害の場合にも、対人関係が極端に乏しいか、極端に近づきすぎるかをしてしまいます。また、自信や自尊心を持つことができず、いつも自己否定したり、びくびくしてしまったりしてしまいます。

5.愛着障害の原因

愛着障害の原因となりうるものは多数あります。

  1. 養育者からのさまざまな虐待
  2. 養育環境の不十分さ
  3. 養育者との接触の少なさ
  4. 両親の不仲
  5. 両親の離婚
  6. 養育者との早期の離別
  7. 養育者との早期の死別
  8. 兄弟姉妹の間の極端な養育上の差別
  9. 称賛や褒めるなどの極端な少なさ
  10. 厳しい躾けや養育、等々

上記のようなことなどが愛着障害の原因と言われています。特に虐待などは直接的に愛着障害と関連性が見られます。虐待というほどではなくても、最近流行っている毒親やマルトリートメント(不適切な養育)といったことも原因と思われています。

いずれにせよ、生得的・遺伝的な要因ではなく、環境的な要因が強く影響していることは明白です。

6.愛着障害の症状や特徴

愛着障害の診断基準とはやや違いますが、愛着障害の方は主に以下の6つの領域において症状や困難さを抱えてしまいます。

(1)愛着障害の対人関係

人は人との関係の中でしか生きていくことができません。どれだけ人との接触を避けようとしても、ゼロにすることは不可能でしょう。対人関係にはコミュニケーションという側面があります。コミュニケーションを通して、言語的な交流と同時に非言語的な交流も行います。そして、その中には思いや気持ち、感情というものが多かれ少なかれ含まれます。

愛着障害の方は対人関係の中で良くも悪くも強い思いを含ませてしまいます。強い好意、理想、愛情、親しみなどを向けると同時に、反対に怒り、不満、憎しみ、嫉妬、恨み、寂しい思いなどといった否定的な感情も感じます。さらには、不安や恐怖、恐れ、苦痛などもあるかもしれません。

そうした強い感情があると冷静な対人関係を営むことができず、極端な距離の取り方をした対人関係になってしまいます。相手に対して過度にしがみついてしまったり、反対に極端に避けてしまったりなどは典型例です。こうしたことは愛着のスタイルにもよりますが、自然で、適度な愛着行動がとれないことに要因があるでしょう。

また、そうした激しいものではなかったとしても、他者に迎合し、過剰に適応し、自分を失ってしまうといったこともあります。良い子を演じると言ってもいいかもしれません。

(2)愛着障害の否定的自己像

愛着障害の方は他者との関係だけではなく、自分との関係、つまり、自分自身をどのように認知し、認識するのかについても問題が生じます。多くの場合には、自信が持てず、自尊心が低く、自分自身のことをないがしろにしてしまったりします。過度に自己否定的になり、「どうせ自分なんて誰からも愛されない」などといった絶望的な思いを抱いてしまうことがあります。

自己否定

時には卑屈になったり、なげやりになったりして、自暴自棄的な行動に至ってしまう場合も少なくありません。

他者から愛されなかったのであれば、自分自身のことを愛することはできないのでしょう。他者から大切にされなかったのであれば、自分自身のことを大切に扱うことはできないのでしょう。他者からケアされなかったのであれば、自分自身のことをケアすることはできないのでしょう。

(3)愛着障害の性的活動

他者との親密で、愛情のやり取りをする究極の行動は性的な行動であるといえます。恋愛関係は対人関係の一つの側面であり、やはりこの側面にも愛着障害の方は問題や困難さを抱えてしまいます。

好きな人であるにも関わらず、性的接触や性行為をすることを酷く汚らしく思ったり、怖いものと思ったり、不安を生じてしまったりして、行うことができない場合もあります。性的接触や性行為は嫌だけど、相手を引き留め、振り向かせる手段として嫌々ながら行為に応じてしまうという人もいるようです。

反対に、過度に性に奔放になり、不特定多数の人と性的な接触や性行為をしてしまう人もいるようです。こうしたことは性感染症や性犯罪のリスクとなりますし、そうした意味では自傷行為の一種と言って良いかもしれません。

(4)愛着障害の極端な情動

感情を適度にコントロールすることは成長するにしたがって徐々にできるようになっていきます。しかし、愛着障害の方はこうした感情コントロールが非常に困難である場合があります。些細な出来事に刺激され、感情を爆発させてしまうこともあります。また、当然感情を出して良い場面であるにもかかわらず、過度に抑制し、抑え込もうとしてしまうこともあります。それが行き過ぎて、感情を麻痺させたり、解離させたりすることもあります。

