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映画「容疑者Xの献身」からみた真実という苦痛について

映画「容疑者Xの献身」からみた真実という苦痛についてという観点から考察しました。

(1)はじめに

 映画「容疑者Xの献身」を観ました。これで3〜4回目ぐらいだと思います。何度見ても泣けてくる良い映画です。特に堤真一の演技は鳥肌が立つぐらい凄いの一言です。

 映画の中で、本当のことを言っても、真実を導き出しても誰のためにもならない、というくだりがありました。また、真実の痛みに耐えられないなら一緒に引き受ける、という柴咲コウの言葉も至言でした。

(2)真実という苦痛から逃げる

 確かに時として真実は辛く、苦しいものかと思います。そのため、真実から目を逸らし、考えないように、なかったかのように否認することで当面の脅威からは逃れることができます。

 しかし、真実から逃れることにより、別の困難さを抱えてしまうことがあります。それが精神分析でいうところの症状であります。もしくは、生がまっとうできなかったり、人生に虚しさばかりを感じたり、手応えのない生き方であったり、生きているのに死んでいるようであったりします。さらには、死んでいるようにしか生きれなかったり、心が死に絶えてしまったりします。

 そうした困難さに苦しんで我々臨床家に手助けを求めて来られることは多いです。もちろん明確にそのことを主訴として来られるよりも、現実的な困り事を題目にしてのことが多いですが。

(3)苦痛と向かい合う

 そうした時、我々臨床家は表面的な主訴の背後にある、真実の苦痛さという根源的な苦しみに触れていけるのかが非常に大切になるでしょう。そして、いみじくも柴咲コウが言っているように苦痛を共にする者がいることが苦痛に向き合う動機になるのでしょう。

 福山雅治が言うように真実は誰の得にもならないのかもしれません。しかし、真実なくしては成長もないことでしょう。おそらく、苦しみながらも1人で向き合うことができる人もいます。難しい人もいます。

(4)精神分析という装置を用いて真実を探求する

 精神分析は真実への向き合い方の1つだろうし、それを助ける装置であると思います。装置であるので、マニュアルではありません。なので、一定の手順を踏めば達成できるものではないのです。装置を利用しつつも、使用する人が心を差し出し、パーソナルな交流をする必要があります。

 パーソナルな営みを通して、真実を発見していくことができるでしょう。もちろん真実は絶対的真実ではなく、その個人にとっての真実です。真実は苦しいものですが、成長に不可欠な滋養もあります。そうしたものを大切にしていくことが我々臨床家だと思います。

論考   2016/10/24   北川 清一郎

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