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神奈川県横浜市港北区大豆戸町311-1
アークメゾン菊名201号

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吃音のカウンセリング・治療

話しづらい苦痛

吃音とは幼少期に発症する発達障害、脳機能障害、言語障害の一つです。声がつまり、言葉が連なったり、出なかったりすることが主な症状です。その吃音の原因や疫学、症状、予後、治療方法、支援方法、治し方などをここでは解説しています。

吃音とは

吃音とは、話す際に音を切ったり、繰り返したり、つっかえたりする障害であり、神経や筋肉の問題、心理的要因などが原因とされています。発症年齢は幼児期から青年期にかけてが多く、社会的にも困難を伴うため、適切な支援が必要です。言語療法が有効であり、発音、リズム、音声速度などを調整するトレーニングが行われます。周囲の理解や協力も大切で、差別をなくし、理解と支援をすることが重要です。

吃音は脳機能に由来しますが、心理的・精神的な要因も強く作用します。以下の図はその吃音が増える悪循環を示しています。

吃音が増える悪循環

ちなみに、幼少期に発生する吃音は3年以内に、女児で約80%、男児で約60%が自然に消失するようですが、一部は成人になるまで残ります。疫学調査としては成人の約1%が吃音を持っているとされています。この数値は世界各国でほぼ同じです。吃音の治療方法はいくつかありますが、どれも万能ではありません。訓練により治療室で吃音が消失しても、現実場面に戻ると吃音がやはり発生してしまいます。

ですので、吃音を無くすことではなく、吃音とどのように付き合っていくのかの支援が必要になります。特に吃音によってからかわれたり、いじめられたりすると、人間関係や社交場面を回避してしまうようになり、それによる問題が大きくなってきます。そうならないための環境調整が必要になってくるでしょう

ちなみに吃音は発達障害の下位カテゴリーです。上位カテゴリーの発達障害については以下のページをご参照ください。

以下の動画は吃音当事者へのインタビューです。実際に吃音当事者がどのような体験をしているのかを知るにはとても良い動画だと思います。5分36秒程度ですので、是非見てください。

よくある相談の例(モデルケース)

20歳代 男性

Aさんは、幼少期から吃音に悩んでいる20代の大学生です。幼い頃から言葉が詰まりやすく、特に人前で話す際に言葉が出てきませんでした。周囲から「おとなしい子」と言われることが多かったものの、本人はそのことに強い劣等感を抱えていました。小学校や中学校では、吃音を指摘されることがあり、グループ活動や発表の際に言葉を発することが怖く、次第に社会的な場面を避けるようになりました。

大学に進学したAさんは、講義やアルバイトなどの日常生活で吃音が影響を及ぼしていることを実感し、強い不安を感じていました。特に人と接する場面では、言葉が詰まることへの恐怖から、会話を避ける傾向が強まり、孤立感を抱えるようになりました。このような悩みを解消するため、大学のカウンセリングセンターに相談することを決心しました。

カウンセリングでは、まず自分の吃音に対する不安や恐怖を話すことができ、カウンセラーからは吃音を受け入れ、恐れずに対処する方法を学びました。また、発声練習や呼吸法を取り入れ、言葉が詰まる時に冷静に対処できる方法を身につけることができました。またAさんの希望に応じて、カウンセラーは両親やゼミ担当教員に会い、Aさんの吃音について説明したり、環境調整をお願いしたりしました。

そのことによって徐々に、自分の吃音が他人とのコミュニケーションを妨げるものではなく、自己表現の一部であることに気づき、ポジティブな思考を育むことができました。

約1年間のカウンセリングを通じて、Aさんは少しずつ自信を取り戻し、会話の際に以前のような恐怖を感じることが少なくなりました。特に授業やアルバイトの接客で、言葉が詰まっても冷静に対応できるようになり、他人との交流に対する恐怖感が軽減しました。また、吃音を受け入れることで、会話がスムーズに進まなくても気持ちを伝えることが大切だと理解するようになりました。

最終的には、吃音を恐れず、自分らしくコミュニケーションを取ることができるようになり、Aさんの生活は大きく改善しました。カウンセリングを通じて得た自信と新しい視点は、今後の生活にも良い影響を与えています。

