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DV加害者に対するカウンセリング

DV加害者に対するカウンセリング

DV加害者というと、怒鳴る、殴る、脅すといった暴力的な人物を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、DVは日常の小さな支配やコントロールから始まることも少なくありません。本稿では、DV加害者の特徴や心理的背景、関係性の中でDVが生じる過程、そしてDV加害者に対するカウンセリングについて、心理臨床の視点から解説します。

DV加害者とは

DV(ドメスティック・バイオレンス)加害者とは、配偶者や恋人など親密な関係にある相手に対して、身体的暴力だけでなく、精神的・性的・経済的な暴力や行動の制限、監視、威圧などを通して支配やコントロールを行う人を指します。

DVというと殴る・蹴るといった暴力が注目されがちですが、実際には怒鳴る、脅す、無視する、行動を細かく管理するなど、目に見えにくい形で始まることも少なくありません。DV加害者を理解するためには、暴力という結果だけでなく、その背景にある心理や関係性の特徴にも目を向けることが重要です。

よくある相談の例(モデルケース)

40歳代 男性

Aさんは会社では責任ある立場で働き、周囲からは真面目で誠実な人物と評価されていました。しかし、家庭では妻との口論が増え、怒鳴ることや長時間説教を続けることがありました。暴力を振るったことはないため、自分はDV加害者ではないと考えていましたが、「外出の予定を細かく確認する」「返信が遅いと何度も連絡する」「妻が自分を優先しないと強い怒りや不安を感じる」といった行動が続き、妻から別居を求められました。妻から「このままでは一緒に暮らせない。カウンセリングを受けてほしい」と伝えられたことをきっかけに、当オフィスへ相談に来られました。

幼少期を振り返ると、Aさんは厳格な父親のもとで育ち、失敗を厳しく叱責されることが多くありました。一方で、家庭内で自分の気持ちを安心して話した経験は少なく、不安や悲しみを表現するよりも我慢することが当たり前になっていました。そのため、大人になってからも、自分の弱さや寂しさを自覚することが苦手で、それらの感情が怒りとして表れやすい状態になっていました。

カウンセリングでは、まずAさんが自分の行動を客観的に振り返り、相手にどのような影響を与えていたのかを理解することから始めました。当初は「妻にも問題がある」「自分は家族のために頑張ってきた」という思いが強く、自分の支配的な言動を十分に認識できませんでした。しかし、日常の出来事を一つひとつ丁寧に振り返るなかで、自分の不安や見捨てられたくない気持ちが強まると、相手をコントロールする行動につながっていたことが少しずつ理解できるようになりました。

その後は、怒りが生じる前にどのような感情や考えが浮かんでいるのかを整理し、自分の不安を相手への要求や非難ではなく、自分自身の感情として受け止める練習を続けました。また、相手の気持ちや立場を想像しながら対話する方法や、衝動的に連絡や追及をしたくなったときに気持ちを落ち着かせる方法についても取り組みました。

約2年半にわたるカウンセリングを通して、Aさんは「相手を変えれば安心できる」という考え方から、「自分の不安は自分で扱う」という姿勢へと少しずつ変化していきました。妻との話し合いでは最後まで相手の話を聞ける場面が増え、自分の不安や寂しさも怒りではなく言葉で伝えられるようになりました。関係の修復には時間を要しましたが、暴力や支配に頼らず対話を重ねられるようになり、現在も再発予防を目的として定期的なカウンセリングを継続しています。

DVの最初は愛情や心配にみえることがある

DVという言葉を聞くと、怒鳴る、殴る、脅すといった場面を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、実際のDVは、そのような形で突然始まることはほとんどありません。交際当初から暴力的だったわけではなく、むしろ優しく、思いやりがあり、相手を大切にしているように見えることも少なくありません。そのため、被害を受けている本人でさえ、「まさかこの人がDVに及ぶとは思わなかった」と語ることがあります

