メラニー・クラインの理論と臨床
メラニー・クラインの生い立ちや理論、臨床などについてまとめています。
目次
1.生い立ち
繰り返される喪失と重度のうつ病。フェレンツィから治療分析、アブラハムから訓練分析を受ける。1960年78歳で死去。
2.早期幼児期の理論
フロイトは大人の中に幼児の心を見出した(エディプス・コンプレックス)。フロイトは3~5歳ごろになりエディプスが完成し、その時点で心ができるとした。その為、それ以降ではないと精神分析は不可能であると結論した。
クラインは幼児の中に乳児の心を見出した(早期エディプス・コンプレックス)。クラインは早期エディプスを見出し、フロイトが提示した3~5歳以前にも心はあり、それを分析していくことは可能であるとした。
3.妄想分裂ポジションと抑うつポジション
フロイトのような発達段階のモデルではない。常に移り変わる可能性のある心の中の二つの側面として理解されている。
妄想分裂ポジションは、部分対象関係で、破壊的な本能衝動である。そして迫害的で被害的な心性がある。スプリッティングや投影同一化、否認といった原始的な防衛機制が優勢である。
それに対して抑うつポジションは、全体対象関係で、喪や悲哀、思慕の情、罪悪感が基本的な対象である。神経症的な防衛機制が優勢である。
4.プレイ・アナリシス
プレイセラピーではなく、プレイ・アナリシスである。たくさんのおもちゃがあり、その中で楽しく遊ぶプレイセラピーとは全く別物である。面接室にあるものは、洗える床、水道、テーブル、2~3の椅子、小さなソファとクッション、玩具収納のためのカギ付きの戸棚、だけ。その他に、その子ども専用のおもちゃ(ミニチュアや絵画セット)がある。
「自由連想はプレイに匹敵する」→子どもと一緒に遊ばず、ただ子どものプレイを観察し、解釈する。
5.転移と逆転移
クラインの転移の理解は「最早期段階において対象関係を決定づけていた過程と同じ過程の中で生まれる。そして、情緒、防衛、対象関係と同様に全体状況すなわち現在の状況と最早期の体験の間にある全て」。
患者の語られる空想は最初からすべて転移である。自我心理学のように徐々に発展するものではない。
逆転移は対象関係論学派やポストクライン学派のように利用するものではない。フロイトのいうようにすべてが精神分析家の病理なので、訓練分析で処理するもの。
6.クラインからの系譜
(1)訓練分析
クララ・ウィニコット、ローゼンフェルド、ビオン、モネ・カイル、スィーガル、ハイマン、メルツァー
(2)スーパーバイジー
ウィニコット、ボウルヴィ、マテ・ブランコ、ビック
7.リーディング・ガイド
- 松木邦裕(著)「対象関係論を学ぶ―クライン派精神分析入門」岩崎学術出版社 1996年
- ローバート・ヒンシェルウッド(著)「クリニカル・クライン―クライン派の源泉から現代的展開まで」誠信書房 1999年
- ハンナ・スィーガル(著)「メラニー・クライン入門」岩崎学術出版社 2000年
- 松木邦裕(編集)「現代のエスプリ別冊 オールアバウト メラニー・クライン」至文堂 2004年
- ロイ・シェーファー(編集)「現代クライン派の展開」誠信書房 2004年
- カタリーナ・ブロンスタイン(著)「現代クライン派入門―基本概念の臨床的理解」岩崎学術出版社 2005年
- ザルツバーガー・ウィッテンバーグ(著)「臨床現場に生かすクライン派精神分析―精神分析における洞察と関係性」岩崎学術出版社 2007年
- ジュリア・スィーガル(著)「メラニー・クライン-その生涯と精神分析臨床」誠信書房 2007年
- ジュリア・クリステヴァ(著)「メラニー・クライン-苦痛と創造性の母親殺し-」作品社 2013年
8.精神分析を学ぶ
さらに精神分析について知りたい方は以下のページを参照してください。