吃音の症状

泣いている赤ん坊

吃音の症状には以下のものがあります。

  • 連発
  • 伸発
  • 難発

連発とは「わ、わ、わ、わたしは・・・」といったように、話し始めの言葉が何度もくりかえされることです。

伸発は「わーーーーたしは・・・」というように、話し始めの言葉が長く伸びることです。

難発とは話し始めに言葉がでてこず、黙ってしまうものです。

そして、それら症状に伴って、不自然な動きをする随伴症状や挿入、助走、置き換え、中止、回避などが発生することもあります。これらは吃音を隠そうとする努力ではありますが、それによってさらに不自然な話し方になってしまいます。

また、年齢が上がるごとに吃音を隠す行動が増える場合があります。言葉の置き換えや不自然な挿入句、まわりくどい言い方、会話を避けるなどです。それによって一見は吃音が減っているように思えますが、本人はそうしなければならないことに苦痛を感じ、表現できない苛立ちを覚え、困り感は増大してしまうことが多いです

さらに、二次障害として、社交不安障害や引きこもり、自尊感情・自己肯定感の低下といったことまで発生してしまいます。

社交不安障害や引きこもりの詳細は下記をご覧ください。

Aさんは連発や難発といった吃音が幼少期からあったようです。また吃音の二次障害として、人との接触を避け、孤立地味になっていました。

吃音の原因

孤独な少女吃音はこれまで養育に原因がある、右利きに矯正したことが原因である、などとした仮説がありましたが、現在ではそういった仮説は否定されています。吃音になる原因はまだ特定はされていませんが、脳機能の障害、感覚運動統合の障害であり、約7割が遺伝的要因によるものと現在はされています

また、成人後に発症する吃音は獲得性(症候性)吃音と呼ばれ、幼少期から始まる発達性吃音とは区別されています。原因としては脳梗塞、頭部外傷、パーキンソン病、認知症などによるものが多いようです。

吃音のカウンセリングや治療

3人の子ども吃音を低減させる条件はいくつかあります。歌を歌う、メトロノーム法によるリズム発話、斉読、シャドーイング、DAF、マスキング、適応効果、独り言、ささやき声などです。これらは訓練を行えば、すぐに効果が出ます。しかし、これらは治療室の中では効果があっても、治療室の外ではほとんどの場合は般化されません。

一方で、オペラント学習を利用した治療もあります。回避をせずに発話を増やすように正の強化を与えることです。またタイムアウト(キャンセレーション)と言って、どもったら話すのを中断し、2~3秒後に話す訓練をします。また、リッカムプログラムといって、オペラント学習の原理を用いた行動療法パッケージがあります。その他に環境調整によって二次障害を防ぐことができます。

ただ、吃音の治療の方向性としては、吃音を減らしたり、無くしたりすることではありません。吃音があったとしても、人との関係を持とうとし、会話をしようとし続ける意欲が維持され、社会から孤立しないようにサポートすることです。そのために、以下の図に示したような話す意欲が増えるような好循環を作り出すことが治療のポイントとなります

 

話す意欲が増える好循環

Aさんはカウンセリングの中で吃音を無くすことを目標にはせず、吃音がありつつも、人との接触を避けず、積極的に行動したり、会話したりすることを目標にしました。そのことによりAさんは自己肯定感を取り戻し、人間関係への恐怖はかなり薄らいでいったようでした。

親支援

吃音を持つ子どもに対する接し方で気を付けるべき点やしない方が良いことが色々とあります。そうしたことを実践するだけで、随分と子どもの様子も変わります。

以下は親が吃音を持つ子どもへの接し方のポイントや方向性をまとめたものです。

  • 話し方のアドバイスをしない
  • 言葉の先取りをしない
  • 言葉を遮らない
  • 話すことを回避させない
  • 言葉を全て言い終わるまで待つ
  • 話し方よりも話す内容に着目する
  • 子どもが褒められているという実感を増やす
  • ゆったりとした生活のペースにする
  • 吃音のことをオープンにする
  • 吃音は悪いことではないと子どもに伝える

