スマホ依存はコロナ禍で人と人との接触が制限されたことにより、急増しました。スマホの使用で脳がオーバーワークに活性化してしまい、身体的・精神的に不調となり、日常生活に継続的に支障が出ているにもかかわらず止めることができない状態です。本来豊かにしてくれるはずのテクノロジーの進歩が、健康障害をきたすおそろしい状態です。
なりやすい人や診断や解決方法のヒントを探っていきますので、最後まで拝読ください。
目次
1.スマホ依存とは
スマホ依存とは、「スマートフォンの使用過多により、日常生活に不利益が出ている状態が継続しているにもかかわらず、やめられない精神状態及び行動障害」を指します。その指標には、使用時間が用いられることが多いですが、本人に病識がないことも少なくありません。
スマホ依存には発達障害や精神疾患が背景にあることも多く近年急増し社会問題になっています。
スマホ依存を含めた依存症についての全般的な解説は以下のページをご覧ください。
2.スマホ依存の心理
発達障害がある場合には、依存症を併発しやすいことが知られています。現実社会で、周囲に誤解を招きやすい特性を持つことなども相まって、バーチャルの世界から抜け出しにくくなる特性があります。
手持ち無沙汰であったり、不安な心理の解消であったり、自己肯定感や承認欲求の充足の心理が背景にあることが多いとされています。
3.スマホ依存の原因
(1)簡便に知人の情報が得られる
流行や気になる情報や知人の情報を簡便に知ることができます。フォロー数や「イイネ」の数で自己肯定感を満たしたりすることは、脳への刺激や快楽につながります。
(2)ネガティブな気持ちに寄り添ってくれる
SNSで満たされない感情を伝えると、寄り添うコメントがくることが多いです。これらが、苦悩を楽にさせてくれ、癖になります。
(3)ネットゲームや課金によるコンテンツの充実
これまではブラウン管を通じて、口座振込といった複雑な方法でしか得られなかったネットゲームも、簡便に楽しめる時代になりました。対戦なども通じて、より脳への刺激や快楽を提供します。
便利で魅力的だからこその落とし穴が存在し、前頭前野の機能低下により衝動や感情のコントロールが効かなくなり依存が形成されます。これらはアルコールや、ギャンブルなどの依存物質によるものと差異はなく、やがて抜け出せなくなり泥沼化します。
4.スマホ依存の症状
スマホ依存の症状として、身体的な愁訴としての運動器の血流不全による症状と、精神的な抑うつ状態をきたすことが知られています。慢性かつ重症化することで医学的介入を必要とします。
(1)身体的な症状
a.腰痛や肩こり
ついつい熱中してしまうことで正しい姿勢でなくとも不快に感じない現象が起きます。それにより運動器の痛みや血流不全による訴えが多くなります。
b.目の症状
ドライアイや、眼精疲労が目立ってきます。これらも熱中している時の自覚がないことが多いです。
c.不眠
スマホを長時間使用することにより、強い光や刺激を受け、そのために不眠になってしまうことがあります。
(2)精神的な症状
スマホ依存においては、光や情報を取るための脳の活性化によるダメージが無視できません。これらにより脳は疲弊し、抑うつ状態に陥ることが知られています。
また、スマホが使えない時間や場所では、スマホのことが過度に気になり、不安や焦燥感、イライラが出現することもあります。さらにSNSでの「イイネ」を非常に気にしてしまい、強迫的に使用してしまうということもあります。
(3)行動上の問題
スマホ依存が常態化することで、「ながら運転」や「歩きスマホ」が行動上の問題となります。車や自転車での事故はもちろん、ホームからの転落なども懸念されます。スマホや重要な書類をトイレに忘れたりする忘れ物問題も見逃せません。
そして、スマホをいつも使ってしまうため、昼夜逆転をしてしまったりします。その他にもスマホ以外のことに興味が向かず、延々とスマホを使用するということをしてしまい、その他の必要なことができなくなってしまいます。
(4)対人関係の問題
脳への慢性的なダメージングは、記憶力の低下や、焦燥感をもたらししばしば人間関係のトラブルにも発展します。また、眼前の人と話しているときに、スマホをふれることは特殊なケースを除き、マナー違反で人にはよく思われないでしょう。
また、近年よく見られるのが、衝動的にSNSで書いたことで、人間関係の築きに不都合なトラブルに発展してしまう投稿です。そこへの対処の釈然としない行動がより拍車をかけ対人関係を難しくしてしまいます。大切な意見は恐れず対面でというのが、昔も今も変わりません。
そして、スマホの中のことに興味が限定し、学校や職場との友人や仲間との関係を疎かにし、孤立してしまうこともあるでしょう。
5.スマホ依存からの脱却
発達障害も依存症も、自分でまず病識を持ち対処を考えないといけないと考えることができる段階が、脱却の達成の半分達成です。行動できていないのにそうなのかと思ってしまうかも知れませんが、気づきが難しいのです。
対処についても、自分だけで克服しようと思わない方が良いでしょう。自助会・医療・カウンセリングそれぞれ自分に合ったものを手にとり併用することも一手でしょう。病識を持ち適切な社会的資源を利用することで、道が開けるでしょう。
(1)治療や介入が必要な対象者とは
スマホを長時間使用すること自体は病気ではありません。全く見ない人もいれば、長時間使用する人もいますが、時間はそれほど問題ではありません。一方以下のチェック項目に当てはまる場合は、治療や介入が必要でしょう。
