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公開:2020-01-04 更新:2020-06-16

スーパービジョン(supervision)について

目次

  1. スーパービジョンとは
  2. スーパービジョンの歴史
    1. 精神分析におけるスーパービジョン
    2. スーパービジョンの広がり
  3. スーパービジョンの構造
    1. 個人と集団
    2. スーパービジョンの頻度
    3. スーパービジョンの時間
    4. 関係性
    5. スーパービジョンの料金
    6. オンラインによるスーパービジョン
  4. スーパービジョンの方法
    1. スーパービジョンの目標
    2. スーパービジョンの進め方
    3. スーパーバイザーの使用する応答
    4. スーパーバイジーの病理の扱い
    5. スーパービジョンの終了
  5. スーパービジョンと倫理
    1. 二重関係
    2. ケースに対する責任の所在
    3. 転移/逆転移
    4. 自己研鑽の義務
  6. スーパーバイザーの条件
  7. スーパービジョンの効果
    1. 理解の深まり
    2. 技法の習得
    3. 安定化
    4. パラレルプロセス
    5. 内なるスーパーバイザー
  8. スーパービジョンへの抵抗
    1. ナルシズムの傷つき
    2. エディプス葛藤
    3. 万能感を阻害
    4. スーパービジョンを受けないことの合理化
  9. スーパーバイザーの探し方
    1. 指導教官にお願いする
    2. 紹介してもらう
    3. 学会で見つける
    4. 論文や書籍から
    5. ネットで検索する
  10. 終わりに

1.スーパービジョンとは

 スーパービジョン(Supervision)(時にスーパーヴィジョンと表記することもあります)とはカウンセラーやカウンセラーを志す研修生が受ける訓練の内の一つです。スーパービジョンを受ける人をスーパーバイジーといい、スーパービジョンをする指導者をスーパーバイザーといいます。スーパービジョンでは、スーパーバイジーが担当したケースのカウンセリングの記録などを元に、スーパーバイザーがカウンセリングの進め方やケースの理解の仕方を指導します。

 スーパービジョンの狭い定義では、一つのケースを一定の頻度で継続的に検討し続けることを指し、1回限りの単発の指導についてはコンサルテーションといい、分けて考えます。広い定義では1回限りの単発のコンサルテーションも含めてスーパービジョンということもあります。

 また、スーパービジョンは原則的に同職種のスーパーバイザーとスーパーバイジーとの指導を指しますが、時には別職種同士の組み合わせの指導も含めることもあります。例えば、初心の心理職に対して、ベテランの精神科医がカウンセリングの指導を行うなどです。

 さらに、スーパービジョンをスーパーバイジーとスーパーバイザーが1対1で行う場合を個人スーパービジョンといい、1人のスーパーバイザーに対して、複数のスーパーバイジーが受ける場合をグループスーパービジョンと言います。

 関係性や人数、職種の違いなどはありますが、スーパービジョンではスーパーバイジーがカウンセラーとして成長することを目指します。また、クライエントの不利益になることを避けるためにスーパーバイザーがスーパーバイジーをコントロールすることもあります。

2.スーパービジョンの歴史

 ここではスーパービジョンがどういう経緯で成立し、どのような過程を経て、現在はどのようになっているのかについて解説します。

(1)精神分析におけるスーパービジョン

 師匠が弟子を指導するということは古代から営まれてきました。医師や弁護士、伝統芸能、技術職人など高度な専門技能が必要な職ほど師匠から弟子への指導は必須でした。

 そして、カウンセリングという領域において、スーパービジョンの歴史は精神分析と同時に始まりました。精神分析をはじめたフロイト自身はブロイヤーやフリースとの関係の中で技能を磨いてきましたが、それは構造化されたスーパービジョンであるとは言い難いものでした。フロイトの精神分析が広まるごとに世界各国からフロイトに精神分析を学ぼうとたくさんの人たちがフロイトの元にやってきました。フロイトはそうした人たちを集め、「水曜会」という集いを作り、そこで毎週のように精神分析に関する講義を行ったり、弟子の行っている精神分析実践の指導を行ってきました。さらには、フロイトは個別に弟子に対して精神分析の方法を学んでもらうために、指導を行っていました。こうしたことがカウンセリングにおけるスーパービジョンの原点になりました。

 ただ、当時のフロイトのスーパービジョンは教条的に、一方的にやり方を教え込むといった権威主義的な方法であったと言われています。一方で、フロイトの弟子のフェレンツィは非常に柔軟で、人間的な接触を重視する精神分析家でした。そのフェレンツィによるスーパービジョンは相互交流的で、上下関係に囚われないものであったようです。

 また、この頃のスーパービジョンは教育分析(訓練分析)との区別が非常に曖昧でした。教育分析(訓練分析)とは精神分析家になるための訓練で、自らが精神分析を受け、自らの葛藤や無意識に触れていく作業です。ですので、当然、教育分析(訓練分析)では自身の話や連想に焦点が当てられます。しかし、スーパービジョンとの区別が曖昧だったため、教育分析(訓練分析)の中でケースについての相談をしたり、ケースの相談であるにも関わらず、スーパーバイジー自身の無意識や葛藤の掘り返しをしたりすることもありました。確かに精神分析では逆転移をどう理解し、どう扱うのかがとても大切なトピックではあるので、多少両者は重複しているところもあるのですが、だからこそ、しっかりと分けて行っていく必要があるのです。