DVを理解するためには、暴力という結果だけではなく、その前段階で何が起きているのかに目を向ける必要があります。DVはある日突然始まるものではなく、関係性の中で少しずつ形成されていくことが多いのです。

例えば、交際初期によく見られるやり取りとして、次のようなものがあります。

  • 「今どこにいるの?」
  • 「帰ったら連絡してね」
  • 「心配だから教えてほしい」

こうした言葉自体は、不自然なものではありません。相手を大切に思うからこそ心配することもありますし、好きな相手のことを知りたいと思うのも自然なことです。しかし、少しずつ、

  • 「どうして連絡をくれなかったの?」
  • 「誰と会っていたの?」
  • 「なんでそんな服を着るの?」

という形へ変化していくことがあります。最初は心配から始まった言動が、いつの間にか相手の行動を管理したり、制限したりする方向へ変わっていくのです

本人は「愛しているから」「心配だから」と説明するかもしれません。しかし、相手が自由に行動することを許せなくなっているのであれば、それはすでに支配やコントロールの入り口になっている可能性があります。

Aさんは、当初は妻を心配しているつもりで、帰宅時間や外出先を確認していました。しかし次第に、連絡が遅いことを責めたり、誰と会っていたのかを問い詰めたりするようになり、心配が管理や制限へと変化していました。

DVの背景には不安が隠れていることがある

泣いている男性DVというと、怒りっぽい人が行うものだと考えられがちです。もちろん、怒りの問題はあります。しかし、臨床現場で加害者の話を聞いていると、怒りの奥に強い不安や寂しさが存在していることも少なくありません

  • 嫌われたくない。
  • 見捨てられたくない。
  • 自分を大切にしてほしい。
  • 認めてほしい。

こうした気持ちは、誰にでもあります。問題は、その不安を自分で抱えることが難しくなり、「相手に何とかしてもらおう」とするようになることです。

  • 相手が自由に行動すると不安になる。
  • 返信が遅いと苦しくなる。
  • 自分を優先してもらえないと傷つく。

すると、相手を変えようとしたり、相手を縛ろうとしたりする行動が増えていきます。その結果、支配やコントロールが強まっていくのです。

Aさんの場合、怒りの背景には、妻に見捨てられるのではないか、自分が大切にされていないのではないかという強い不安がありました。その不安を自分で抱えきれず、妻を責めたり、行動を確認したりする形で安心しようとしていました。

被害者も気づきにくい

似ている6人の女性

DVが怖いのは、その支配的な関係性に気づきにくい点にあります。被害者の多くは、

  • 「私のことを大切に思っているから」
  • 「私にも悪いところがあったから」
  • 「本当は優しい人だから」

と考えます。実際、優しい時期も存在します。謝罪することもあります。反省しているように見えることもあります。だからこそ、その関係を続けようとします。しかし、関係が進むにつれて、

  • 相手の機嫌を常に気にする
  • 怒らせないように行動する
  • 自分の意見を言えなくなる
  • 交友関係が狭くなる
  • 自由に選択できなくなる

といった変化が生じ始めます。この段階になると、本人も気づかないうちに相手からコントロールされるようになっていることがあります。DV被害者がなかなか関係から離れられない背景には、このような関係性の変化が存在しているのです。

Aさんの妻も、当初は「心配してくれている」「本当は優しい人」と受け止めていました。しかし次第に、Aさんを怒らせないように行動し、自分の予定や気持ちを自由に伝えられなくなっていきました。

DVは特別な人だけの問題ではない

手を突き出す女性DVという言葉を聞くと、「特殊な人だけがするもの」と考えたくなるかもしれません。しかし、実際にはそう単純ではありません。

  • 不安や寂しさ。
  • 分かってほしいという気持ち。
  • 認められたいという気持ち。

これらは誰もが持っている感情です。だからこそ、DVを理解する際には、「悪い人」「危険な人」という見方だけでは十分ではありません。

もちろん、暴力や支配は決して許されるものではなく、その責任は加害者にあります。一方で、なぜ支配やコントロールが生じるのかを理解することも、DVの予防や再発防止のためには重要です

