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カウンセリングにおいて認知行動療法に精神分析を活用すること

混ぜるな危険の反対

精神分析や対象関係論の長年の知恵が、認知行動療法を実施する上で、意外と活用できます。ここではそのことについて論じています。

1.精神分析のセミナーで認知行動療法の事例

先日の日曜日に精神分析・対象関係論に関するセミナーを開催しました。前半は講義で、後半は事例検討でした。その事例検討では、精神分析・対象関係論のセミナーであるにも関わらず、認知行動療法で行っている事例の発表でした。なかなかお目にかかれない情景でした。

どんな風に展開するのか、ハラハラドキドキでしたが、講師の先生の力量もあってか、なかなか味のある、深みのある、興味深い展開で事例検討が展開しました。認知行動療法の方法を否定することはもちろんなく、そのプロセスを邪魔しない程度に、精神分析的・対象関係論的な理解を加味させていました

2.機械的な実施

ついぞ認知行動療法では(特に初心者では)機械的で、表面的な理解になってしまいがちですが、そこに精神分析的な、対象関係論的な理解をそえることにより、クライエントの心の苦痛に注意と関心を向けれるようになり、率直な共感性がセラピストに生まれてきます。それはある種の人間的な深みを感じさせる側面でもあります。

それにより、通り一遍だった理解に途端に人間的な潤いが感じられるようになりました。そして、ひいてはセラピストのクライエントに対する接し方に端緒に現れるでしょう。精神分析を教条的に実施するのではなく、精神分析のエッセンスを他の技法に加味するという意義が精神分析にあるのだと再認識しました。

おそらく、経験のある認知行動療法セラピストであれば、精神分析・対象関係論の加味がなくても、自然と深みのある人間的な姿勢が当然のようにあるのだろうと思うし、そうしたセラピストにはそれなりに私も会ってきました。

ただ、認知行動療法の技法だけに囚われ、振り回され、技法優先となってしまっている認知行動療法セラピストや、もしくは初心者もいるでしょう。残念ながらそうした認知行動療法セラピストにもそれなりに会ってきました。そうした方にとっては、精神分析的な理解をほんの少しでも加味することをお勧めしたいです。

それにより、技法のみに目が向くのではなく、目の前にいるクライエントそのものという人間に目が向くようになるだろうと思われます。精神分析や対象関係論はそうした人間そのものに目が向けれるようになる長年の知恵が詰まっていると私は考えています。

3.非機能的認知の由来

例えば、非合理的な認知や非機能的な認知があります。そして、確かにそれは非合理的であり、非機能的なので日常生活や対人関係に支障をきたします。故に、それを修正したくなります。特に初心者セラピストは。

しかし、それはそのクライエントの中の物語を否定するリスクを孕んでいます。そのため、クライエントからの拒否や抵抗を産みます。

クライエントからすると、その認知は非機能的ではあっても、これまでの人生の中で、積み重ねながら身に付けたものです。馴染みのあるものです。そして、非機能的認知により、少なからずメリットがあったのです。防衛とも言えます。さらには、そうした認知を育てざるをえなかった苦しみや痛みがあるのです。

セラピストが非機能的認知に内包したメリットや苦痛にまずは眼差しを向け、受容し、共感することが必要になります。それは助長することではありません。

こうした苦痛を前提とした上で、認知の再構成をすることで、クライエントは自ら変わっていくことができます。そして、馴染みの認知にさようならをしていくことができるでしょう。そこにある対象喪失という哀しみを抱えていくことで前進していけます。

こうしたことに関心を向けるために精神分析や対象関係論は少なからず役に立つでしょう。

【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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