吃音があることで様々な傷つきをうけ、それによって非社交的になってしまいます。そうしたことを防ぐことが必要となってきます

カウンセラーじゃはカウンセリングの中でAさんと相談し、親に対して吃音について説明したり、環境調整をしたりしました。

学校での支援

宿題をする少年4~5歳ぐらいになると、吃音のことに気付き始めます。友達から吃音のことを指摘されたりすることもあります。時には、からかわれたり、真似をされたり、馬鹿にされたりすることも出てきます。そうした時、園や学校の先生はそうしたいじめにつながる行為を注意し、止めさせるべきです

また、朗読や劇、号令、自己紹介など人前で話す際には特別の配慮が必要です。朗読などでは友達と二人でさせるなどをすることにより、随分と違います。そして、どもっている時も話し方のアドバイスをしたり、話を遮ったり、先取りをしたりせず、話し終わるまで待つようにしましょう。そうしたことをクラスの友達にも浸透するように指導できると良いでしょう。

親支援の項目で列挙した10個のリストは学校内、クラス内でも可能な範囲で実践できると良いでしょう。吃音があっても話したい、という意欲を育てるような関わりが大事になってきます

カウンセラーは大学の相談室ということもあり、ゼミ担当の教員とは連携しやすい立場にありました。ゼミ担当の教員に対してAさんの吃音について説明したり、環境調整を依頼したりしました。

専門機関のリスト

アナウンスする女性以下の外部サイトは神奈川県内、横浜市内で吃音の支援や治療を行っている機関の一覧表です。吃音治療をご検討の方は参考にしてください。

吃音が主題となっている作品

吃音や吃音者が主題となっている漫画、映画、小説、ドラマなどの作品です。おそらくこれ以外にもたくさんあるとは思いますが。こうした作品は吃音の実態とはそぐわない描写があったりもしますが、直感的に吃音とはこういうものという理解をうることができるという点においては意味のあることかと思います。

そうした作品の外部サイトの一覧を以下に列挙しました。興味ある方はご参照ください。

(1)漫画

(2)映画

(3)小説

(4)ドラマ

吃音や発達障害についてのトピック

吃音についてのよくある質問


吃音は、発話の際に繰り返しや引っかかりが生じる発達障害で、言葉を流暢に発することが難しくなる現象です。特に、言葉の初めの音や音節においてつまづくことが多く、この状態が続くと、会話において思うように言葉が出てこないことにストレスを感じることもあります。吃音は、しばしば緊張や不安によって悪化し、話し手が自信を失う原因となることもあります。吃音の症状は、発話の一部が繰り返されたり、音を引き伸ばしたりする形で現れることがあり、話すたびにどのような症状が出るかは個人差があります。


吃音の原因については、完全に解明されていない部分もありますが、遺伝的要因や神経学的な要因が関係していると考えられています。家族に吃音がある場合、遺伝的な影響を受ける可能性が高いとされており、吃音が発症しやすい傾向があります。また、神経の伝達が正常に行われない場合や、脳の言語を司る領域に何らかの障害がある場合にも、吃音が現れることがあります。さらに、幼少期の環境要因や精神的なストレスも吃音を引き起こす原因となることがあります。したがって、吃音の原因は単一ではなく、遺伝や環境、神経の働きが複雑に影響し合うことが示唆されています。


吃音は治療やサポートによって改善することが可能です。言語聴覚士による専門的な言語療法や、心理的サポートを通じて、症状の軽減が期待できます。特に、発話のリズムや呼吸法のトレーニング、発話を練習するための段階的なアプローチが効果的です。治療には個別のニーズに対応したプランが重要で、患者の年齢や症状の程度に合わせた方法が選ばれます。早期の対応が重要であり、特に子どもの場合、早い段階での言語療法が効果を上げることが多いです。また、吃音に関連する心理的な要因や自信の欠如を解消するためのカウンセリングも、改善を助ける要素となります。