相手を変えようとする前に、自分の不安や苦しさに気づくこと。相手を思いどおりに動かそうとするのではなく、自分の気持ちを適切に伝えること。そのような積み重ねが、支配ではない健全な関係性につながっていくのです。

Aさんは、職場では真面目で責任感があり、周囲から信頼されていました。そのため、自分がDV加害者であるとは考えていませんでした。しかし、親密な関係の中で不安や傷つきが強まると、相手を支配する行動につながっていました。

優しいDV加害者とは何か

偉そうにしている男性DV加害者という言葉を聞くと、怒りっぽく威圧的な人物を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、そのようなケースもあります。しかし、臨床現場では、周囲から「優しい人」と評価されている方が、DVにつながる関係性を形成しているケースも少なくありません。例えば、

  • 真面目で責任感がある。
  • 周囲への気遣いができる。
  • 仕事熱心で誠実に見える。
  • 感受性が豊かで傷つきやすい。

そのような特徴を持つ方です。こうした方々は、自分自身を加害者だとは考えていません。むしろ、

  • 「こんなに頑張っているのに分かってもらえない」
  • 「自分ばかり我慢している」
  • 「傷ついているのはこちらだ」

という感覚を強く抱えていることがあります。そのため、怒鳴ったり暴力を振るったりする代わりに、被害感を訴えることで相手を動かそうとすることがあります。例えば、

  • 「そんなことをされると悲しい」
  • 「自分は大切にされていない気がする」
  • 「どうして分かってくれないのか」

という言葉そのものは問題ではありません。本来、悲しみや寂しさを伝えることは、親密な関係において大切なコミュニケーションです。しかし、それによって相手が常に罪悪感を抱き、自らの行動を制限するようになっているのであれば、注意が必要です。本人は傷ついた気持ちを伝えているつもりでも、その結果として相手の自由を奪い、コントロールしていることがあるからです。

近年は、このような「優しいDV加害者」や「被害感を使った支配」を臨床の中で目にする機会が増えているように感じます。その背景には、従来のような露骨な暴力や威圧が社会的に許容されにくくなったこともあるでしょう。一方で、不安や寂しさ、承認への渇望そのものがなくなったわけではありません。その結果、それらの感情が被害感や自己正当化という形で表れやすくなっているように思われます。

DVを理解するうえでは、怒りや暴力だけを見るのではなく、「その関係の中で誰かが自由を失っていないか」「誰かが相手の機嫌や被害感に過度に配慮する状態になっていないか」という視点が重要です。支配は、必ずしも強い言葉や暴力によって行われるわけではありません。優しさや被害感の中に、支配が隠れていることもあるのです。

Aさんは、普段は穏やかで家族思いに見える人でした。しかし、妻が自分の思い通りに動かないと、「自分は大切にされていない」と感じ、被害感を訴えることで妻に罪悪感を抱かせていました。結果として、妻の自由を狭めていました。

なぜ支配が生まれるのか

伏せる男性では、なぜ人は相手を支配してしまうのでしょうか。DVというと、「相手を支配したい人」がいるように思われがちですが、実際の臨床では、必ずしもそうとは限りません。これまで見てきたように、多くの場合、その背景には不安や寂しさ、傷つきやすさがあります。

  • 相手に見捨てられるのではないか。
  • 大切にされていないのではないか。
  • 自分には価値がないのではないか。

そのような不安を抱えたとき、本来であれば、自分自身の不安や悲しみとして受け止める必要があります。しかし、それがうまくできないと、人は相手を変えることで安心しようとします

  • 「もっと連絡してほしい」
  • 「もっと理解してほしい」
  • 「もっと自分を優先してほしい」

という要求が強くなり、次第に相手の行動や考え方をコントロールしようとするのです。本人にとっては、支配しようとしているつもりではありません。

  • 安心したい。
  • 分かってほしい。
  • 愛されていると感じたい。

そうした切実な気持ちから始まることも少なくありません。だからこそ、DVは分かりにくいのです。支配している側も苦しんでいることがありますし、被害者も「悪意があるわけではない」と感じることがあります。

