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思わしくない仕事に最善を尽くすこと

苦難の道

ビオンとの対話―そして、最後の四つの論文」に掲載されている「思わしくない仕事に最善を尽くすこと」について。

苦悩を引き受けるカウンセラーという仕事が如何に苦しみに満ちているのかについて書きました。

心理臨床や心理療法、カウンセリングの仕事をしていると、人助けをする素敵な仕事ですね、と言われることがあります。もしくは、カウンセラーになって人助けをする素敵な仕事をしたいという人にたまに出会います。ツイッターなどでそう呟いている人も見かけたりします。

けど、素敵な仕事、と単純に言えるようなものではないと経験の中からそう思います。ましてやキラキラと輝いているわけでもありません。我々が対象としているのは、ある意味では苦悩を苦悩として引き受けられずに誤魔化しているが故に苦しんでいる、もしくは症状化している人だからでしょう。

その苦悩を如何に引き受けていくのか、悲しみをきちんと悲しめるようになっていくのかであります。単純に苦しみから解放するというものではないのだろうと思います。ビオンという精神分析家は「思わしくない仕事に最善を尽くすこと」という論考を書いています。

精神分析と心理療法(カウンセリング)は多少違うところはありますが、心理療法もどこか思わしくない仕事の側面はあるのでしょう。成果は保証できないし、ハッピーになれるという単純なものでもない、放り出されていた苦悩を取り戻すことは成長だがその苦悩はやはり持ち続けねばならない。さらには、そのために教育分析や個人分析スーパーヴィジョンを長期にわたって受け続ける必要もあります。

そんな仕事をすることはやはり思わしくないのでしょう。もちろん、これは単に卑下したり、貶めたり、価値がないと言いたいのではありません。取り組むだけのの信念と覚悟はありますか、ということです。カウンセラーになりたい人は多いようですが、実態を知っても、それでもなりたいと思えるかどうか。

【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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