 フロイトやフェレンツィ以後、教育分析(訓練分析)とスーパービジョンとは明確に分けて考えるようになり、現在の多くの精神分析インスティテュートでは教育分析(訓練分析)とスーパービジョンはコースワークと並んで、訓練の大きな2本柱となっています。

(2)スーパービジョンの広がり

 さらに、スーパービジョンは精神分析以外の学派・流派のカウンセリングでも取り入れられ、訓練の一環として行われるようになりました。また、スーパービジョンに関する研究も進み、その効果研究なども盛んに行われるようになりました。その過程で、スーパービジョンを師匠と弟子の関係から、対等で、相互的で、契約に基づいた専門的な関係へと変化していきました。スーパーバイザーについては、助言者や指導者のみならず、ケースに対する責任性を有する治療者としての位置付けも加わるようになりました。こうした歴史的な経緯の中でスーパービジョンというシステムは形作られていきました。

 日本においても大学院における臨床心理士教育ではスーパービジョンは必須の単位となっています。卒後研修では明確なシステムはまだありませんが、スーパービジョンを受けている臨床心理士は非常に多いようです。2016年の日本臨床心理士会外部リンクの動向調査によると、臨床心理士の中で現在スーパービジョンを受けている人は41.5%であり、これまでスーパービジョンを受けたことのある人は86.3%にものぼっています。

 現在、スーパービジョンはカウンセラーとしての訓練の中心的役割を担っていることはほぼ間違いないことでしょう。

3.スーパービジョンの構造

 スーパービジョンにも構造があり、非常に多岐にわたっています。どれが良いかは文脈や目的などによるので一概に判断することはできません。ここではいくつかの構造について解説します。

(1)個人と集団

 スーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1でスーパービジョンを行うことを個人スーパービジョンと言います。対して、1人のスーパーバイザーと複数人のスーパーバイジーによるものを集団スーパービジョンと言います。

 集団スーパービジョンでは、スーパーバイザー以外からの意見や考えを参考にすることができるところが長所です。また、スーパーバイジー同士の横のつながりが得られるので、そうしたことは精神的な支えになりえます。一方で、1人のスーパーバイザーをめぐって兄弟姉妹葛藤に近い情緒が賦活することもあり、スーパーバイジー間で競争的・競合的な関係になってしまうこともあります。また、単純にスーパーバイジーが複数いるので、自身のケースを検討する機会が減ってしまいます。

 個人スーパービジョンでは常に焦点は自身のケースになるため、より詳細にケースを検討することができます。また、1対1の関係のため、周りに気を使う必要はないでしょう。一方で、スーパーバイザーとの関係が過度に濃密になり、スーパーバイザーに対する複雑な感情や葛藤を感じることもあるかもしれません。また、時にはスーパーバイザーの考えを鵜呑みにしてしまい、批判的な思考を阻害してしまうこともあるでしょう。

 個人スーパービジョンと集団スーパービジョンのどちらが良いとは一概に判断はできませんが、両方ともそれぞれメリットとデメリットがあり、使い分けることが良いでしょう。もしくは、個人と集団の両方のスーパービジョンを同時並行で受けることにより、相互に客観視できるかもしれません。その場合には費用が高くなってしまいますが。

(2)スーパービジョンの頻度

 スーパービジョンの頻度については、カウンセリングと同様に様々です。週に1回、2週間に1回、月に1回、年に数回、オンデマンドなどなどあります。ちなみにオンデマンドとは必要に応じて、必要な時に、必要な分だけ適宜受けることを言います。頻度が高くなればなるほど、カウンセリングの1セッションを詳細に検討することができるでしょう。頻度が低くなればなるほど、数セッションを1回で検討したり、もしくは数あるセッションの中から選んで検討するということになります。当然、きめ細かい検討をしたいのであれば、頻度を高くしていく必要があります。

 頻度についても、契約の元で相談して決めることになりますが、スーパーバイジーが初心者の頃ほど頻度は高くする方が良い様に思います。スーパーバイジーの経験が増えていったり、スーパービジョン関係が長くなっていくと頻度を減らしたりすることもあるようです。

(3)スーパービジョンの時間

 スーパービジョンを行う時間も様々です。個人スーパービジョンでは45分や50分というのが多いかもしれません。時に30分やそれ以下の短い時間で簡単に要点だけを素早くスーパービジョンを行うこともあります。

 集団スーパービジョンでは、個人スーパービジョンよりもやや多めの時間を取ることがあります。おそらく、他のスーパーバイジーの発言や討論なども含まれるからでしょう。90分や120分という長い時間でスーパービジョンを行うこともあるでしょう。ただ、それ以上の3時間も4時間も行うことは稀かもしれません。人間の集中力が持たないということと、ほとんどの場合120分(2時間)程度でそれなりに検討し尽くすことができるからです。

(4)関係性

 スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係性は非常に重要です。両者が同じ職場の中の同僚や上司部下との関係のこともあります。職場内スーパービジョンと呼ばれることもあります。一方で、職場とは全く無関係に、外部の人とスーパービジョンを行うこともあります。時に職場外スーパービジョンと呼ばれます。

