ウィニコットとの精神分析の記録-精神病水準の不安と庇護-

狂気に立ち向かう

マーガレット・リトル(著) 神田橋條治(訳)「ウィニコットとの精神分析の記録-精神病水準の不安と庇護-」岩崎学術出版社 1990年/2009年を読んだ感想を書きます。

1.リトルとウィニコットの精神分析

マーガレット・リトルはいわゆる独立学派に属する精神分析家・訓練分析家で、ウィニコットから教育分析や個人分析をうけていました。ただ、スーパービジョンを誰に受けていたのかは不明です。その彼女がウィニコットとの精神分析セッションについてまとめたのが本書です。

こうした本を書き表すこと自体がウィニコットとの精神分析がワークスルーされてない証左であると言う人もいますが、それでも実際の精神分析セッションでのウィニコットのあり方がうかがい知ることができるのは貴重な史料であるともいえます。

2.ウィニコットの精神分析の実際

ウィニコットは600篇以上の論文を書いていますが、いずれも臨床素材は断片的なものが多く(「抱えることと解釈」「子どもの治療相談面接」を除いて)、理論とその精神分析実践との関係が分かりにくいところがあります。

本書ではウィニコットがリトルを実際にどのようにholdingしたのかがよく分かりますが、それは心理的なものだけではなく、かなり身体的・物理的なものまで含まれていたようです。実際にリトルの手を握ったり、精神病院に付き添ったりということもあったようで、立場からすると精神分析家のアクティングアウトと言われかねないような事態であるといえるかもしれません。しかし、ウィニコットはいくつかの論文で精神病水準の重たい病理の患者には解釈ではなく、マネジメントが必要といっており、その実態の一部がここでつまびらかにされているのは非常に興味深いでしょう。

3.精神病水準の不安体験とは

また、ウィニコットの精神分析セッションのあり方以外にも、リトルの精神病水準の体験を自己報告という形で、理解できるのも非常に貴重であるといえます。それもリトルが精神病水準の不安を持ちつつ、それを整理して、まとめることができるだけの力量があったからであるといえるのでしょうが。

このような解体破滅的な不安を実際のクライエントさんはどのように体験しているのかを知ることは実際の精神分析臨床やカウンセリングをしていくうえで大いに参考になるのではないかと思います。

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