人の顔色を窺い、人に依存してしまう心理
対人関係に悩む原因はさまざまですが、人の顔色を窺い、人の言動に左右されやすいといった人への依存も悩みの種の1つです。必要以上に人の顔色を窺い、人に依存してしまう背景にはアダルトチルドレンも考えられます。
今回は、人の顔色を窺いやすい人について、人への依存と関連のあるアダルトチルドレン、人に依存してしまう心理の改善方法を解説します。
目次
1.人の顔色を窺う人とは
人の顔色を窺うと言うとネガティブなイメージをもつ人が多いですが、必ずしもそうとは限りません。顔色を窺う行為には、他者の気持ちや様子を思いやる力が必要でしょう。人の表情から気持ちを読み取り、気を遣うことで、円滑な対人関係をもつことができるポジティブな面もあります。
しかし、人の顔色を窺いすぎることで自分の本当の気持ちや行動を抑えてしまい、人の言動に左右されて自分の意見をもてなくなるといったケースもあります。人の顔色を窺いすぎた生活は心を疲弊させ、自信の低下や不平等な対人関係等を招く恐れがあることを知っておきましょう。
人への依存を含めた依存症についての全般的な解説は以下のページをご覧ください。
2.人への依存とアダルトチルドレン
ここでは依存とアダルトチルドレンとの関連について解説します。
(1)依存の特徴
アダルトチルドレンの人は、子どもの頃から親や大人の顔色を窺い続けて機嫌を取りながら過ごす傾向があり、人への依存とも関係があります。特に、アダルトチルドレンの人が陥りやすい状態として、自分よりも他者を優先し、他者に依存してしまう共依存が挙げられます。小さい頃から過保護や支配的な養育者との共依存的関係が続くことで、適切な対人関係の構築ができず、大人になっても似たような関係性を再演しやすい特徴があります。
このように、幼少期の対人関係の在り方が基盤となって人への依存心が強まることも考えられます。必要以上に他者を気遣い、すがってしまう場合は、アダルトチルドレンのように幼少期から特殊な人間関係を学習してきた結果かもしれません。
アダルトチルドレンについての詳細は以下をご覧ください。
(2)共依存の特徴
共依存となることで、以下のような特徴がみられやすくなります。
- 自分の考えや気持ちに自信が持てず、他者の主張を優先してしまう
- 自分を犠牲にしてでも他者に尽くしてしまい、不平等な関係となる
- 他者を優先しすぎることで自分の価値を下げてしまう
- 他者を立てたり自分が取り繕ったりするために嘘をついてしまう
- 「自分が悪い」等と罪悪感を抱きやすい
いずれも、自分の心を大切にできず、親密な対人関係の構築が困難になる可能性が高いと言えます。
また、共依存は「他者から必要とされることに依存する」という状態であり、自分が人に依存している自覚が乏しく、共依存から抜け出しづらい特徴もあります。
共依存については以下のページに詳しく書いています。
3.人の言動に左右されてしまう原因
人の言動を気にしすぎる原因には「人から怒られたくない」、「見捨てられたくない」、「嫌われたくない」といった自分が傷つくことへの防衛や自信の低さが大きく関わっています。
また、人からどう見られているかを気にする等、自分を良く見せたい欲求も考えられます。人の言動に合わせることで、自分の社会的立場を守ろうとする人もいます。
過去の経験から、対人関係で波風立てないために人の言動に合わせる人もいます。
人の言動に左右されてしまう人は、他者を優先することで対人関係や状況が一見良くなると感じやすいかもしれません。しかし、自分を抑えて他者を優先することと、他者を尊重することは違います。
人の望む自分を演じ続けることは、常に人の顔色を窺い続けるリスクもあるでしょう。
4.人の顔色を気にし、依存してしまう心理の改善方法
人の表情を気にして振る舞うことも日常では求められますが、やりすぎは自らの心や対人関係をより不健全なものへと変えてしまう恐れがあります。
人の顔色を気にしすぎる、人に依存してしまうことへの改善方法を以下に紹介します。
(1)自分と他人の境界線を引く
人の顔色を窺い、依存しやすい人は、他者の意見に自分の意見を同一視させることで安心感を得たり、自分の心を守ったりしていることがあります。
自分の気持ちを抑制しすぎてしまうと、自分と人との境界線が曖昧になり、余計に自分の気持ちが分からない悪循環に陥りやすいでしょう。
まずは、自分と他者では考えや価値観が異なることに改めて気づくことが大切です。時には1人の時間を作り、物理的に自分の時間を楽しむことで気付きを得やすくなります。
(2)客観的な振り返り
アダルトチルドレンのように、幼少期の体験から人の言動に左右されたり依存したりしやすい場合は、今までの自分を振り返り、新たな価値観や考えを獲得する作業が必要です。現在の対人関係を客観的に見つめ直すことで、不平等さに気づくこともあります。また、今までの対人関係を振り返ることで、人の顔色を窺いやすい、依存しやすいパターンを知ることも可能です。
今まで人の意見や機嫌を優先してきた人こそ、自分と向き合い、今度は自分を優先することが課題になります。自分の価値観や考えも大切にし、自分らしくいられる関係性を再構築しましょう。
自らによる振り返りが難しい場合は、友人やカウンセラー等の第三者の力を借りてみましょう。
(3)素直になること
他者を優先してばかりいると、自分の気持ちを否定してまで人を肯定することがあります。それでは自分自身をないがしろにしてしまいますし、心の底から人を肯定する訳ではないので不誠実な関係性を続けることになります。
人に依存せず対等な関係を築くためにも、他者を尊重し、自分の気持ちにも素直になりましょう。
まずは自分の意見を伝えたうえで、他者の意見を聞いてみてください。自己主張することで相手が怒ってきたり、支配しようとしてきたりする関係であれば、関係を断つことも視野に入れましょう。
今よりも自分に素直になることが、堂々と生きていくための第一歩と言えます。
(4)認識を変える
過度に人の顔色を窺い、依存する人の中には、そうすることで嫌われない、自分を認めてもらえるといった認識をしている人がいます。
しかし、人を優先するからといって好かれたり、認めてもらえたりする訳ではありません。また、人の意見や機嫌は変わりやすく他人がコントロールできるものではないため、常に人を優先することは不可能に等しいでしょう。
思っていることを言い合うことで良好な関係を作る、自分で自分を認めてみる等認識を少し変える工夫をするだけでも、人を気にしすぎずに過ごしやすくなれるでしょう。
5.臨床心理士に相談し、カウンセリングを受ける
人の顔色を窺い、人に依存してしまう心理について解説し、そこにはアダルトチルドレンとの関連があることを示唆してきました。自ら振り返り、改善できるのが一番ですが、なかなか難しい時には臨床心理士などの心の専門家に相談し、カウンセリングを受けると良いでしょう。
カウンセリングについての詳細は以下のページをご覧いただくと良いでしょう。
(株)心理オフィスKではアダルトチルドレンのことや人の顔色を窺ってしまうこと、人に依存してしまうことについての相談を受け付けています。カウンセリングをご希望の方は下の申し込みフォームからご連絡ください。