- 生活に支障がでるケース(昼夜逆転や睡眠障害、食事のスキップ、電車の乗り過ごし。)
- 対人関係の問題(約束のすっぽかし、体裁を取り繕うための嘘が頻回になる。)
- 仕事上でのトラブルがあるケース(仕事の商談中にスマホを確認して信用をなくす。)
- 他の依存が関係する場合(恋愛依存、アルコール依存、他)
- 精神疾患がある場合(発達障害や抑うつ状態)」
多くの場合、本人も自覚があり苦しんでいるケースが多いです。卑屈な気持ちやコンプレックスを抱えながら誰かの支えを待っていることも少なくありません。発達障害と依存の関連は過去より注目されており、その傾向のある人は物質や薬物や嗜好品全般への依存に注意を払わなければいけません。
(2)家族や周囲の人ができること
スマホ依存だけでなく、依存症の人は全般に、コミュニケーションが不十分であったり寂しがりだったりします。それでも大切にしている家族が取るべき行動は、「一緒にいてあげること」「できたら食卓を共にすること」です。近くにいると、変化を感じることができます。
「addiction(依存)」を「connection(人との繋がり)」に変換していくことは、依存から抜け出す上で一番大切な考えで、その環境を利害関係なく支えてあげれることでしょう。
日常的な会話やコミュニケーションを大事にし、そして、できているところや頑張っているところなどを積極的に評価することが大事です。責めてばかり、非難してばかりだと関係性そのものが悪くなってしまい、ますますスマホ依存に陥らせてしまいます。
(3)医学的な治療や対応
個々の状況に応じて治療介入ができるのは、医療のメリットです。またうつや不眠などの併存愁訴に対しても、薬物療法など用い直接的なアプローチができるのもメリットです。多職種で診療にあたるので、色んな意見を聞けるメリットもあるでしょう。医療機関では外来中心の診療ですが、入院のプログラムを準備しているところもあるようです。
そして、薬物治療についてですが、スマホ依存の特効薬はありません。ただ、うつや不眠など併発する症状に対しての対処薬の処方になります。
(4)生活習慣の改善と運動療法
運動療法や生活習慣の改善がスマホ依存からの脱却に大切になってきます。
a.睡眠
睡眠時間の確保からはじめ、規則正しい時間の就寝と起床など、意識によって行動を変更できることをカウンセリングでわかってもらうことを目指します。
b.運動
散歩したり、ランニングしたりするのは一人で開始でき、取り組みやすいです。今は、野球やバレーボールなどでも一人参加などネットで簡単にできるのでコミュニティーを広げ疲れることでより快眠を得ることにつながるでしょう。
c.食事
まずは三食、規則正しい時間にとり、バランスの整ったものを食べることです。
d.社会生活の円滑化
コミュニティに所属している時間は、バーチャルなものだけでなく、対面の繋がりを大切にしましょう。
e.没頭できる趣味を持つこと
時間の使い方の見直しは、依存から抜け出す上で大切です。スマホ以外の趣味や楽しみを見つけ、少しずつ、それを楽しむ時間を増やしていきましょう。
発達障害をベースに有する人は、依存症になりやすい傾向があり、熱中するジャンルを変更することで人から評価され、社会で活躍する道を切り開くことでより健全な発想と行動を獲得し自信につながります。
(5)カウンセリングや心理療法
カウンセリングや心理療法は、スマホ依存に対して非常に有用です。医学的な治療や対応は、決まった治療でよくならない人や繰り返し再発する人には効果に限界があります。カウンセリングは相談者本人が元々持つ向上心や健康志向を賦活することで、食事・運動・睡眠など基本的な生活リズムの修正や、没頭できる趣味を見つけること、対人関係や仕事・学校などの社会生活の円滑化を目指していきます。生活のリズムを最初は辛くても、意識して作るようにすれば、改善してくることが知られています。
カウンセリングの一つである認知行動療法は、本人のスマホを取り巻く生活環境を医療関係者と共有することで、そこに歪みがあれば伝え、行動習慣を修正していく治療です。非常に効果があることが知られています。依存症そのものは、脳の病気でアルコールや薬物ですと完全に断つことが必須です。スマホの場合も脳生理的には同じなのですが、そこをどこまで話し合いで納得解に持っていけるかはキーになるでしょう。
依存症は脳の器質的な変化をきたすことが知られています。性格特性や抑うつ状態の並存の有無など確認し、個々の状況に応じたアプローチが必要になります。
6.まとめ
スマホは便利で簡便なツールで、世界観が広がる肯定的側面があります。依存症は人間ゆえ起こる現象で真面目で几帳面で人間臭い性格的傾向を有することが多いです。誰しも可能性がある恐ろしい側面があります。しかしそれを病気と捉えず、特性や長所と捉えてほしいですし、適応の部分で難しいと思うのでセルフチェックを行いその懸念があればまず病識を持ちましょう。そこから先は一人で悩まず信頼できる人に相談するか、社会的資源の利用が克服の早道です。
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参考文献
この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。