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感受性が強く、感覚過敏な人は何かの病気か

痛みは共有できない

自閉スペクトラム症やHSPなど、感受性の強さや感覚過敏をもつ人の生きづらさが注目されています。感受性の強さや感覚過敏それ自体は病気ではありませんが、過度の負担がかかると生きづらさにつながります。

生きづらさを自覚できると、より生きやすい環境や対処法を探れます。生きやすい状態を探る際の援助として、カウンセリングも役立ちます。

1.感覚過敏とその表れ方

「感覚過敏」という言葉はよく聞きますが、いったいどのような内容を指すのでしょうか。ここではまず感覚過敏について触れ、次に感覚過敏の表れ方の例を紹介します。

(1)感覚過敏とは

人は一般に、自分自身の身体やまわりの世界からの情報を意味あるものとして受け取り、それを組織化して環境にはたらきかけたり、環境とやりとりしたりしています。

脳には感覚情報を調整する機能があります。その都度の関心や目的に応じて、外界にあふれる情報から不要な情報を抑え、必要な情報だけを切り出し、意味あるものとして処理するはたらきです。

何らかの背景でこのはたらきがうまくいかないと、一般的には些細に見えるような刺激にも大きな不安や恐怖を感じることがあり、その状態は感覚過敏と呼ばれます。

感覚過敏には、疲労や情緒の状態も影響します。本人が主体的に予測して活動できる場面では平気でいられても、突然聞こえる、触られる、無理強いされる、といった場合は不快感が高まります。

(2)感覚過敏の表れ方

感覚過敏のあり方はさまざまで、感覚の種類や感じ方によって異なり、複数の感覚にまたがる場合もあります。

ここでは触覚、視覚、聴覚、口腔感覚、嗅覚、前庭覚を例にとり、それぞれの感覚過敏の表れ方の例を挙げます。

感覚の種類感覚過敏の表れ方の例
触覚濡れやベタベタ、汚れ、触られることなどを極端に嫌がって逃げたり攻撃的になったりする、雨が当たると痛がる
視覚蛍光灯に目がチカチカする、まぶしい場所を避ける、周囲に物がたくさんあると気が散って集中できない
聴覚ざわざわした場面で耳をふさぐ、運動会のピストルや雷の音を嫌がる
口腔感覚極端な偏食がある
嗅覚特定の匂いがすると気分が悪くなる
前庭覚動きや揺れ、高さなどへの不安や恐怖、めまい、吐き気、動悸、乗り物酔いしやすい、高い場所や足元の不安定な場所を嫌がる

上には感覚過敏が推測できる例を挙げましたが、外からはわからない場合もあります。たとえば触覚過敏をもつ人が注射を受けたとき、あまりの苦痛で意識から感覚体験を切り離した(解離した)結果、外からは無感覚や感覚の鈍さに見える、といった場合です。

詳しくは後述しますが、本人に苦痛の自覚がない場合もあるため、感覚過敏に気づくのは簡単ではありません。

2.感受性が強く、感覚過敏な人はどんな人?

感受性が強く、感覚過敏な人とはどのような人でしょうか。

ここでは、感覚過敏を伴うことの多い発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)と感受性の強い人を指すHSP(highly sensitive person)を取り上げて説明します。

さらに、感受性が強く、感覚過敏な人が病気なのかどうかについても触れます。

(1)自閉スペクトラム症の感覚過敏

発達障害を持つ人は感覚のアンバランスを同時に抱えることがありますが、感覚過敏が特に多く認められるのが自閉スペクトラム症です。

自閉スペクトラム症の人に感覚過敏が生じるのは、感覚体験が十分にとらえ分けられずに生の感覚世界が残るためといわれます。

もともと乳児は混沌とした感覚世界にいますが、次第に感覚を意味あるものとしてとらえる(知覚する)ようになり、意味は整理されていきます。すると子どもの体験世界は安定し、人とも分かち合えるものになります。

この感覚体験をとらえ分ける過程を支えるのは、養育者をはじめとした人とのかかわりです。授乳で満たされて「空腹」という感覚を知ったり、転んで「痛いね」と言われて痛みを知ったりするには、感覚を意味あるものと捉える他者との共有が必要だからです。

自閉スペクトラム症は人とかかわる力が一般に比べ弱く、他者との共有体験を持ちにくいため、感覚世界が十分にとらえ分けられないまま残りやすいのです。

自閉スペクトラム症についてのさらに詳しい説明は以下のページをご覧ください。

自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症とは、社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害、感覚過敏などの特徴をもつ発達障害のなかの一つです。

(2)HSPとHSCの感覚過敏

アメリカの心理学者であるエレイン・アーロンの提唱したHSP(highly sensitive person)・HSC(highly sensitive child)も、感受性の高い人を指します。