感情が爆発し、コントロールできなくなると、危険な行動を衝動的に取ってしまう場合もあり、非常に危うい状況になってしまいます。

(5)愛着障害の衝動的な行動

人は思考を働かせて、状況を分析し、先を予測し、メリットとデメリットを検討し、その上で計画的に行動を起こす、という一連の作業を行います。そうすることによって、悪い状況を回避し、より良い状況にしようとします。しかし、愛着障害の方はそうした計画的な行動をすることができず、目の前のことだけに囚われ、後先のことを考えることなく衝動的に行動してしまう傾向があります。

そうした衝動的な行動によって、彼ら彼女ら自身を悪い状況に至らしめ、さまざまな損失を被ってしまったりします。そうしたことに後悔したりしますが、また結局は同じことを繰り返してしまいます。

(6)愛着障害の身体的な不調

身体と心は非常に密接な結びつきがあります。心が弱ると身体も弱りますし、身体が弱ると心も弱ります。その逆もあります。愛着障害の方は明確な身体的な要因がないにもかかわらず、疲れやすかったり、胃腸が弱かったり、夜が寝れなかったり、食欲が低下していたり、微熱が続いたり、頭痛が頻発したりといった身体的な不調を抱えてしまうことが多いようです。

不調な人

おそらく、愛着障害の方はストレスを抱えてしまうことが多いのだろうと思いますし、そのストレスが身体の不調に結びついていることがまずは考えられるでしょう。

7.愛着障害と間違われやすい疾患や障害

愛着障害は非常に多くの困難さや症状があります。そのため、他の精神疾患や精神障害との混同してしまう場合があります。愛着障害であるにも関わらず、他の疾患と間違われたり、他の疾患であるにもかかわらず、愛着障害とラベリングされてしまう場合もあります。

(1)自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害(ASD)では、他者に対する無関心や社会的交流の乏しさなどが顕著にみられます。こうしたことは愛着障害における「反応性愛着障害」の症状と非常に似通っており、判別は困難な場合もあります。判別の目安としては、生育歴の詳細な聴取を行い、興味の限局や強迫的なこだわりなどの有無などがあるでしょう。

自閉症スペクトラム障害の詳細は以下に書いています。

発達障害とは:原因、種類、特徴、症状、カウンセリングなどを解説
発達障害の困り事に対するカウンセリングを当オフィスで受けることができます。発達障害は、自閉スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、知的障害などを含む、広範な遺伝的負因が強くはたらく障害です。発達障害の人は、心と身体の成長や発達がうまく作動しなかったり、アンバランスになったりします。その発達障害の原因、特徴、症状、治療、支援などについて解説します。

(2)注意欠陥多動性障害

注意欠陥多動性障害(ADHD)では、衝動性、不注意、多動などの症状があります。愛着障害は他者との交流に過敏で、時には衝動的な対人関係を持つことがあります。このような点で、両者は似通っているところがあります。これについても、同じ発達障害である自閉症スペクトラム障害と同様に詳細な生育歴の聴取が非常に重要となります。

注意欠陥多動性障害の詳細は以下に書いています。

発達障害とは:原因、種類、特徴、症状、カウンセリングなどを解説
発達障害の困り事に対するカウンセリングを当オフィスで受けることができます。発達障害は、自閉スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、知的障害などを含む、広範な遺伝的負因が強くはたらく障害です。発達障害の人は、心と身体の成長や発達がうまく作動しなかったり、アンバランスになったりします。その発達障害の原因、特徴、症状、治療、支援などについて解説します。

(3)境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害(BPD)は不安定な対人関係、不安定な情動や感情、衝動的な行動、内的な空虚感などを伴う障害です。その症状の多くは愛着障害と重複しています。

境界性パーソナリティ障害の原因として、虐待や幼少期の両親との関係が挙げられており、そのため、愛着障害との異同は曖昧であるとも言われています。

(4)社交不安障害

社交不安障害(SAD)は他者との関係において、緊張や不安が強く、適切なパフォーマンスが発揮できないという障害です。この対人関係の障害という点において、愛着障害ととても似ています。

ただ、社交不安障害では、対人関係に障害はあったとしても、その他にはそれほど問題は無く、衝動性も低いのが特徴です。こうした点は判別の目安になります。

社交不安障害の詳細は以下に書いています。

社交不安障害とは:原因、症状、診断、治療、カウンセリングなどを解説
社交不安障害に対するカウンセリングや認知行動療法を当オフィスで受けることができます。社交不安障害について、概要、原因、症状、診断、疫学、予後、鑑別、モデル、アセスメント、治療、カウンセリング、認知行動療法、精神分析的心理療法などについて解説しています。

