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公認心理師の現任者Gルートの4つの問題点

日本初の心理職の国家資格として公認心理師が平成27年(2015年)に成立しました。その後、4回の資格試験を経て、約3万人の公認心理師が誕生しました。しかし、その資格試験には現任者の受験、いわゆるGルートがありますが、このGルートの問題は相当大きく、公認心理師の制度に深い影を落としてしまいました。

ここではこの公認心理師のGルートの問題点について主に4つ取り上げて解説します。

公認心理師Gルートとは

卒業式

そもそもの公認心理師については下記に詳しく書いていますので、ご覧ください。

公認心理師を受験するためにはいくつかのルートがあります。大学院を修了することが主ではありますが、公認心理師の資格ができたばかりということで、現状で心理職として働いている人(現任者)も経過措置として受験することができます。これがいわゆるGルートによる受験です

現在、実際に心理職として働いている中で大学院に入りなおすことは現実的には不可能です。そこで、これまで心理学を学び、心理学的な支援などを行ってきた経験5年以上の現任者を救済するためにGルートによる受験ができます。

しかし、このGルートには心理学を学んでおらず、心理学的な支援も行っていないものまで、受験することができてしまうという大きな不備があります。本来であれば、心理学を学び、心理学的な支援を行っている人を救済する意味でGルートがあるのですが、そうではない人までに受験資格を得ることができてしまいました。これによって大量のペーパー公認心理師が誕生してしまったことは、心理業界の最大の汚点になってしまうでしょう。

公認心理師Gルートに対する批判のポイントは主に以下の4点です。

  • 現任者の基準の低さ
  • 受験資格認定の運用の緩さ
  • 運用の緩さを悪用した受験生
  • スキマ世代に受験資格が与えられない

公認心理師Gルートの4つの問題

電話で怒る男性

以下に公認心理師Gルートに対する批判のポイント4点を省察します。

(1)現任者の基準の低さ

「心理学を学び、心理業務に従事する」というのが基準の要約ですが、どの程度の学びなのかは明記されてないし、何が心理業務なのかも明記されてません。これを本1冊読んで勉強して、人の話を傾聴したら心理業務、というように拡大解釈できてしまいます。さらに週1回ボランティアでも現任者としての経験に認定されてしまっており、これも基準の低さと言わざるを得ません。

つまり、ほとんど「心理学を学び、心理業務に従事する」でも拡大解釈で、現任者として認定することができてしまうのです

反対に週5日の常勤でガッツリ心理業務を4年しても経験に認められないのは極めて不釣り合いでしょう。

(2)受験資格認定の運用の緩さ

現任者としての5年の経験は所属長のハンコ1つで認定されてしまいます。所属長なので心理職の専門家では無いことが多く、ゆえに心理業務であるか否かの判断ができない方がほとんどでしょう。また、施設の利益から恣意的に認定したりすることもできてしまいます。

所属長の考え一つで、気持ち一つで心理職としての経験が認定されたり、されなかったりするのは運用の緩さを通り越して、杜撰さと言っても良いかもしれません

(3)運用の緩さを悪用した受験生

心理学を学んでおらず、心理業務もしていないのに運用の緩さを悪用して受験できてしまうのは深刻な問題です。看護師、言語聴覚士、福祉士、教師、保育士などのそれぞれの業務を恣意的に心理業務に拡大解釈させて受験した人も多いようです。

人に接して、人とコミュニケーションをとって、人の手助けをすることを心理業務であると拡大解釈しているのです。しかし、よくよく考えてみると、心理職の心理学的な支援とはそれ以上のものを含んでいます。すなわち、科学的に確立した人間心理・行動を学び、それを応用して支援をするわけです。一見すると、単に会話をしているだけに見えても、そこには心理学的な知識と技術が含まれています。それが心理職であると私は考えます。

単に人助けをしているだけは心理学的な支援とはいえません。にも関わらず、それを心理学的な支援であると拡大解釈し、公認心理師を受験しようとする人が後を絶ちません

そして、実際に心理学的な支援などを行っていないにも関わらず、実務証明を不正に取得したことにより、以下の引用のように資格が取り消された事案も発生しています。

過去の公認心理師試験において、不実の実務経験証明書により受験を申し込み、不正に受験資格を取得した者について、公認心理師法第8条第1項に基づき試験を無効にする処分を実施しました。

