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反応性愛着障害とは

ここでは反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)の特徴や原因、治療法などについて解説します。

反応性愛着障害とは

叱られる子ども

反応性愛着障害とは愛着(アタッチメント)の問題から、対人接触に偏りや拒否が出てくることです。人への関心が薄く、人との関係を求めることなく、一人を好みます。そして、人の手助けが必要な時であっても、人と接触することを避けようとします。

不安や苦痛を感じた時、通常であれば保護者や頼れる人に愛着を示し、保護を求め、接触しようと試みます。しかし、反応性愛着障害では、そうした努力はしないばかりか、その苦痛を表現することもあまりしません。接触を試みることはせず、感情や情動の表現は非常に少なく、時には全く無反応であることもあります

一人になっても周りに対して無関心で、もくもくと一人遊びをし続けます。また迷子になったり、置いてきぼりにされても泣いたり、探し回ったりすることもせず、ただぼんやりしているだけのことが多いです。

よくある相談の例(モデルケース)

女性 小学4年生

Aさんは、幼少期から家庭環境に大きな困難を抱えて育ちました。Aさんの父親は感情の起伏が激しく、母親やAさんに対してしばしば大声で怒鳴ったり、物を投げるなどの暴力的な言動が繰り返されていました。時にはAさん自身も叩かれたり、理不尽に怒られたりすることがあり、家庭内で安心して過ごせる時間はほとんどありませんでした。母親も精神的に追い詰められ、Aさんを守るために悩んだ末、Aさんが4歳のときに離婚を決断し、以降は母子家庭となりました。

離婚後、母親は仕事と子育てを両立させるため、Aさんを保育園や祖母に預けることが多くなりましたが、家にいるときも母親は家事や仕事で疲れ果てており、Aさんと十分な関わりを持つことができませんでした。Aさんが泣いても「後で」と対応が後回しになったり、寂しさや不安を訴えても受け止めてもらえない日々が続きました。そのためか、Aさんは小さい頃から感情を表に出さず、助けを求めたり甘えたりすることがほとんどなくなっていきました。

小学校に入学しても友達の輪に入れず、集団行動では一人で過ごすことが多く、先生に声をかけられても無表情で返すことが目立ちました。特に小学3年生ごろからは授業中にぼんやりする時間が増え、家でも無反応だったり、突然激しく反発したりと、行動面の変化が目立つようになりました。学校でもトラブルが増え、担任から「心の問題があるかもしれない」と指摘され、小児科を受診。「反応性愛着障害の疑い」と診断されました。

母親は後悔や不安を強く感じながら、医師の勧めでカウンセリングを申し込みました。初回の面接ではAさんは言葉で気持ちを表現できませんでしたが、カウンセラーが描画や粘土を使ったアートセラピーを取り入れると、少しずつ自分の感情を絵や作品で表現できるようになりました。作品を通じてAさんの孤独感や怒り、悲しみが明らかになり、カウンセラーは母親にも関わり方のアドバイスを行いました。母親も面接で自分の思いを語ることで気持ちの余裕が生まれ、Aさんに意識的に声をかけたり、スキンシップを増やすよう努力するようになりました。

カウンセリングの継続により、Aさんの表情や反応は少しずつ柔らかくなり、家庭や学校でも安心できる場面が増えていきました。現在も親子でカウンセリングを継続しながら、信頼関係を再構築しています。

反応性愛着障害と間違われやすい障害

授業を受ける少年

自閉スペクトラム症(ASD)では、他者に対する無関心や社会的交流の乏しさ、対人関係の苦手さなどが顕著にみられます。こうしたことは反応性愛着障害の症状と非常に似通っており、判別は困難な場合もあります。判別の目安としては、生育歴の詳細な聴取を行い、興味の限局や強迫的なこだわりなどの有無などがあるでしょう。

自閉スペクトラム症についての詳細は以下のページをご参照ください。

Aさんの場合、最初は自閉スペクトラム症や発達障害、あるいはうつ病などと間違われやすい面がありました。感情表現が乏しいことや集団行動が苦手な様子が、他の発達障害や情緒障害と似て見えるため、当初は学校や周囲でも診断が難しかったようです。

