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催眠療法

決して不思議な現象ではなく

催眠療法は、身体的にも精神的にもリラックスして、潜在的な意識が顕在化している意識レベルよりも優位な催眠状態で実施する心理療法の一つです。

患者さんの潜在的な意識に働きかけて、潜在意識からメッセージを受け取ることで必要な情報に気づきながら課題の解決や自己成長につなげることで、今までと異なる視点や角度で現実生活を前向きに進めることができると考えられています。

今回は、そのような「催眠療法」について説明していきます。

1.催眠療法とは

催眠療法とは、催眠を用いる補完的な代替医療の一種です。患者さんの被暗示性の状態亢進を中心に、催眠現象が持ついろいろな生理的、あるいは心理的な特性を活用して、多様なアプローチを駆使して治療が実施されます。

欧米諸国などにおいては正当な医療行為として、医師、看護師、心理療法士など様々な職種の人たちが催眠療法を有効な治療手段として利用しているという歴史的背景が存在します。

催眠療法には、主に課題の根本的な原因となっている過去の出来事にさかのぼる「退行催眠療法」、あるいは過去を振り返らずに退行行為を行わない「暗示療法」があります。

特に、退行催眠療法の場合には、振り返る時期によって分類されていて、幼少期など古い昔の時代に戻る場合は「幼少時退行療法」過去世に戻るパターンは「前世退行療法」と呼称されています。

催眠療法が上手く適応できれば、多くの方はリラクゼーション状態に入って、自律神経の副交感神経が優位になるため、心臓の拍動や呼吸がゆっくりと安定的になるとともに、心も平穏に落ち着きます。

また、催眠状態に入ると次第に意識的な努力が減って、いろいろな体験が起こるに任せて、考えたことが意図せずに運動、感覚、感情などの形で表現される現象である「観念力動反応」が認められることがあります。観念情動反応とは、自分の手が空中に浮遊していくとの暗示に反応し、手が上がると考えただけで自分が意図せずに手が上がっていくなどのリアクションを示唆しています。また、手を冷水につけたという暗示にかかって実際に手が冷たいと感じられる場合、何かの体験を想像した場合に自然に感情が芽生えるなどの反応も含まれています。

2.催眠療法の効果とは何か

催眠療法においては、その効果として心身の回復、同化の促進、緊張の解放、不安感情の低下などが期待されています。心理的興奮やストレスが関わる心身症や身体疾患に対しても利用されていますし、自己洞察や行動変容の促進目的にも用いられています。

患者さんと催眠療法を実施する側との信頼関係は、催眠療法を遂行する上で必要不可欠な要素であり、実施者と患者間で良好な関係性を築くことで、安心して催眠療法に集中して良好な結果を得ることが期待できます。

3.催眠療法が有効な症状や疾患

催眠療法は、過敏性腸症候群や状態不安(手術前など)、更年期障害に伴うホットフラッシュ(ほてり)、慢性頭痛や心的外傷後ストレス障害など、さまざまな症状や疾患を対象として数々の研究が実施されてきました。

近年では、過敏性腸症候群に対して腸管に焦点を当てた催眠療法(gut‒directed hypnotherapy:GDH)の有効性が欧米などから多く報告されています。

一部の研究では、過敏性腸症候群の患者例に対して催眠療法が消化器症状、不安、抑うつ、身体障害に関連する生活の質に役立つ可能性があることを示唆しています。人前に出ると極端に緊張してしまう、あるいはダイエットや禁煙を自己実現して成功させたい場合には、暗示催眠が有効的です。

暗示催眠による催眠状態では潜在意識につながりやすく、 悪習慣を断ち切る暗示、あるいは目標としている自分の新しいイメージなどを自ら受け入れやすくなる特性を生かして問題解決をサポートする効果が期待できます。

また、過去のつらい経験の真相を知りたい、特定の人との人間関係に悩んでおり前世での関わりを知りたい、自分の使命を知りたいなどの場合には、退行催眠が効果的であり、その退行催眠では、催眠状態で潜在意識の中の記憶を探っていきます。

