転換される今日の日本心理臨床学会:こころのあり方を変容させる心理療法からアウトリーチやデフレカウンセリングへ

しょうむないのはいらない

日本心理臨床学会第35回秋季大会が、2016-09-03~2016-09-07にかけてパシフィコ横浜において開催されました。そこで、この学会の文化や重点の変遷と、それに対する意見を書きました。

1.個人心理療法からアウトリーチへの転換、もしくは簡便なカウンセリング

日本心理臨床学会に長年参加しているが、個人的印象では、個人心理療法から、コミュニティへのアプローチやアウトリーチみたいなことに力点が変わってきているようだ。そして、心理療法というよりもカウンセリングなど、短く、安く、問題焦点で、パーソナリティに触れずに手軽に終われるものが多くなっている。

それはそれで時代の趨勢であろうし、必要なことでもある。デフレ日本にフィットしているとも言える。誤解を恐れずに言うと、我々は社会からはじき出されたマイノリティを対象にしている。マイノリティはマジョリティの論理では与しえないものを持っている。

2.患者の根源的な苦痛に触れて

マイノリティの中のマイノリティではないが、簡便な心理療法やアウトリーチで救われない患者はいるだろう。人生の行き詰まりと停滞を持て余し、息がつまるような思いで過去を背負い、未来に期待や希望を見出せず、絶望感と無力感と不毛さを生きざるをえない患者である。

その方々は一見過剰適応気味に、それなりの生活をし、その苦しみは他者からは見えず、時には悩みなく明るく元気な人、とまで見られてしまうことがある。それはその方々が他者に配慮し、かつ内面に触れられないようにするための処世術であり、まさに偽りの自己である。

そうした方々が真に本当の自己に出会うには手間暇かけた、こころのあり方の変容を目指した、インテンシブ(集中的)な心理療法が必要になるだろう。その方々はそんなに多数ではないかもしれないが、必要な人に必要な分だけ提供できるように用意をしておくことが我々には求められる。

3.インテンシブな心理療法を提供する心理療法家は希少価値になりつつある

そこに希少価値になりかけている個人心理療法家の役割と価値はある。願わくば、そのような人生に行き詰まりをもつ方々に、簡便な心理療法やアウトリーチ臨床家がアセスメントを通して出会ったら、我々の存在があることを情報提供してもらいたい。

ただ、難しいのがその人生の行き詰まりがあることをアセスメントするためには、インテンシブな個人心理療法の経験や技術がないと分からない場合もあったりする。ニーズがあるのに見過ごしてしまう。それは患者にとって非常に不運なことでもある。そもそもそうした技法を提供できるようになるためには、教育分析や個人分析スーパービジョンが必須だが、そうした訓練を受けていないカウンセラーも増えているようです。

4.公認心理師の成立でインテンシブな心理療法は残るのか

おそらく、今後できる公認心理師には、インテンシブな心理療法を訓練することが欠けるだろうと予想される。だとすると、インテンシブな心理療法の文化をどう残すのかが、今後の課題となる。公認心理師以外の団体での継続的な組織化を考えておく必要はあるかもしれない。

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