カウンセリングにおける失敗とミスについて

失敗から学ぶ

丹治光浩(編)「失敗から学ぶ心理臨床」星和書店 2002年を読んだ感想です。

1.カウンセラーの失敗

何をもって失敗というのかは別として、カウンセリングを行っている人で「今まで俺は失敗したことが無い」という人は居ないでしょう。多かれ少なかれ、失敗と思うようなことに直面してきたと思います。もちろん、カウンセリングの専門家としてできるだけ失敗しないように準備をし、最善の注意を払っていくことは大切です。そして、失敗したときに変に言い訳をしたり、否認したりするのではなく、本書のタイトルどおり「失敗から学ぶ」という姿勢が真摯な態度といえるでしょう。

そして、失敗したからすべてダメというのではなく、失敗から何を学び、次のカウンセリングに生かしていくことを考えると良いでしょう。そして、過剰に失敗を卑下したり、不安に思ったりするのではなく、スーパーバイザーや職場の上司などと相談しながら、これまでの失敗を取り戻す気持ちでカウンセリングをしていくことが大切になってきます。

失敗をしたからといって、カウンセリングしないようにしたり、持たせないようにしたりすると、そこからそのカウンセラー・心理臨床家の成長はストップしてしまいます。失敗を乗り越え、挽回していく気持ちとチャンスが必須になってくるでしょう。

さらに、大きな失敗だけではなく、カウンセリングを行っていると、細かいカウンセラーのミスやドジはたまにあります。そうしたことがすべてダメかというとそうではなく、ミスやドジをすることでそこにカウンセラー-クライエントさんとの間でリアルで生き生きとした情緒交流が生まれます。言い換えると、カウンセラーの人間らしさや人間臭さが現れます。それがターニングポイントとなり、カウンセリングが展開することもあるでしょう。

もちろん、カウンセラー自身の病理が関連していることもあるでしょうから、そうした時には教育分析や個人分析を受ける必要が出てきます。

2.ほど良い母親とカウンセリング

ウィニコットはほど良い母親(good enough mother)の概念を提唱しました。それは必ず完全な養育をしなければ行けない、そうしなければ養育は失敗するという意味ではないようです。失敗やミスが適度に含まれる養育が必要である、ということです。

もちろん初めから失敗することを念頭に置いたり、わざと失敗しようということではありません。カウンセラーは失敗しないように、ルールに外れないように、細心の注意を払いつつ、全力を尽くしていくことが前提です。そうした態度を維持していく中での失敗には意味があります。

3.私のスーパーバイザー

ちなみに、本書の執筆者の中に以前のスーパーバイザーの先生がいるのですが、その先生がこういうことをしてたのか~と思うと、少しホッとする気持ちもあります。私の目から見るとすごい臨床能力を持っているように見える先生だけに昔はこんなにギクシャクとした臨床をしていたんだなって思うと、なんだかさらに親しみが湧いてきました。

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