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スーパービジョンの歴史

ここではスーパービジョンがどういう経緯で成立し、どのような過程を経て、現在はどのようになっているのかについて解説します。

1.精神分析におけるスーパービジョン

師匠が弟子を指導するということは古代から営まれてきました。医師や弁護士、伝統芸能、技術職人など高度な専門技能が必要な職ほど師匠から弟子への指導は必須でした。

ジークムント・フロイトの写真

図1 ジークムント・フロイトの写真

そして、カウンセリングという領域においては、スーパービジョンは精神分析と同時に始まりました。精神分析をはじめたフロイト自身はブロイヤーやフリースとの関係の中で技能を磨いてきましたが、それは構造化されたスーパービジョンであるとは言い難いものでした。フロイトの精神分析が広まるごとに世界各国からフロイトに精神分析を学ぼうとたくさんの人たちがフロイトの元にやってきました。フロイトはそうした人たちを集め、「水曜会」という集いを作り、そこで毎週のように精神分析に関する講義を行ったり、弟子の行っている精神分析実践の指導を行ってきました。

さらには、フロイトは個別に弟子に対して精神分析の方法を学んでもらうために、指導を行っていました。こうしたことがカウンセリングにおけるスーパービジョンの原点になりました。ただ、当時のフロイトのスーパービジョンは教条的に、一方的にやり方を教え込むといった権威主義的な方法であったと言われています

シャンドール・フェレンツィの写真

図2 シャーンドル・フェレンツィの写真

一方で、フロイトの弟子のフェレンツィは非常に柔軟で、人間的な接触を重視する精神分析家でした。そのフェレンツィによるスーパービジョンは相互交流的で、上下関係に囚われないものであったようです。

また、この頃のスーパービジョンは教育分析との区別が非常に曖昧でした。教育分析とは精神分析家になるための訓練で、自らが精神分析を受け、自らの葛藤や無意識に触れていく作業です。ですので、当然、教育分析では自身の話や連想に焦点が当てられます。しかし、スーパービジョンとの区別が曖昧だったため、教育分析の中でケースについての相談をしたり、ケースの相談であるにも関わらず、スーパーバイジー自身の無意識や葛藤の掘り返しをしたりすることもありました。確かに精神分析では逆転移をどう理解し、どう扱うのかがとても大切なトピックではあるので、多少両者は重複しているところもあります。しかし、だからこそ、しっかりと分けて行っていく必要があるのです。

フロイトやフェレンツィ以後、教育分析とスーパービジョンとは明確に分けて考えるようになり、現在の多くの精神分析インスティテュートでは教育分析とスーパービジョンはコースワークと並んで、訓練の大きな2本柱となっています

2.現代におけるスーパービジョン

会話する男性たち

さらに、スーパービジョンは精神分析以外の学派・流派のカウンセリングでも取り入れられ、訓練の一環として行われるようになりました。また、スーパービジョンに関する研究も進み、その効果研究なども盛んに行われるようになりました。その過程で、スーパービジョンを師匠と弟子の関係から、対等で、相互的で、契約に基づいた専門的な関係へと変化していきました。スーパーバイザーについては、助言者や指導者のみならず、ケースに対する責任性を有する治療者としての位置付けも加わるようになりました。こうした歴史的な経緯の中でスーパービジョンというシステムは形作られていきました。

日本においても大学院における臨床心理士教育ではスーパービジョンは必須の単位となっています。卒後研修では明確なシステムはまだありませんが、スーパービジョンを受けている臨床心理士は非常に多いようです。

2020年の日本臨床心理士会の第8回動向調査によると、臨床心理士の中で現在スーパービジョンを受けている人は39.5%であり、これまでスーパービジョンを受けたことのある人は85.7%にものぼっています。

スーパービジョンの経験の有無

現在、スーパービジョンはカウンセラーとしての訓練の中心的役割を担っていることはほぼ間違いないことでしょう

3.スーパービジョンをさらに知りたい

スーパービジョンは精神分析から始まり、今ではカウンセラーの必須の訓練として位置づけられています。また当初、スーパービジョンは権威主義的な師弟関係の中で行われていましたが、現在では契約に基づき、スーパーバイザーとスーバーバイジーは対等な関係の中で行われることが標準的になりました。

こうしたスーパービジョンについてさらに詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

また、当オフィスでもスーパービジョンを行っています。希望者は以下のボタンからお申し込みください。


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