HSPには、以下の4つの特徴があるといわれます。

  • 物事を深く受け止める(depth of processing)
  • 緊張しやすく疲れやすい(overarousal)
  • 気持ちが揺れやすい(emotional intensity)
  • 諸感覚に敏感(sensory sensitivity)

HSPの人には、諸感覚への敏感さに加え、人に対する敏感さがあります。

情動がうつりやすく人の気持ちを感じ取りやすいため、人の気分に左右されやすい、暴力的な場面が苦手、人に気を遣いがち、場の空気に圧倒されたり雰囲気に飲まれやすかったりする、といった性質があるといわれます。

HSPは性格特性や気質を表すものであり、病気や障害を診断するものではありません。

HSPやHSCのさらに詳しい説明は以下のページをご覧ください。

HSP(繊細さん)とは:診断、特徴、チェックシート、克服方法、治療などを解説
HSPとは、日本語では繊細な人、過敏な人、敏感な人という意味です。最近では繊細さんと呼ばれることもあるようです。そのHSPの診断や特徴、チェックリスト、克服方法、カウンセリング法、問題点などについてまとめています。

(3)感受性の強さや感覚過敏は病気ではない

感受性の強さや感覚過敏は生まれ持った素因や特性、気質に由来するもので、それ自体は病気や障害ではありません。

ただ、刺激を受け取りやすく環境からの影響を受けやすいことから、二次的に生きづらさが生じる可能性があります。

環境からの負荷が大きすぎて対処しきれなくなると、精神症状や身体症状が表れ、病気と診断されて治療の対象になる場合もあります。

3.感受性が強く、感覚過敏な人の生きづらさ

感受性が強く、感覚過敏な人の感じる生きづらさにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは生きづらさの代表的なものを3つ紹介し、最後に本人の自覚しにくさにも触れます。

(1)疲れやすい

感受性が強く、感覚過敏な人は疲れやすいといわれます。これは感覚刺激にさらされやすく、感覚に負荷がかかりやすいためです。

たとえば聴覚過敏がある場合は、音楽の授業や繁華街など騒がしい場面で疲れやすいですし、視覚過敏がある場合は、明るい蛍光灯に照らされた室内にいるだけでも消耗します。

活動しすぎて疲れることは誰にでもありますが、感覚過敏をもつ人は活動量が多くなくても消耗している場合があります。

(2)変化に混乱しやすい

感受性が強く、感覚過敏な人は変化に混乱しやすく、慣れにくいことが多いです。

外界から不要な情報を抑えて必要な情報のみに注意を向ける脳のはたらきがうまくいかず、一般的な人には意識にのぼらないような小さな変化にも、気づきやすいためです。

たとえば新入学やクラス替えなどの環境の変化に慣れにくいことは多いですし、自閉スペクトラム症の場合は家具の配置が変わるだけで「自分の部屋」という意味が揺らいで混乱することもあります。

混乱の程度は人により異なりますが、変化も感受性の強い人や感覚過敏の人にとって、負荷の高いことです。

(3)人間関係や集団生活で困る

感受性が強く感覚過敏な人は、人間関係や集団生活の場で困りごとを抱えることもあります。

たとえば触覚過敏で砂が触れなかったり、他の子どもの動きや声が気になったりして友達と一緒に遊べない、人からの評価が気になりやすく批判に傷つきやすい、といったことがあります。

人とのかかわりで嫌な思いをしたことがある場合は、同じ失敗をくり返さないためにかかわりを避けるようになることもあります。

また特に、学校での集団生活は刺激が多いだけでなく拘束性も高いため、感覚過敏のある人にとっては強い苦痛を感じやすく、適応しづらい場といえます。

(4)病気などの不適応が起こる場合もある

感受性の高さや感覚過敏はそれ自体では病気ではありませんが、さまざまな症状や不適応といわれる行動につながる場合もあります。以下にいくつか例を挙げます。

不適応の種類表れ方
精神症状不安症状、抑うつ症状など
身体症状寝込む、身体が動かなくなる、頭痛、腹痛など
行動不登校、引きこもりなど

本人が感受性の強さや感覚過敏があると自覚していない場合は、なぜそうなっているかわからないまま急に身体症状や行動に現れることもあります。

(5)自覚しにくい

本人が感覚体験のあり方を自覚しにくいことが、生きづらさへの適切な対処につながりにくくしている面もあります。

感受性の高さや感覚過敏は本来、自覚しにくいものです。なぜなら、生まれもった感覚のあり方が過敏かどうか知るには、自分と他者とが違うことを知り、他者と比較する必要があるからです。