(5)パニック障害

パニック障害とは不安障害の中の一つです。特定の場所や状況に対する不安が強く、その状況に置かれると感情が高ぶり、不安が強くなり、過呼吸などを伴うパニック発作を起こします。また、そうした状況を過度に回避し、それによって行動範囲を狭めてしまったりします。愛着障害との異同としては、感情の高ぶりやパニック発作的なことが見られます。

ただ、パニック障害の不安の対象は場所や状況に対してのものです。その点愛着障害はどちらかというと人間に対する不安や恐怖といったことが多いので、その点が判別の目安となります。

(6)双極性障害

双極性障害とは、躁状態とうつ状態を反復する障害です。双極性障害には反復の期間が長い1型と、短い2型があります。躁状態の時には非常に活動性が亢進し、気分が高揚し、過度に感情的になります。愛着障害でもこうした感情の不安定性や上下はよく見られます。

ただ、双極性障害では気分の波は生物学的な要因に左右されますが、愛着障害ではストレスやライフイベント、出来事に左右されて感情が不安定になるという特徴があり、その点で両者には違いがみられます。

(7)統合失調症

統合失調症は妄想幻覚や無為自閉、感情の平板化などを主症状とする慢性疾患です。生涯有病率は0.7%ほどです。現在では治療方法も確立されており、薬物療法によりかなり改善が見込まれますが、一部では入院治療などが必要になる重篤なケースも多くあります。

愛着障害と似ているところとして、対人関係に過敏になったり、もしくは反対に人との関係に無関心であったりするところがあります。時には被害感、迫害感を強めるところなどもあります。しかし、統合失調症の場合には被害感はやや現実離れしており、訂正不可能であるという特徴があります。

愛着障害の場合では、被害感にもそれなりに理由や根拠があり、共感できる部分もあることが特徴でしょう。

(8)依存症

依存症とはアルコールやタバコといった物質に対する依存症や、ギャンブルや性行為、買い物といった行動に対する依存症と大きく分けて2つあります。愛着障害の場合にも、空虚感や寂しさを紛らわせるためにこうした物質や行動に依存してしまうこともあります。その中でも愛着障害の人は人との関係に依存しやすい傾向があります。

判別としては、やはり生育歴を詳しく聴取し、幼少期の両親との関係がどのようであったのかから見分けることが可能でしょう。

依存症については以下のページに詳しく書いています。

依存症とは:原因、種類、支援、治療などを解説
依存症・嗜癖・アディクションに対するカウンセリングを行っています。依存症・嗜癖・アディクションについて説明しています。その種類や症状は様々で、これまで難治として扱われることが多かった障害です。しかし、最近では治療方法が徐々に確立されてきており、困難であることは変わりありませんが、それなりに改善していくものとなってきました。

8.愛着障害に対する誤った治療法

一昔前ですが、育てなおし・抱っこ療法などというものが流行ったことが一時期あります。簡単に言うと、子どもの頃に愛情が少なかったから、それを取り戻すために子どもにするような世話や抱っこを大人のクライエントに施すという方法です。今でもそういうことを本気で必要と思っている方もおられるかもしれませんが、ほとんどの場合、失敗に終わっているようです。

時にはクライエントに性的接触をした、ということで訴訟にもなった事例もあります。成人の女性を成人の男性が抱っこするのですから、そのようなことが当たり前ですが起こりますね。

抱っこ療法の誤り

心理学・発達心理学の専門用語に「臨界期」というものがあります。簡単にいうと、発達過程の中で学習できなくなってしまう時期をさします。例えば言葉の習得であれば3〜4歳程度と言われており、その時期までに言葉が習得できないと、後々に習得することは難しくなります。

もしかしたら愛情というものにも、このような「臨界期」があるのかもしれません(発達心理学的には正しいかどうかは分かりませんが)。臨界期というほどのことではなくても、子どもの頃に愛情が得られなかったからといって、大人になって同様の愛情を与えることで健康になる、というのはなかなか難しいのかもしれません。

こんな風に書くと、愛情剥奪にあった子どもや大人には希望も未来もないようになってしまいそうですが、そうでもないと私は考えています。その理由についは次項で述べていきます。