知りたいことが小さいころの心的外傷にある場合は幼少期に退行しますし、問題となる対象が前世に関係する場合は過去世に退行します。退行催眠で得た経験は、過去のトラウマや恐怖心から開放できるサポートとなり、患者さんの気持ちに多少なりとも変化をもたらします。

慢性疾患に悩んでおり健康への道を取り戻したい、様々な治療を試したがよくならない際には、ソマティック療法がおすすめです。

ソマティック療法とは「病気や症状は体からのメッセージである」という考えをもとに、そのメッセージを受け取り、体が求めていることに焦点をあて、不調や症状がある時に催眠状態で潜在意識に問いかけて、不調の原因や解決法を見出して症状改善を促す催眠療法です。

一般には、パニック障害、身体表現性障害、外傷後ストレス障害などの不安障害、解離性健忘、解離性同一性障害を含む解離性障害など精神科疾患が催眠療法の適応ありと考えられています。

また、身体疾患をベースとする疼痛のコントロールや夫婦生活の問題、アスリートの心身的コントロール、受験生の集中向上、禁煙や体重コントロールなども催眠療法の対象となります。

4.催眠療法の流れとやり方

まずは、問診で話を聞いて、催眠療法を通じて何を求めているのか、そのテーマや目標を明確にします。

催眠療法の実施日を決めて、催眠療法の実施日当日は出来るだけリラックスできる締め付けの少ない楽な服装で臨みます。

実際の催眠療法では2~3時間程度の時間を要して、催眠にスムーズに入るために、身体の力が徐々に抜けていくイメージを持って寝る前の状態のようにリラックスできるように誘導していきます。

信頼できない治療者の催眠では、安心して催眠状態にも入れませんので、催眠療法が患者さんにとって安全で安心なものとなるために、事前に患者治療者間に絶大な信頼関係が築かれている必要があることを認識しておきましょう。

5.催眠療法に関する注意

(1)催眠療法を受ける前に知っておくべき注意事項とデメリット

原則として、統合失調症や双極性感情障害(いわゆる躁うつ病)などに罹患して精神科や心療内科に通院治療中の場合は、催眠療法を受けることができません。

また、患者さんが催眠療法を希望する目的、あるいはその内容によっては、催眠療法をお勧めしないケースがあります。

催眠療法には数時間程度の時間が必要となりますが、人によってはそれ以上の時間がかかることがありますので、催眠療法の後には、スケジュールを入れずにゆっくりリラックスできる時間を確保しておく必要があります。

催眠療法を実施する前日には飲酒は控えて、しっかりと睡眠をとるようにしてください。

当日は、眠気を催す作用のある薬は服用しない、あるいはコンタクトレンズを着用している際には治療中に外すこともありますので、レンズケースを持参しましょう。

(2)催眠療法を活用したい人へのアドバイス

催眠療法では、患者さん自身が治療内容やその目的、流れや効果について十分に理解しておくことが重要なポイントです。

催眠とはどのような状態になることなのか、危険な要素や合併症など想定されるかなど催眠療法について、実施担当者に時間をかけて質問して納得しておくことが必要です。

催眠療法を実施する医師と患者どうしがお互いに課題を共有して、同じ目標や方向性をもって催眠療法に臨むために、催眠療法を受けようと思った動機、催眠療法を通じてどんなことを解決したいのかを明確にしておくことが大切です。

6.まとめ


催眠療法は、患者さんが持っている被暗示性を高めることでいつも以上にリラックス状態に導くことを活用して実施する心理療法のことを指しています。

催眠療法においては、暗示によりさまざまなイメージが活性化されることを応用することで心の問題や潜在的な課題に対処して自己解決を助けることができます。

催眠療法を体験することによって、心の自然治癒力と呼べる内的なエネルギーの回復が見込まれ、過去のトラウマを癒して、日々の生活において徐々に前向きな気持ちになって諸々の自己促進を図ることが期待できます。

当オフィスでは催眠療法をそのまま行ってはいませんが、催眠療法についてのカウンセリングはしております。ご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。