 いずれにしてもメリットとデメリットがあります。

 職場内スーパービジョンでは、上司部下や同僚という関係性が先にあるため、スーパーバイジーが率直にケースのことを開示しにくい状況が起こりえます。それは職場内での評価や査定に響くのではないかという不安や心配があるからでしょう。そのため、スーパーバイジーは意識的にも無意識的にもケースのプロセスの良いところを誇張し、悪いところやダメなところを削除したり、過小評価して報告してしまいがちです。そうなるとスーパービジョンに大切な良いところも悪いところも率直に話し合うということが阻害されてしまいます。こうしたことがデメリットに働いてしまうことは大いにあり得ます。

 一方で、職場内でのスーパービジョンなので、外部のように仕事外の時間を用意をする必要もなく、勤務時間中にスーパービジョンを受けることができ、時間の節約になります。また、スーパービジョンにかかる料金が無料であったり、安価だったりすることもあるので、それは助かるでしょう。もっとも、無料や安価であることで、必要ない遠慮などが働いてしまったり、スーパーバイザーに否定的な意見を率直に言えなかったりすることもあります。

 職場外スーパービジョンでは、基本的には対等な契約関係の中で行われることが多いです。また日常的な接点がスーパーバイザーとスーパーバイジーとの間でないので、遠慮なく、率直に話をすることが比較的しやすいでしょう。

 しかし、外部で受けるため、仕事の時間以外を用意し、また時には遠方まで時間をかけて、交通費をかけて通わねばならないこともあります。そして、ほとんどの場合は料金は正規かそれに近い設定になるので、時として非常に高額の費用がかかります。もちろん、正規のお金を払うからこそ、遠慮なくスーパーバイザーに物申すことができるというメリットもあるのですが。

(5)スーパービジョンの料金

 スーパービジョンにも多くの場合、料金が発生します。職場内でのスーパービジョンであったり、もしくは修了した大学院の指導教官からのスーパービジョンであったりすると非常に安価、時には無料で受けることができたりします。これは特にお金のない初心者の時には大いに助かることでしょう。

 ただし、上でも書いたように安価や無料であるということがデメリットに働く場合もあります。安くしてもらっているという罪悪感や申し訳なさが働き、思っていることを口に出せなくなることもあります。単純に遠慮が働いてしまうのでしょう。また、安価・無料であるということでスーパービジョンの価値や重要性を低く見積もってしまう心性が働いてしまいます。これはモチベーションの低下を招きかねません。

 正規の料金となると、地域によってや、スーパーバイザーの経験によってなどで相当変わるでしょう。都心部の超ベテランのスーパーバイザーでは50分ほどで12,000円~15,000円もかかる場合もあります。地方などでは5,000円~8,000円ほどでスーパービジョンを受けることができたりもします。頻度がどれぐらいかにもよりますが、それだけの料金を支払うことは相当の経済的な負担にもなるでしょう。ただ、負担が大きいということは、それだけそこにかける熱情も強くなりますし、遠慮もなくなるので、結果的に良い方向に進む場合も稀ではありません。これはスーパービジョンではなく、カウンセリングや心理療法でも同様かもしれません。

(6)オンラインによるスーパービジョン

 対面でのスーパービジョンではなく、Skypeや電話を用いたオンラインによるスーパービジョンも最近では増えています。非言語的なコミュニケーションがとりづらいところもありますが、その一方で高い利便性といった利点もあります。

4.スーパービジョンの方法

(1)スーパービジョンの目標

 スーパービジョンもただ漫然と進めることはあまりありません。なぜ、どういう目的で、何を目指してスーパービジョンをするのかをスーパーバイザーとスーパーバイジーとの間で話し合い、明確にしておくことが必要です。スーパービジョンの目標として定められることはもちろん個々のスーパーバイジーのニーズによるので多種多様ですが、3つの方向が選ばれることが多いようです。

 1つ目は、今担当しているクライエントさんについての理解や手立てをより適切なものにし、より良い援助をしていくことです。特に初心者のスーパーバイジーでは、応対することに精一杯で、今行っている理解が適切なのか、今行っている手立てには問題がないのかを客観的に判断することが難しいことが多いです。そうしたところをスーパーバイザーと話し合うことで、軌道修正し、より妥当な支援に変えていくことをスーパービジョンでは目指します。クライエント中心スーパービジョンと言えるかもしれません。

 2つ目は、ある特定の学派の技法や理論を学び、それを身に着けていくことを目指したスーパービジョンを行うことです。様々な学派ではスーパービジョンを訓練の一環としていますが、それはその学派のセラピストになるために必須のことであるからです。こうしたスーパービジョンは技法中心スーパービジョンとでも言えましょう。もちろん、これは悪い意味を込めてのことではありません。セラピストの成長のためには不可欠の訓練です。

 3つ目は、特に初心者のスーパーバイジーの場合には多いですが、ケースに対応するスーパーバイジーは不安や心配、緊張が非常に大きいことがあります。その程度があまりにも極端になると妥当で適切な対応をすることが困難になります。そうしたスーパーバイジーに対して、スーパーバイザーが抱え、支え、時には承認したり、保証したりすることで、スーパーバイジーの安定を目的にしたスーパービジョンを行うこともあります。スーパーバイジーが抱えられる体験をするからこそ、担当しているケースを抱えることができるようになります。いうなればカウンセラー中心スーパービジョンでしょうか。

 大きくは上記3つの方向性がありますが、実際のスーパービジョンではその3つが交じり合っていることが多く、しいて言うならば、いずれかの比重が大きい/小さいの違いにすぎないでしょう。また、スーパービジョンのプロセスの中で、その比重が変動することも実際にはあるでしょう。

