カウンセリングの倫理
カウンセリングにはカウンセラーが守らなければならない倫理があります。倫理には非常に道徳的なニュアンスが含まれますが、非倫理的なことをすることによってクライエントに害を与え、福利に反することになってしまいます。以下に主だった倫理について書きます。
各々のカウンセラーは「自分はこうしたことをしない」と無関係なものと考えるのではなく、何かのタイミングときっかけによって、倫理に反することをしてしまう可能性があると頭の片隅にでも置いておくことの方が大事になってきます。
目次
1.二重関係の禁止
カウンセラーは家族、親族、恋人、友人、クラスメイト、職場の人、生徒など、もともと私的な関係のある方にカウンセリングをしてはいけません。もし仮に、そうした私的な関係のある人とのカウンセリングをおこなった場合、私的関係とカウンセリング関係が重複してしまいます。これをカウンセリングにおける二重関係の禁止と言います。クライエントとカウンセラーは、カウンセリングの場のみの付き合い・関係でなければいけません。
二重関係については以下のブログに詳しく書いています。
2.私的利用の禁止
カウンセラーがクライエントにカウンセリングを実施する目的はクライエントの福祉や福利に貢献するためです。そして、それの対価として料金を頂きますが、それはサービスの質と量に即した適正なものでなければいけません。それ以上のものを要求することやクライエントをカウンセラー自身の欲望のために利用することは私的利用にあたり、禁止されています。
例えば、カウンセラー自身の宗教を押し付けること、カウンセリングとは関係のない売買を持ち掛けること、個人的な頼みごとをすること、セミナーや研究会に参加することを強要すること、などが挙げられます。
3.性的行為の禁止
カウンセラーとクライエントが性的な関係を持つことは厳しく戒められています。例え、それがクライエントから求められたことであったとしても性的行為をしてはいけません。なぜなら、どういう形であったとしても性的行為によりクライエントは傷つくことになってしまうからです。
4.守秘義務
カウンセラーやカウンセリングの中でクライエントから見聞きしたことを、みだりに第三者に話したり、公開したりしてはいけません。クライエントはカウンセリングの中ではプライバシーが守られるからこそ自由に話をしたりすることができます。秘密がばらされることほど傷つく体験はないでしょう。
しかし、これには例外があり、例えば、自傷他害の危険性があり、関連機関との連携が必要になるときには守秘義務が解除され、適正な範囲内で情報共有を行うことのほうが寧ろ望ましいこともあります。虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)などがあるときには、こうした事態になることが多いかもしれません。
これに関しては下の「カウンセリングにおけるカウンセラーの守秘義務」で詳しく書いています。
5.インフォームドコンセントの順守
日本語では「説明と同意」と訳されることがあります。カウンセラーはこれから実施しようとするカウンセリングの方法や心理査定の方法などについて、クライエントの理解できる言葉で十分に説明する義務があります。そして、そのことについてクライエントから同意を得られない限り、実施してはいけません。
6.適正な技術の実施
カウンセラーはこれまでに積み重なってきた心理学的な知見、臨床心理学的な知見を参照し、適正で、妥当性のある、効果がある程度保証されている技術を用いらねばなりません。研究が積み重なっておらず、効果が不明、もしくは効果のない技術をクライエントに対して実施してはいけません。
時折、カウンセラーの中でも、効果が立証されていない代替医療や疑似科学、霊的治療の実施を標榜しているホームページも見かけますが、厳に戒められねばなりません。
7.自己研鑽の義務
カウンセラーは日々、勉強、学習、訓練、研究を行い、自身の技術を向上する努力を続けねばなりません。カウンセリングの技術は日々発展しています。そうしたこと全てを身に着けることは不可能ですが、それでもできる範囲で研鑽する義務があります。
当オフィスではカウンセラーの自己研鑽の場を用意しています。詳細は以下をご覧ください。
8.カウンセリング関連団体の倫理綱領
以下に心理学、臨床心理学、カウンセリングに関係する諸団体が公表している倫理綱領を挙げておきます。その団体に所属するカウンセラーはこうした倫理綱領に従って業務を行っています。反対にいうと、こうした団体に所属していない無資格カウンセラーは倫理に縛られておらず、野放しになっているため、時として危険になることもあります。
- 日本心理臨床学会 倫理綱領
- 日本臨床心理士会 倫理綱領
- 日本臨床心理士資格認定協会 倫理綱領
- 東京臨床心理士会 倫理綱領
- 日本産業カウンセラー協会 倫理綱領
- 日本カウンセリング学会認定カウンセラー 倫理綱領
その他にカウンセリングと倫理については以下のような書籍もでているので参考になるでしょう。
- 水野修二郎(著)「よくわかるカウンセリング倫理」河出書房新社 2005年
- 松原達哉(著)「カウンセラーの倫理」金子書房 2006年
- 松田純、江口昌克、正木祐史(著)「ケースブック 心理臨床の倫理と法」知泉書館 2009年
- 金沢吉展(著)「臨床心理学の倫理をまなぶ」東京大学出版会 2017年
- 橋本和明(編集)「臨床心理学 第17巻第2号 特集 知らないと困る倫理問題」金剛出版 2017年
9.カウンセリングを受けたい方へ
カウンセラーはこうした倫理に縛られています。これはクライエントを守るためのものです。こうした倫理がないカウンセラーはクライエントにとっては恐ろしいことでしょう。そして、倫理から逸脱した場合には一定の制裁が課せられます。こうした仕組みがクライエントを守るのです。
ですので、クライエントは倫理で縛られている資格を持ち、団体に所属しているカウンセラーにカウンセリングを受けると良いでしょう。
当オフィスのカウンセラーは全員、臨床心理士や公認心理師の資格を持ち、心理系の学会や職能団体に所属しています。そして、それらの倫理に縛られています。そうした当オフィスのカウンセラーのカウンセリングを受けたいと希望される方は以下からお申し込みください。
またカウンセリングのさらに詳しいことについては以下のページをお読みください。