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分析における構成

フロイトが1937年に書いた最後の技法論文「分析のおける構成」についての要約と解説である。精神分析によって患者のヒストリーを精神分析的に再構成していくことの治療的意義について論じている。

1.分析における構成(1937)の要約

(1)精神分析における解釈の妥当性

ある科学者が、私たちが患者に精神分析において解釈を伝えるとき、「表なら私の勝ち、裏なら君の負け」という原則に基づいて患者を扱っているといった。つまり、患者が私たちに同意すれば、解釈は正しい。患者が私たちに反対すれば、それは抵抗のしるしに過ぎないので、この場合も私たちが正しい。精神分析を受けている人がどんな反応をしても、私たちが正しいことになる。

患者の言う「Yes」か「No」という評価に、私たちが精神分析をする上で、日頃どのように到達しているのか?精神分析の仕事がめざすことは、患者が早期発達に属する抑圧を放棄し、それを心的に成熟した状態に対応する反応に置き換えるように導くことである。患者は、夢、自由連想、転移関係を通じて記憶の断片を私たちに精神分析の中で伝えてくる。患者と精神分析家、両者に異なった課題がある。

患者は体験して抑圧したことを想起するように導かれなければならない。精神分析家は「構成」すること。忘れられてしまったことをそれが残した痕跡から見きわめること。患者に、いつどのように伝えるか。

構成は、考古学者による発掘にかなり似ている。精神分析家は、記憶の断片、連想、患者のふるまいから推論を導き出す。心的対象の場合は、完全に忘れられてしまったかに見えることでさえ、何らかの形でどこかに存在している。隠されたものを完全に明るみに出すことに成功するかどうかは、ただ精神分析技法にのみかかっている。精神分析にとって構成は、準備的作業に過ぎない。

(2)構成によってなされる準備的作業

精神分析家は、構成を一部仕上げると患者(分析主体)に作用を及ぼすように、それを伝える。その次に精神分析家は自分に注ぎ込まれた新たな素材からさらなる部分を構成し、それを同じように扱う、これをかわるがわるに続ける。精神分析技法の説明において、「構成」についてわずかしか述べられていないが、かわりに「解釈」とその効果について語られている。

  • 解釈:ひとつの連想や失錯行為といった素材の個々の要素に対してなされる。
  • 構成:分析主体が忘れてしまった早期の歴史の一片を分析主体に差し出す。

間違いを犯し、誤った構成を可能性の高い歴史的真実として提示しても害がない。患者は言われたことに影響を受けないかのような状態に留まる。精神分析家は何らかの新しい素材が明るみに出て、それによってより良い構成を作り出して過ちを正すことができる。フロイトの実践においては、「暗示」の悪用が起きたことは一度もない。

暗示とは私たち自身が信じていて患者が信じるべきではないことを、受け入れるように説得することで、暗示によって患者を道に迷わせる危険。

患者に構成の一つを提示したときに、患者の反応から推測される徴候を私たちが無視したいなどとは全く思わない。

患者のNoを額面通りに受け取らないし、Yesもその通りには受け取らない。実際にはものごとはそう単純ではなく、私たち自身にとっても結論に至ることはそれほど簡単ではない。

患者のYesは、引き続いて間接的な証拠が現れたり、Yesの直後にその構成を完成させ拡張させる新たな記憶を患者が生み出したりすることがない限り、価値はない。患者のNoは非常に多義的。もっとも多いのは、提示された構成の主題となる内容によって引き起こされたであろう抵抗をNoが表現している場合である。患者は、真実の全体を知ってはじめて同意するものである。Noについての唯一な安全な解釈は、それが不完全さを指し示しているということである。

構成が与えられた後の患者の直接的な発言は、私たちが正しかったか間違っていたかという問いに対する証拠をほとんど与えてくれない。構成の内容に一致する間接的な形の確証として、次の言い回しがある。「私はそんなことを考えたことがありません」というのは、「そうです、今度はあなたは正しい、私の無意識に関しては」に翻訳できる。

例)「あなたが脳腫瘍と診断したあのイギリス人も死にましたよ」???

