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日本心理臨床学会第37回参加感想記

日本心理臨床学会第37回大会(2018-8-30から2018-09-02)が神戸国際会議場で開催されました。それに参加したので、感想記を書きたいと思います。

1.母親カウンセリングとプレイセラピーにおける逆転移

日本心理臨床学会の1日目の13時からのセクションは母親カウンセリングの事例研究に参加しました。ちなみに知人の発表でした。そして、15:30からのセクションはプレイセラピーにおける逆転移の自主シンポに参加しました。

こちらも知人やお世話になっている先生の企画でした。いずれも知的好奇心を刺激された。良い発表とディスカッションだったと思います。

2.社会との接点

日本心理臨床学会2日目の朝は中堅臨床家の語らいという自主シンポに参加しました。そこでのディスカッションの最後に社会との接点の話になりました。しかし、登壇者の殆どが大学教員であり、訓練生なので、収入や地位が保証され、守られた立場にいる先生方ばかりでした。そうした守られた中におけるという条件付きの社会との接点という話だったのかもしれません。

臨床のみで生活の生業を得ている臨床家から見た社会との接点とは、もしかしたら質や量に違いが出て来るだろうなと思いました。そして、モロに社会の荒波に飲まれるのはやはり開業のみで生計を立てている人でしょう。月々によって収入が違うことが当たり前の世界なので、大学教員以上に社会の厳しさを骨身で感じているように思います。

3.力動的オリエンテーションの教員間の協働

日本心理臨床学会2日目の午後は専門学校における力動的オリエンテーションの教員間の協働の事例研究に参加しました。これまた知人の発表でした。元々は調査研究のセクションに応募したようですが、何故か事例研究のセクションに回された不遇な発表だったようです。しかし、単なる調査研究の発表に事例が盛り込まれたことでリアリティが増したので、結果的に良かったのだろうと思います。

その発表の際にコメントさせてもらいましたが、学生のメンタルヘルス対策というだけに留めるというよりは、一種の擬似的な教育分析、個人分析の役割となり、それこそが対人援助職を目指す学生の訓練課程の一つとして位置付けられるのではないかと思います。

人は抱えられ、理解される体験があるからこそ、人を抱えて、理解するということができるようになるのだろうし、それを臨床心理士の教員が部分的に担っているのだろうと空想するような研究発表でした。面白かったです。

4.自閉症のプレイセラピー

日本心理臨床学会3日目の午前は臨床教育のセクションの小6男児のプレイセラピーの事例研究に参加しました。診断は例え自閉症でも、自閉症ではない部分、ここでは迫害不安や抑うつ不安でしたが、そこに如何に触れていくのか、というのがポイントだったように思えます。そして、そのためには逆転移を利用することは必須なのでしょう。

5.解釈もしくはマネージメント

日本心理臨床学会3日目の13時はボーダーラインの力動的な事例に参加しました。罪悪感のワークスルーが課題の事例ですが、それを解釈で取り扱うか、それともマネージメントを行っていくのか、という極めて臨床的な議論でした。発表者の意識は解釈を目指していたけど、実際にはマネージメントが功を奏していたのではないか、というのが私の理解です。

6.子どもの精神分析

日本心理臨床学会3日目の15時半は子供の精神分析の自主シンポに参加しました。これも知人の発表です。この時は、少し体調が悪く、コメントしている時に急に動悸、息切れ、呼吸困難が生じて、治るのに一苦労。登壇者に迷惑をかけてしまい、申し訳なかったです。その後、多少回復しました。

内容としては、子どもの原初的な心にコンタクトすることはセラピストの原初的な心を使用しておこなう営みであり、その出会いが手応えであり、やりがいであると思いました。ただ、そこにはある種の良い体験を想定するのか、それとも死に至る苦痛を想定するのかはセラピストによるのかもしれません。ちなみに私は前者かと思います。

7.フォーカシング

日本心理臨床学会の最終日。午前は古くからの知人の自主シンポ「異なるオリエンテーション」に参加しました。セラピストが自身のフェルトセンスに気付くことは、我々のいう逆転移とニアリーイコールということでしょうか。ただ、それが意識的か無意識的かの違いはありそうでしたが。

8.最後に

最終日の午後は私の企画である「開業臨床のやりがいと楽しみ」でした。これについては下の記事として別立てで掲載しています。

日本心理臨床学会は何だかんだ言っても一番長く会員でいますし、一番多く参加をしてきましたし、一番たくさん発表もしていて、ある種の愛着があります。そして、色々の刺激を受けて育ててくれたという思いもあります。来年は6月に横浜で開催ということです。近いので参加しやすいのが良かったです。