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精神科病院での身体拘束、日本突出 豪の599倍、NZの2000倍(毎日新聞)

精神科病院での身体拘束、日本突出 豪の599倍、NZの2000倍(毎日新聞)

精神疾患の患者の体をベッドなどにくくりつけたりする「身体拘束」の人口100万人当たりの実施数が、日本はオーストラリアの599倍、米国の266倍に上るとの分析結果を、国際研究チームが英精神医学誌「エピデミオロジー・アンド・サイキアトリック・サイエンシズ」に発表した。

マグネット式の器具で身体拘束を体験する長谷川利夫・杏林大教授=「精神科医療の隔離・身体拘束」(日本評論社)から

写真 マグネット式の器具で身体拘束を体験する長谷川利夫・杏林大教授=「精神科医療の隔離・身体拘束」(日本評論社)から

精神科の身体拘束が日本では非常に多いという調査研究と、それに対する報道です。

調査研究の結果を見やすい様に表に直すと、以下のようになります。

表1 国別の身体拘束の数

100万人あたりの数値
日本98.8人
オーストラリア0.165人
アメリカ0.371人
ニュージーランド0.0305人

こうした数値になってしまった歴史的な経緯を振り返ってみたいと思います。

まず戦前の日本では統合失調症などの精神障害は適切な治療を受けることができず、自宅に軟禁、監禁されることが多くありました。そうした問題を改善するため、1950年に精神衛生法が施行され、精神障害者の私宅監禁が禁止されました。そして、病院などで治療したり、入院したりするようになりました。

しかし、急にそのような法案ができたため、患者は病院を受診するようになりましたが、医師も看護師も数が足りないという状況でした。そこで、1958年に医療法に「精神科特例」を設置し、医師は一般の病院よりも1/3の人数で、看護師は一般の病院よりも2/3の人数で良いことになりました。

さらに、1964年にライシャワーアメリカ大使死傷事件が起こりました。この事件は統合失調症の青年によって、当時のアメリカ大使であったライシャワー氏が刺されるというものでした。

このことがきっかけとなり、精神障害の措置入院がいっそう数が増えていきました。

このような経緯の中で病院には患者が多くいるにも関わらず、医師や看護師の数は足らないという状況になっていきました。そうすると、必然的に錯乱状態で暴れる患者に対応することができなくなり、結果的に身体拘束に頼らざるをえないということになってしまいました。

1980年代1990年代からは脱入院ということで、地域に精神障害者を返し、地域でサポートしていく法整備がされていきましたが、まだ十分にその制度は整っているとはいいがたい状況です。

ちなみに精神保健福祉法37条では身体拘束をする3つの基準を定めています。

  • 切迫性・・・利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。
  • 非代替性・・・身体拘束その他の行動制限を行う以外に、代替するサービスの方法がないこと。
  • 一時性・・・身体拘束その他の行動制限が、一時的なものであること。

私も精神病院で勤務していたことがありますが、少ないマンパワーで治療をしていくためには身体拘束がどうしても必要になる事情は分からなくはありません。

こうした状況を無視して、身体拘束が悪であるというのは簡単でしょうが、事態はそんな単純なことではありません。ましてや現場の医療者を責めることで解決するような問題ではないことは明らかです。

もちろん、身体拘束が無制限にされても良いとは思いませんし、3つの基準にあるように、代替可能な方法があれば、そちらを使用する方が良いでしょう。さらに、地域で支えていける仕組みづくりをさらに整えていく必要はあります。

ニュース記事に上がっていた精神科での身体拘束についての歴史的な経緯を振り返り、身体拘束について考えてみました。

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【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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