概要
LIEM(貧困や経済的排除)は、私たちの心身の健康に長期にわたり深刻な影響を与えることが、さまざまな研究から明らかにされています。すなわち、LIEMを背景にもつ方々は心理支援のニーズを抱えているといえますが、彼らは心理支援の場に来ない、あるいは来たとしても支援が継続しないことが指摘されてきました。確かにそのような傾向があることは認められていますが、それはクライエント側の要因というよりも、むしろ心理支援者側の要因であることが示唆されています。
現在の日本では、6人に1人が貧困ライン以下の生活を強いられているとされています。この状況を踏まえると、LIEMを背景にもつ方々の心理的ニーズを理解し、彼らに適した心理支援を提供することは、心理支援者にとって基本的なコンピテンシーとして位置づけられるべきであるといえるでしょう。
ところが、これまで日本においては、LIEMがもたらす心理的影響や、LIEMを背景にもつ方々への心理支援に関する議論が十分に行われてきたとは言えません。
そこで本セミナーでは、近年の社会正義カウンセリングの理論も参照しながら、LIEMが私たちの発達や適応に与える影響について理解を深めた上で、日本におけるLIEMを背景にもつ方々への心理支援の現状と課題を明らかにし、心理支援者に求められるコンピテンシーについて考えていきたいと思います。
【参考図書】井出智博 他(編)『心理支援における社会正義アプローチ:不公正の維持装置とならないために』誠信書房 2024年
本セミナーで学べること
- 社会正義カウンセリングの動向
- スティグマ・マイクロアグレッション・intersectionality(交差性)
- 心理支援者の自己省察
- 多文化・社会正義カウンセリングのコンピテンシー
- LIEMが発達や適応に及ぼす影響
- LIEMを背景に持つクライエントへの心理支援に関する心理支援者のコンピテンシー
講師
井出智博 先生
- 所属:北海道大学大学院教育学研究院臨床心理学講座 准教授(福祉臨床心理学研究室)
- 資格:臨床心理士、公認心理師、博士(文学)
- 学会:日本心理臨床学会(広報誌編集委員会/委員)、日本福祉心理学会(常任理事、研究研修委員会/委員長)、日本人間性心理学会、日本子ども虐待防止学会(代議員、編集委員)、International Society for Prevention of Child Abuse and Neglect(ISPCAN)他
- 社会活動:NPO法人子どもアドボカシーセンター札幌代表、IFCA(International Foster Care Alliance)理事/ユースプロジェクトSupportive Adult、北海道子どもの虐待防止協会副代表、一般財団法人 公認心理師試験研修センター公認心理師試験委員会委員 他
- 臨床経験:児童心理治療施設、児童養護施設、乳児院の心理職、スクールカウンセラー他
セミナーの紹介
レジュメの一部
セミナーの様子の一部
動画の内容
本セミナーでは、LIEM(貧困や経済的排除)を背景にもつクライエントへの心理支援について、社会正義の観点から取り上げています。クライエントの困難を個人の努力不足や心理的問題だけに還元するのではなく、その背景にある経済状況、社会構造、文化的条件などを含めて理解する視点を解説しています。
まず、貧困や経済的排除が、生活上の困難だけでなく、心理的苦痛、対人関係、自己評価、社会参加などにどのような影響を及ぼし得るのかを考えていきます。心理臨床では個人の内面に焦点が当たりやすい一方、その人が置かれている社会的・経済的環境が苦悩の形成や維持に深く関わっている場合があります。こうした問題を個人と環境との相互作用の中で捉えることの重要性を取り上げています。
また、支援者自身が無意識に持っているスティグマや偏見、価値観にも焦点を当てています。貧困や経済状況に対して「本人の努力が足りない」「もっとこうすればよい」といった前提を知らず知らずのうちに持っている可能性があります。そうした価値観がクライエントへの理解や言葉の選び方、治療関係にどのような影響を与えるのかを振り返り、支援者自身の立場や前提を問い直す必要性について解説しています。
さらに、マイクロアグレッションについても取り上げています。支援者に差別する意図がなくても、日常的な言葉や態度の中に、クライエントの社会的背景や経験を軽視したり、否定したりするメッセージが含まれることがあります。こうした微細な言動がどのように生じるのかを、支援者自身の価値観、文化的背景、専門職として身につけてきた規範などとの関係から考えていきます。
心理臨床家の自己省察については、転移・逆転移だけに限定せず、治療者自身の人生観、治療観、倫理観、文化的背景、社会的立場などを含めて検討しています。クライエントとの関係の中で生じる感情や反応が、治療関係から生じたものなのか、それとも自分自身の価値観や社会的な前提に由来するものなのかは、必ずしも明確に区別できません。だからこそ、自身の反応を丁寧に振り返り続ける姿勢が重要となります。
また、社会正義や多文化的な視点から、心理臨床における「個人と治療者」という二者関係を超えて、クライエントを取り巻く社会や文化にも目を向けます。貧困や経済的排除に加え、ジェンダー、エスニシティ、社会的立場など、さまざまな要因が心理的苦痛や支援へのアクセスに影響する可能性があります。これまで当然のものとして見過ごされてきた社会的条件や権力関係を、臨床の中でどのように可視化していくのかを考えます。
さらに、こうした自己省察を心理臨床家一人の努力だけに委ねるのではなく、他の専門家との対話やスーパービジョン、研修などを通じて深めていくことの重要性についても扱っています。自分では当然だと思っている価値観や社会的なバイアスほど、自分一人では気づきにくいものです。他者からのフィードバックを受けながら、自分の理解や支援のあり方を問い直していくことも、専門職として重要な営みとなります。
本セミナーでは、LIEMを背景にもつクライエントへの支援を入口として、心理的問題と社会構造との関係、支援者自身のスティグマや特権性、マイクロアグレッション、自己省察、社会正義、多文化的感受性などを幅広く取り上げています。クライエントの苦悩を個人の内面だけに閉じ込めず、その人が生きる社会的・文化的文脈まで含めて理解するための視点を深める内容となっています。
収録時間
約5時間
オンデマンド視聴期間
無期限
参加費
5,500円
- 体調不良、急用、家庭の用事など個人的な理由であってもキャンセルの場合には返金します。
- 支払い方法はクレジットカード、コンビニ払い、銀行振込、ペイジー(Pay-Easy)があります。
- 自治体などで請求書払いが必要な方はこちらの【請求書払いの申し込みフォーム】からご連絡ください。
オンライン開催
オンデマンド視聴はVimeoを用いています。視聴可能かどうかはこのテスト視聴のページをご覧ください。映像と音声がうまく再生できていればオンデマンドは視聴可能です。
参加資格
臨床心理士、公認心理師、医師、心理職、カウンセラー、精神保健福祉士、社会福祉士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、看護師、保育士、教師などの資格をもつ対人援助の専門家、大学院生、一般の方など。
貧困や経済的排除の方への心理支援などに興味を持っていればどなたでも参加可能です。
臨床心理士更新ポイント
臨床心理士の更新のためのポイントを2条(4)の項目(2ポイント)で申請する予定です。また、オンデマンド視聴でもポイント取得可能です。
申し込み期日
無期限
参加方法
- 下の「セミナーに参加する」ボタンを押す
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- 名前、所属、メールアドレス、資格を記入し、支払い方法を選択する
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- メールが届いたら、その中に記載された視聴案内のPDFファイルをダウンロードする



