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入門 メルツァーの精神分析論考を読む

S.F,キャセッセ(著) 木部則雄、脇谷順子(訳) 山上千鶴子(解題・訳)「入門 メルツァーの精神分析論考-フロイト・クライン・ビオンからの系譜」 岩崎学術出版社 2001年/2005年の感想です。ずっと読みたかったのですが、長らく絶版でした。しかし、近隣の図書館にあるということで、ようやく借りて読むことができました。

本書はイタリアの精神分析家であるキャセッセによるメルツァー理論をコンパクトにまとめたものです。メルツァーの理論は非常に難解ですが、それを非常に分かりやすく、平易に、シンプルに書かれています。これからメルツァーを読む人に対してガイドの役割を果たしますし、メルツァーを読んだが理解できなかった人のための整理のためにも役立てれます。

メルツァーは1922年にアメリカで生まれ、精神科医としてのトレーニングを受け、その後、イギリスに渡りました。そこで。メラニー・クラインの教育分析や個人分析、スーパービジョンを受け、精神分析家となった人です。非常に独創性のある精神分析家で、著作も多数出版しています。しかし、分析のプロセスのある局面での頻度を落とす技法や訓練システムについてのトラブルなどで、最終的に国際精神分析学会から除名されています。おそらくメルツァーの創造性はそうした狭い枠の中ではなく、独自の道で開花されるものであろうと思いますし、現に除名後も創造的な発見をし、数多くの精神分析家に多大な影響を及ぼしています。そして、2004年に永眠しました。

そういえばW,R,ビオンも学会などの政治的な場から逃れるため、遠くカリフォルニアまで行き、精神分析の道を邁進したことも思い浮かべます。政治的に自由になると、創造性も大きく進展するのかもしれません。