自閉症という物語り
自閉スペクトラム症の病理を物語と逆転移いう視座から捉えなおしてみました。
1.自閉スペクトラム症理解の科学的進歩
自閉スペクトラム症の神経生物学的な解明は日々進展と深化しています。それにより、合理的な配慮をいかにするのか、支援技術をどのように適応するのかが、目覚ましく進歩しています。その恩恵は充分ではないかもしれませんが、一昔前にとは比べものにならないぐらいになっているようです。
自閉スペクトラム症については下記に詳しく書いています。
2.自閉スペクトラム症に特異的な逆転移
一方で、自閉スペクトラム症のある種、無機質で奥行きの乏しい、物語が織り成されない二次元的平面な心のあり方との関わりはカウンセラーにある種の無機質な手の届き難い逆転移を惹起させることもあります。
その神経生物学的な知見は素晴らしい反面、無機質な逆転移に彩りをもたらすものとはなりがたく、無機質さの否認として使用されることもあります。もちろん、逆転移から理解するためには、教育分析や個人分析、スーパービジョンといった訓練が求められるでしょう。
逆転移については下記をご参照ください。
3.物語の生成
自閉スペクトラム症の物語れない物語をカウンセラーが心の中でとらまえ、物語化することによる照らし返しが、自閉スペクトラム症にある種の物語の萌芽を誕生させます。
その物語によって世界の現象に辻褄を見出すことになります。しかし、そうはいっても、それはいつも肯定的で心地の良いものとは限りません。世界は残酷、とは誰かが言いましたが、時に悪意に満ち、理不尽で、殺伐とし、努力が実らないことは多々あり、苦しさと挫折は常に隣り合わせです。
4.自閉スペクトラム症の哀しみ
その哀しみはとても深いものです。その哀しみを抱えて生きていくことは苦悩に満ちているので、常に後戻りの甘い欲望と背中合わせになっています。そうした苦悩を引き受けていくのはなかなか大変なものです。
これは自閉スペクトラム症に限った話ではありませんが、自閉スペクトラムでは更に強く体験することになるのは容易に想像できます。それらを含み込んだ物語化は苦しいが人生の成熟とも言え、根源的に求めていることでもあるだろうと私は考えます。
5.終わりに
自閉症、自閉スペクトラム症について、物語や逆転移という観点から描写しました。彼ら彼女らの日常的な問題を解決するような関わりと同時に、苦悩に接するようなカウンセリングも必要かもしれません。
(株)心理オフィスKでは自閉症、自閉スペクトラム症のカウンセリングも行っています。希望者は以下の申し込みフォームからご連絡ください。