  1. 失錯行為例(1)「それは私にとってはあまりにjewagtです」
  2. 失錯行為例(2)「10シリング」

構成が誤っている場合、患者には何の変化も現れない。しかし、構成が正しかったり、真実に近いことを伝えたりする場合、患者は症状や一般状態の見落とすこともできないほどの悪化によって反応する。さらなる精神分析経過のみが、その構成が正しいか役に立たないかを決めることができる。「すべてはこれからのことの成り行きのなかでわかってくるでしょう」。

(3)より広い視野を開くようないくつかの見解

精神分析家の構成から始める道は、患者の想起で終わるはずである。しかし、常にそこまでたどり着くとは限らない。精神分析が正しく遂行されれば、私たちは患者のなかにその構成の真実に対する納得のいく確信を生み出し、それは再獲得された記憶と同じような治療的結果を達成するのである。

このことが起きるのはそのような状況のもとでなのか、そして不完全な代用物に見えるものが、それにもかかわらず完全な結果を生じるということがどのようにして可能になるのかという問題が生じる。すべては今後の研究にゆだねられる事柄である。

数人との精神分析で、明らかに適切な構成を伝えたことが患者のなかに当初理解しがたい驚くべき現象を引き起こした。患者は、構成の主題であったできごとではなく、その主題と関連する細部を「超-鮮明」に想起した。

構成が伝えられたことで活性化された、抑圧されたもののもつ「浮上力」は重要な記憶痕跡を意識のなかへもちこもうとした。実際抵抗はその運動を止めることには成功しなかったが、重要性の少ない隣接する対象へと置き換えることに成功した。

今まで十分に注意を払われなかった幻覚の一般的な特徴は、そのなかにおいて幼児期に体験されその後忘れられた何かが回帰するということではないだろうか。これらの幻覚が組み込まれている妄想は、私たちが通常想定している以上に無意識の浮上力と抑圧されたものの回帰に依拠していることもありえる。狂気のなかには詩人がすでに気づいていたように、方法があるだけでなく、歴史的真実の断片もあるということである。

歴史的真実の断片を歪曲と現時点での現実的なものへの執着とから解放し、それが帰属する過去の時点へと連れ戻すことにあるということになるだろう。

例:神経症者が不安状態に陥って、何か恐ろしいことが起きるのではないかと予期するとき、実際には彼がその当時恐ろしかったことがまさに現実に起きたという抑圧された記憶の影響下にあるにすぎないということがしばしばある。

患者の妄想は、私からすると、精神分析治療の経過中に私たちが作り上げる構成の等価物のように見える。つまり、説明と癒しの試みなのである。現実の否認という素材ともともとの抑圧という素材とのあいだの緊密な関係を明らかにすることが、個々の症例検討の課題だろう。フロイトがヒステリーについてだけ主張した命題は妄想にも当てはまるだろう。「病気の患者は、彼ら自身の回想に苦しんでいるという命題である」

妄想はその力を、忘れられた太古の時代の抑圧からもたらされた歴史的真実の要素に負うているのである。

(4)疑問、検討課題

  • 2.の例、「あなたが脳腫瘍と診断したあのイギリス人も死にましたよ」がどういった意味で例となっているのかわからない。
  • 3.のはじまり、「すべては今後の研究にゆだねられる事柄である」でまとめられている内容は、現在解明されているのか?
  • 精神病者の妄想が、精神分析における構成と等価物であるとすると、たとえばどういった例が該当するのであろうか。

2.分析における構成(1937)の解説

(1)2種の解釈

  • 転移解釈
  • 発生的解釈

→再構成

フロイトは精神分析を実践する上で、転移解釈をそれほどしてこなかった。

(2)患者の反応

肯定と否定

→その後の連想に着目する方が良い。

(3)変容惹起解釈

精神分析において何が人間を変容させるのか。

  • フロイト:再構成
  • ストレイチー:転移解釈
  • ランク:分離のワークスルー
  • バリント:新規蒔き直し
  • ウィニコット:ホールディング
  • ビオン:コンテイニング、becoming O
  • ジョセフ:全体状況、here and nowの徹底

(4)逆転移の取り扱い

フロイトは逆転移を最後まで重視しなかった。

「精神分析療法の今後の可能性(1910)」

「転移の力動(1912)」

「精神分析を実践する医師への勧め(1912)」

その後の精神分析では逆転移を考慮しない臨床はありえないほどになった。

ウィニコット:逆転移と憎しみ(1947)

ハイマン:逆転移の活用(1950)

リトル:逆転移と共感(1951)

マネ=カイル:正常な逆転移(1956)

ビオン:正常な投影同一化とコンテイナー(1962)

グリンバーグ:投影-逆-同一視(1962)

ラッカー:治療者の葛藤のまじった補足型逆転移と、患者に対する反応としての融和型逆転移(1968)

ジョセフ:逆転移と全体状況(1985)

(5)精神分析の目標

精神分析や精神分析的セラピーでは何を目指しているのか?

  • 洞察
  • 体験
  • 過去の再構成
  • 症状改善
  • 現実適応
  • .etc

3.さいごに

こうした精神分析について興味のある方は以下のページをご参照してください。

4.文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。