日本心理研修センター2022年01月25日お知らせ

(4)スキマ世代に受験資格が与えられない

スキマ世代とは、大学院で心理学を学び、現場で心理学的な支援を行っているが、いくつかの大学・大学院での単位が不足していて公認心理師を受験できない人たちを指します。単位認定や卒業校の種別、修了年の違いなどが影響しています。そうした人たちは現任者としての経験が5年に満たないのでGルートでも受験できません。多くは臨床心理士養成大学院を修了した若手が含まれているようです。

公認心理師の現任者にも届かず、大学院の単位も過不足のため届かず、そのスキマにハマってしまったということで、公認心理師のスキマ世代の問題と称されています。

上の3つのポイントで書いたように、心理学を学ばず、心理学的な支援をしていない人には公認心理師の受験資格があり、一方では心理学を学び、心理学的な支援をしているにも関わらず公認心理師の受験資格がない、というのは公認心理師の不備と言わずして何というでしょう。

今後、国家資格である公認心理師ができたことで、現場で心理職として仕事をしていくためには公認心理師は多かれ少なかれ必要になってきます。こうしたスキマ世代は臨床心理士の資格だけで今後も心理職として仕事をしていくか、それとも大学・大学院から入りなおして、また6年を費やすのかといった選択を迫られてしまいました

公認心理師の未来

ハイタッチする男女

こうした問題点により、当初は受験できない層まで公認心理師の資格試験を受験してしまいました。公認心理師の資格試験は単にペーパーテストだけですので、まったく心理学を知らなくても、詰込みの暗記だけでもそれなりに得点が取れてしまいます。これによって相当公認心理師の人数が想定よりも多くなってしまったでしょう。

さらには、心理学を学ばず、心理支援をしてない、いわゆるペーパー公認心理師が多く誕生したため、平均的な力量は相当低くなってしまったでしょう。

このことにより、公認心理師は今後数十年はこの問題を引きずり、地位向上の面で不遇が強いられることが考えられます。

  • 現任者の基準の低さ
  • 受験資格認定の運用の緩さ
  • 運用の緩さを悪用した受験生
  • スキマ世代に受験資格が与えられない

再度、上記に公認心理師Gルートに対する批判のポイント4点を提示しました。ただし、注意が必要なのは、これは全てのGルート公認心理師の個々人に対する批判しているわけではありませんし、全否定しているものでもありません。批判は制度設計と制度運用とそれらを悪用した公認心理師受験生に対してのみ向けられています

制度がこうなっている以上はそれを前提に生きていかねばなりません。まずは自分自身が研鑽し、力量を高めていく必要があります。そのために、スーパービジョンを受けたり、教育分析を受けたり、セミナーを受けたりする必要があるでしょう。

当オフィスでは公認心理師の研鑽のためのいくつかのメニューを用意しています。希望者は以下をご覧ください。

公認心理師Gルートに関するよくある質問


Gルートで公認心理師資格を取得した人々の質については、一定の懸念が指摘されています。Gルートは、5年以上の実務経験を有する現任者が受験できるため、実務経験が豊富な人々には有利な資格取得方法です。しかし、実務経験と資格に必ずしも一致しない能力があることが問題視されています。特に、現場での知識や経験が深い一方で、心理学理論や最新の研究に対する理解が不足している場合もあります。これにより、理論的な基盤が不十分なまま資格を取得した人々が、実際の臨床場面で困難を感じることがあるのです。したがって、Gルートで取得した人々に対する評価や、資格を活かした実務でのパフォーマンスには差が生じることが考えられます。


Gルートで公認心理師を取得した人々が実務で問題を抱えることはあります。特に、Gルート受験者は、心理学の理論や学術的知識の深さにおいて不足を感じる場合があります。実務経験が豊富な一方で、学術的な背景が欠けていると、最新の心理学的アプローチやエビデンスに基づいた治療法の適用に困難を感じることがあるためです。さらに、Gルート受験者の中には、実務経験が専門的な領域に偏っている場合もあり、他の領域での適応に苦労することがあります。これにより、一定のクライエントに対して最適な支援が提供できないリスクも生じます。