しかし、理由がどうであれ、一方が相手の自由や選択を制限するようになれば、それは支配的な関係へと変わっていきます。大切なのは、「なぜそのような行動をしてしまうのか」を理解しながらも、その結果として関係性の中で何が起きているのかを見ることです。

Aさんの場合、支配は「相手を支配したい」という明確な意図から始まったわけではありませんでした。安心したい、分かってほしい、愛されていると感じたいという気持ちが強まり、それを妻の行動を変えることで満たそうとしていました。

DV予防のために大切なこと

家族のカウンセリングDVは、暴力が始まって初めて気づくものではありません。多くの場合、その前の段階から関係性の変化が起きています。そのため、DVを予防するためには、「危険な加害者を見抜くこと」だけではなく、自分自身や関係性に起きている変化に気づくことが大切です。

DV被害を経験した方のお話をうかがうと、「最初はこんな人だと思わなかった」「気づいた時には逃げられなくなっていた」という言葉をよく耳にします。

実際には、関係性が支配的な方向へ向かう過程の中で、少しずつ自由が失われていくことがあります。例えば、

  • 相手を怒らせないように行動することが増えた
  • 相手の機嫌を気にすることが増えた
  • 自分の予定や行動を細かく説明するようになった
  • 本音を言うことをためらうようになった
  • 「自分が悪いのかもしれない」と考えることが増えた

こうした変化は、一つひとつは小さなものかもしれません。しかし、それらが積み重なることで、いつの間にか相手の顔色をうかがいながら生活する関係へと変化していくことがあります

また、DVの関係性では、「相手がかわいそうだから」「傷ついている人だから」という理由で、その関係が維持されることも少なくありません。もちろん、相手を理解しようとすることや思いやることは大切です。しかし、その結果として自分の苦しさや違和感を後回しにし続けるのであれば、注意が必要です。

本来、健全な関係とは、一方だけが我慢を続ける関係ではありません。お互いが自由に意見を伝え合うことができ、お互いの気持ちが尊重される関係です。相手を理解しようとすることと、自分を犠牲にすることは同じではありません

DVを予防するためには、相手を観察すること以上に、自分自身の感覚を大切にすることが重要です。

  • 「なんとなく苦しい」
  • 「なんとなく怖い」
  • 「本当は嫌だ」

そうした感覚を軽視せず、自分の中で何が起きているのかに目を向けてみてください。関係性の中で生じる違和感は、時として大切なサインになります。

DVは、暴力という形で現れる前から始まっていることがあります。だからこそ、関係性の中で自分が自由でいられるか、自分らしくいられるかを問い直すことが、DV予防の第一歩になるのです。

Aさんは、カウンセリングを通して、怒りが出る前の不安や寂しさに気づく練習をしました。また、妻を変えようとする前に、自分の感情を言葉にし、相手の自由を尊重することがDV予防につながると理解していきました。

DV加害者に対するカウンセリング

カウンセリングをする男女ここまで読んで、「自分にも思い当たるところがある」「変わりたいと思うけれど、どうすればよいのか分からない」と感じた方もいるかもしれません。

DVは、意志の弱さや性格の問題だけで解決できるものではありません。相手を支配したりコントロールしたりする行動には、長年繰り返してきた考え方や感情の扱い方、人との関わり方のパターンが関係していることが多く、自分一人だけで変えることは容易ではありません。そのため、DV加害者を専門とするカウンセリングを受けることには大きな意味があります

ただし、DV加害者に対するカウンセリングは、一般的な心理療法とは異なる側面があります。カウンセラーは加害行為を正当化したり、「あなたもつらかったのですね」と加害行為そのものを受け入れたりするわけではありません。暴力や支配の責任は加害者自身にあることを前提としながらも、その背景にある不安や傷つき、認知の偏りや対人関係のパターンを一緒に見つめ、変化へとつなげていきます。加害者の責任を明確にしつつ、変化の可能性も信じることが、DV加害者臨床の基本的な姿勢です。

