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スーパービジョンと倫理

カウンセラーは専門家としてクライエントを守るために、倫理を遵守することを求められます。それと同様に、スーパービジョンにおいて、スーパーバイザーもスーパーバイジーを守るために倫理を遵守しなければなりません。スーパーバイザーが倫理を意識しながらスーパービジョンをすると同時に、スーパーバイジーも倫理的な逸脱による不利益を被った時にはしかるべき機関に訴えるなどの対応をすると良いでしょう。

ここでは、スーパービジョンの中でしばしば遭遇する倫理的な逸脱(二重関係、責任、転移/逆転移、自己研鑽)を取り上げていきます。

1.スーパービジョンと二重関係

抱き合う男女

スーパーバイザーとスーパーバイジーは契約に基づいた専門的、職業的な関係であり、日常の人間関係とは一線を画するものです。そのため、当然カウンセリング関係と同等の職業倫理に縛られます。

スーパーバイザーとスーパーバイジーが恋愛関係や性的関係になることは二重関係と言えます。スーパービジョンも非常に親密で、近しい関係になるので、そこに性的なものが持ち込まれてしまうことが意外と多いのです。だからこそ、こうした関係になることを避けねばなりません

また、大学院生が指導教官からスーパービジョンを受けることが現状の臨床心理士養成システムの中では比較的多いのですが、これも厳密にいうと二重関係です。つまり、教師-学生関係とスーパービジョン関係が重なり合ってしまっているからです。スーパービジョンでは評価の不安に晒されることなく、率直にケースのことを話し合うことが必要になりますが、スーパーバイジーにとってスーパーバイザーは指導教官でもあります。

すると必然的に単位や試験の評価がそこに交じり込んでくることになります。こうしたことはスーパービジョンには好ましいものではありません。同様に、職場の上司が部下のスーパービジョンをする場合も同等であり、これも厳密には二重関係となるでしょう

臨床心理士養成システムの性質上、避けられないことでもあるので、一時的に教師-学生関係と重複したスーパービジョン関係を持たねばならないこともありますが、可能なら早めにそうした二重関係は解消して、別のスーパーバイザーを見つける方が良いでしょう。

2.ケースに対する責任の所在

電話をする男性

スーパーバイザーとスーパーバイジーとでケースに対する責任性がどちらに一義的にあるのでしょうか。欧米のスーパービジョンシステムでは、スーパーバイザーがケースに対して一義的に責任を持っています。しかし、日本ではスーパーバイザーは外部の助言者という役割が強く、ケースに対してはスーパーバイジーが一義的に責任を持っていることが多いようです

いずれが良いのかというよりも、文化差や地域差によるようですし、スーパービジョンが発展してきた歴史の差といえます。

3.スーパービジョンにおける転移/逆転移

走る男女

転移/逆転移はどのような人間関係の中でも強く作用しています。当然スーパービジョン関係の中でも転移/逆転移は動いています。そして、その転移/逆転移がスーパービジョンのプロセスに強く影響を与えることは必然的です。

スーパーバイジーはスーパーバイザーに対して様々な感情や思考、態度、行動を示します。敬意や尊敬、親密感といった肯定的なものもあれば、不安や不満、不信感といったような否定的なものもあります。いずれも、それが強くなれば強くなるほどスーパービジョンのプロセスに影響を与えるようになりまし、時には破壊的な作用を引き起こすこともあるでしょう。

スーパーバイザーがその転移/逆転移をどこまで、どのように扱うのかは非常に難しい問題です。あまり直接的に扱うと、それはスーパービジョンの範疇を超え、教育分析になっていってしまいます。しかし、かといって、放置すればいずれスーパービジョンが中断になってしまうこともあります。カウンセリングのように直接扱えない分だけ、スーパーバイザーの技量が必要になってくるように思います

また、スーパーバイザーもスーパーバイジーに対して逆転移を抱くこともあるので、さらに扱いは困難となるかもしれません。例えば、スーパーバイジーがスーパービジョンを辞めようとした時、スーパーバイザーの方が見捨てられたり、裏切られたりするような思考が働き、囲い込もうとしてしまうこともあります。

こうした中で転移/逆転移をほどよく扱い、ほどよく放置し、ほどよく生き抜くことが求められます。

4.自己研鑽の義務

読書をする男性

カウンセラーなどの専門的な職業は自己研鑽を積むことが職業倫理では求められます。生涯にわたって、永続的に技量や知識を向上させる義務があります。

このスーパービジョンも自己研鑽の一つとして位置付けられます。スーパービジョンを必須としない考え方もあるようですが、私はスーパービジョンほど技量を磨く上で非常に重要なものはないと思っています。そして、スーパービジョンとならんで教育分析も重要であり、この二つは車の両輪のように連動することで最大限に効果を発揮するものと思います

また、経験が増えれば増えるほどスーパービジョンを受けなくなる割合が増えていくようです。どこかしらで、「もう充分」「もうベテラン」という驕りがあるのではないかと想像します。頻度や期間は少なくなることは仕方ないとしても、ゼロになることが良いことであるとは私には思えません。

スーパービジョンは初心者はもちろん必要ですが、どれだけ経験を積んだとしても、もう終わりということはなく、適宜スーパービジョンを受けることが良いのではないかと思います。

5.スーパービジョンを受けたい人へ

スーパービジョンの倫理のいくつかのトピックについて書きました。二重関係、責任、転移/逆転移、自己研鑽のいずれもスーパーバイザーが守らねばならない事柄です。

スーパービジョンについてもっと詳しく知りたい方は以下のページをご参照ください。

またスーパービジョンを受けてみたいという方は以下のボタンからお問い合せをしてください。


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