 また、スーパーバイジーのニーズにも意識的なものと無意識的なものがあります。その両方を考慮にいれてスーパービジョンの目標は決定されていくことが良いと思われます。

(2)スーパービジョンの進め方

 スーパーバイジーは担当したケースのカウンセリングの記録をスーパービジョンに持ってくることが多いでしょう。その記録を読みながら、目標に従い、記録をもとに対話や討論をしていきます。スーパーバイザーが質問し、スーパーバイジーが回答を考える過程でケースのことを考えられるようになることもあります。スーパーバイザーがクライエントの理解を話すことでスーパーバイジーが新たな視点を身に着けていくこともあるでしょう。

 またスーパービジョンの中で扱うケースについては、同じケースを繰り返し持ってきて、そのプロセスを追っていく進め方もあります。その他に、その都度、困っているケースを単発で持ってくることもあります。その両方が入り混じる形式として、基本的には同じケースを持ってきているが、時折、困っているケースをイレギュラーで持ってくることもあります。こうした進め方もスーパービジョン契約の中で話し合い、決定し、それに基づいて行っていきます。

 さらに、持ってくる記録も単に言語的な会話だけを抽出したものよりは、スーパーバイジーが感じたことや考えたこと、思ったことなどを盛り込んだ記録を持ってくる方がスーパービジョンとしてはより深みが増すように思います。スーパーバイジーが心の中で感じたことに大事なことが含まれていることはしばしばあります。

 ちなみに、スーパーバイザーによっては記録は持ってこないように指示する人もいるようです。記録にすると目に見えることのみが中心となってしまい、そこにこだわりや囚われが生じてしまうからでしょう。それよりも、記憶に残っていることだけの方が本質的な何かをつかむことができることは往々にしてあります。記録なしは最初は慣れないかもしれませんが、次第にその方がクライエントのリアリティに触れていくことができるかもしれません。

(3)スーパーバイザーの使用する応答

 カウンセリングの基本技法には傾聴、沈黙、うなづき、あいづち、繰り返し、承認、保証、要約、質問、助言、明確化、解釈、自己開示などがあります。スーパービジョンでもスーパーバイザーはある程度同様の応答を用いることでしょう。そういう意味ではカウンセリングと近いかもしれません。

 例えば、質問などでは単に分からないから聞くという場合もありますが、質問することでスーパーバイジーが考えることを増やし、自ら発見する機会を提供することもあります。また、スーパーバイザーがクライエントについての理解を伝えることもあります。これも単にスーパーバイジーが理解をただ取り入れるということに留まらず、スーパーバイジーの無意識を刺激し、より連想が膨らんだり、新たな着想が得られたりすることもあります。

 スーパーバイジーのニーズや状態に応じて、スーパーバイザーはよりスーパーバイジーの成長が目論まれるような応答をしているのだろうと思います。

(4)スーパーバイジーの病理の扱い

 まだ訓練システムが整っていなかった20世紀前半ではスーパービジョンと教育分析の区別が非常に曖昧でした。教育分析の中で被分析者の関わっているケースに対して助言をしたり、スーパービジョンの中でスーパーバイジーの葛藤やコンプレックス、病理までも取り扱ったりすることもあったようです。

 現代ではスーパービジョンと教育分析の役割がはっきりとするようになってきたことから、スーパーバイジーの葛藤やコンプレックス、病理については教育分析で扱い、スーパービジョンでは基本的にはケースについての見立てや対応について検討することを主とするようになりました。

 しかし、一方で、逆転移の問題をどのように扱うのか、どこまで扱うのかはまだまだ明確な線引きがないようにも思います。逆転移は狭義にはカウンセラーの個人の病理と定義され、広義にはカウンセラーとクライエントの相互作用における情緒的体験と定義されています。狭義の意味として逆転移を理解するのであれば、スーパービジョンでは逆転移を扱いません。しかし、広義の意味として逆転移を理解するのであれば、スーパービジョンで扱っていきます。その扱いの中に、どうしてもカウンセラー(スーパーバイジー)の多かれ少なかれ個人的な問題に触れざるをえないこともでてきます。そうであったとしても、その個人的問題を解決するためにスーパービジョンを使うというよりも、ケースの理解と対応に必要であるだけ使う、最小限に使う、ということが現実的であると思います。

(5)スーパービジョンの終了

 スーパービジョンの期間には特に明確な決まりはありません。スーパーバイザーとスーパーバイジーとが話し合って終了を決めた時が終了となるのでしょう。そうはいっても、数回や数ヶ月程度ではスーパービジョンから学べることは非常に少ないでしょうし、まだまだ学べる要素は多いかもしれません。そういう意味では、数回や数ヶ月程度では、終了というよりも中断とした方が適切かもしれません。

 一方で、スーパービジョンの平均的な期間というのがあるかどうかわかりませんが、よく見聞きするのは2~4年という期間でしょうか。10年も20年もスーパービジョンが続いているのは中にはあるかもしれませんし、それはそれなりに意味のあるものかもしれません。しかし、一人のスーパーバイザーからではなく、何人かのスーパーバイザーから別々に得られるものもあることからすると、適当な期間で終了し、別のスーパーバイザーを見つけることも一つの手ではあるかと思います。

 いずれにせよ、スーパービジョンの当初の目的がどれぐらい達成できたのか、そして、スーパーバイザーとスーパーバイジーが終了について話し合い、同意できているのか、などが終了時に必要なこととなってくるでしょう。

