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動機づけ面接

目的に向かって進め

本ページでは、動機づけ面接について、その特徴、原則、方法まで詳しく解説しています。どのような方に向いているか、その適用例も説明していますので、参考にしていただければ幸いです。

動機づけ面接とは

カウンセラーに相談する男性動機づけ面接とは、変わろうとする心の動きに焦点を当てた面接です。ひとことでまとめると「変化を促すための面接技法」ということができます。4つの戦略(OARS)を用いて、両価性を探索し、チェンジトークを引き出し、クライエントが自ら行動していけるように動機づけることを目指します。ちなみに、動機づけとは目標に向かって行動しようとすること、そしてそれを維持する心理的な機能のことを指します。

動機づけ面接は、それのみでカウンセリングがおこなわれるというような技法というよりは、カウンセリングの中でのひとつのコミュニケーション方法として考えることもできます。また、動機づけ面接のメソッドにはクライエント中心療法の視点がありますが、意図的に変化を促すという点でクライエント中心療法とは少し異なります。

もともと動機づけ面接はアルコール依存症への治療法として確立されたのがはじまりとされています。依存症治療ではしばしば途中で挫折してしまうケースがあり、どのように治療意欲を保ち専念してもらえるかが問題となります。そのような中で、上手くいったケース、上手くいかなかったケースを分析し、面接技法としてまとめられたものが動機づけ面接となっています。

動機づけ面接の効果やメリット

ハイタッチする男女動機づけ面接は、実験でも効果が示されており、認知行動療法のようにエビデンスがある治療法とされています。先ほども少し説明したように、動機づけ面接は、そもそも依存症の治療で、いい結果が得られた面接過程の分析をもとに作成されているので、その成り立ちからも比較検討が重ねられていることがわかります。また、当初はアルコール依存症にのみ焦点の当てられたものでしたが、現在ではさまざまなクライエントへの効果が認められています。

動機づけ面接の最大のメリットは、カウンセリングに対してあまり意欲がない人にも適用できるという点です。カウンセリングを受けている人の中には、本人の意志ではなく来談されている方もおられますし、本人の意志で来られていても両価性といって、「解決したい気持ち」と「今のままでもいいという気持ち」との間で揺れておられる方も多くおられます。そのような方が治療につながりつづけられるような面接技法となっています。

対象となる疾患としては、「アルコール依存症」「ひきこもり」「非行・犯罪」などがあげられますが、決してこのような疾患の方にしか向いていないというわけではありません。また、精神的な疾患のカウンセリングに限らず、「生活習慣病」の患者さんとの面接などにも用いられており、幅広い分野で動機づけ面接のエッセンスが取り入れられています。

動機づけ面接における5つの原則

パソコンを見ている二人の女性動機づけ面接には5つの原則があり、それに従ってカウンセリングをしていく必要があります。その5つの原則について解説します。

(1)共感

共感はカウンセリングの基本で、共感なくしてカウンセリングは成り立たないといえるでしょう。この動機づけ面接においても、共感が原則に含まれています。動機づけ面接の目的が「変化を生むこと」であったとしても、まずはクライエントの心情に寄り添い、「変わりたくない」という気持ちにもしっかり目を向ける必要があります。どのような思いで治療にこられているのかを把握することがはじまりです。

(2)矛盾を広げる

行動と目標に矛盾が生じていることについて話を広げます。両価性とも言いますが、クライエントは相反する考えや気持ちを持っています。それが葛藤や矛盾にもなるのですが、クライエント本人がその矛盾に気づいていながら避けている場合や、気づいてすらいない場合もあります。それを、第三者としてのカウンセラーがいることで、客観的にその矛盾についてみることができます。ここで大切なのは、カウンセラーが「そことそこが矛盾している」と指摘するのではなく、あくまで本人が自分自身で気づき、「変わっていったほうがいいのかもしれない」と思えるようになることです