吃音の改善には、いくつかのアプローチがあります。最も一般的な方法は、言語聴覚士の指導による発話の練習やトレーニングです。これには、発話のスピードをゆっくりとコントロールし、発話前に深呼吸を行うことで緊張を和らげる技術などが含まれます。また、吃音の改善には、自分のペースで話すことに焦点を当てることが重要です。緊張や焦りが症状を悪化させるため、リラックスした状態で話す練習を行うことが助けになります。心理的なサポートやカウンセリングも、自己肯定感を高め、吃音に対する不安や恐怖心を和らげる効果があるため、併用することが有益です。特に、吃音が心理的な要因に関連している場合、感情的な安定を促進する治療法が有効となります。


吃音は特に2歳から5歳の間に見られることが多いです。この時期は、言語発達の過程で、子どもが言葉を学び始める時期でもあります。吃音が現れること自体は、言語能力の発展過程において一時的な現象であることが多く、多くの子どもは自然に改善します。しかし、もし吃音が続くようであれば、専門家による評価と支援を受けることが重要です。吃音は遺伝や神経学的な要因だけでなく、精神的なストレスや環境的な影響も関係しています。吃音が続く場合、早期の介入が改善のために効果的で、適切な治療が子どもの発話の流暢さを取り戻す手助けとなります。


吃音は成人期にも続くことがあります。特に、思春期に吃音が発症した場合、その症状が成人期まで続くことがあります。成人になってからでも、吃音の症状を改善するための治療やサポートが有効です。例えば、発話のリズムや呼吸法のトレーニング、また、社会的な状況での自信を高めるための心理的な支援が役立ちます。大人になってからの吃音治療では、仕事や日常生活でのコミュニケーションの質を改善することが目標となり、専門的な言語療法やカウンセリングを受けることで症状が軽減する可能性があります。


吃音の診断は、専門的な言語聴覚士や医師によって行われます。診断は、発話の観察や聞き取りによって行われることが多く、症状の発生頻度や発生する場面を確認します。また、発話のパターンや症状の種類、発症のタイミングなども重要な情報として扱われます。さらに、心理的な影響や家庭環境、社会的な要因も考慮し、総合的な評価を通じて診断が下されます。吃音の診断が確定した後は、その人に適した治療計画が立てられ、個別のアプローチが提案されます。


吃音の人に対しては、焦らず急かさず、温かく理解を示すことが大切です。吃音の症状が現れるたびに、無理にその人を急かすことは、逆にその症状を悪化させる原因となります。相手が話している最中に焦らず、しっかりと耳を傾け、落ち着いて待つことが重要です。また、会話をリラックスした雰囲気で行い、プレッシャーをかけないよう心がけましょう。吃音の人が話す際に、他の人が理解を示す姿勢を見せることで、その人の自信を支え、安心感を与えることができます。


職場で吃音の人が困らないようにするためには、環境を配慮し、発言しやすい状況を作ることが重要です。会議などの場で、事前に話す内容を準備する時間を設けたり、話す順番を決めておくことで、吃音の人が自分のペースで話せるように工夫できます。また、同僚や上司が理解を示し、焦らず見守ることが大切です。吃音の人が自分の意見を表現することができる環境を整えることで、職場でのストレスを軽減し、効率的なコミュニケーションが可能になります。


吃音の人が自信を持つためには、まず自分を肯定的に受け入れることが大切です。吃音は治療やトレーニングによって改善できることを知り、無理に治すことを焦らず、ゆっくりと自己改善を進めることが重要です。成功体験を積み重ねることも自信を高める鍵となります。小さな成功でも自分を褒めることで、自己肯定感が高まり、吃音に対する恐怖心が軽減します。また、専門家のサポートを受けて、心理的なストレスや不安を軽減することも自信を高めるためには有効です。

吃音のカウンセリングを受ける

吃音はまだ治療方法が確立されていない疾患、障害です。しかし、その支援の方法はいくつかあり、それによって吃音そのものを無くすことではなく、吃音をもつ人の生き方や生活の質を向上させていくことが目的となっていきます

巷には吃音を治すことを宣伝しているサイトもありますが、そのほとんどは昔に廃れた方法を使い、一時的に消失させることを治療としている場合があるようです。

当オフィスでは言語療法はしていませんので、吃音そのものの治療はしていません。ただ、吃音から生じる二次障害についてはカウンセリング、家族相談、育児相談という枠内で対応することができます。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。