9.愛着障害の相談と治療

愛情を供給し、育て直しをすることが愛着障害の治療としては不適切であると前項では示しました。では、どういった治療法が愛着障害には有効なのかをここでは示していきます。

(1)愛着障害に対する薬物療法

愛着障害の人は抑うつ、不安、不眠、情緒不安定、食欲低下などの精神症状を伴う場合があります。そして、それによって日常生活が非常に阻害されてしまうのであれば、薬物療法を試してみることも必要です。薬物療法によって根本的な部分の治療をすることはできませんが、精神的にかなりよくなると生活もしやすくなるでしょう。

また、精神的に落ち着くことにより、カウンセリングなどで自分自身のことを考えたり、解決策を試していったりすることもしやくなります。

ただ、愛着障害の人は依存的になりやすい傾向もあるので、ある種の向精神薬では、依存を助長してしまうこともあります。ですので、精神科医と相談し、用法用量を必ず守って服用するようにすると良いでしょう。

(2)愛着障害に対する認知行動療法

認知行動療法とはクライエントの不適切な認知と行動に働きかけ、症状や問題を改善していく技法です。愛着障害の人は自分自身を否定的に考えてしまったり、他者に対して迫害的、被害的に捉えてしまったりすることが多いです。また、衝動的な行動や過度に依存的な行動をしてしまったりすることもあります。

こうなってしまった理由や事情は非常によくわかりますし、それ自体に意味はあるかとは思いますが、結果的にこうした認知や行動によって、その愛着障害の人が不利益を被ったり、さらに苦しんでしまったりしてしまいます。

認知行動療法では、こうした愛着障害の人の認知や行動をアセスメントし、より妥当で、機能的な認知や行動へと変化を促していきます。もちろん、それは強制的で、指導的なやり方ではありません。愛着障害の人と協働関係を結び、一緒に考え、一緒に試行錯誤しながら、一つ一つクリアしていきます。

認知行動療法についての詳しい説明は以下にあります。

認知行動療法を受けたい人のために:理論、やり方、効果、エビデンスなどを解説
認知行動療法を当オフィスで受けることができます。その認知行動療法について歴史、やり方、理論、効果、エビデンス、実施などについてクライエント向けに分かりやすく解説しています。認知行動療法とは認知(物のとらえ方、考え方)と行動を変化させることにより、様々な問題ごとや困難、症状を改善していく技法です。どちらかというとトレーニングに近いイメージです。

ただし、愛着障害の人は他者と依存関係や敵対関係になりやすい傾向があります。つまり、カウンセリングを受けているカウンセラーともそうした関係になってしまうことも多々あります。精神分析手はこれを「転移」と言います。そうなると、認知行動療法で必要な協働関係を結ぶことができず、認知行動療法の効果が半減してしまったり、そもそも認知行動療法を実施することができない事態になってしまいます。

そうした時には認知行動療法にこだわるのではなく、この関係性になっていることを話し合い、どうすれば良いのかを考えながら解決していくようなカウンセリングをしていく方が良いでしょう。

(3)愛着障害に対するEMDR

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)とはトラウマやPTSDの治療に特化した、比較的新しいカウンセリングの技法です。トラウマを想起しながら、カウンセラーの左右に振る指を見ながら、眼球を左右に動かすことで、トラウマの処理が進行し、結果的にトラウマやPTSDが治るという技法です。

愛着障害の人は特に両親や養育者との関係でトラウマを抱えていることが多く、そのトラウマにより、現在の問題が起こっています。そのため、EMDRなどでトラウマを解消することにより、愛着障害を治療していくことができます。

ただし、3~4歳以前の言語を獲得する以前の体験については、トラウマ体験や虐待体験をエピソードとして記憶されていることはあまりありません。ですので、こういったエピソード記憶がないトラウマについてはEMDRは困難である場合もあります。

EMDRについては以下のページに詳細に書いています。

EMDRを受けたい人のために:効果、治療、やり方、危険性などを解説
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)を当オフィスで受けることができます。そのEMDRとは、カウンセリングや心理療法の歴史の中でも比較的、最近開発された心理学的技法です。そして、特にPTSD(心的外傷後ストレス障害)や解離性障害、トラウマ関連障害に特化しています。ここではEMDRの歴史、治療、効果、やり方、危険性、説明をしていきます。

(4)愛着障害に対する精神分析的心理療法

精神分析的心理療法は数ある心理療法・カウンセリングの中でも非常に長い歴史と、多くの蓄積のある技法です。20世紀初頭にフロイトによって創始された精神分析・精神分析的心理療法は当初はヒステリーの治療法でしたが、その後、さまざまな発展を加え、ヒステリー以外にもその対象を広げていきました。