(3)言い争いを避ける

カウンセラーが、上から「こうした方がいいのではないか」「なんでそんなことをするのだ」「やめなさい」などといってしまうと、治療関係は破綻してしまいます。クライエントは日常的にも周囲から口うるさくいわれている可能性が高く、いわれればいわれるほど自分から変化することをやめてしまい逆効果となってしまうでしょう。「でも」とつい口を挟んでしまいそうなことでも、反論せず耳を傾けつづけることが大切です

(4)抵抗を手玉に取る

カウンセリングにおける「抵抗」は治療抵抗ともいい、遅刻や欠席などカウンセリングに対してクライエントが積極的に参加しなくなる状態を指します。

一般的に抵抗はない方がいいものと思われるかもしれませんが、動機づけ面接では、抵抗をなくそうとするのではなく、その抵抗からもクライエントを理解しようと努めます。時には、「頑張ったけどもうできないかもしれない」「我慢していたけどまたやってしまった」などという形で抵抗が示されることもありますが、「頑張って続けようとはしていた」という努力に目を向けて面接をしていきます。そうすることで、「変われない」という話から「変わろうとしている」という話に方向転換することができます。

(5)セルフエフィカシー(自己肯定感)を支持する

自分でもできるという体験を積んでもらうことが大切です。そのためには、最初から大きな目標をたてるのではなく、小さな変化からはじめることが重要になります。クライエントは多くの場合、失敗体験に意識が向いてしまっているので、小さな成功を共に喜びながら治療を進めていくことが大切です。

動機づけ面接のやり方

相談する女性動機づけ面接の特徴的な技法に「チェンジトーク」というものがあります。変化について話すことに重点を置き、以下の4つに沿って面接を進めます。

  1. 現状のままでは不利益であること
  2. 変化した方が利益があること
  3. 変化することに対して気楽に考えること
  4. 変化することを自発的に決意すること

その面接の中でどのように、本人の気持ちを聴くかという点で、以下の4つの戦略(OARS)が重要となります。

(1)開かれた質問(Open Ended Qestion)

開かれた質問とは、「はい」「いいえ」では答えられないような質問のことを指します。具体的には「今、どんな気持ちですか?」という質問があげられます。それを「今不安ですか?」ときいてしまうと、不安か不安でないかという2択で答えられる質問になってしまい、クライエントの気持ちを詳しく聴くことはできません。

(2)是認(Affirm)

クライエントが自ら発した言葉のなかで、変化を生みそうないい話だと感じたものをカウンセラーが聞き返し、肯定することを是認といいます。ひとつひとつ大事に拾い上げていくことで、どうしていくことがいいかを本人が気づきやすくなります。認知行動療法でいうと、分化強化と言えるでしょう。

(3)聞き返し(Reflective Listening)

この聞き返しが動機づけ面接の肝となっています。単にクライエントの言葉だけを聞き返すだけでなく、どのような気持ちで発しているかをくみ取り、一見否定的な言葉であっても、そのなかにあるポジティブな側面を強調して聞き返していくことも大切です

(4)要約する(Summarize)

クライエントの話を聞き返していくなかで、最終的に変化を生みそうな話をカウンセラーがまとめていきます。それをもとに「こうすべき」と押し付けるのではなく、クライエントが自身で決断していくことを支持します。全体を通してクライエントが見通しをもち、変わっていこうと踏み出せるように話を聴いていくことが動機づけ面接の基本となっています。

動機づけ面接についてのよくある質問


動機づけ面接(Motivational Interviewing, MI)は、行動変容を促進するために使用されるカウンセリング技法で、クライアントの内的な動機を高め、自己決定を尊重するアプローチです。特に、変化に対して抵抗や葛藤を抱えるクライアントに対し、共感を基にした対話を通じて変化への意欲を引き出します。対話の中で、クライアントが自分自身で解決策を見つけるよう導くことを目指し、医療、心理療法、依存症治療、健康促進など、さまざまな分野で活用されています。


動機づけ面接の目的は、クライアントが自ら変化したいという意欲を高め、その意欲に基づいて行動を変えることです。具体的には、クライアントが自分の目標や価値観に沿った行動を取れるように、内面的な動機を見出し、それを強化します。変化に対する抵抗を減少させるために、自己決定権を尊重し、アドバイスや指示を押し付けることなく、クライアントが自分で変わる道を選ぶように導きます。


