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フロイト論文「転移性恋愛についての観察」を読んで:精神分析から見た真実の愛と偽りの愛

フロイトや精神分析は愛についてフロイト技法論集に掲載されている「転移性恋愛についての観察(1915)」から、どう考えているのかについて書きました。本論文はジークムント・フロイト(著)藤山直樹(監訳)「フロイト技法論集」岩崎学術出版社 2014年に収録されています。

(1)はじめに

フロイト「転移性恋愛についての観察(1915)」を読みました。一体、何度目のことだろうかと思うぐらい、この論文は折に触れて読んでいます。発表やまとめなければならないという要請上のこともあるのですが。

その「転移性恋愛についての観察(1915)」については下記のページに要約と解説を掲載しています。

(2)抵抗・転移としての恋愛

精神分析設定の中で現れる恋愛は転移であり、抵抗である、というのが前半部分の大まかな趣旨です。そのため、恋愛にはのらずに、その素材を分析していかねばならないという「ねばならない」論調が印象的でした。

しかし、それで終わるだけなら、あまり面白味のない論文ですが、後半にそれらを全てひっくりかえしているところが最大の魅力と思われます。

(3)恋愛の本物性

フロイトは精神分析の中で現れる恋愛は転移であり、抵抗であるとはしつつも、その恋愛には本物性がないと言い切れるのか?と急展開しています。つまり、精神分析の中の恋愛は転移と抵抗ではあるが、恋愛を創造しているのではなく、そもそも存在する恋愛を利用しているにすぎないと言っています。

そして、精神分析の中で現れる恋愛が偽物であるとは誰にも言えないのだ、と断言しています。それを抵抗や転移ということだけで片付けてしまうことは、真実から遠ざかることになるとも言っています。

ここにフロイトの精神分析という装置を確立せねばならないという要請の中で、真実性の探求という本質に関わることとの関連性の神髄が見て取れます。

(4)技法論文であるがマニュアルではない

この論文以外にも技法論文は多数ありますが、いずれも単なるマニュアルではありません。手順通りに進めれば、手順通りの結果が出てくるという単純な話でもありません。人間の本質に如何に触れていくのかという、マニュアルには記載できないものを何とか言葉にしようとするフロイトの格闘が見て取れます。

(5)患者の愛を搾取する

そういえば、「危険なメソッド」という映画がありました。ユングとシュピールラインの関係を描いたものです。ユングはある意味では彼女の熱情に答えるという精神分析家としての逸脱を行いました。それは彼女が求めていたものであると同時に、ユングはそれを搾取的に扱ったと言えます。

彼らの恋愛には本物性はなかったとは言えないものの、恋愛を受けるということで隠蔽されてしまった真実もあるのでしょう。今ではこうしたことは行動化として理解され、教育分析や個人分析、スーパービジョンなどでそうした行動化が生じないように訓練を積むこととなっています。

(6)恋愛転移の陰性要素

フロイトは明確に示しているわけではないようですが、恋愛転移は単に陽性のものではなく、憎しみといった陰性要素の側面もあると記載しています。恋愛の負の側面である、怒り、憎しみ、攻撃性といったものは非常に重要な要素であるし、それこそが人間の隠蔽したくなる真実でもあるかもしれません。そのワークスルーをすることが精神分析の上でも、人生の上でも重要な目的となります。

恋愛が醜く、辛く、悲しいものであることは、当然ほとんどの人が分かっていることでしょう。そこにこそ、人と人との交流の根源的な何か、それは往々にして乳幼児性にまつわることでしょうが、が存在します。それこそが精神分析の中で扱うことになっていくものなのでしょう。

そうした精神分析については下記のページをご参照ください。