カウンセリングでは、「なぜ相手をコントロールしたくなるのか」「怒りが湧く前に何を感じているのか」「相手の立場や気持ちをどのように受け止めているのか」といったことを丁寧に振り返ります。また、自分では当然だと思っていた考え方や価値観が、実は相手を苦しめる認知の偏りになっていないかを検討することもあります。そして、相手を変えることではなく、自分自身の考え方や行動を変える方法を身につけていきます。

DV加害者の方の中には、「相手にも悪いところがある」「本当は自分のほうが傷ついている」と感じている方も少なくありません。そのような思いを抱くこと自体は自然なことです。しかし、相手に問題があったとしても、暴力や支配を選択した責任がなくなるわけではありません。カウンセリングでは、その責任から目を背けることなく、自分自身の行動と向き合う姿勢を育てていきます。

一方で、カウンセリングは加害者を責め続ける場でもありません。変化には勇気が必要です。これまでの生き方や価値観を見直すことには、不安や葛藤も伴います。そのような苦しさを支えながら、暴力や支配に頼らずに相手と関わる方法を身につけていくことが目標となります

もし、「このままでは同じことを繰り返してしまうかもしれない」「大切な人との関係を本当に変えたい」と感じているのであれば、その気づきは変化への大切な第一歩です。DVは繰り返されやすい問題ですが、専門的な支援を受けながら、自分自身と真摯に向き合い続けることで、暴力や支配に頼らない関係性を築いていくことは決して不可能ではありません。

Aさんの場合、カウンセリングでは、自分の言動が妻に与えていた影響を丁寧に振り返りました。そのうえで、不安を相手への非難や管理に変えず、自分の感情として扱う練習を重ね、暴力や支配に頼らない関わり方を少しずつ身につけていきました。

DV加害者についてのよくある質問


DV加害者とは、配偶者や恋人など親密な関係にある相手に対して、暴力や支配、コントロールを行う人を指します。DVというと、殴る、蹴る、物を投げるといった身体的暴力を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、怒鳴る、脅す、無視する、人格を否定する、交友関係を制限する、行動を細かく確認する、生活費を管理する、性的な行為を強要するなど、さまざまな形があります。加害者本人は、自分の行為をDVだと認識していないことも少なくありません。「心配だから」「愛しているから」「相手にも悪いところがあるから」と説明することもあります。しかし理由が何であっても、相手が自由に考え、行動し、意見を言うことを妨げているのであれば、支配的な関係になっている可能性があります。DV加害者を理解する際には、単に怒りっぽい人や乱暴な人と見るだけでは不十分です。不安、寂しさ、見捨てられたくない気持ち、認められたい気持ちなどが背景にある場合もあります。ただし、その背景があるからといって、暴力や支配が許されるわけではありません。大切なのは、自分の行為が相手にどのような影響を与えているのかを見つめ、相手を変えようとするのではなく、自分自身の行動を変えていくことです。


DV加害者の特徴としては、相手を自分の思い通りに動かそうとすること、相手の自由や交友関係を制限しようとすること、自分の怒りや不安を相手の責任にしやすいことなどが挙げられます。たとえば、連絡が遅いと強く責める、外出先や会う相手を細かく確認する、服装や行動に口を出す、相手が自分の意見を言うと不機嫌になる、謝罪した後に同じことを繰り返す、といった形で現れることがあります。また、暴力的で威圧的に見える人だけがDV加害者とは限りません。周囲からは真面目で優しい人、責任感がある人、仕事熱心な人と評価されている場合もあります。そのような人でも、親密な関係の中では不安や傷つきやすさが強くなり、相手に罪悪感を持たせたり、被害者のように振る舞ったりしながら、結果として相手をコントロールしていることがあります。本人は「自分は傷ついている」「分かってもらえない」と感じているため、加害者である自覚を持ちにくいこともあります。しかし、重要なのは本人の意図だけではなく、相手が萎縮していないか、自由に行動できなくなっていないか、常に顔色をうかがう状態になっていないかという点です。DVの特徴は、暴力の有無だけでなく、関係の中に支配や恐怖、不自由さが生じているかを見ることが大切です。


