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カウンセリングとプレイセラピー

アンナ・フロイト「自我と防衛(1936)」誠信書房を横浜精神分析研究会の文献講読で輪読した時に考えたことを書きました。

1.はじめに

先日に開催された横浜精神分析研究会では、このアンナ・フロイトの1936年の著作である「自我と防衛」を取り上げ、討論しました。昨今は対象関係論が人気なので、あまり興味を持つ人も少ないようですが、じっくりと読むとなかなか面白いところもあります。ちなみにアンナ・フロイトは父親であるジークムント・フロイトに教育分析を受けていたようです。

2.本当の愛とは

防衛機制の1つである愛他主義は、自身の欲望を他者に押し付け、その他者に愛情を向けることです。そのことにより、罪悪感を抱くことなく欲望を成し遂げられる、という意味で防衛にあたります。偽善という概念に近いかもしれません。

そして、アンナ・フロイトは愛他主義の項目において、本当の愛はあるのか、と議論しています。このことで思い浮かぶのが、フロイトの「転移性恋愛について」の論文です。フロイトは精神分析中の恋愛感情は転移であり、過去の性愛にまつわる反復としつつも、それが本当の愛ではないと断定はできない、としています。

アンナ・フロイトの愛他主義はフロイトへのオマージュと言えなくもないでしょう。この本当の愛があるのかないのかについては結論はないかもしれませんが、この議論は精神分析の本質に触れるものであると考えます。そして、横浜精神分析研究会でもこの議論が大いに盛り上がりました。

3.児童分析とプレイセラピー

また、アンナ・フロイトの児童分析とその方法論はクラインのそれとはかなり違います。アンナ・フロイトは陽性転移の醸成や親へのマネジメントを重視しました。そして、これらは親子平行カウンセリングというシステムへと継承されました。

アンナ・フロイトは教育に尽力したこともあり、このシステムは日本の教育センターや教育相談などでのカウンセリングに大きな影響を与えました。それが行きすぎたのでしょうが、一部の教育センターではアセスメントをせずに、自動的に親子平行カウンセリングを導入する、というシステムになってしまっているようでもあります。

また陽性転移の醸成についても、プレイセラピーと称しつつ、楽しく遊んでカタルシスで治す、という割とシンプルな考えでカウンセリングをしているカウンセラーもいます。ここにはアクスラインの誤った理解も含まれているかもしれません。

アンナ・フロイトのいう児童分析における陽性転移の重視は、児童には転移神経症の形成がない、という理論基盤が確固としてあります。そのため、まずは関係性を作るためにプレイを導入し、陽性転移が醸成を目指というものなのです。

そして、転移神経症が形成できるようになり、さらにはカウチに寝て自由連想ができるようになり、ようやく精神分析に導入する、という手続きを取ります。つまり、プレイに治療効果があるのではなく、精神分析への繋ぎ的な役割にしかすぎないのです。

4.クラインの児童分析

ちなみにクラインはプレイは自由連想と同じであり、そこに無意識的空想が含まれるので、解釈で扱うとしています。アンナ・フロイトとは相当違うことが分かるでしょう。こうしたことが理解されて、プレイセラピーがなされているのかは大いに疑問があります。