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公認心理師における二重関係と利益誘導

公認心理師には倫理規定があり、その中に二重関係や利益誘導、私的利用などを厳に戒めています。そうした中、医療機関にその併設するカウンセリングルームのパンフレットを置くことは倫理に抵触するかどうか、するとしたらどう回避すればよいのか、といった問題についてここでは書いています。

1.医療機関でのカウンセリング

精神科や心療内科などの医療機関においてカウンセリングをする際、臨床心理士や公認心理師がカウンセリングを実施しても保険適用とはなりません。ところによっては医師がカウンセリングをしているというようにカルテに記載して、保険適用としているところもあるようですが、法的には違法となります。また、カウンセリングを自費をおこなうと混合診療となり、これも違法となります。

そのため、多くの精神科や心療内科ではカウンセリングルームを別組織、別機関として独立させ、その医療機関に併設させていることが多いです。それ自体は特に問題はなく、適法となります。

2.二重関係と利益誘導になる場合

しかし、その併設カウンセリングルームのパンフレットを待合・受付におくことや、併設カウンセリングルームにクライエントを紹介することは、「公認心理師必携テキスト」によると、二重関係や利益誘導となり、倫理違反となるようです。治療者-クライエント関係と商品の販売する者-購入する者との二重関係になるとのこと。また、利益関係のある所にクライエントを紹介することは利益誘導となるようです。

別機関として独立した上で、カウンセリングをそこで実施する、というシステムは多くの精神科や心療内科の医療機関で現在、取り入れられています。以前に私もそうしたところに勤めてました。しかし、これが二重関係になり、倫理に抵触するのであれば、厳密に運用すれば今後、医療機関ではカウンセリングは不可となってしまうかもしれません。

医療機関でのカウンセリングは保険でもアウト、自費でもアウト、別機関に独立させてもアウトとなると、どうなるか。全く利益関係も連携もないところに行ってカウンセリングをしてもらうしかなくなります。

3.リファー先の複数提示

もしくはリファー先を複数提示して、その中に併設カウンセリングルームを入れ込み、その上でクライエントに選択してもらう、ということはできるかもしれません。待合・受付に併設カウンセリングルームのパンフレットだけを置くと二重関係、利益誘導となるので、別のカウンセリングルームもパンフレットも隣に置かねばなりません。クライエントが複数の中から選べるように。

こうした複数提示、複数設置という方法は都市部など選択肢の多いところは実施可能でしょう。しかし、地方や特に過疎地では選択肢がなく、そこ1ヵ所しかない、というところもあるでしょう。このような時には非常に難しい問題を孕んできます。

4.公認心理師の罰則と倫理違反

ちなみに、公認心理師については、秘密保持義務に違反した場合のみ罰則があり、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。その他には罰則の規定はありませんが、倫理に違反した場合、資格の停止、資格の剥奪などの処分はありえます。人によっては資格の停止や剥奪によって相当の社会的な損失を被ってしまうでしょう。

こうしたことにならないために、分からない時にはスーパービジョンを受けながら、指導してもらうと良いでしょう。

公認心理師は国家資格なので、法的な最低ラインのことを守るだけではなく、高い水準での倫理を遵守し、クライエントの利益になることを追求し、害になることを避けねばなりません。今後、医療機関に併設されたカウンセリングルームの運営が厳しいものとなるかもしれませんが、今後の実際の運用を注視していけたらと思います。

公認心理師については下記に詳しく書いていますので、ご覧ください。