DV加害者が変わることは不可能ではありません。ただし、自然に治るものではなく、本人が自分の加害行為を認め、継続的に取り組む必要があります。DVは一時的な怒りだけで起きるものではなく、相手を支配したり、相手を自分の不安の解消に使ったりする対人関係のパターンとして繰り返されることがあります。そのため、「もうしない」と謝るだけでは十分ではありません。なぜ怒りが出るのか、怒りの前にどのような不安や傷つきがあるのか、相手に何を求めているのか、自分の言動が相手にどのような影響を与えているのかを丁寧に見つめ直すことが必要です。また、DVでは「相手も悪い」「自分だけが責められている」「本当は自分の方が傷ついている」と考えやすく、それが変化を妨げることがあります。カウンセリングでは、そのような考え方を責めるのではなく、しかし正当化もしない形で扱っていきます。暴力や支配をやめるためには、相手を変えようとするのではなく、自分の行動を変えることが中心になります。短期間で完全に変わることを期待するよりも、時間をかけて再発を防ぎ、暴力や支配に頼らない関わり方を身につけていくことが重要です。変化には痛みも伴いますが、専門的な支援を受けながら取り組むことで、より対等で安全な関係を築く可能性はあります。


DV加害者の心理には、怒りだけでなく、不安、寂しさ、見捨てられたくない気持ち、認められたい気持ち、自分を大切にしてほしい気持ちが隠れていることがあります。もちろん、こうした気持ち自体は誰にでもある自然な感情です。問題は、その感情を自分の中で受け止めることが難しくなり、相手に何とかしてもらおうとすることです。たとえば、相手の返信が遅いと不安になり、何度も連絡する。相手が友人と会うと見捨てられたように感じ、外出を制限する。自分を優先してもらえないと傷つき、怒りや非難で相手を責める。このように、自分の苦しさを相手の行動を変えることで解消しようとすると、支配やコントロールにつながります。また、DV加害者の中には、自分の行為を「愛情」「心配」「家族のため」と考えている人もいます。しかし、相手が自由に考えたり行動したりできなくなっているなら、それは愛情ではなく支配になっている可能性があります。心理的背景を理解することは大切ですが、それは加害行為を許すためではありません。むしろ、自分がどのような不安や傷つきを相手への攻撃や管理に変えているのかを理解し、別の表現方法を身につけるために必要なのです。DV加害者の心理を見つめることは、責任から逃げることではなく、責任を取るための第一歩です。


DVは、殴る、蹴るといった身体的暴力だけを指すものではありません。相手を怖がらせる、従わせる、自由を奪う、行動を制限する、経済的に支配する、性的なことを強要する、無視や侮辱で相手を追い詰めるといった行為もDVに含まれます。どこからがDVかを考えるときには、「これは暴力にあたるかどうか」だけでなく、その行為によって相手が自由に意見を言えなくなっていないか、相手が常に顔色をうかがっていないか、恐怖や罪悪感によって行動を変えさせられていないかを見ることが大切です。たとえば、「心配だから連絡してほしい」という言葉自体は不自然ではありません。しかし、それが「なぜ連絡しなかったのか」「誰と会っていたのか」「次からは必ず報告しろ」という形になり、相手が自由に行動できなくなるなら、支配やコントロールに近づいています。また、怒鳴らない、手を出さない場合でも、ため息、不機嫌、無視、被害者のような態度によって相手を動かしていることもあります。本人が「暴力ではない」と思っていても、相手が萎縮し、自分の意見や予定を変えるようになっていれば注意が必要です。DVを判断するうえで重要なのは、行為の形だけではなく、関係の中で力の差や不自由さが生じているかどうかです。


