恋愛は人間関係の中のありふれた形の一つです。恋愛は人生上の重要な変化をもたらすこともありますし、健全に楽しむことによって充実した生活にしていくこともできます。しかし、時には失恋という形で終わる場合もあります。それは傷つき体験でもありますが、それを糧に人間として成長していくこともしばしばあります。
しかし、恋愛は過度に依存し、そればかりになってしまうと、生活と人生を壊してしまう場合もあります。相手がいないと過度に不安になってしまい、その不安を埋めるために破壊的な行動を起こしてしまうこともあります。
ここではそうした恋愛依存症について解説し、それに対する克服法やカウンセリングについても触れていきます。
目次
1.恋愛依存症とは
恋愛依存症とは、恋愛に対して異常な執着心や依存心を抱き、感情がかき乱され、不安になり、そのことが日常生活に支障をきたす心の病気です。自己肯定感の低さや過去のトラウマ、愛着形成の障害などが原因とされ、一度の別れや拒絶などで強いストレスや不安を感じ、再び恋愛関係を求めるようになる場合があります。
恋愛依存症の人は本来「自分のため」にする恋愛が「相手のため」になってしまいそれが継続することで、「どれだけ自分が不利益をこうむっても相手に尽くす」ことが習慣化してしまいます。例えば、自分の働いたお金を自分の生活に支障があるレベルで相手に渡してしまうことは、「恋愛依存症」といえます。
「自分への不利益な行動の習慣化」「その継続性」がキーワードです。
これは、自分のことより相手の世話に夢中になってしまう女性に多いタイプです。「彼のためなら何だってする」は恋人としては健全な精神ですが、恋愛依存症の人は自己犠牲であっても嫌がることなく相手にとことん尽くしてしまい自分を見失ってしまってもそれを続けてしまいます。
また、心のどこかに「彼に必要とされない自分は、存在意義がない」という認知の偏りが存在し、継続して彼に尽くすことで自分の存在意義を見出そうとするのでその修正が難しいのです。
一方、不幸なことですが依存の対象は他人なのでいつも期待通りの行動を提供しているとは限らず、「恋愛依存症の女性がつくしたのに、意中の対象の男性に冷たくされ理解してもらえない。」といって障害事件に至るなど時々ニュースでも見かけます。
恋愛依存症に近いものとしてセックス依存症があり、時には重複したりします。セックス依存症については以下に詳しく書いています。
2.よくある相談の例(モデルケース)
20歳代の女性
両親は不和で、家庭の中は常に不穏な雰囲気であった。しかし、彼女は幼少期から活発で、明るく、友達も多かった。小学校や中学校では勉強も頑張って取り組んでおり、成績は非常に良かった。そのかいもあって、高校はいわゆる進学校に進学する。
しかし、周りはさらに勉強ができる人が多く、彼女の成績は小中学校の時のように上位にはならなかった。頑張って勉強を続けるが、成績は上がらず、時には学校をさぼることも出てきた。高校は卒業できたが、周りの友達と比べて見劣りするランクの大学にしか合格できなかった。大学では授業はさぼり気味で、アルバイトに精を出すようになった。そこで知り合った年上の男性と付き合うようになった。彼女は非常に高揚し、いつもその恋人と一緒にいるようになった。セックスも早い段階でおこなっていました。
当初はその恋愛も充実して、楽しいものであったが、彼女は恋人と常に一緒にいることを望み、LINEもすぐに返信することを催促し続けた。また、ついには恋人が他の女性と単にしゃべっていることにも嫉妬するようになった。彼女は恋人のことばかりになり、大学にはほとんど行かなくなり、バイト中も仕事するよりも恋人を追いかけることが増え、店長から叱責されることもあった。そうした彼女の束縛に恋人は徐々に嫌気がさすようになった。
友達からも、そんなにしつこくしない方が良いのではないかと指摘されたこともあるが、彼女は聞き耳をもつことはなく、むしろその友達に激怒することもあった。そうしたこともあり、徐々に彼女の周りには友達もいなくなっていった。
こうした状況に困り果てた恋人は彼女を説得し、カウンセリングに行くように勧めた。彼女はカウンセリングには乗り気ではなかったが、恋人から強く言われ、しぶしぶカウンセリングを申し込んだ。
カウンセリングでは当初は何の問題もないと主張していたが、根気よく現状についてカウンセラーと話し合う中で、徐々に不安の強さや自信のなさなどを吐露するようになった。そして、それを埋めるために恋愛にのめりこんでいっていたことを自覚するようになった。さらに幼少期の両親の不和にも話が及び、彼女はそうならないような理想的なカップルを求めていたことに気づいて行った。そうしたプロセスの中で、彼女は恋人に対する依存が少なくなっていき、大学の授業に出るようになったり、友達関係を修復していった。
3.恋愛依存症になりやすい特徴
恋愛依存症になりやすい人の特徴として以下の3つがあります。
(1)恋愛以外がおろそかになってしまう