動機づけ面接の基本的な原則には、以下の要素が含まれます。1) 共感的な姿勢でクライアントの話に耳を傾け、理解を示す。2) 変化に対する自己決定を尊重し、クライアントが自分のペースで変わる力を持っていると信じる。3) クライアントの抵抗を軽減し、変化への準備ができるよう支援する。4) 変化を望む自信を持たせ、可能性を引き出すようにする。これらを実践することで、クライアントが自分の目標に向かって動機を高め、行動を変えることを促します。


動機づけ面接の技法には、OARS(オアーズ)と呼ばれる4つの主要な要素があります。Oはオープンエンドな質問、Aは反映的な傾聴、Rは要約、Sは肯定的なフィードバックです。これらの技法を用いることで、クライアントは自分の考えや感情を自由に表現し、その中で行動変容に向けた気づきを得ることができます。さらに、クライアントがどのように変化を望んでいるかを明確にするための対話を深め、変化を促すための力強いサポートを提供します。


動機づけ面接は、変化に対する葛藤や抵抗が強い状況で特に効果を発揮します。例えば、依存症治療や生活習慣病の管理、喫煙の習慣改善、体重管理など、行動変容が求められる場面において効果的です。クライアントが自分の変化に対してどのように感じているか、そしてどのような障害があるかを理解し、その上でクライアント自身が自分のペースで変化を進められるように支援します。


動機づけ面接は、クライアントとの対話を通じて行われます。この対話では、面接者が積極的に共感的な態度でクライアントの話を聴き、変化に向けた意欲を高めるための質問を投げかけます。また、クライアントが自身の価値観に基づいて行動変容の道を選べるように支援することが求められます。質問は開かれたものを使用し、反映的傾聴を行うことで、クライアントが自己発見できる環境を作り出します。


動機づけ面接の効果は、主にクライアントの行動変容の進捗や、自己報告による動機の向上、さらには心理的な健康状態の改善を通じて測定されます。具体的には、クライアントが目標を達成するためにどれだけ努力したか、自己認識がどれだけ向上したか、変化に対する準備度がどのように進展したかを評価します。また、治療後のフォローアップを行い、長期的な行動変容の持続性を確認することも重要です。


動機づけ面接は、指示的なアプローチではなく、クライアント中心の対話を重視します。他のカウンセリング技法は、クライアントに対して指導的に助言を行うことが多いですが、動機づけ面接は、クライアントが自ら変化する力を引き出すことに焦点を当てています。このため、動機づけ面接では、クライアントの変化に対する葛藤や抵抗を減少させるための支援が行われ、自己決定を促進します。


動機づけ面接は、心理学者やカウンセラー、医師、看護師など、さまざまな専門家によって実施されます。特に、依存症治療、精神的な健康の問題、行動療法、健康促進に携わる専門家がよく用います。また、動機づけ面接は、教育者や社会福祉士なども活用することがあり、クライアントの変化を支援するために広範囲な専門家が関与する技法です。


動機づけ面接のトレーニングは、専門的な研修プログラムやワークショップを通じて受けることができます。これらのプログラムでは、基本的な技法を学び、実践的なスキルを向上させることが目的です。多くの場合、実践を重視したトレーニングが行われ、参加者はロールプレイやフィードバックを通じてスキルを磨きます。また、専門書やオンラインコースなども利用可能であり、自己学習で技法を習得することもできます。

カウンセリングを受けたい

慰める今回は、動機づけ面接について、特徴や原則、方法について紹介しました。人は「きれいさっぱり悩みを解決したい」と思いながらも、なかなか踏み出せなかったり、「解決した方がいい」と思いながらも変化することに抵抗があったりするものです。動機づけ面接は、そのような両価性を抱えながらも、それに向き合い変わろうとする心を大切にするカウンセリングの手法である、とまとめることができるでしょう。

当オフィスでは動機づけ面接そのままを実施することはしておりませんが、動機づけ面接のエッセンスを活かしてカウンセリングを行っています。希望者は以下のフォームからご連絡をください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。