Gルートで公認心理師資格を取得した人々の学術的な知識不足については、いくつかの対策があります。まず、実務経験が豊富な分、理論面でのギャップを埋めるために、資格取得後に定期的な研修やセミナーに参加することが推奨されます。また、心理学の最新の研究成果やエビデンスに基づいたアプローチを習得するために、定期的な自己研鑽を行うことも重要です。これにより、実務経験に裏打ちされた知識をさらに深め、クライエントに対してより効果的な支援ができるようになります。さらに、教育機関や職場内で学問的サポートを受ける機会を増やすことも一つの解決策です。


Gルートで公認心理師を取得した人々が臨床現場で課題に直面することはあります。特に、現場での実務経験が豊富である一方、臨床の場において新たな理論や技法を取り入れる柔軟性に欠ける場合があります。臨床心理師は、科学的なエビデンスや最新の治療法を取り入れ、クライエントの個別ニーズに応じた支援を行う必要がありますが、Gルート受験者の中には、実務に偏重した経験のみで、最新の治療法や理論に疎い場合があります。このため、クライエントに対して適切な支援が行えないリスクが高まることもあります。


Gルートで資格を取得した公認心理師の支援能力にばらつきがあるのは、個々の実務経験の内容や質が異なるためです。Gルートでは5年以上の実務経験が求められますが、その内容は心理職の分野によって異なります。例えば、教育分野や福祉分野、医療分野での経験がある人々では、専門的なスキルや対応力に差が出ることがあります。また、経験を積んできた期間やクライエントとの接点の多さにも違いがあり、そのため支援能力にばらつきが生じることが考えられます。このような差を埋めるためには、追加の研修や指導が必要です。


Gルートで公認心理師を取得した後の実務で求められる能力には、理論的な知識の活用やエビデンスに基づくアプローチを用いる能力が求められます。実務経験が豊富であっても、これらの能力が不足している場合、クライエントに対して十分な支援ができないことがあります。また、複雑な臨床ケースに対応するためには、専門的な知識だけでなく、コミュニケーションスキルや柔軟性、問題解決能力なども求められます。Gルートで資格を取得した人々がこれらの能力を十分に備えていない場合、実務において困難を感じることがあるのです。


Gルートで取得した公認心理師資格に対する信頼性に関しては、資格を取得するための実務経験が一部の人々にとっては不十分であったり、特定の領域に偏っている場合があり、その結果、資格取得後の能力に疑問を持つ声もあります。特に、Gルートで資格を取得した人々が臨床現場において最新の心理学的知識や治療法を提供できない場合、その信頼性が問われることがあります。これを防ぐためには、資格取得後のフォローアップ研修や、定期的な能力評価を行い、全ての公認心理師が一定の水準に達していることを確認するシステムが求められます。


Gルートで公認心理師資格を取得した人々が進むべきキャリアパスについては、幾つかの問題点が挙げられます。実務経験が豊富であっても、Gルートで資格を取得した場合、その後のキャリアパスには限界があると感じることがあります。特に、学術的な研究や教育の分野で活躍するには、より高度な知識や理論的背景が求められるため、Gルートで取得した人々にはその後のキャリア発展において不利に働くことがあるのです。したがって、キャリアパスの幅を広げるためには、追加の教育や研修、研究活動に参加することが必要です。


Gルートで公認心理師資格を取得した人々には、今後、学術的な知識や最新の心理学的知見を積極的に取り入れることが求められます。特に、実務経験だけでは十分に対応できない複雑な症例や新しい治療法に対応するためには、不断の学習が必要です。また、資格取得後も継続的なスキルアップや研修を受け、自己研鑽に努めることが重要です。加えて、エビデンスに基づいた治療法を実践することが期待されるため、常に最新の研究結果を取り入れる姿勢が求められます。


Gルートで公認心理師資格を取得した後、現場で求められる倫理的な対応についても問題が指摘されています。特に、実務経験が豊富であっても、倫理的な問題に対する理解が不足している場合があるため、倫理的に適切な判断を下すことが難しくなることがあります。クライエントのプライバシーを守るための適切な対応や、倫理的なガイドラインに基づいた支援が行えないと、信頼性が失われる可能性があります。したがって、Gルートで資格を取得した人々には、倫理的な意識の強化が必要とされます。