DV加害者がいつも暴力的で威圧的であるとは限りません。むしろ、優しい時期があるからこそ、被害者も周囲もDVに気づきにくくなることがあります。暴言や支配的な行動の後に謝る、急に優しくなる、反省しているように見える、プレゼントをする、もう二度としないと言う、といったことがあります。そのため、被害者は「本当は優しい人だから」「自分にも悪いところがあったから」「もう少し支えれば変わるかもしれない」と考えやすくなります。しかし、優しい時があることと、DVがないことは同じではありません。問題は、優しさの有無ではなく、関係全体の中で相手が自由を失っていないか、恐怖や罪悪感によって行動を制限されていないかという点です。また、加害者本人も、自分の優しさを根拠に「自分はDV加害者ではない」と考えることがあります。しかし、ある場面で優しくできることは、別の場面で相手を支配している事実を消すものではありません。むしろ、優しさと支配が交互に現れることで、被害者は関係から離れにくくなることがあります。カウンセリングでは、優しい面を否定するのではなく、その一方で、怒りや不安が高まった時にどのように相手を傷つけ、支配しているのかを見つめていきます。本当に相手を大切にするとは、優しくする時があることではなく、相手の自由や尊厳を継続して尊重することです。


DV加害者に対するカウンセリングは、本人が自分の行動を変えたいと真剣に考えている場合に、変化の助けになります。ただし、カウンセリングを受ければ自動的にDVがなくなるわけではありません。DV加害者のカウンセリングでは、単に怒りを抑える方法を学ぶだけではなく、相手を支配したくなる考え方、不安や寂しさの扱い方、責任転嫁や正当化の癖、相手の立場を想像する力などを丁寧に扱います。本人は「自分もつらかった」「相手にも問題がある」と感じていることがあります。その思いを聞くことはありますが、それによって暴力や支配を正当化することはありません。カウンセリングでは、加害行為の責任は本人にあるという前提を保ちながら、なぜそのような行動を繰り返してしまうのかを理解し、別の行動を選べるようにしていきます。また、被害者との関係修復だけを目的にすると、再び相手を自分の思い通りにしようとする危険があります。大切なのは、相手が戻るかどうかではなく、自分が暴力や支配に頼らない生き方を身につけることです。カウンセリングは、加害者を責め続ける場ではありませんが、加害行為を曖昧にする場でもありません。責任を引き受けながら、行動を変えるための具体的な練習を継続する場です。時間はかかりますが、専門的な支援を受けることで、再発予防や対等な関係づくりに役立つ可能性があります。


DV加害者のカウンセリングでは、まず具体的な出来事を振り返り、自分の言動が相手にどのような影響を与えていたのかを確認します。多くの場合、加害者本人は「そんなにひどいことはしていない」「相手も悪かった」「自分は心配していただけ」と考えています。そのため、カウンセリングでは、行為を曖昧にせず、怒鳴る、無視する、責め続ける、連絡を強要する、行動を制限するなどの具体的な行動を一つひとつ見ていきます。そのうえで、怒りの前にどのような不安、寂しさ、傷つき、見捨てられ感があったのかを整理します。感情を否定するのではなく、それを相手への攻撃や支配に変えずに扱う方法を身につけることが大切です。また、相手の立場に立って考える練習、自分の要求を命令や非難ではなく言葉で伝える練習、衝動的に連絡したくなった時に一度立ち止まる練習なども行います。場合によっては、認知の偏りや価値観を見直すこともあります。たとえば、「夫婦なら分かってくれて当然」「自分を不安にさせる相手が悪い」といった考えが、相手を苦しめていないかを検討します。カウンセリングの目的は、被害者を説得して関係を元に戻すことではありません。自分の責任を引き受け、暴力や支配を繰り返さないための行動を身につけることです。


