カウンセリングにおけるカウンセラーの否定的感情
カウンセリングの中で、時としてカウンセラーがクライエントさんに否定的な感情を抱くことがあります。そうしたことは非常に苦しいのですが、それについての意味を書いてみたいと思います。
1.クライエントさんへの否定的感情
カウンセリングをしていると、正直なところ、クライエントさんに対して否定的な感情を抱くことがあります。例えば、
- もう関わりたくない
- 来ないでほしい
- 話しにくい
- 殴りたい
- しつこいので腹が立つ
- 腹立たしい
等など。カウンセラーといえども、神様でもないし、悟りを開いているわけでもないので、時と場合によって色々な気持ちが沸いて来ます。
2.否定的感情を抱えること
これらの感情、気持ちをどのように処理をするのかはとても大事なテーマであると思います。安易に行動化するのはダメだし、「そんな気持ちはない」と否認するのもどうかと思います。そういう気持ちが沸いていることを、ただ沸いているのだということを自己モニタリングし、あるがままに受け止めることがまずは大事だと思います。
そして、それらの気持ちが沸いてきたのはなんでだろう?ということを考え続けるのが臨床的な営みです。いわゆる転移ですが、カウンセラーの個人的な葛藤や未熟さかもしれません。もしくは、クライエントさんとの関係で起こったことかもしれません。いずれにせよ、それらは簡単に理解できないことが多いので、分からないという状態に留まり、否定的感情をもち続けるという状態をしばらく体験し続けなくてはならないと思います。そういう気持ちを持ち続けるということが抱える作業となり、ひいてはカウンセリングの中でクライエントさんを抱えることにつながります。
3.否定的感情を抱える工夫
これらのことを一人ですることは難しい場合が多いので、教育分析や個人分析、スーパービジョンを受けられる環境にいるのなら受けたほうが良いかもしれません。そういう環境に無いのであれば、同僚や身内に話を聞いてもらって、多少クライエントさんと距離を取って、眺めてみることが有効な場合が多いです。
さらに、そういうこともできない環境であるなら、カウンセリングの記録をきちんとつける作業をし、それらを事あるごとに読み返したりすることも、クライエントさんと距離を取って冷静になれる一つの方法だと思います。
4.否定的感情の意味
カウンセラーが否定的な感情を持つことは自然だし、それらを断罪することはできません。逆にそれらの感情を持つということはそれだけクライエントさんに対してコミットしており、関係性が深まっているというように解釈もできます。それらのカウンセラーの感情を分析することによって、またカウンセリングが展開するきっかけになることが多いのです。だから、これらの感情をただ否定したり、抑圧したり、なかったものにしたり、安易に行動化することなく、抱え続けることが重要となってきます。
そして、可能ならそこからカウンセラーが自己分析をし、さらにクライエントさんについての理解を深めることができると、それはカウンセリングとしても有用となるでしょう。いわゆる逆転移の活用にあたります。
当たり前ですが、クライエントさんに否定的感情をもち、それによって暴力を振るうことを肯定はしませんし、搾取するようなことは同意できません。どういう原因や状況やきっかけがあったとしても、暴力を振るったり、搾取した時点で、そのカウンセラーはダメだと思います。
こうしたカウンセリングについては以下を参照してください。