5.スーパービジョンと倫理

(1)二重関係

 スーパーバイザーとスーパーバイジーは契約に基づいた専門的、職業的な関係であり、日常の人間関係とは一線を画するものです。そのため、当然カウンセリング関係と同等の職業倫理に縛られます。

 スーパーバイザーとスーパーバイジーが恋愛関係や性的関係になることは二重関係と言えます。スーパービジョンも非常に親密で、近しい関係になるので、そこに性的なものが持ち込まれてしまうことが意外と多いのです。だからこそ、こうした関係になることを避けねばなりません。

 また、大学院生が指導教官からスーパービジョンを受けることが現状の臨床心理士養成システムの中では比較的多いのですが、これも厳密にいうと二重関係です。つまり、教師-学生関係とスーパービジョン関係が重なり合ってしまっているからです。スーパービジョンでは評価の不安に晒されることなく、率直にケースのことを話し合うことが必要になりますが、スーパーバイジーにとってスーパーバイザーは指導教官でもあります。すると必然的に単位や試験の評価がそこに交じり込んでくることになります。こうしたことはスーパービジョンには好ましいものではありません。同様に、職場の上司が部下のスーパービジョンをする場合も同等であり、これも厳密には二重関係となるでしょう。

 臨床心理士養成システムの性質上、避けられないことでもあるので、一時的に教師-学生関係と重複したスーパービジョン関係を持たねばならないこともありますが、可能なら早めにそうした二重関係は解消して、別のスーパーバイザーを見つける方が良いと思います。

(2)ケースに対する責任の所在

 スーパーバイザーとスーパーバイジーとでケースに対する責任性がどちらに一義的にあるのでしょうか。欧米のスーパービジョンシステムでは、スーパーバイザーがケースに対して一義的に責任を持っています。しかし、日本ではスーパーバイザーは外部の助言者という役割が強く、ケースに対してはスーパーバイジーが一義的に責任を持っていることが多いようです。

 いずれが良いのかというよりも、文化差や地域差によるようですし、スーパービジョンが発展してきた歴史の差といえます。

(3)転移/逆転移

 転移/逆転移はどのような人間関係の中でも強く作用しています。当然スーパービジョン関係の中でも転移/逆転移は動いています。そして、その転移/逆転移がスーパービジョンのプロセスに強く影響を与えることは必然的です。

 スーパーバイジーはスーパーバイザーに対して様々な感情や思考、態度、行動を示します。敬意や尊敬、親密感といった肯定的なものもあれば、不安や不満、不信感といったような否定的なものもあります。いずれも、それが強くなれば強くなるほどスーパービジョンのプロセスに影響を与えるようになりまし、時には破壊的な作用を引き起こすこともあるでしょう。

 スーパーバイザーがその転移/逆転移をどこまで、どのように扱うのかは非常に難しい問題です。あまり直接的に扱うと、それはスーパービジョンの範疇を超え、教育分析になっていってしまいます。しかし、かといって、放置すればいずれスーパービジョンが中断になってしまうこともあります。カウンセリングのように直接扱えない分だけ、スーパーバイザーの技量が必要になってくるように思います。

 また、スーパーバイザーもスーパーバイジーに対して逆転移を抱くこともあるので、さらに扱いは困難となるかもしれません。例えば、スーパーバイジーがスーパービジョンを辞めようとした時、スーパーバイジーの方が見捨てられたり、裏切られたりするような思考が働き、囲い込もうとしてしまうこともあります。

 こうした中で転移/逆転移をほどよく扱い、ほどよく放置し、ほどよく生き抜くことが求められます。

(4)自己研鑽の義務

 カウンセラーなどの専門的な職業はすべからく自己研鑽を積むことが職業倫理では求められています。生涯にわたり、永続的に技量や知識を向上させる義務があります。

 このスーパービジョンも自己研鑽の一つとして位置付けられます。スーパービジョンを必須としない考え方もあるようですが、私はスーパービジョンほど技量を磨く上で非常に重要なものはないと思っています。そして、スーパービジョンとならんで教育分析も重要であり、この二つは車の両輪のように連動することで最大限に効果を発揮するものと思います。

 また、経験が増えれば増えるほどスーパービジョンを受けなくなる割合が増えていくようです。どこかしらで、「もう充分」「もうベテラン」という驕りがあるのではないかと想像します。頻度や期間は少なくなることは仕方ないとしても、ゼロになることが良いことであるとは私には思えません。

 スーパービジョンは初心者はもちろん必要ですが、どれだけ経験を積んだとしても、もう終わりということはなく、適宜スーパービジョンを受けることが良いのではないかと思います。

6.スーパーバイザーの条件

 スーパーバイザーとして機能するための、スーパーバイザーになるための条件というものはあるのでしょうか。明確で、一定の条件や基準は無いかもしれません。しかし、いくつかの側面はあるように思いますので、挙げてみたいと思います。

 主には上記のような目安はあるかもしれません。ただ、どれぐらいの経験があればスーパーバイザーとして適格なのかという分かりやすい基準があるわけでもありません。また経験年数は多い方が良いだろうが、多ければそれで良いといったことでもありません。経験年数が長いだけで硬直化した思考に陥っている人も中にはいます。