反応性愛着障害の原因

ふさぎこむ母親と寝転ぶ子ども

反応性愛着障害の原因となりうるものは多数あります。

  • 養育環境の不十分さ
  • 養育者との接触の少なさ
  • 両親の不仲
  • 両親の離婚
  • 養育者との早期の離別
  • 養育者との早期の死別
  • 兄弟姉妹の間の極端な養育上の差別
  • 称賛や褒めるなどの極端な少なさ

上記のようなことなどが愛着障害の原因と言われています。つまり、生得的・遺伝的な要因ではなく、環境的な要因が強く影響していることは明白です。

また、この中でも反応性愛着障害の場合には、学習性無気力が関係していると言われています。何度も頑張っても良い反応が得られないとやる気をなくし、無気力になるというものです。反応性愛着障害は何度も養育者に対して愛着(アタッチメント)を向けても、養育者から適切な愛着を返してくれない時、幼児は諦め、やる気をなくし、無気力になってしまいます。それが反応性愛着障害の症状となってしまいます。

Aさんの場合、幼少期から家庭内で父親によるDVや虐待があり、十分な愛情や安心感を得られない環境で育ったことが大きな要因と考えられます。離婚後も母親が忙しく、Aさんが甘えたり助けを求めたりする経験がほとんどなかったことが、反応性愛着障害の背景にありました。

反応性愛着障害の相談と治療

相談に乗る女医

(1)子どもに対して

反応性愛着障害の子どもと接しても、こちらを無視して、一人で遊んだりすること局面が多いかもしれません。そうした時には、過度ではない程度に、話しかけたり、関わったり、横から遊びを手助けしたりすると良いでしょう。

はじめはそれでも無関心かもしれませんが、徐々にそれを続けていくことにより、関心を向けてくれるようになるでしょう。つまり、子どもは徐々に反応のある生きた人間として見てくれるようになります。

また、当然ですが、安全基地としての役割を担い、安全や安心を保証し、何をやっても大丈夫という感覚を持ってもらうように援助していきます

Aさんに対しては、カウンセラーが描画などのアートセラピーを取り入れ、言葉以外の方法で気持ちを表現できるよう支援しました。徐々にAさんの感情や不安が明らかになり、少しずつ安心感や他者とのつながりを感じられるようになっていきました。

(2)親に対して

反応性愛着障害の子どもを持つ親はどちらかというと、子どもに関心をあまり向けず、関わり方も少なかったりします。

こうした親の姿勢を咎めることはほとんどが効果がありません。それよりも、親の姿勢や態度、行動を一度は承認し、そうなっている理由や事情を理解することが必要です。もしかしたら、親自身がその親から同じような養育を受けてきたことが原因になっていることもあるかもしれません

その上で、子どもと親との関係性やどういったことが必要になってくるのかを親が受け取れる範囲で説明し、親自身の行動を増やしていけるように援助していきます。その際、できなかったことを責めるのではなく、小さくても出来たことを称賛し、その行動が良い結果になっていることを逐一伝えていくと良いでしょう。

こうした積み重ねが親の行動を変化させ、子どもに対して少し積極的になっていくことができます

Aさんの母親に対しては、カウンセラーが子どもへの接し方や関わりのポイントを具体的にアドバイスし、母親自身の気持ちや不安も丁寧に受け止めるサポートを行いました。母親がAさんとの関係を見直し、積極的にスキンシップや声かけを増やすことで、親子の信頼関係が徐々に回復していきました。

愛着障害についてのトピック

愛着障害についてのいくつかのトピックです。さらに詳細に知りたい方は以下をご覧ください。

反応性愛着障害について相談する

カウンセラーに相談する男性

反応性愛着障害についての解説をしました。こうした問題があると、人間関係が非常に難しくなったり、生活を送ることが困難になってしまったりします。愛着障害について相談したり、カウンセリングを受けたりすることで、生活や人間関係が少し楽になります。

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