空想と現実からみたカウンセラーの専門性
公認心理師資格ができましたが、その専門性について様々な問題点が指摘されています。そもそも公認心理師を含むカウンセラーの専門性とは何でしょうか。ここでは空想と現実の扱いという視点からカウンセラーの専門性について書いています。
1.カウンセラーとしての専門性
カウンセリングや相談業務はカウンセラーだけではなく、ケースワーカーもするし、弁護士もするし、医者もするし、看護師もするし、たいていの対人援助職は行っていると思います。しかし、同じカウンセリングや相談業務ではありますが、カウンセラーはそれ以外の対人援助職とは少し違った視点で相談を受けるところにその専門性があります。
その少し違った視点とは、カウンセリングの中で内的空想を扱うということです。たとえクライエントが、現実的な話をしていても、それは内的空想の1つの表れとして見ます。例えば、「上司から叱られて落ち込んだ」という話があったとしても、それをカウンセラーとの関係に引き寄せて、カウンセラーから叱られているように感じているのではないか、と理解することもあります。もしくは、これまでの親との厳しい養育環境の中で常に虐げられてきた恐怖がそこににじみ出ているのではないかと理解するかもしれません。
2.空想を重視しすぎることの危険性
反対にカウンセラーの中には内的空想ばかりに目を向ける人もいます。ユング好きやスピリチュアル好きなんかが典型だと思いますが、箱庭療法をしたり、夢分析をしたりして、何でも内的空想の話や象徴としてしか理解しないカウンセラーもいます。
こうなってくると現実問題を無視してしまうことになります。内的空想の話をしていても、そこに何らかの現実の問題から影響され、刺激されていることを念頭に置くことも大事になってきます。
3.空想と現実のバランス
そう思うと、カウンセラーの専門性とは、カウンセリングの中で現実の話を聞いていてもそこに内的空想に思いをめぐらしながら話を聞き、内的空想の話をしていても、そこに現実問題を意識して話を聞くことでしょう。すなわち、現実問題と内的空想の間にいることがカウンセラーの他には類を見ない専門性と言えるのかも知れません。
少し専門的になりますが、ウィニコットはこうしたことを「遊び」「可能性空間」「移行対象」ということでこれらのことを論じています。そういう意味ではウィニコットは非常にバランス感覚の優れた精神分析家だったのだろうと思います。
そして、こうした感性を養うためには教育分析や個人分析、スーパービジョンは絶対的に必要な訓練なのでしょう。