 スーパーバイザーとしての絶対的な条件や基準はありませんが、上記のことを参考にしてスーパーバイザーを探すと良いでしょう。また、スーパーバイザーに直接、どういう経歴でどういう訓練を受けたのかは直接聞いても良いと思います。真摯なスーパーバイザーであれば答えてくれるでしょう。答えてくれないのであれば、それは避けた方が良いというサインです。

 また、日本精神分析学会などの一部の学術団体や職能団体ではスーパーバイザーの資格を認定しています。

日本精神分析学会認定スーパーバイザー一覧外部リンク

 日本臨床心理士会でも一時期、スーパーバイザー制度の設立が議論されましたが、スーパーバイザーの資格要件や基準を整備することができず、頓挫しています。

7.スーパービジョンの効果

(1)理解の深まり

 スーパービジョンの効果については様々ありますが、まずはケースの理解が深まるということがあるでしょう。当然ですが、初心者(スーパーバイジー)とベテラン(スーパーバイザー)とでは見えていることが全く違います。スーパーバイザーの視点を教えてもらうということではありませんが、何回も繰り返しスーパーバイザーと検討することで、これまで見えてこなかった部分が見えるようになってきます。

 そして、この理解の深まりはケースを洞察する力でもあります。つまり、まったく違うケースを見る時にも、同様に深いところまで、もしくは見えにくいところまで理解できるようになっていくでしょう。

(2)技法の習得

 スーパービジョンの効果の2つ目は、その学派・流派の技法を習得することにあります。技法はテキストや教科書にも書いているかもしれません。もしくは、こうしたネットからでも得られることはあるでしょう。

 しかし、実際の臨床現場ではテキスト通りにカウンセリングを進めることができないことも多くあります。そうしたとき、カウンセリングの進め方について、スーパーバイザーにケースをみてもらいながら、適宜指導してもらうことによって、単なる知識以上のものが得られるでしょう。

(3)安定化

 特に初心者のスーパーバイザーでは、過度な不安や緊張があり、冷静で、落ち着いてケースに向き合うことが難しいことがあります。最初から図太くできる人もいないでしょう。そうしたとき、スーパービジョンの場でカウンセリング中に起こった出来事や対話をスーパーバイザーに報告し、相談し、対話することで心の平静を取り戻すことができます。

 比喩的にいうならば、泣いている赤ん坊が親に抱っこされることで安心を取り戻し、泣き止むということに近いかもしれません。そして、そうした体験をスーパーバイジーがすることによって、そのスーパーバイジーが次はケースに対してそれに近いことができるようになります。抱えられる体験があるからこそ、他者を抱えられるようになるのでしょう。

(4)パラレルプロセス

 パラレルプロセスという言葉はあまり聞きなれないかもしれません。パラレルとは平行という意味です。これはカウンセリング関係とスーパービジョン関係において、両者が同様の、もしくは似たような進展をすることを指します。

 例えば、カウンセラーとクライエントの間で愛憎をめぐる葛藤がテーマになっていたとします。そのカウンセラーがスーパーバイジーとしてスーパービジョンを受けた時、スーパーバイザーとの関係においても愛憎をめぐる葛藤が展開する、ということです。もちろん、その反対もあります。スーパーバイザーとの関係の中でテーマになっていることが、クライエントとの関係に持ち込んでしまう、ということもありえます。

 さらに肯定的なプロセスの場合もあります。上記の安定化の中で述べたように、スーパービジョンのなかで抱えらえる体験をしたスーパーバイジーが、カウンセラーとしてクライエントを抱えられるようになる、ということもパラレルプロセスの観点から理解することもできます。

 いずれにしても、どちらが原因でどちらが結果というようにはっきりと割り切れるものではなく、連動していると理解する方が妥当かもしれません。

(5)内なるスーパーバイザー

 スーパービジョンは永遠に続き、永遠に指導をしてもらえる、ということはありません。それは幻想でしょう。いつかはスーパービジョンが終了し、自立したり、別の視点のスーパーバイザーを見つけることになります。

 スーパーバイザーとの対話などを通してケースの理解を深めたり、技法を習得したり、抱えられたりすることにより、スーパーバイジーはスーパーバイザーを内在化します。取り入れといっても良いでしょう。子どもが両親をモデルにし、両親の様々な面に同一化し、取り入れ、内在化することと似ているでしょう。

 P,ケースメント外部リンクは「心の中のスーパーバイザー」「心の中のスーパービジョン」と呼びました。

 カウンセリングをしているとき、カウンセラーはもちろんスーパーバイザーに直接相談することはできません。しかし、カウンセラーの中に内在化されているスーパーバイザーとの内なる対話を通し、別の視点を探索し、ある種の客観性を持つことができます。それがカウンセリングの進展の転換点となります。こうした内なる対話の原型はスーパービジョンといえるでしょう。

8.スーパービジョンへの抵抗

 スーパービジョンはカウンセラーとしての訓練としては大変重要な役割を担っています。しかし、一方でスーパービジョンを避けようとする力動も働きます。防衛や抵抗といえます。ここではスーパービジョンを避ける力動が発生するいくつかの理由について書きます。

(1)ナルシズムの傷つき

 スーパービジョンではケースのことを話し合いますが、その中にはスーパーバイジーの生身の部分が露呈することもあります。また、カウンセリング技術の拙さや未熟さも対話の土台に乗ることもあるでしょう。そうすると、スーパーバイジーも批判、非難されているように感じ、傷ついてしまうこともあります。もちろん、スーパーバイザーが意図的に、悪意を持って傷つけることはありません。しかし、適切な指摘や指導を被害的に受け取ってしまうこともあります。

