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「非対面心理療法の基礎と実際」を読んで

 岩本隆茂、木津明彦(共編)「非対面心理療法の基礎と実際 インターネット時代のカウンセリング」 培風館 2005年外部リンクを読んだ感想を書きます。最近ではSNSが主流ですが、この時代にはまだそうしたものが少なかったようです。ちなみに当オフィスでは対面のカウンセリングのみしかしておらず、メールやSNS,スカイプなどには対応していません。

目次

  1. ネットの普及とカウンセリング
  2. メールカウンセリングの技法論
  3. 非対面での刺激される空想
  4. 失敗の取り返しづらさ
  5. メールでのアセスメント
  6. メールカウンセリングの未来

1.ネットの普及とカウンセリング

 最近ではほとんどの家庭でインターネットが引かれるようになり、また携帯電話やスマホを持っていない人の方がマイノリティーになっています。googleによるとwebページを検索、閲覧するのも、パソコンではなくスマホの方が逆転して多くなったということです。世界と個人の距離がかなり近くなったように思います。その中でメールやweb、スカイプ、SNSを介したカウンセリングというものが色々と出ています。以前には僕もEAPに関わっており、そこでメールを用いてユーザーの支援やカウンセリングをおこなっていたことがあります。

 本書では、インターネットや電話を介して、カウンセラーとクライエントが直接会わずに何らかの媒体を利用してカウンセリングを行うことを非対面心理療法と名づけています。そして、この非対面心理療法のメリットやデメリットについて概観し、どういう援助技術が有効か?なども考察しています。

2.メールカウンセリングの技法論

 一般的にカウンセリングではカウンセラーとクライエントの関係性を重視し、傾聴や共感を基本的には行っていきます。しかし、メールなど文字を使った媒体では、なかなか傾聴と共感だけでは難しいようです。そこで認知行動療法などを利用して、トレーニング的意味合いを加味して、カウンセリングを施行していくことが比較的有効であるとしています。確かにメールで傾聴ってどうやってするのか分かりませんからね。

 それと、妙木浩之先生が精神分析的視点からメールカウンセリングの考察を行っており、非常に興味深かったのです。それによると、メールでは文章が残り、そこで見返したりすることから、洞察志向には向いているとしていました。ただ、メールでは今ここでの体験を扱うことができないので、転移解釈は難しいだろうとしていたところは納得です。

 全体的な傾向としては、メールカウンセリングには将来性があり、特に認知行動療法を用いる方向としては非常に期待が持てるという感じで書かれているようでしたが、やはりまだまだ課題は多い印象でした。総論のところでは、著者が近未来のインターネットカウンセリングについての「予言」が書いており、それがユーモアに富んでいて面白かったです。特に「シナリオ3 アンドロイドセラピストの実用化」は必見です。

3.非対面での刺激される空想

 以下は僕個人の感想ですが、メールといった限られた情報の中では、クライエントが不必要な転移や空想を抱きやすいように思います。これは本書でもどこかで指摘されていました。情報が少なければ少ないほど、空想でそれを埋めようとするのかもしれません。このことから、現実検討力という問題が出てくるように思います。

 here and nowの問題について、メールの場合ですと、どうしても「今ここ」での話ができにくいところがあります。メールで書かれて、それが届いた時点で、「あの時あの場所で」となってしまいます。そこには生々しいな体験が排除されてしまい、情緒的交流が難しくなってしまいます。

4.失敗の取り返しづらさ

 さらに、カウンセラーのミスという点に関してもメールはとても不利なように思います。カウンセラーはいつも適切で正しい介入をできるとは限りません。時にはミスをしたり、共感不全に陥ったりすることもあります。対面でのカウンセリングの場合では、カウンセラーの対応ミスがあったときには、すぐに改善したり、訂正したりすることができます。しかし、メールの場合では、その訂正にタイムラグが生じてしまいます。

 そうなってくるとクライエントの不信感を助長したり、余計な負担をかけてしまうことになります。対面のカウンセリングでは、クライエントのレスポンスを見ながら、それに応じて、その場ですぐに修正できます。

5.メールでのアセスメント

 また、アセスメントについてですが、メールだけ情報では量が限られてきます。そのため、なかなか正確な見立てをすることができません。特に雰囲気など、対面カウンセリングの時の独特の感覚が重要だろうと思います。しかし、そういうものがメールの場合には抜け落ちてしまいます。またパーソナリティ障害のクライエントなどは、表面的には適応的であっても、内的世界が混沌としていることもあります。そういう方には、さすがに数回のメールだけではとてもではありませんが、判断がつかない場合もあるでしょう。

6.メールカウンセリングの未来

 反対にメールでのカウンセリングが有効な対象として、聴覚障害者とのカウンセリングにはもしかしたらメールの適応が高いのかもしれません。ただ、実際にはしたことがないので、なんとも言えないのですが。

 過去にしていたEAPでのメールカウンセリングでは、基本的には治療的なことはしていませんでした。どちらかというと、情報提供や医療機関への誘導などがメインで、何往復もやり取りすることは少なかったです。その為、メールカウンセリングとは言わずに、メール相談とした方が妥当でしょう。

 メール、もしくはSNSによるカウンセリングや心理療法はこれからどういう形で進化していくのか分かりませんが、無手勝流にしていくのではなく、研究を積み重ね、可能なこと不可能なことを分けて、考えていくことが必要と思います。

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公開:2018-05-21 更新:2018-06-07
読書  北川 清一郎

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