成長につれて自分が他者と違うことを知るまでは、本人は苦痛であっても「そういうもの」で、まわりのみんなも苦痛に耐えているのだ、と考えている場合も多いです。

なんとなく気づいて家族に尋ねてみてそれほど苦痛でもないことを知る、病院で尋ねられてはじめて気づく、といったきっかけで自覚し始めることもあります。

いったん自覚すると苦しみを心に抱えはじめますが、困りごとを対象化して対策を打てるようにもなります。

4.感受性が強く、感覚過敏な人の適応的な力

感受性の強さや感覚過敏は生きづらさにもつながりやすいですが、感受性が強いからこその適応的な側面もあります。

ここでは適応的な力として、特別な能力と体験世界を楽しむ力に注目します。

(1)特別な能力

感覚世界の豊かさは、特別な能力として発揮される場合があります。

自閉スペクトラム症の人は、視覚的なものを写真のように記憶する力や、絵画などのすぐれた創作の力を発揮することがあります。一般的な人が感覚を意味あるものととらえていく過程で後退させていく感覚能力を残し、逆に発達させてもいるためです。

HSPの人への感受性の高さや人の気持ちを察して気遣いができる力は、看護師や介護職といった対人援助職の適性があるという見方もできます。

いずれも、感受性の強さや感覚過敏といった特性が持ち味として生かされる環境が大切です。

(2)感覚体験を楽しむ力

感覚体験を楽しむ力も、感受性の高さや感覚過敏をもつの人の適応的な力です。

自閉スペクトラム症の人には、繊細な香りや味わい、音の質感やリズムとその変化、回転するものを眺める独特の心地よさ、きらめく光、といった感覚体験に深く没頭する姿がみられます。

HSPの人も音楽や美術に深く感動するなど、感覚を深く味わえるといわれます。

感覚体験を楽しんだり味わったりできることは、本人が生きるために欠かせない大切な力といえるでしょう。

5.生きづらさをなくすには

感受性が強く、感覚過敏な人の生きづらさをなくすにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは、感受性の強さや感覚過敏に由来する生きづらさの予防と対策に触れます。

(1)生きづらさを予防するには?

感受性が高く、感覚過敏な人の生きづらさを予防するには、どうしたら良いのでしょうか。ここでは、生きづらさの予防に大切なポイントを2つ紹介します。

a.早めに気づいて理解する

感受性の高さや感覚過敏の存在に早めに気づき、理解することは、生きづらさを防ぐ第一歩です。

本人に自覚がないことも多いので、まわりの人が行動から推測して支援につなぐことも検討しましょう。子どもであれば、感覚統合療法などの療育支援も活用できます。

行動の背景に感覚過敏があると理解できれば、「わがまま」「性格が悪い」といった誤解や叱責、不快な刺激への無理強いも避けられ、本人の生きづらさの深刻化を防げます。

何より理解者がいることは、本人の不安を和らげるでしょう。

b.環境を調整する

感覚過敏の存在に気づいたら、できる環境調整を考えましょう。

たとえば、本人の生活空間から苦手な刺激を取り除く、刺激があふれすぎない簡素で穏やかな環境をととのえる、本人がイライラしたり不安になったりしたら落ち着ける場所や活動を用意する、といった対応です。

対処法がわかれば、本人は安心して活動できるようになります。苦痛にひとりで耐えないこと、耐えさせないことが重要です。

(2)生きづらいと感じたときの対策は?

感受性の高さや感覚過敏に由来する生きづらさを自覚できれば、人に伝えることも、対策や工夫をすることも、可能になります。

精神症状や身体症状がある場合や、日常生活に差し支えるほどの困りごとや生きづらさがある場合は、病院などの専門機関に相談しましょう。

どうして良いかわからないときは、カウンセリングも有効です。

感受性の高さや感覚過敏のあり方は人によってさまざまなので、解決には個別の試行錯誤が必要です。
カウンセリングでは本人に合った対処法を一緒に考え、「こうやるとうまくいく」「こういうときが苦手」といった流れを見つけながら最終的に自分で調整できる状態を目指します。

そうして感覚情報にあふれる世界でも本人がコントロール感をもって生きられるように、支援していきます。

6.感覚過敏について相談する

感受性が強く、感覚過敏な人について説明しました。

感受性の強さや感覚過敏はそれ自体では病気ではありませんが、過度の負荷がかかれば日常生活に支障が出るほどの生きづらさを抱えることもあります。

生きづらさを自覚できれば、対処法も考えられます。より生きやすい道を探る方法として、カウンセリングも是非ご検討ください。

当オフィスでの相談やカウンセリングをご希望される方は以下の申し込みページからお問い合わせしてください。

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7.参考文献

【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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