仕事や友達との付き合いや趣味など、恋愛以外のことがおろそかになってしまうという特徴があります。恋愛をしていないと、恋愛相手がいないと強い不安に襲われてしまいます。
モデルケースでも恋人に付きまとい、LINEはすぐに返信することを強要していました。
(2)自分の熱中している恋愛について悪く言う人を遠ざける。
恋愛について、批判的な意見をいう友達や周囲の人と自然に距離をとってしまったり、感情的になり喧嘩になってしまうこともあります。人の言葉に耳を傾けることができないという特徴があります。
モデルケースでは友達が親切心から指摘しましたが、それに対して激怒し、喧嘩になったりしていました。
(3)いつも恋人が優先
仕事など元々入っていたスケジュールなどを直前に・頻回に・他の人間を巻き込んでまで、恋人との時間を優先しがちです。
モデルケースでも大学の授業はほとんど出ず、バイト中も仕事を疎かにしてしまっていました。
4.恋愛依存症の原因
恋愛依存症の原因には以下の4つがあります。
(1)自信のなさ
何らかの理由で自己肯定感が低かったり、自分に自信がない人に恋愛依存症になりやすい傾向があります。自分に自信がなく、他人もしくは恋することに執着すると、エスカレートする傾向にあります。また、不安も強い傾向が見られます。
モデルケースではカウンセリングの中で自身のなさを埋め合わせるために恋愛に没頭していたことに気づいて行きました。
(2)過去のトラウマや辛い経験
両親や兄弟との関係性の悪さ・過去の異性に傷つけられたこと・学生時代のいじめなど、自己肯定感が保ちにくい環境素因がある人は、恋愛に限らず依存におちいりやすいです。また児童虐待を体験することも恋愛依存症の原因になりえます。
トラウマということに当てはまるかは分かりませんが、モデルケースでも両親は不和で家庭の雰囲気は悪いものでした。こうしたことがモデルケースが恋愛依存症になっていったきっかけや原因であったようです。
(3)他の嗜好がある人(クロスアディクション)
薬物・酒・タバコなど、他の依存がある場合には「依存が幸せ」という認知の偏りが脳にインプットされています。そのため、こうした偏りがあることが恋愛にも影響し、恋愛に依存しやすくなるようです。
依存というほどではありませんが、モデルケースでは過去に勉強に没頭していました。
(4)同性の友達が少なく友達との距離感が苦手
没頭できる趣味や自分と合わせ鏡の同性の友達が少ないと、依存の傾向に陥りやすく、その修正が難しいです。
モデルケースではこれにはそこまで当てはまらず、友達は多い方でした。ただ、恋愛依存症が進んだ段階で友達とは喧嘩になり、疎遠になっていってしまっていました。
5.恋愛依存症の克服と治し方
こうした恋愛依存症に対する治療や対処法はいくかありますので、それを解説します。
(1)ポジティブな思考を心がける
ネガティブな気持ちを持っていると、さらにネガティブな出来事を体験してしまいがちです。自己肯定感を高めるタスクや運動に取り組んだりすることは、恋愛依存症から抜け出せる確率を高めます。
(2)恋愛以外で、熱中できることを見つける
恋愛に限らず依存症になると、視野が狭くなります。ですので、その逆に、恋愛以外に熱中できることを意識的にやってみることが良いでしょう。例えば資格試験や前に中途半端でやめてた趣味、仕事などに熱中することで恋愛依存症を克服する確率を増します。
(3)カウンセリングを受ける
恋愛依存症の背景にある「認知の偏り」は自身ではなかなか修正できません。他人からの指摘や気づきで緩徐に修正されることが多いです。カウンセリングはその意味で大変有用です。
カウンセリングでは、自身のことを振り返り、恋愛依存症に陥ってしまう歴史や経緯、理由を深堀りしていきます。また、同時に、もう少し健全で健康な依存先をカウンセラーと一緒に探し、恋愛ばかりにならないように行動面から変えていきます。
恋愛依存症に陥ってしまう人はカウンセラーとの関係も依存的になったり、時には恋愛感情を向けたりすることもしばしばあります。一時的にはそうしたプロセスを経ることも必要な場合もあります。カウンセリング状況の中でそうした感情や依存が出現したこと自体についても振り返り、その意味を探索することは恋愛依存症の克服のターニングポイントにもなります。積極的にそうした感情についてカウンセラーと話し合うと良いでしょう。
モデルケースでは恋人に言われ、しぶしぶカウンセリングに行きました。そこで徐々に自身を振り返る作業を行い、自信の無さや不安の高さを埋めるために恋愛に没頭していったことを徐々に気付いて行きました。また過去の両親の不和についても想起し、そうしたことが恋愛依存症に関連していることを自覚していきました。
6.恋愛依存症のカウンセリングを受ける
恋愛依存症は生活や人生が非常に脅かされてしまうことがあります。しかし、カウンセリングによって、自身を振り返り、変化させていくこともできます。当オフィスでは恋愛依存症のカウンセリングも行っております。希望者は以下の申し込みフォームからお問い合わせください。