 こうしたことによってスーパーバイジーのナルシズムが傷つくことがあります。傷つきがあるから成長できるという単純な話ではありませんが、ある程度は傷つきを乗り越えて、スーパーバイザーから得られるものを内在化していくことがカウンセラーとしての成長にはつながっていくでしょう。

 ナルシズムの傷つきを恐れ、スーパービジョンを回避するのであれば、クライエントとのカウンセリングにおいても、肝心なところで互いが傷つかないようにという綺麗事を用いて、本質的な部分に触れられなくなってしまうでしょう。それはカウンセリングの重要な部分を放棄してしまうことになってしまいかねません。

(2)エディプス葛藤

 エディプス葛藤とは子どもが異性の親に愛情を向け、同性の親に憎しみを向ける幼児期の葛藤のことです。スーパーバイジーにとってスーパーバイザーは良くも悪くも親イメージと重なります。そのため、スーパーバイジーの未解決の葛藤がスーパーバイザーとの間で再演、再現されてしまいます。転移といっても良いでしょう。

 こうしたエディプス葛藤が賦活されているとスーパービジョンの中で冷静にケースのことを検討することができなくなります。ケースの検討よりもスーパーバイザーに気に入られようとしたり、怒りや憎しみを向けてしまったり、恐ろしい親から叱責されるような不安に晒されたり、といった情緒が優先されてしまいます。

 このような情緒は基本的には苦しいものなので、その苦しみから逃れようとし、スーパービジョンを回避したり、そもそも受けようとしなかったりしてしまいます。

(3)万能感を阻害

 上記のナルシズムの傷つきと似ていますが、万能感の阻害ということで少し視点を変えて、さらに説明します。万能感とは誰しもが多かれ少なかれ持っているものです。自信の元とでもいえるものです。スーパーバイジーには不安と緊張がありますが、一方では万能感も幾分かは持っています。

 しかし、スーパービジョンを受けると、良かった点も取り上げられますが、同時に悪かった点も平等に取り上げられます。その時、できていた!という万能感があるとするなら、その万能感を放棄せねばならなくなります。万能感の放棄は心の危機的な状況を招きます。万能感の放棄があるからこそ、そこから地道に努力し、地に足のついた力量を身に着けていくことができるので、大切なことでもあります。

 ただし、万能感の阻害や放棄という苦痛を抱えていかねばなりません。それは時には相当困難であります。特にナルシズムの強いカウンセラー・スーパーバイジーであれば、万能感の放棄は非常に困難となります。スーパービジョンでは万能感を放棄し、実際的な力量を身に着け、現実的な自信となっていく必要がありますが、その困難さから逃げてしまうカウンセラーも中にはいます。

(4)スーパービジョンを受けないことの合理化

 スーパービジョンに対する抵抗や防衛は上記以外にもあるかもしれません。それはカウンセラーの未熟さというよりも、人間としてほとんど全ての人が持ち合わせている情緒のありようかと思います。それに向き合うか、目を逸らすかの違いにすぎないでしょう。

 苦痛がゆえにスーパービジョンを受けないというのは理由にしづらいものなので、他の誰もが納得できるような理由をもってきて、だからスーパービジョンは受けない、と正当化します。合理化ともいえます。

 合理化によく使われる事柄として、料金を払う経済力がない、遠いので通えない、忙しくてスーパービジョンの時間をつくれない、などがあるかと思います。もしくは、スーパービジョンを受けたとしても、低頻度でのスーパービジョンにしたり、単発のスーパービジョンにしたりすることもあるでしょう。合理化に使われるだけあって、確かにこうした理由があるとスーパービジョンを受けれないだろうと、納得してしまいがちです。

 その他にも、スーパービジョンは受けていたとしても、遅刻やキャンセルをしばしばしたり、恐ろしく長い記録を持ってきて読むだけでスーパービジョンの時間を終わらせようとしたり、反対に記録を持ってこずに実態をスーパーバイザーに見せないようにしたり、時にはケース記録の肝心な部分を修正したり、書かなかったり、などなどもあります。こうしたこともスーパービジョンに対する抵抗といえるかもしれません。

 スーパービジョンはカウンセラー・スーパーバイジーが自身の心の機微に触れる作業でもありますし、それを経ることでカウンセラーとしての成長もあります。自身の苦痛に触れることがあるからこそ、クライエントの苦痛にも触れることができます。抵抗やそれに対する合理化が働くことが悪いことではなく、そうした心の動きがあることを見つめ、それでもスーパービジョンを受けるという方向にもっていく努力ができると良いかもしれません。

9.スーパーバイザーの探し方

 さて、スーパービジョンを受けるためにスーパーバイザーを探さねばなりません。最後の項目ではスーパーバイザーの探し方について、その方法をいくつか挙げます。

(1)指導教官にお願いする

 一番身近なカウンセラーは大学院の時の指導教官である場合がほとんどでしょう。指導教官ではなくても、大学院に所属する臨床心理士の資格を持っている教員は多いと思います。少なくとも大学院で2年間は接しているので、ある程度の人柄や臨床観は知っているので、お願いはしやすいでしょう。また、大学院生の時には単位や修論があるので、評価的な関係があるので、スーパービジョンのような自由な対話は難しいかもしれませんが、大学院を修了してしまえば、そうした評価的な関係は無くなります。同じ臨床分野で生きていくので、その影響力もあるでしょうから、全くゼロになることはないかもしれませんが。