精神分析・精神分析的心理療法の特徴としては、カウンセラーとクライエントの関係性に焦点を当て、クライエントの繰り返される人間関係(これを転移といいます)の変容を促していきます。

愛着障害の人は非常に過酷な体験をしており、その体験から、ある意味では誤った対人関係のパターンを繰り返してしまいます。それはカウンセラーとの間でも同様に繰り返してしまいます。ですので、誤ったパターンが顕著に出現するので、精神分析・精神分析的心理療法が有効に働くことが多いようです。

精神分析・精神分析的心理療法の詳しい説明は以下のページにあります。

精神分析的心理療法を受けたい人のために:理論、やり方、効果、批判などを解説
精神分析的心理療法を当オフィスで受けることができます。その精神分析や精神分析的心理療法についての歴史、構造、基本概念、プロセス、効果、批判、誤解などについて解説しています。主にクライエントが精神分析や精神分析的心理療法を知り、体験するために必要なものに絞っています。

10.愛着障害のカウンセリング

(1)愛情剥奪の反復

カウンセリングや心理療法の中で愛情剥奪について、あれこれと話し合い、思いを巡らし、その哀しみを十分に体験することが何らかの役にたつように思いますし、そうした事例に幾度も出会ってきました。

しかしながら、それはカウンセリングや心理療法の中で愛情を与えることや愛情を体験することを目指すのではありません。その逆だと私は考えています。つまり、愛情が感じられないこと、信頼を持てないこと、怒りを感じること、恨みを感じること、猜疑的になること、不安になること、依存したくなること、等、そのようなネガティブな情緒を扱っていくことがカウンセリング・心理療法でできることでしょう。

もう少し言うと、カウンセラーとクライエントとの関係が、そのようなネガティブなものが渦巻くようになることが必要となるのです。そして、それについて真摯に向き合っていくことです。そのために、カウンセラーは平静さを保つために、教育分析や個人分析、スーパーヴィジョンを受ける必要があります。

これはよくよく考えてみれば当然のことなのですが、人と人との関係に信頼を置くことができないのであれば、同様にカウンセラーとの間でも同じことが起きます。しかし、それが起きることがマズいことではありません。マズいのは、そのような関係になっていることを認識できなかったり、話し合えなかったり、表面的にニコニコしたりすることです。

(2)愛着障害と負の能力

カウンセラーとクライエントがネガティブな関係になっていることを話し合いの土台に乗せ、それがどのような意味を持つのかについて二人で考えていく作業が心理療法的、カウンセリング的に必要になってきます。そして、そのような作業こそが、クライエントの行動や思考、生き方の軸となっていきます。

違う言葉で表現すれば、ネガティブな関係を生き抜くことがクライエントの底力になります。ケーパーというアメリカの精神分析家はこれを「ネガティブケーパヴィリティー」と言っています。日本語に訳すと、否定的な事柄に耐えれる能力、となります。

これは単に愛情を与えておけばよいという単純な話ではありません。

愛情がなかったかもしれないし、剥奪されていたのかもしれないし、その傷つきは癒されることはないかもしれないけど、そのような人生も全部ひっくるめて抱えて生きていけるようになることを、カウンセリング・心理療法では援助していきます。

(3)理不尽な人生を生きて

考えてみれば、どのような人にとっても人生や社会は理不尽なものにまみれていますし、決して思い通りになることばかりではありません。時には個人の力では何ともしようがないこともたくさん起きます。そうした時にでも何とかいきていかねばならないのが人生だと思います。

11.愛着障害を克服するための相談先

愛着障害のカウンセリングということで、そもそもの愛着とは何かから始まり、愛情剥奪や愛着パターンの測定、愛着障害の病理、愛着障害と混同する他の障害、愛着障害の治療法、愛着障害のカウンセリングなどについて網羅的に説明しました。

愛着障害の人は非常に過酷な人生を背負っており、そのことが現在の社会生活や人間関係に影を落としてしまっています。それは死ぬほどの苦痛な体験であると思います。こうした愛着障害の苦痛が少しでも緩和されるために、ここで書かれた説明や治療法が役に立つことができればと思います。

そして、専門家の力を借りて愛着障害を克服したいと思われる方は、当オフィスにお問い合わせください。臨床心理士によるカウンセリングで支援をしたいと思います。

愛着障害を克服するカウンセリングのお申込み

12.参考文献