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日本精神分析学会第64回大会感想記:発達障害、設定、資格、トラウマをめぐって

日本精神分析学会第64回大会が終了し、既に数日が経ってしまいましたが、その学会参加の報告を書いてみたいと思います。

1.開業における発達障害

日本精神分析学会の初日の最後は教育研修セミナーで発表しました。テーマは「日常臨床に活かす精神分析その1―発達臨床におけるさまざまな現場への応用―」でした。私の担当は開業臨床における発達障害でした。5人の演者の内で一番最後の発表で、かなり時間が押していました。そのため、一部内容を割愛し、かつ早口で発表せざるをえませんでした。お聞き苦しかったかもしれません。

発表内容についてですが、開業だからできる、ということではありませんが、開業だからこそやりやすいこともあると思います。発達障害への精神分析的アプローチの適用の可否と、その適応判断のポイントを述べたつもりですが、うまく言い表せていたか不安が残ります。

あと、5人の演者がそれぞれボリューム多かったからか、フロアから質疑が出なかったのは残念でした。もう少し余裕のあるタイムテーブルや適宜の途中質問など入れても良かったのではないか、と反省しています。

2.カウチ設定

日本精神分析学会2日目は一般演題を中心に回りました。さまざまなテーマの発表がありましたが、その中の「設定」のセクションでは、週1回の頻度でカウチを使用することについての議論がありました。私はずっと以前からそうした設定はよく使用していましたが、今更ながら振り返る意味で参加してみました。週1回カウチで取り組めないクライエントさんの種別についていくつか挙げられていました。が、そうしたクライエントさんは週4回カウチでも取り組めないのではないか、とも思ったりもしました。

またここでは取り上げられていませんでしたが、週2回や週3回ではどうなんだろうという疑問もあります。また、現代の英国のように週5回という設定もありますし、フロイトがしていたように週6回というのもありますし、こうした回数が精神分析プロセスが質的に変わってくるものなのだろうか、という議論は確かにうなづけるものもありそうです。

3.認定資格の今後

そして、2日目の最後は資格問題のセクションに参加しました。認定資格である心理療法士を持っているのに、あまり関心なかったので、この手のセクションはこれまであまり参加してきていませんでした。しかし、今後の展開も気になるということで、今回は参加してみました。

認定資格を考えるセクションでは、多数の意見が出て、非常に活発でした。その中で思うこととしては、認定資格を改訂する目的と手段が不明確で混合している印象がありました。目的があり、その目的を達成するための手段があります。そして、手段には構造と内容があります。それらが全部いっしょくたにされて議論されたから分かりにくいかった印象でした。

まず、認定資格の目的や役割、意義を決め、その後に、それを達成するための構造や枠組みを決め、最後に内容(教育分析や個人分析、スーパービジョンなどの訓練の方法や仕方など)を決める、という段階で議論すると整理されるのではないかと思います。

4.トラウマと沈黙

日本精神分析学会3日目は総会と講演とシンポジウムでした。講演では、ドナ・オレンジ先生が「トラウマ、沈黙、解離」をテーマに話されました。ここではトラウマにより沈黙せざるを得ない苦痛を考えさせられたように思います。

この日本精神分析学会では言葉で考えることや伝えることや解釈を大事にしていると思います。それは逆説的には言葉で語り得ぬものを露わにします。その語られることと語ることのできないことの狭間やせめぎ合いに精神分析の実践があるのかもしれません。

今回の日本精神分析学会のテーマはトラウマでしたが、沈黙は何もない、ということではなく、この語られることと語ることのできないことの間にあるのが沈黙なのだろうと思います。そこにフェレンツィ的な瞬間は必要かどうかは定かではないですが、少なくとも生々しい「わたし」が露呈する瞬間ではあるとは思います。

5.そして帰宅

日本精神分析学会が終わり、ようやく帰宅かと思いきや、急遽仲間と飲むことになり、議論が盛り上がりました。その代償として帰りの新幹線は自由席に。当然座れず、2時間立ち続けでした。最後の方は疲労で頭が解離を起こして、ボーとしてしまってました。それでも無事に帰宅できて良かったです。

来年の日本精神分析学会は札幌で、2019-10-18から2019-10-20日に開催されるようです。かなり遠いですが、是非とも参加したいとは思っていますが、現実的にどうなるやら。発表があれば、参加は確実だとは思います。