 指導教官や大学院の教員にスーパービジョンをお願いすることのメリットとしては、大学院での指導の延長ということで、相場よりはやや安い料金でスーパービジョンを引き受けてくれる場合があることです。また、最初からお互いがある程度分かっているため、スーパービジョン関係にスムーズに入れることでしょう。

 一方でデメリットとしては、関係が深まっていることが多いため、馴れ合いになってしまったり、二重関係に近くなってしまったり、陶酔しすぎてそのグループから抜けられなくなってしまったり、などがあります。

(2)紹介してもらう

 次が紹介についてです。スーパーバイザーを無闇に探しても良い出会いはないでしょう。そうした時、知人や同期、先輩、指導教官からスーパーバイザーを紹介してもらうと良いでしょう。紹介者がそれなりの知識や技量、ネットワークを持っているのであれば、適切で、相性の合いそうなスーパーバイザーを紹介してもらえるでしょう。

 紹介されるスーパーバイザーの方も、紹介者がいるということで安心してスーパーバイジーを受け入れることができます。

 しかし、一方でデメリットを敢えて挙げるとすれば、スーパーバイジーと紹介者の関係性によっては無下に断れなかったり、スーパービジョン関係に紹介者の影がちらついたりすることもあります。スーパービジョンを辞めたいのに、紹介者に気を使って辞めれなかったりなども中にはあるようです。スーパーバイジーであるカウンセラーも同業者とのネットワーク・人間関係は大事なので、どうしても気を使ってしまうところがあります。

(3)学会で見つける

 大学院に入学するといくつかの学会に入会するでしょうし、学会の年次大会にも出席することになるでしょう。中には学部生の時から学会に参加している人もいるかもしれません。学会の年次大会では様々な研究発表や研修、セミナーがあります。そうした中で発表したり、コメントしたり、登壇している人の発言を聞き、刺激を受けたり、共鳴したり、刺激を受けたりした人がいれば、声をかけてスーパービジョンをお願いしても良いでしょう。

 声を掛けられる方も発表やコメントを聞いて興味を持ってくれているということで意外と悪い気はしないようです。もちろん、条件や空き枠の都合でスーパービジョンを断られることもあるかもしれませんが、受け入れ可能ならスーパービジョンを引き受けてくれることも結構あります。

 もし断られたとしても、そこから良い人を紹介してもらえることもあるでしょうし、空き枠が出るまで待つという意気込みを伝えても良いかもしれません。

(4)論文や書籍から

 カウンセラーであれば学会誌の論文や書籍を読むことが多いでしょう。読んだ論文や書籍の中で興味を持つこともあるでしょうし、その執筆者からスーパービジョンを受けたいと思うこともあります。読んだ文章と実際のあった印象が全く違う人も中にはいるかもしれませんが。

 それはともかく、もし論文や書籍の執筆者にスーパービジョンを受けたい場合には、記載されている所属先に連絡を思い切って取ると良いでしょう。最近はメールでも良いとは思いますが、丁寧にするとすれば手紙を書き、返信用封筒を添えて郵送する方が良いかもしれません。執筆者も自身の論文や書籍に興味を持ってくれたということだけで嬉しいものなので、それほど無下にされることもないとは思います。

 また、所属先が分からなかったり、連絡先が分からない場合には、日本臨床心理士会がスーパービジョン仲介外部リンクの事業をしています。日本臨床心理士会に入会していないと利用はできませんが、こうした制度を利用してみても良いでしょう。

(5)ネットで検索する

 最近ではインターネットを検索することで多くのことを知ることができるようになりました。スーパービジョンなどのキーワードで検索するといくつかのカウンセリングオフィスやカウンセリングセンターでスーパービジョンを受け付けているページに行くことができます。様々なところでスーパービジョンは提供されているようですので、希望に沿うようなところが発見できるかもしれません。

 しかし、一方ではネットの情報は虚偽が含まれていたり、身元が怪しい場合もあったりします。スーパーバイザーが臨床心理士などの資格を持っているかどうか、どういう学会に所属し、どういう訓練を積んできたのか、臨床経験はどれぐらいなのか、などをしっかりと確認する方が良いでしょう。もしネットにそうした情報が記載されていないのであれば、直接尋ねてみると良いでしょう。たいていは答えてくれます。それに答えてくれなかったり、「臨床は肩書ではない」「資格よりも人間性が大事」などと耳触りの良いことを言って誤魔化そうとする人であれば、それはスーパーバイザーとしては不適格だと思うので、避けた方が良いでしょう。

10.終わりに

 以上、スーパービジョンをめぐって、歴史、構造、方法、倫理、条件、効果、抵抗、探し方についてかなり長々と書いてしまいました。カウンセラーとしての訓練をする上でスーパービジョンは外せないシステムです。これによって大きく成長することもあれば、傷つき体験として残ってしまい、必要以上にスーパービジョンを価値下げしてしまうような哀しい事態になることもあります。できればスーパービジョン体験がカウンセラーとしての成長につながるようなものとして享受できることを願っています。

 当オフィスでもスーパービジョンを提供しています。スーパービジョンを受けたいと思われた方は予約申し込みから連絡をしてください。


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