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発達障害に対するEMDRの適用と実施

発達障害のトラウマ

発達障害に対するEMDRですが、最近になって徐々にその実践報告や研究などが公表されるようになってきました。私もそうした少なからず発達障害にEMDRをする経験があるので、そのポイントなどについて書いてみたいと思います。

1.発達障害の2つのタイプ

まず、発達障害といっても様々なタイプがあり、一括で論じることはできません。発達障害の代表例としては注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)の2つがあります。ここではこの2つに絞ってみたいと思います。ADHDとASDではEMDRの流れや必要なこと、ポイントは多少異なる印象はあります。

ちなみに発達障害の全般的な説明とEMDRの全般的な説明は以下のページにあります。

発達障害とは:原因、種類、特徴、症状、カウンセリングなどを解説
発達障害は、自閉症、注意欠陥多動性障害、学習障害、知的障害などの広範な遺伝的負因による障害です。発達障害は心と身体の成長や発達がうまく作動しなかったり、アンバランスになったりします。発達障害の原因、特徴、症状、治療、支援について解説します。
EMDRを受けたい人のために:効果、治療、やり方、危険性などを解説
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)を当オフィスで受けることができます。そのEMDRとは、カウンセリングや心理療法の歴史の中でも比較的、最近開発された心理学的技法です。そして、特にPTSD(心的外傷後ストレス障害)や解離性障害、トラウマ関連障害に特化しています。ここではEMDRの歴史、治療、効果、やり方、危険性、説明をしていきます。

2.注意欠陥多動性障害(ADHD)のEMDRのポイント

まず、ADHDは注意欠如、衝動性、多動性の問題があります。そして、EMDRではこの3つの問題が色濃く影響をします。具体的には両側性刺激(EM)を入れていく際、ADHDの方はターゲット記憶から随分とそれてしまうことが多いように思います。そのため、そもそもの処理がしにくい印象があります。

こうした特徴があるので、ADHDに対してEMDRをする際、EMはやや短く、また、元のターゲットに戻る回数をやや頻繁にすることで対処できることがあります。

3.自閉スペクトラム症(ASD)のEMDRのポイント

一方でASDは社会性、コミュニケーション、想像性の問題があります。そのため、ADHDとは反対に、ターゲット記憶へのこだわりが強く、そこに固執し、処理の広がりが少ない印象があります。それでも根気よく、編み込みを多用しながら続けると、少しずつ変化し、スリップ現象やトラウマへのこだわりが和らぐことがあります。

しかし、ASDのこだわり(想像性の問題)が消えるわけではないので、他の何かにこだわりが移ることが多いです。その移った先のこだわりは、トラウマとは違い、もう少し社会生活に適った問題の少ないこだわり先になることが多いようです。例えば、趣味とか仕事の丁寧さへのこだわりとかなどがあったりします。

そのため、ASDに対するEMDRはスリップ現象やこだわりに対して多少の効果はありますが、それだけでカウンセリングが完結することはほぼなく、さらに続けていく必要はあります。そうはいっても、スリップ現象やトラウマへのこだわりがないだけでも、クライエントとセラピスト双方が相当楽にはなるかと思います。

4.発達障害の原因はトラウマではない

ASDとADHDにトラウマ処理に特化しているEMDRの効果はあるとは思いますが、ASDとADHDの原因がトラウマによるものである、とまでは思っていません。おそらく、ASDやADHDといった特性を持ちながら生きていると、健常者に比べると困難な場面に遭遇したり、そうした時に傷ついたり、それがトラウマ化してしまうことが多いのだろうと思います。

つまり、トラウマは二次障害であるということです。その二次障害の部分の解消にEMDRを使う、ということです。

トラウマについての詳細は以下に掲載しています。

トラウマ・PTSDとは:原因、症状、心理、種類、診断、克服などを解説
トラウマとは、いわゆる「心の傷」といわれるものです。身体が傷つくことと同じように同じように心も傷ついてしまいます。そして、フラッシュバックや過覚醒、回避などのいくつかの症状が重なるとPTSDという診断になります。

5.発達障害へのEMDRの留意点

そういえば、以前に日本EMDR学会の研究雑誌に発達障害へのEMDRの留意点をまとめた発表が掲載されていたと思います。要点はEMDRを実施する前にラポール形成をしっかりして、安定化を確実に行うこと、といったようなことが書いてあったと記憶しています。

言うと簡単なようですが、行うことは結構困難が伴います。特に信頼関係の形成は健康な人や神経症的な人であれば、それなりにすぐに形成できます。しかし、トラウマを抱えており、人との基本的な信頼感に損傷がある人が容易にラポール形成ができないことが多いと思います。だからこそ、時間をかけ、じっくりと取り組む必要があるのでしょう。

【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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