DV加害者が相談する時に大切なのは、相手を変えるためではなく、自分を変えるために相談するという姿勢です。相談に来る方の中には、「妻に言われたから」「別居を解消したいから」「離婚を避けたいから」という理由で来られる方もいます。その動機自体が悪いわけではありません。しかし、カウンセリングを相手を取り戻すための手段にしてしまうと、再び相手を自分の思い通りに動かそうとすることにつながります。大切なのは、相手が戻るかどうかに関係なく、自分の暴力や支配的な行動をやめる責任があると認めることです。また、相談では、自分に都合のよい説明だけでなく、相手がどのように怖がり、傷つき、自由を失っていたのかにも目を向ける必要があります。「自分もつらかった」「相手もひどいことを言った」と感じることはあるかもしれません。しかし、それは暴力や支配を選んだ責任をなくすものではありません。相談を始める時には、すぐに完全な反省ができなくても構いません。むしろ、最初は混乱や抵抗があることも自然です。それでも、自分の行動を正当化するのではなく、専門家とともに振り返ろうとする姿勢が重要です。相談は、加害者として裁かれる場ではありませんが、加害行為をなかったことにする場でもありません。自分の弱さや不安を見つめ、暴力や支配に頼らない関係の持ち方を学ぶ場です。


DV加害者が変わるために最初にできることは、自分の行動を小さく見積もらず、相手に与えた影響を認めることです。「殴っていないからDVではない」「相手が怒らせたから仕方なかった」「自分は家族のために言っただけだ」と考えていると、変化は始まりにくくなります。まずは、怒鳴る、責める、無視する、行動を確認する、交友関係に口を出す、不機嫌で相手を動かす、罪悪感を持たせるといった行為が、相手に恐怖や不自由さを与えていなかったかを振り返ることが必要です。次に、怒りが出た場面だけでなく、その前に何を感じていたのかを考えてみることも大切です。寂しかったのか、不安だったのか、見捨てられたように感じたのか、自分が大切にされていないと思ったのか。その感情を相手への攻撃や管理に変えてしまうと、支配が繰り返されます。変わるためには、自分の不安を自分のものとして扱い、相手に背負わせない練習が必要です。また、相手に謝ることも大切ですが、謝罪だけで終わらせないことが重要です。謝罪の後に同じことを繰り返すと、相手はさらに傷つきます。自分一人で抱え込まず、DV加害者への理解がある専門家に相談し、具体的な行動の振り返りと再発予防に取り組むことが、変化への現実的な第一歩になります。

まとめ

抱き合う男女DVというと、怒鳴る、脅す、殴るといった分かりやすい暴力をイメージされることが多いかもしれません。しかし、実際には、そのような行為が突然現れるわけではありません。心配や愛情、不安や寂しさ、理解してほしいという気持ちなど、誰もが抱く自然な感情が、その表現の仕方や向けられ方によって怒りや非難、威圧、コントロールへと変化し、相手の自由や尊厳を奪うようになったとき、DVへと発展していきます。

そのため、DVを理解するうえでは、暴力という結果だけを見るのではなく、その背景で関係性に何が起きているのかに目を向けることが大切です

お互いが自由に意見を言える関係なのか。どちらか一方だけが我慢を続ける関係になっていないか。相手の顔色をうかがうことが当たり前になっていないか。そして、自分自身の感覚や違和感を大切にできているか。そのような視点を持つことが重要です。

DVは、暴力という形で現れる前から、その芽が関係性の中に生じていることがあります。だからこそ、日々の関係性の中にある小さな違和感や不自由さに目を向けることが、DVの予防や早期発見につながるのではないでしょうか。

また、DVは、相手を変えることで解決する問題ではなく、自分自身の考え方や行動を見つめ直すことから変化が始まります。一人で抱え込まず、専門家とともに取り組むことで、暴力や支配に頼らない関係性を築いていくことは可能です。

当オフィスでは、DV加害者の方を対象としたカウンセリングを行っています。当オフィスのカウンセリングをご希望の方は以下の申し込みフォームからお申し込みください。